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◯ 臨床心理士・公認心理師に向いている人、向いていない人

1.序

心理職の仕事を将来やりたいという人を見ていていると「この人向いているのかな?大丈夫なのかな?」と漠然と思うことがあります。(注;自分は棚上げ)努力を何もしなくても自分自身を「この仕事に向いているに違いない」と思っている人は危うい気がします。

それではどんな人が心理職に向いている・あるいは向いていない人なのでしょうか?

2.やる気のある人

⑴ やる気があって向いている人

これは大変素晴らしいことです。いろいろと研究や勉強をやり、いいバイザーにもついて目の前のクライエントさんにも熱心に対応します。クライエントさんにとってもいいカウンセラーでしょう。

⑵ やる気があって向いていない人

こういう人の存在が一番頭が痛いです。やる気があるのはいいのですが莫大な課題を周囲にも強要します。権限をこういう人に与えるとパワハラです。仲間の人権を尊重できない人がクライエントさんのことを大切にできるかどうかは甚だ疑問です。

松岡修造ではないので山道を走って荒波を乗り越えることをクライエントさんや同僚後輩に強要しても良くなるわけではありません。

⑶ やる気がなくて向いている人

朝起きます。「はぁーまた仕事かあ」と思います。安月給(時給)で働かされてイヤイヤ出勤、クライエントさんがもう何もしたくないという気持ちが痛いほどよくわかります。「辛いですよねえ」という言葉はとても信憑性があります。

この人が向いているのはやる気が職業人としてはないとしても共感性はあり、センスもあります。いつも困り切っているので人に支援を求めます。どうしようかと思いケース検討会にケースを提出、自信がないので研究会に出たり、みなのアドバイスを聞き入れます。自分で決めきれないところは周囲に聞くので自然に多職種連携ができてしまいます。

⑷ やる気がなくて向いていない人

朝起きると「あぁー、仕事行きたくない」というのは上記と同じです。そして実際に行ったり行かなかったりします。そうするとクライエントさんはすっぽかされてしまいます。

こういう人はまず社会人としてどうか、というところがあります。イヤイヤながらも仕事に行ってカウンセリングや心理テストをすることができるレベルにあるとしましょう。しかしこのイヤイヤ感はクライエントさんにも伝わってしまいます。

クライエント:どうしてもやる気が出なくて
カウンセラー:わかるわぁ、私もさっぱりやる気が出ないのよお。今この瞬間も

クライエント(この人は真面目に話を聞く気があるのだろうか…)

3.この仕事しかないと思っている人

⑴ 向いている人

この人はおそらく高校時代から心理職になりたいという思いがとても強い人です。これからは心理学科内の厳しい競争をくぐり抜けるために GPA(成績評価値) 3.5(平均 90点)を取らなければならない場合も多く、とんでもない成績を取る熱意のある人です。

よく本を読み実習にも熱心に取り組み、自らを振り返ることに余念がありません。ベテランの人でもそうです。若いころから経験を積み重ね、心理職という仕事の大変さも素晴らしさを知っています。ある程度以上経験を積むと今度は若手の育成に熱心になります。

⑵ 向いていない人

「この仕事しかない」のは「ほかに社会人経験がないしこの仕事以外しらないしできることないし」という「心理デモやるか、心理シカない」というデモシカ心理職です(と書いていて大変耳が痛いです。) 今さら転職することができないでずるずるとこの年齢まで来てしまいました。あるいは思い込みで「この仕事こそ俺の人生だ」と酔いしれて心理職をしている人です。

ナルシシズムのあまり自分のことしか見えていないので周りも目の前の相手も見えていない、聞こえていない人もいます。

⑶ この仕事にこだわらないで向いている人

このタイプの人は開業をするとなんでもやります。企業に営業をかけてメンタルヘルスパッケージ(カウンセリング・メンタルヘルス)をうまく売り込みます。口達者です。人をほめるのが上手なので個人療法もうまいのですが、集団へのウケもよく、講演会で話し上手、ある意味マルチプレイヤーです。

こういう人はベンチャーの社長に向いていて、人材派遣業務をやらせても金融商品の営業会社を作ってもそれなりにやれるレジリエントな人です。

しなやかで苦労を苦労ととらえず、悩んでいる人のことを心理学というバックボーンで理解していきます。

⑷ この仕事にこだわらずに向いていない人

世の中にはいろんな人がいます。臨床心理学を専攻して病院に就職したもののふらっとやめてしまい、地球物理学を次は学部から学び直し、それからロココ時代の建築史を学びという人は実際にいます。

臨床心理士を取ったのか取っていないのかわからない、心理職なのかどうかというとほんの一瞬はそうだったのかもしれないけれども心理職というアイデンティティもない人、自我同一性が拡散しまくっている人、ここまで行かなくてもよくわからない人も多いというのは聞いたことがあります。半分ライターなので僕も書きながらスマホの指が痛いです。

4.努力をしない人

書きながらなんとなくスマホに触れる指どころか右腕全体が痛くなってきたような気がします。

クライエントさんのために真に役立ち、歴史ある名著を読み最新の知識を仕入れながらなおかつさまざまな勉強会で知識に触れる、そういう人に私はなりたい、と思います。

腕のいいカウンセラーの序列というものは昔から決まっています。

努力するベテラン>駆け出しでも熱心な若手>慢心していても、やがて鼻をへし折られ謙虚になる若手>勉強もせず心理職としての矜持なく何もかもを捨てて知ったか振りをして何もしない馬齢を重ねただけの心理職

と決まっています。

6.神

さて、この領域になると「向いている・向いていない」を超越して人類愛に満ちた救世主となります。その先生は崇め奉られ、人々は神の足元にひれ伏し、はらはらと涙を流し、神に出会えたことにたとえようもない感動を覚えるのです。

実際、これに近い心理職の人はいます。高名な先生の人格に打たれ、打ち震えるような気持ちになるクライエントさんもいれば、近づいて稲妻に打たれたような衝撃を感じる後輩心理職たちもいるでしょう。

僕のような凡人(未満)は決してこの高みを目指してはいけません。高潔な人格で若いころからそのカリスマ性を十分に発揮してきた先達の足元にも及ばないわけですから。

そしてこの神の領域は目指そうとして目指せるものではなく、無理に人の心を操ろうとすればそれは邪神に過ぎないでしょう。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_