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第4回公認心理師試験傾向分析

1 緒言

昨日「講評」を出したばかりですが、それでは「傾向」はどうだったのかを見たいと思います。というのは傾向を見ることによって、この試験が何を狙っているのか、また次回に向けてどういった領域、用語が出題されるのかを漠然とではありますが、俯瞰することができるかもしれないと思ったからです。

2 出なかった分野・領域・用語

出なかった用語を解析することで、次に出題される用語をある程度(ひなた私見なので完全な正確さには欠けるものの)予測できるかもしれません。いくら国家試験といっても出題数には限りがあります。これはどの国家試験でも同じです。したがって全部のブループリント用語 (今年は小項目の索引がついていたにもかかわらず)は出ない。それなのに例えばポジティブ心理学が出題される等、大項目の医学なら医学分野でどの心理学的問題を出題するのも自由なのです。

今回出題されなかったもので、あくまで僕が印象に残っている(ひなた私見)は心理学史(頻出のトールマン等、ただしゲシュタルト心理学が出題されていたので「出題された」とは言えるかも)、条件づけや記憶の心理学も出ませんでした。

あとは毎年頻出のピアジェやヴィゴツキー、チョムスキーの言語発達理論が出題されなかったのが印象的でした。

脳のバシッとした難問題も出なかったです。統合失調症(選択肢にはあり)、双極性障害、あとは制度として今まで出ていたのに出なかったものとしては司法面接、面会交流(1度も出たことなし)、ハーグ条約等があります。D-PAT も出ませんでした。労働法規も少なかったのでは?と思いました(もっと出せという意味ではありません。)。

あと、ジェンダーに関する問題が毎年必ず1題は出ていたのが今年は出なかったのが不思議と言えば不思議でした。それから、少年法が改正になったにもかかわらず出なかったのも意外でした。あとは頻出だった健康日本 21 でしょうか。

3 意外な出題

「意外」というよりは、今まで出ていなかったのに出題されたということです。こういった問題は次回からまた出るかも知れません。過去問をやってみた人が過去問で得点を取れたという声を聞くとそう思うのです。「ゲートコントロール理論」「感覚運動学習」「ポジティブ心理学」「組織コミットメント」「感染症予防策」(これは第1回公認心理師試験で出題範囲になっていたのに除かれたものです。)コールバーグの道徳性発達理論はいつか出るとヤマかけをしていたらやっと出ました。

4 頻出問題

頻出問題は、これまでも出題されているし、これからも出題可能性が高いという問題です。

向精神薬は必ず出ます。副作用も出ます。毎回試験のテーマになっているものがあるのですが今回は「せん妄」でした。これがサイコロジカルファーストエイドだったり、統合失調症だったり、糖尿病、認知症のことがありました。

臨床心理というと「うつ病」とそれに対する関与を想像しがちなのですが、それよりも心身症各種を覚えておいた方が得点率は高いかもしれません。認知行動療法も頻出です(ひなた私見)。

医療法は必ず毎回1題は出ているような気がします。PTSD がこれほどいつも多いのは、
PTSD に対する公認心理師の役割が期待されているのかもしれないといつも思っています。

それから DSM-5 はとにかく何がなんでも出題されます。隅から隅まで読んでおかなければならないと思いました。あとは現任者講習会テキストです。医療倫理の4原則もここから出ていました。

5 傾向分析

今回の試験は多くの人がそう言っているように過去問を丁寧にしっかりと学習していたら正答できた問題が多かったように思えます。また、ブループリントにも準拠した問題も多く、ブループリントで新しく出ていた、例えば「アドバンス・ケア・プランニング」などはそのまま出題されていました。

次回の試験がどうなるか、その傾向は不明ですが、今回の試験結果を受けてある程度は考慮
されていくのではないかと勝手に予測しています。

いつもながらこの試験の特徴ですが、ブループリントの小項目に載っているからと必ず出題されるわけではありませんし、逆にブループリントに載っていない項目の問題が出ることもあります。ブループリント大項目 「健康・医療に関する心理学」ならばブループリントに掲載されていなくても何の出題をしても構わないという感じでしょうか。

臨床心理士試験は「心理学・臨床心理学」に関する出題ということなのですが、この辺りが
公認心理師試験と異なるところです。

僕は臨床心理士試験と(もう失効してしまったであろう)産業カウンセラー試験を受験したことがありますが、どんな問題が出るのか予測がなかなかつきにくいというのが公認心理師試験の特徴ではないかと思いました。他職種から参戦、受験する人たちは公認心理師用の試験を集中してやっていると思いますが、心理職の人たちは依って立つ学派がある人も多いです。

よくこの試験に出る認知行動療法以外に精神分析、メンタライゼーション、フォーカシング、投影法検査(ロールシャッハのエクスナー法は科学なので投影法とは私見では思っていないのですが)、森田療法、EMDR、臨床動作法、催眠などの勉強をしていてもなかなかこの試験とはダイレクトに結びつかないことが多いと思います。

そこがこの試験の難しさだと思いますが、次回チャレンジする人たちは過去問やテキストなどを参照にして頑張って欲しいと思います。私事ですが Twitter のスペースで受験対策講座を話していた時には心理学全般に対しての興味が深まり、話すことそのものが楽しかったです。

ためになったという声も聞いたこともあり大変嬉しく思いました。だんだん試験までの期間が短くなってきますが、心理学に疎い、あるいはもう忘れてしまったという人は今から努力しても遅すぎることはないと思っています。