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意欲のない公認心理師受験は必ず失敗する

1 はじめに

公認心理師試験があと2カ月を切りました。ちまたでは、「こうやって勉強するといいよ」「勉強の方法はこれがいいよ」という無料のアドバイスがあふれています。僕も「あと2カ月で必ず合格する公認心理師試験の勉強法」を書けばきっとバズるのでしょうけれども、そんな魔法の方法はありません。Twitter にも書いたのですが、無料で知識を得て、そのまま要領よくさくっと勉強して合格するといった方法はありません。

だからこの期に及んで心理の知識がほぼゼロで今から勉強を始めようという人には悪いですけれど諦めて来年チャンスを狙いましょう。今年受験してもいいですけれどそれはほぼほぼ記念受験ということになるでしょう。

2.Gルートの人々に言いたいこと

以前和光大学の高坂康雅先生が「学校教員には公認心理師になって欲しくない」ということを話していました。多重関係が発生するからです。僕もこれには基本的に同感です。スクールカウンセラーをやっていた時、特別支援学級の先生方、この方たちは何十年も障害のある子どもたちにかかわってきています。また、養護教諭は子どもの体とメンタルの相談に乗り、虐待があれば通報し、非行少年がいれば職員会議を通じ、警察や家裁との連携を取る、まさに「心理相談」の仕事をしていると言えます。

しかしたとえ心理相談の仕事をしているといっても公認心理師試験に合格するためには相当の苦労をすると思います。

ただし、これが特別支援コーディネーターとして「音楽の教諭をやっています」「本業は英語の教諭です」という方には申し訳ないのですが、この公認心理師試験はご遠慮願いたいと思っています。特別支援コーディネーターを一生行うわけではありません。教育委員会に出向したり、主幹、教頭、校長に出世することは心理相談業務ではありません。

また、総合病院で細かく職域の分業化が行われているような現場で、心理士がいる病院であれば他職種の方の「公認心理師」の資格は邪魔になるどころか、多職種連携の中で危機を作り出しかねないということも覚えておいて欲しいと思います。

最近はほとんどG ルートの受験者が受験割合の中核を占めるようになってきたので敢えて苦言を呈させていただいていますが、苦労して取得したその資格は本当に役立つの?ということです。例えば栄養士さん、この資格はあなたにとって本当に必要なものですか?基礎心理学、心理学史、知覚、学習、社会心理学、産業心理学、司法の知識は本当に栄養士さんにとって必要かということです。そして栄養指導をする際に高度な心理学的知識は要りますか?

多くの受験生の方々と話をしてきた印象です。自分の仕事に使わない、仕事内容と関係が薄いGルートの人ほど勉強の仕方がわかりません。勉強するに際しても教えてくれる親切な人に丸投げです。「すいません、このテキスト (過去問)やり終わったんですけれど、次はナニをすればいいですかぁ?」という人ははっきり言って間違って受験資格を得てしまったとしか思えません。この試験は学部、大学院でみっちりと心理学を専攻して、さらにその上で勉強をして初めて取れる資格ということが基本です。

3 金と時間ばかりではない

この試験に臨む際に必要なのは、わからなければ予備校を利用してもいいと思いますが、お金をかけて Zoom やオンラインで授業を受けたとしても、ただ漠然と見ていてアウトプットをしなければ心理専攻者でも合格はおぼつきません。必要なのは「意欲」です。心理学が面白いと思えるまでに心理学をやり尽くして受験勉強が終わっても心理の勉強会に出ようとするまでの興味・関心を持って欲しいものだと思います。そのモチベーションを科目担当教員や栄養士等他職種の人々が持てるかということです。

実際にそういう人はいるのですが、憧れの心理職につくために、高い給料を投げうって学部、大学院に行き、心理の仕事をしている人もいます。

心理の仕事は給与が安く激しくハードな面があります。現場に出ればすぐに知能テストをやらされます。それがすぐに可能である。またはスーパーバイザーについたり、心理テストの勉強会に自主的に出る、心理学の勉強をして学会に出る、あるいは学会発表をして心理の世界に貢献する、それだけの覚悟を持って受験をして資格を取得して欲しいと思います。

4 おわりに

試験前に過去最大の苦言を呈させていただきました。それは「本当に必要な人にだけ、この資格を取って欲しい」そして「この資格によって救われる人が有資格者に相対して欲しい」と思うからです。そういった高い意欲なしにただ漠然と受験資格があるから、ということで子どもの持っている勲章やバッジを一つ増やすぐらいの気持ちで受験したならば、その低い意欲ではとてもこの困難な試験に合格できるとは思えないのです。

自分で考えて、主体的に動き、何をすればいいのか、それは心理職のプロとして必要な技能です。そして今現在勉強をする際にも人に頼りっぱなしではたとえ心理職になったとしてもうまく仕事ができるとは到底思えません。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_