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新卒公認心理師受験者の苦悩

1.はじめに 

新卒 E ルート受験者の方々については、第5回受験でかなり厳しい戦いを強いられることになります。というのも院卒者の卒業が3月、試験が7月に予定されているわけですから、これまでよりも短い時間が公認心理師受験のための勉強期間になるわけです。

本年度の臨床心理士試験の筆記試験日程が10月9日だったことを考えるとダブル受験者にとっては少し息をつく間があるだろうと思ってい
るわけですが、何しろ公認心理師試験の受験日程が卒業してからかなり早くなっています。果たして第4回Eルート 85.5パーセントの合格率をそのまま維持しきれるのだろうかと心配になっています。

現在 M2 の院生たちは修士論文作成の真っ最中、ぎりぎりまで論文を作成していることを考えると(だいたい修論〆切は1月ぐらい)果たしてこの難関の試験に対応できるだけの勉強時間があるのだろうかと思っています。

2. 新卒者のアドバンテージ

とは言っても新院卒者にはそれなりのアドバンテージがあります。まず、学部のころからみっちりと基礎心理学を叩き込まれていること、どの学部でも統計法、実験法、調査法は必修なので、泣きながらだろうが無理やりにでもこれら文系学生にとっては苦手科目を克服し切らないと進級はできなかったでしょう。

公認心理師試験に出題されない科目もあります。たとえば精神分析学やロールシャッハの投影法検査の細かな実践、解釈です。これをディスアドバンテージととらえるのかもしれませんが「心理学という学問をどのように、どうやって、どういう発想で学ぶのか」についての発想について学んできたわけです。

これは公認心理師試験に必要な「純粋な学問的なセンス・感覚」を身につけ解く上ではとて
も役に立つものと考えます。

3.現状

Gルートの人たちの合格率は第4回試験では 55.7 パーセントでした。今年の現任者講習受講者が約2万6千人、かなり気合いを入れて受験をしてくる人たちが多いでしょう。再受験組は満を持して「どうしてもこの資格が欲しい」と一生懸命になって大枚数十万円支払って予備校を利用している人たちもいます。こういう人たちの本気度合がどの程度というかというと、かなりの本気です。

公認心理師とよく比較される精神保健福祉士についても試験はなかなかに難しく、合格率は2021年、64.2 パーセントでした。しかしながら受験生たちは大学や専門学校でこの試験に受かるため、この試験向きのほぼほぼ受験対策の授業を受けながら学生生活を過ごして来たわけです。

現在臨床心理士・公認心理師課程を置いている大学院においては寡聞にして聞かないのですが(臨床心理士一次論文試験が免除される専門職大学院の動向をこれから見ていきたいところです。)「臨床心理士試験向け・公認心理師試験対策」の正式な授業やゼミを置いている大学院はありません。なぜならば大学院というのは学びの場であって試験勉強をさせてくれる場ではないからです。

実際、精神分析学も投影法等公認心理師試験には出題されない心理検査法についても脈々と臨床心理学の先達たちが研究に研究を重ねて受け継がれてきたもので、それを「試験範囲でないから」と大学院から切り捨てることは不可能です。

そして長年研究の場として機能してきた大学院は「博士課程前期」でもあり「博士課程後期」で博士号を取得するのが前提の場でもあるということです。

4.課題

現在公認心理師課程を置いている大学院のほとんどは臨床心理士も取得できる課程を設置しています。臨床心理士と公認心理師のどちらが心理資格として有力なのか、つとに話題になっていますが、多分、ここ数年は臨床心理士、あるいは臨床心理士及び公認心理師のダブルホルダーの方が心理職として就転職するときには有利という情勢が続くのではないかと考えられます(ハローワーク求人などの資料参照)。

ただ、公認心理師養成大学院教員、また院生にとっても、修論、膨大な時間の実習とその指導、指導を受けること、授業も受けながら臨床心理士公認心理師双方の必要所定科目を取得して修論を書くというのはかなり重圧であると考えられます。

5.おわりに

こういった僕の懸念事項は第 5 回試験で新卒者がどの程度の合格率となるのかということで再度見直しの機会があるかもしれません。ただ、ほかの医療系専門資格と異なっているのは、臨床心理学課程を置いている大学院はほぼほぼ受験対策はしないので必要科目は教えるけれども受験対策まではしないだろうということです。

それは大学の「学問の場」という姿勢に加え、とてもではないですが、公認心理師課程を置いている大学院の実情としては科目を教えるのがやっとで人員が少なく、実習先も少なく青息吐息で、なんとかやっていっているということを知っているからです。

これが第6回試験になると5月に試験、第7回試験になると3月試験で、大学院側と学生側で、この超ショートスパンの体制にどこまでついていけるのだろうかということについて不安に思うのです。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_