「の会」の公認心理師上位資格制度構想を見直してみる
公認心理師の会(以下「の会」という。)も上位専門資格(ただいま絶賛準備中)によるスキルアップとキャリアアップを検討している団体です。
というかスキルアップとキャリアアップという
のは何ものなのか、それを上位専門資格と関係させるということは何だろう、と思うわけです。スキルアップしてキャリアアップしたら給料が2倍になるなら喜んで入会したいものではありますが…
「の会」の主体となっているのは認知行動療法家たちが主流ですが「の会」には倫理綱領が存在しない。これが大きく日本公認心理師協会(以下「師会」という。)と異なるところです。別に職能団体に倫理綱領がなくてもいいと言えばいいわけですが(諸外国には倫理綱領が存在しない職能団体もあり)、分裂職能団体がそれぞれ我こそは職能団体と主張して心理職 50 年の争いをまたやり直し「ああまた心理職は一人前とはみなされないんだなあ」と悲しい思いをいつもしています。
アメリカ心理学会(APA) の Ethic Code (倫理綱領)は実に立派なものであり、和文翻訳をしたら(自動翻訳ソフトDeep L さんによる)実に 30 ページに上るものだったのですが、なかなかに厳しい内容となっていました。APA はかなり大きな団体であり、臨床心理士として活動するには APA の会員でなければならない。
ということで実験結果をねつ造してあたかもAという。心理療法がとても効果があるかのように宣伝して顧客を引き付けたら資格を剥奪されたりと、当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、なかなかにきつい倫理となっています。
そんなことを言ったらエビデンス(証拠・証明力)がない心理療法を行ったら全て資格剥奪になるのかというとそういうわけでもなく、アメリカでは保険点数化されていなくても境界性パーソナリティに関する精神分析療法はエビデンスが認められているわけですし、精神分析と愛着理論を駆使したメンタライゼーションも盛んです。
日本で認知行動療法家というよりも原田療法の創始者、原田隆之君が言っているような「絵を描かせたり箱庭をやらせたりするようなセラピストがいたらインチキだと思ってほかのカウンセラーを探せ」とか下山晴彦さんが言っているような「遊戯療法をやっていた人は学んだことを生かして認知行動療法をやってみよう」と言葉巧みに他流派を disっているように思えるわけです。
心理療法家の人たちは、ぽつりぽつりとしかしゃべらない言語表現が苦手な子たちの遊戯療法をやったり、箱庭療法をやったりして目をキラキラと輝かせて帰っていく、そしてまた遊戯療法を楽しみにしてやってくる子どもたちを見てとても「ああ、これは効果があるんだなあ」と実感している、これはクライエントさんが一番満足しているからこういった現象が起こるわけでしょう。
それを頭ごなしに否定されてしまうと精神分析に始まる遊戯療法やその理論を学んできた学者やその弟子たちは頭を抱えてしまうかただ単に無視するだけです。
前置き、というか「いつも話が脱線してしまうのが悪い癖なのですが」(とパワポで作った資料を見事に全て無視しながら話して今日メンタルヘルス講義中に言ったらウケを取れた)「の会」が作る上位資格構想というのは当然認知行動療法オンリーになってしまうのだろうし、そうすると他流派は認められないだろうと思うわけです。
そこに「の会」の上位資格構想について危惧を覚えるわけで、400 あまりあると言われている心理療法のうち認知行動療法を含むほんの一部だけが心理療法として認められてあとは全部 dis られてしまったらワンチャンやってみる価値もないと他心理療法家ががっくりと肩を落としてしまうという結果になってしまうというのではないでしょうか。
そこに「の会」が作ろうとしている「上位資格」の危うさがあるわけで「師会」が作り上げてしまった専門認定なんちゃらという上位資格も勝手に作られてしまったので知人の S君から「ねえ、あの上位資格取らなくちゃいけないのかなあ?」と聞かれて「その必要は全くないよ」と言ってしまいました。
迷える子羊を一匹救い出したような気持ちになりました。あっちで専門資格を作り、こっちで専門資格を作り、とさらに医師団体側でも学会認定専門公認心理師資格を作ろうという動きもあるのですから、もうこうなると百花繚乱で、彷徨える子羊のような推定平均年収 300万円の心理職にとってはどの団体に加入したらいいのか、どの資格を取ったら有利になるのかということを考える羽目になるわけです。
最終的には 6~7 万人程度になるだろうと見込まれる公認心理師ですが、「師会」の出した結果によると約2000 人の会員数、時が経ったのできっと 3000 人行くか行かないかの組織率で言えば青息吐息(とても失礼)な職能団体、そして「の会」もきっと組織率は低い、こんな風に分裂していたら一体どこがどうなっているのかわからないでしょう。
しかも臨床心理士と公認心理師のダブルホルダーも多いので、日本臨床心理士会、「師会」
「の会」今度は「師会」とはゆるやかな結びつきはあるものの上下関係がない独立団体の地方公認心理師協会もあるということで、一般公認心理師は混乱するばかりです。「の会」と「師会」の関係をはっきりとさせておかないとそれぞれが勝手に上位資格を作って反発を買うだけだと思うのですが・・・
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
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