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Gルート公認心理師・資格の用法・用量

1.はじめに

公認心理師 G ルート他職種に対する批判もあり、「なんで俺たちの領域を荒らすんだ」という心理職の反発もあります。他方で「せっかく機会が与えられているのだから」とチャレンジして合格している人たちもいますので、どうせなら資格の生かし方を考えた方が建設的です。医師国家試験や看護師試験と違って「この資格を取得したから心理職に転身する」というGルートの人は少ないでしょう。

他職種 G ルートの人にとってはせっかく取った資格でも給料も上がるわけでもないし、自分の時間を注ぎ込んである人は家庭も犠牲にしてまで取得したこの資格、どういう使い道があるのか考えてみた方がいいと思います。ということで職種別に「現役で仕事を続けながら」どうこの資格を活用するかを考えてみました。

いずれにせよ今実習に来ている学生に他職種の人たちが「あ、俺○○として働いているんだけど公認心理師も持ってるんだけどね」とドヤ顔で言うのはとてもではないけれどオススメはしないです。

せっかく実習に来た学生の反発を買うばかりです。現役心理職の人たちと対等、それ以上に心理の知識をひけらかそうとするのも用法としては患者の症状を無視して劇薬をいきなり患者に与えるようなものだと思います。

2. 教員公認心理師

小中学校には必ずスクールカウンセラーが来ています。せっかく多職種連携を覚えたのですから、スクールカウンセラーと共同して児童生徒の処遇をどうしたいいのか、お互いに知恵を絞って考えるということはいかにもお役立ちのことのような気がします。

スクールカウンセラーは若手であれば確かに現場を良く知らないかもしれません。ベテランのスクールカウンセラーはスクールカウンセラーとしての教員との協業しての働き方を知っていますのでぜひ協力し合いながら仕事をして欲しいと思います。

学校の中では教員公認心理師は積極的に特別支援コーディネーターを行って欲しいと思います。公認心理師有資格者の養護教諭の先生は、やって来る子どもたちの顔を見て、どんな精神・身体的疾患の可能性があってどうやって医療につなげばいいのか、それは今行っている仕事と同じだと思いますが、公認心理師としてのさらに深い知識を生かしたら役立つと思います。やってくる児童生徒は被虐待児・非行少年も多く、この子たちがどういった処遇を受けるのが見通して職員会議で意見を述べてくれたならばほかの先生方も助かるでしょう。

特別支援学級の公認心理師の先生方も子どもの様子をよく観察しながら、子どもが卒業したらどんな道に進むのがよいのかこれまでより見えやすいと思います。

3. 保健師・看護師公認心理師

この人たちが行っている業務は実際に公認心理師が行っている業務と重なることが多いと思います。保健師さんが行う健康教育にはメンタルヘルス領域をぜひ重点的に入れて欲しいと考えます。相談業務を行う際、健康指導をする際にも公認心理師としての知識は役立つと思います。

看護師さんが、緩和ケアで亡くなる患者さん、その家族のケア、普段から接している患者さんの不安を和らげてくれたならば患者さんにどんなに役立つでしょう。その病院に心理職が在職しているのならば多職種共同ケースカンファレンスで情報交換をしてくれたならば心理職はかなり助かります。

4.福祉公認心理師

福祉場面では心理職が不在の施設も多いでしょう。無資格者も多く働いています。三福祉司は多くいます。実利的なことを言うと、公認心理師の福祉加算があれば助かりますし、施設の経営も安泰になります。これは大きなメリットです。運営する側も気持ちに余裕が出れば利用者さんへの態度もやわらぐと思います。

利用者さんにはさまざまなメンタルの問題を抱える人たちは多いでしょう。ぜひこういう人たちの力になって欲しいです。

児童相談所の職員、社会養護で子どもにかかわる職員も心理資格は必須ではないのですが、あればその理解にとても資すると思います。

5.司法場面

社会復帰調整官はダイレクトに対象者にかかわるのに公認心理師としての知識が役立ちます。ぜひ精神障害を持った人たちの医療的、福祉的な観点からの知識を生かして欲しいものです。
保護観察官も同じです。

少年院教官も入所少年の様子を見るのに心理的知識は役立つと思います。矯正心理職や家裁調査官は心理士無資格者はかなり多いのですが、公認心理師として幅広い視点を身につけていることは心強いです。

6.その他・及びまとめ

思いつくものはいろいろあります。医師、歯科医師、作業療法士、栄養士などで、どの職種の人たちも公認心理師スピリッツを持って仕事をすることはできるでしょう。

ただ、他職種 G ルート公認心理師の方々にはお願いしたいことがあります。Gルートというのは医師団体と心理団体が綱引きをした挙句できた鬼っ子のような存在です(言い方は悪いですが僕はそう思っています)。だからこそ受験期間も5年間に限られているわけですし、そこから先は学部で選抜された心理学専攻者で、さらに公認心理師課程を修めた「純粋培養組」のための試験になってきます。

ですから「使い道がない資格」だったら別に無理をして使わなくてもいいのです。むしろこの資格があるからということでそれを振りかざして資格を乱打するようなことがあると資格の存続にかかわるということです。心理検査を研修なしに行なう、SV なしに心理面接を行うなど、危険なことをしないで欲しいわけです。どんな心理検査やカウンセリングにも必ず侵襲性があります。その侵襲性を十分に理解した上で心理業務を行って欲しいと考えています。

Gルート他職種の人たちには厳しいことをかなり書きましたが、そういった目で見られているだろうし、また、見られることもあるだろうということは知っておいて欲しいのです。