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○ スクールカウンセラーは不登校を減らせるか?

1.はじめに

スクールカウンセラー(SC)が全校配置されているにもかかわらず不登校、いじめの数が増加していることが話題になっています。確かにSC配置は不登校、いじめ対策の一環として導入されたという経緯はあるのですが今「果たしてスクールカウンセラーは不登校を減らせるのか?」という大きな命題を突きつけられています。

2.不登校の構造

不登校にはさまざまな要因が輻輳して絡んでいるものと思います。はっきりとした統計を取った数値ではないのですが、僕がSCをしていた時の経験からすると「環境因」は大きかったような気がします。

学業不振、知的・発達の障害(特別支援学級に入れれば登校できることは多いですが親が猛反対している)、虐待による登校禁止、ヤングケアラー(子だくさん家庭で下の子の面倒を見なければならない)、貧困(お風呂に入れない→恥ずかしくて学校に来られない)、いじめ、学級崩壊による不適応感、部活での孤立感etc…です。

3.SCの役割

僕ら心理職は児童生徒、保護者のメンタルヘルス状態をカウンセリングをすることによって安定化を図ります。そして教員から相談があれば不登校児童生徒を登校させるためのコンサルテーションを行うことになっています。

しかしながらこういった不登校対策は教員が抱え込まなければならないことがとても多いです。

これに関しては教員もかわいそうだなあと思うのは、校長を頂点とした管理職からせっつかれていて、管理職も教育委員会からのプレッシャーがあって、日常的に児童生徒を見ていると言っても数十人の子どもたちを抱えている教員は部活顧問を土日に行いながら青息吐息で子どもの家庭訪問をしています。

週イチSC、名古屋市では常勤化したというものの、SCがこういった環境に介入していくことはとても難しいことです。

僕の私見ですけれどこれは何が悪いのかというと「チーム学校」の概念が相当に関連しているような気がします。SCは学校というチームの一員です。ただし管理職、校長、教頭、主幹、事務長の下に位置づけられています。

学級経営を実際に行っている担任や学年主任、特別支援コーディネーター、相談担当教諭と学校の中の役割分担は複雑多岐に絡まり合っています。

アメリカのようにSCが大きな権限を持つ独立機関として場合によっては校長に命じることはできないですし、公認心理師試験に出て来るような、SCが主導的になってプロジェクトチームを作る、というような事は現実には行われていません。

カウンセリングで個人に介入することはできたとしてもSCは環境を変えることはできないのです。

学級に入れない子どもを実際に教室復帰させたことはSCとして働いていた僕にも経験があります。

家庭訪問を何度も続けて相談室登校、保健室登校から教室復帰と丹念に計画を立てながら何人か教室復帰をさせてきまましたが、それはその子の登校に向かう心的準備体制が十分にできていたからで、決して僕1人の力で行えたとは思いません。

あと、学校から離れた場所にある、教室に入れない子たちの支援教室に足しげく通って、不登校である自分に対して強い劣等感を持つ子どもたちのありのままを認めて励ましに行っていました。

結局、学級不適応を起こしていた子どもたちはそういった支援学級を通じて無事高校に進学できた場合が多かった、不登校から引きこもりという子たちは支援学級に来ていた子たちにはいなかったと思います。

学校が怖いからということで夕方から夜にかけて登校してくる子どもと長い間雑談したりと、SCは僕にとっては生の子どもたちの本音を聞ける、とても貴重な体験でした。

だから僕はツイートもしたのですがSCが持っている役割は子どもを学校に来させるためでなく、子どもと保護者の心情を安定化させるためだと思うのです。

SCが期待されている役割としてはいじめや非行に関する対応もあります。いじめる側といじめられる側両方の相談対応をしなければならないことになるのでしょうけれども、まずいじめられた側は「言いつけた」「弱い自分を認めなければならない」ということでの抵抗があります。

そしていじめた側といじめられた側双方のカウンセリングを行うことは弁護士で言う「双方代理」になり、両方からの信頼を損ねることになりかねません。

4.おわりに

ないないできないとSCの側に立って言い訳ばかりをしているように読み取れる記事になってしまいましたが、SCにとっては教職員との協働協業はとても大切なことです。

僕の個人的な見解としてはチーム学校概念ができてから不登校が増加していて、不登校要因はSCにある、とかSCは役に立たない、と結論づけるのではなく、SCの持つ理念である「外部性」を重視しながらの協業体制を作ることが大切と思えるのです。

文部科学省の見解については何が不登校やいじめの要因になっているのかという分析をしっかりとして欲しい、その上でSCの運用、活用の計画をしっかりと立てて欲しいと思います。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_