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臨床心理士・公認心理師、未経験からの求人応募

1.はじめに

新卒臨床心理士・公認心理師ともなんらかの心理的業務をしている人は多いです。資格取得と同時に新卒就職を考えている人はかなりの割合でいると思います。

ところがどの求人を見ても多いのは「経験者募集」「3年以上○○の心理検査を取っていて緩和ケア病棟で働いた経験がある者」とピンポイントで募集がかかっていると新卒には歯が立ちません。

また、今回公認心理師試験に他職種Gルートから合格、心理職に転身した人も何人か知っていますが大変だったということです。未経験からの就職・転職をどのように乗り越えていくかは新卒・未経験者にとっては大きな課題と言えるでしょう。

このハードルをどのように乗り越えていくかを考えていきます。

2.就転職の実際

新卒就職はどの業界でも同じですがポテンシャル(潜在能力)採用です。今は新卒で就職するのに、事業所は「一緒に働いて働きやすい人か」という人柄、また、リーダーシップや志望動機、当事業所で働きたいかという熱意を見ます。

また、少ない経験であっても人事担当者(複数心理職がいる職場だと心理職が面接担当者になることもあります)わずかなその人が積んだ経験からでも同じような仕事をしてきた経験はないか、そのような仕事への取組みはどうだったかを細かく見ていくこともあります。

以下に実例を書きます。新卒者の場合、放課後デイサービスにはABA応用行動分析を用いた指導をしているところがあります。また、ずばりそのものでなくても放課後デイサービスは認知行動療法的なかかわりをする、発達障害児に接するなどの経験をします。

これは認知行動療法的なかかわりを求めている病院、クリニックにとっては大きなアドバンテージでしょう。

また、教育相談所で働いていても発達障害児や精神疾患を持つ小児児童生徒と接する機会はあったでしょうし、各種発達検査にも長けています。

社会的養護施設で小児とかかわった経験が豊富ならば小児科の医療機関で有利になるかもしれません。

「確かに私は医療的な業務を行ったことはありませんが、子どものカウンセリングではしっかりとケースの見立てをするために多職種連携を行って、常に集団生活の中で子どもが馴染めるように工夫をしていました」などと言えば、それはひとつの立派な答えです。

そこでわずかにでも応募している事業所に対し、そこで求められているスキルと、自分が取り組んできた経験との類似点・そしてその業務の面白さ、いかに熱心にそれに対して取り組んできたかをアピールするのは大きなメリットになると思います。

他職種Gルートの人でも恵まれた公務員のような環境にいる人は公認心理師資格を取得しても心理職になるとは考えにくいのですが、非常勤、心理職を元々していなかった人でも転身して心理職を行いたい人であっても心理的支援業務はしていたはずなのでその経験を話していくといいのではないでしょうか。

たとえば教職を目指していた非常勤教員も子どもにカウンセリング的なかかわりはしていたはずですし、どの職場でもそうですが生き生きとした心身ともに健康な人を求めています。

部活指導を熱心にしていたこともアピールの材料になるのではないかと思います。

一見心理業務と遠そうな看護師さん、栄養士さんは病院勤務をしていることが多く、病院という組織に馴染んでいること、ともすると心理職はなんでも心理的な問題に患者さんの主訴をとらえがちなのですが、身体の問題や心身相関について詳しいということは大きなポテンシャルになるでしょう。

3.おわりに

どこから聞いた話か忘れたのですが、高校を中退したニート歴が長かった人が教材か何かを売る飛び込み営業という厳しい仕事で業績を上げ、次はコピー機のような耐久消費材の営業マンになったという事例があったそうです。

彼は目標があって、海外向けの営業をやりたいということでひたすら英語の勉強は欠かさなかった、TOEIC860点を取るまでになり(欧米人とすらすらビジネス会話ができるレベルの英語力)、優れた法人営業能力と英語力を買われて海外向け商社に30歳ぐらいで年収500万円で雇われたそうです。

とある職域の職場で働こうとすれば、大学でアカポスを狙うのではない限り、学歴よりも経験、性格、スキルが求められます。

上記に述べたような努力をしたということは就職をする際の十分な武器になります。というのも心理業務に熱心に取り組む姿勢、また、多くの心理テストを取らなければならない職場であれば、各種の心理テストの勉強会に出ていたことはそのまま即戦力になるでしょう。

「ひとつもケースを担当したことがありません」ということではカウンセリングを行う職場では採用が不利になってしまうので、自分が担当していた心理的支援をを含む事例を事例検討会に持っていき検討してもらう、スーパーヴィジョンを受ける、こういった事例検討会にも定期的に参加してきたという経験も売り物になるでしょう。

未経験採用はポテンシャル採用とは言え、こういった地道で熱心な姿勢はきっと就転職に役立つと思うのです。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_