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◯ 公認心理師上位資格よりも大切なコンピテンシー・新人育成

1.はじめに

2021.8.9Twitterのスペースで「公認心理師上位資格制度」について語らせていただきました。放送直前に本ブログブレーン、S女史とすり合わせをしていたのですが、2人で話していたのはキャリアポートフォリオを描くことよりもまずは新人育成に力を入れて欲しいということでした。

2.内容

⑴ そもそもコンピテンシーとは

コンピテンシーというのはビジネスでも使われる用語です。ぼうっとしてただ朝早く来て夜遅く帰るだけで何もしない仕事のやり方はコンピテンシーが低い、反対にとても忙しく定時内で仕事をしていればそれはコンピテンシーの高い働き方と言えるのです。

心理職のコンピテンシーとしても同じ。「なんの授業を何時間受けたのか」よりもどの程度密度の濃い学習をして何を身につけたのか、が大切になるわけです。

基盤コンピテンシー(心理職と持たなければならない態度)は
・専門家としての姿勢
・反省的実践
←ここ大事
・科学的知識と方法
・治療関係 
(における基本的な能力)
・倫理・法的基準と政策
・文化的ダイバーシティ
・多職種協働


があります。(斜体項目は現任者テキストから抜粋)これらの基盤コンピテンシーは継時的なものではなく、専門家が同時に身につけなければならないもの。(後ほど「機能コンピテンシー」についても語らせていただきます。)

⑵ 新人研修問題

院を卒業しました。さて現場に出ます。これほど新人にとってプレッシャーのかかることはないでしょう。僕は公認心理師上位資格よりもこの新人研修の方が大切だと思うのです。僕なんぞも心理1人職場ですが、これが卒後まもなくだったらどれだけ心細いだろうかと思います。

給料が低い。それでもSVを受けなければならない。一回一万円SVを受けるのに毎週は受けられないから月一にする。これでは新人は育ちません。研究会も自腹です。

この上位資格を作った人たちは大学の先生が多いのでしょうけれどもいきなり新卒後年収500万円ぐらいないとできないことを強要される。「なんだかなあ」と思うわけです。

お金がある団体なのですから(日本公認心理師協会)入会したらSVを新人に無料または破格値で受けられるようにすればいい、そうやってSVデータベースを作ること。基盤コンピテンシーを身につける前にどうやって自分のスキルを高めていくかわからずにうろうろ何年もしてしまうのが現場です。

これらの問題を解決するのが「機能的コンピテンシー」につながると思うのです。

機能的コンピテンシー(能力・できること)はもう少し継時的な視点が取り入れられているような気がします。(斜体は現任者講習テキストから)

・心理アセスメント
・介入
・コンサルテーション
・研究と評価
・スーパーヴィジョン
(をする能力)
・管理・運営
・アドボカシー


さあそこでアセスメント、介入、コンサルテーション、研究…能力etcを誰もから教わらないで行うことができるのか?これは大変難しいことです。全部に力を入れて高いコンピテンシー能力を身につけるのは大変難しいことです。そもそも何に力を置いて身につけるかは上位資格よりも各個人の研鑽によるものだと考えています。

⑶ プラクティショナー制度

一番引き合いに出すべきは看護師だと思います。看護師は卒後教育がとてもしっかりとしていて、看護協会に所属していなくてもみっちりとeラーニングとOJT(オンザジョブトレーニング・現場で教わること)体系がしっかりとしています。

医師や自職種内でも批判があるのは重々承知の上ですが、僻地で医師が行かないような場所に看護師が赴任する。そこで簡単な風邪についての診断名・投薬まではナースがやってもいいという(ナース・プラクティショナーNP)制度は看護師側から提案されていて実際には医師団体の猛烈な反対に遭って実現しないでいる。

公認心理師も試験では薬物動態学を含めて薬理学にも詳しくなる。心身症にはある程度薬物に関する権限を持たせてもいいと思うのです。

もしサイコロジカル・プラクティショナーが簡単な診断・投薬へのアドバイスを行うことができればずいぶん日本の医療は変わるのではないでしょうか。

⑷ 上位資格よりも前に考えるべきこと

上記のことを踏まえて総花的な資格を作っても意味がないし、管轄団体である当の厚生労働省が「知らない」資格を作るよりは、医療保険点数にかかわるような大きな転換点を作って欲しいものだと職能団体に対しては思います。

だいたいお前ら分裂していないで統一して意見を言えるようになれよとも思うわけです。

3.終わりに

キャリアポートフォリオ(心理職としての履歴書)は誰か上位者が決めて勝手に書くものではない。なぜならば自分のキャリアは自分が一番よく知っているからです。

こうやって心理職能団体が分裂して好き勝手なことをやっているといずれ医師団体が上位資格決めちゃいますよ?と思うわけです。

せめて日精協のような医師団体が間に入ってくれて調停役を引き受けて欲しいとも思うのですが、まだまだ問題は山積しているようです。

Twitterスペースは情報発信源としては大変意義のあるものです。今後は「聞き流し公認心理師受験対策」でも流そうかと思っています。

(以上抜粋)
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_