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医師団体の公認心理師制度への強硬な思惑(2021.7.18)

1.はじめに

公認心理師制度も発足して、すでに第4回の試験を迎えます。2022年、すなわち来年公認心理師制度発足5年目の大幅な見直しが控えています。(正確には来年9月以降)

さて、この制度はどうなっていくのか、あくまで僕の勝手な「憶測」(ですが、いかにもとてもありそうなシナリオ)を書いてみます。

2.Gルート導入の意味を振り返る

Gルートは元々鬼っ子のようなものです。公認心理師カリキュラム等検討会は誤魔化してたまに仕事をする心理職や臨床をなかなかできない大学教員を想定したような「ふり」をしていましたが現状のようになることはわかり切っていたでしょう。

他職種Gルートの方々をdisるつもりで言うわけではないのですが、この5年間はGルート導入によって「公認心理師の価値の切り下げ」を多分医師団体主導で行うためにこの特例制度が創設されたのだと思います。

二資格一法案の際も医師団体から「心理大卒」と4大卒を視野に入れていて心理団体から猛反対を受けていたのをGルートはさらに受験資格要件を緩くしたのですから。そういう意味で、これから本格的な公認心理師制度の始動がなされていくのだと思います。 

Gルートは医師団体と心理団体の綱引きの結果として生まれたキメラのようなものだと思っています。

3.抗争の歴史

心理団体は抗争に抗争を繰り広げてきてこの50年、やっと国家資格化ができました。こんなことを言うと「識者」からは怒られそうですが、民主党政権から自民党政権に変わるどさくさに紛れて通常、ほとんど審議されずに廃案になるであろう「議員立法」で成立したとしか思えません。

つまり常に「どうでもいい法案」として廃案になっていたような貧弱法案がたまたま日の目を見てしまったわけです。

心理団体はここに向かうまで抗争に抗争をお互いに繰り広げてきました。多職種職能団体は「協力こそ発展」なのが心理団体は「争いこそが存在意義と価値」の非常に泥沼団体様御一行です。

その結果何が起こったか。そして今後何が起きるのかを考えてみます。

4.心理団体上位資格構想の破綻と医師団体の思惑の成功

どの心理団体も上位資格構想を繰り広げています。「ちょ、おまワープアの公認心理師に何すんねん」という声はこの人たちには届きません。そうこうしているうちに予測されるのは医師団体の上位資格乗っ取りです。考えてみれば簡単なことです。日本精神科病院協会はすでに公認心理師の上位資格の商標登録を2つしています。

学生の実習先、新公認心理師初めての就職先も現公認心理師の勤務先も精神科の病院が多いでしょう。とすると心理団体があーでもないこーでもないと搾取の構造を評定している間にいとも簡単に医師団体が上位資格を作ってしまってもおかしくありません。

5.まとめ・医師団体の権勢

臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が決めて試験をしていますので試験団体は日本臨床資格認定協会とその構造は簡単です。

公認心理師試験は国家資格ですので官報に試験委員が発表されます。誰が?どうやって?試験委員を決めているのか?まずは日本精神科病院協会(現任者講習会主催)日本精神神経学会(双方団体とも「主治の医師」の介入を強力に主張)、医師はこの辺りのつてをたどればかなり多くの出題委員が入っています。3分の1程度です。身体医学専門家や生物学的医学者もいます。

とすると「医学なんか知らないよ」ではこの試験は絶対に合格できません。そして心理学会では権威ある日本学術会議から心理学各分野の出題委員(日本心理学会と重なるかも)を出せば終わりです。

これほどコントロールしやすい烏合の衆はないのではないでしょうか。仲間割ればかりしているので統一見解などない。上位資格のような大多数の誰のコンセンサスも得ていないものを勝手に作ろうとする。

「じゃあそんなにまとまれないんだったら俺たちがまとめてやんよ」

実に簡単です。赤子の手をひねると言ったら赤子の筋力をなめ切っているようで赤子に失礼です。赤ちゃんの吸啜力は激しく、ひとところにしがみついたら離れません。

医師団体が何を今何の実権を握っているか?公認心理師試験、公認心理師実習、公認心理師の就職先と待遇です。今争っていたら上位資格も厚生労働省との折衝も医師団体の思うがままです。

試験は難しい、そのとおりです。ただ、このままの状態だと公認心理師は心理知識を持った、安い給料でこき使えるミニ精神科医や下請け労働者になってしまいます。それを自称「識者」は考えて欲しいですし、そのためにはまとまりが必要です。ドヤ顔で公認心理師制度ができたから素晴らしい未来が待っていると心理団体関係者が集まって好き放題言っている場合ではありません。

今心理職は医師団体に負けないほどの強いオピニオンや、リーダーシップを持った集団であることが必要だということをよく考えて欲しいのです。

そしてなぜこの記事を今僕がこの時期に書いているのかということについても大きな意味があるのかもしれないということについて、危機感を持って欲しいのです。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_