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○ 臨床心理士・公認心理師の平均的?キャリア形成

心理職は院卒後、資格を取得する前から学生相談所や大学のカウンセリングセンターで子どものプレイセラピーを行い、研修生として残ることが多いようです。というのも大学内で研修生として残っている限り、学内でのスーパーヴィジョンを格安で受けられる、非常勤生活が始まっても院とのつながりがあるということは安心感につながります。

ケース検討会に自分でケースを出して教授も交えて検討してもらったり、心理テストの技能を磨いたり、時として後輩たちの修論指導の手伝いや臨床心理士・公認心理師の受験勉強を教えるとか。

こういった大学での研修は、自分が SV を受ける立場だと院にもよりますが、無料で受けられる場合、格安で受けられる場合、通常の開業カウンセリングと同じだけの値段を払わなければならない場合もありますが、いずれにせよ自分で SV を受ける場所を探すというのは大変難しいことです。そういった意味では卒後研修の一環として研究生として残ることは理にかなったことです。

そうこうしながら院の教授の紹介が主で、いろいろな職場で心理職としての仕事のスタートを切るわけですが、例えば新卒、24 歳の心理職がいきなりリストラされて離婚、くたびれた50代のカウンセリングをケースとしてカウンセリングをするようにと言われてもクライエントさんもカウンセラーも困惑してしまうでしょう。ですので最初はクリニックや病院の心理テスターやインテーク面接だけ、という感じで働き始めることが多いようです。

そしてそれに兼ねて教育領域で教育相談所、市区町村や都道府県のスクールカウンセラーを行うなど、子どもを相手にお兄さん、お姉さん的な立ち位置で仕事をすることが多いようです。

まあ大体こういった非常勤人生を送っていれば月給額面 20 万円程度、手取りにしてみれば16~17 万円ボーナスなしといったところでしょうか。その間に院生のころから心理臨床学会に入ったり、臨床心理士試験を受験して合格したら登録して、公認心理師試験も受験して登録して、ということになるわけです。また、教授の入っている学会に自分も入ったり、教授の勧めで修論をそこで発表したり、また自分が欲しい本や論文は自分で買ったりと、なかなかお金がかかります。

実家暮らしだったら何とかやっていけるのでしょうけれどもこれが一人暮らしということだと大変です。必死になって学部生のころに受験して一度は落ちた公務員試験をまた受け直してみたり先輩や教授のつてをたどって大病院で安定した収入がある職場に入れることを狙うわけですが、これもなかなか難しい。人によっては実家暮らしのままなんとなくずるずると 50代ぐらいになるまで同じような生活をしていく人もいます。

日本公認心理師協会が提唱している認定専門指導公認心理師(長い)が描いているプロフェッショナルキャリアポートフォリオ(?まあ職歴のこと)なんぞは、博士号を取得してその間に仕事をして、研究者としてあんな論文を書いたりこんな論文を書いたりしながら仕事をして教授になってさらに研究をしながら仕事をして、ということでなければまともなコンピテンシーに基づいた(プロフェッショナル) キャリアポートフォリオを形成していくことは難しいのではないでしょうか。

心理職の給与というのは例え独立行政法人の医療機関で準公務員のような扱いや、私立大学病院であっても大変安いもので、事務職員待遇で扱われることも多いものです。結果として割と安定した職場でも手取り 30万円定年までに取れるようになれることはほぼ不可能です。

さて、こうなるとポートフォリオも何もあったものではないのですが、日本公認心理師協会(師会)が掲げているそれがいかに難しいことか、やはり認定専門公認心理師は一部の選民のみが取得して胸に軍人の階級章のようにドヤ顔で星マークでもつけて、僕ら通常人は「まあそういうものを取りたい人は取ることもあるわな」と思いながら各々好きな学会に出たり、また、G ルート他職種の人たちは公認心理師を取得したとしても元の仕事に戻って平常勤務をしたりするわけです。

師会、公認心理士の会(の会)でも上位資格構想を掲げていますが分裂職能団体が各々勝手に資格を創設したりお互いの高いプライドから争っていたらまた心理団体 50年の争いの歴史が繰り返されるのみで、いつまで経ってもまとまりはしないでしょう。

これはあくまで僕の推測の域を出ないのですが、公認心理師資格を創設するに当たっては医師団体の介入、というネガティブな見方もありますけれども、特に医療領域においては公認心理師の心理職専門家としての期待というのは大きかったはずです。

そこでこれまで心理療法的な役割を他職種に行なわせていたのを公認心理師に一括して移譲するという提案をしようとしてもできない、つまり自分たちのクビを自分たちで締めているのではないかというのが僕の印象です。

せっかくの医師団体との和合がなんとかできたのに心理団体同士で無益な分裂をしているとむしろ心理職のキャリアにはマイナスの効果しかないと思うのは僕だけでしょうか。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_