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公認心理師試験の隠された狙い
公認心理師法では臨床心理士のようには研究業務は、含まれていません (公認心理師法第1条)。ですので、それをよしとするか?
この問いについては NOです。公認心理師ブループリントには実験法から始まって統計が目白押しに科目に入っています。
「カウンセリングするのに統計はいらないじゃないか」という意見もあるかもしれませんが、科学者一実践家モデルを標榜する公認心理師概念としては、これらは外せない科目です。
さて、そこでまた公認心理師カリキュラム委員会に戻るのですが、第5回委員会で(p1~p19) 子安構成員(認知発達心理)、石隈構成員(臨床心理)、川端構成員(臨床心理)、北村座長(医師)はこぞって実験法、統計の大切さについて語っていました。
子安構成員は日本心理学諸学会連合理事長も務めており、心理学研究法、心理学統計法をそれぞれ別の科目として取り扱い、重点を置くべきだと意見書を提出、日本教育心理学会南風原理事長もいわゆるナカグロ科目(点が中についている科目、例、認知・行動心理学)ではなく、心理学研究法、心理学統計法をそれぞれ独立させて力点を入れるという要望書を提出していました。日本行動軽量学会・日本テスト学会、また心理学統計法担当者らからの要望書も同様の主張をしています。
公認心理師シラバス(科目)、そして試験もこの主張を取り入れた形となっています。心理学における研究、実験(この中に統計も含まれる)は公認心理師試験出題範囲ブループリントでは4パーセントとなっていましたが、実際第3回試験では 4.3 パーセントの出題がありました。
毎回「統計は捨てた」と言いながら合格した受験者がいることも確かですけれども「嫌いだからイヤイヤ統計をやったけれども、統計がなかったら合格していなかっただろう」という受験者もいます。
さて、私見ですが(というか多分心理研究者の大多数の意見)実験法、統計法は必須の学習科目です。これなしには臨床心理学といえども研究ができない、学会発表ができない、ほぼほぼの修士課程では統計法ができないと修士論文が書けず、またその上の博士論文も書けないわけです。
しかし「統計は捨てた」で合格してしまうこともあり得るこの試験です。そうすると、統計が難しいから捨てた、という受験者をなるべく排除するためには試験全体の難易度を底上げするしかないわけです。
カリキュラム検討委員会等ではさまざまな試験形態について議論されていました。例えば医師国家試験では「これを選んだら終わり」(ほぼ患者が死ぬか大失敗の治療)が出ていて、どんなに他の科目がいい成績でも約 10 問中、4問この選択肢を選ぶと不合格となってしまう(例えばストレスチェックテストの結果を本人の了承なしに人事担当者に話す。双極性障害の患者にインプラミン、パキロセチン(ほぼほぼ躁転する、地面に落ちた挿管ようカニューレを地面から慌てて拾って消毒なしに患者に再び挿入する))など、そういう問題を入れたらどうかという議論もありました。
これから先、この試験がどのような形式になっていくのかわからないのですが、統計問題を解かせるために問題全体を底上げした可能性はあると、カリキュラム委員会の議事録を読んでいると思います。
各問題の正解者の正確な分散値(ばらつき具合)は日本心理研修センターとおそらく厚生労働省しか把握していません。これまで統計問題を平易にして出題していたにもかかわらず(のように第 2 回試験までは現任者講習テキストを読んでいれば解けていたのでそう思いまた。)、解けなかった、それでは統計を難しくしてみよう、将来的には統計の比率を上げてみようという話になってもおかしくはないと思います。
また、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士の3福祉士は、1科目でも0点科目があると合格することができません。将来的には試験がそのように変わる可能性がありますが、それは G ルートが終わった後かもしれません。そうすると統計が苦手な学生たちが「統計は捨てた」とは言っていられないわけです。
実際、今回の試験では新卒Eルートが81.0 パーセントの高成績で合格していました。Eルートは院から途中で入ったのではなく、学部から統計をたたき込まれた筋金入りの受験生たちでした。Gルートで統計を捨てて辛くも合格した人もいましたが、統計を捨てたために合格できなかった人も多いのではないでしょうか。
今後の試験の成り行き、第4回試験がどうなるかはわかりません。しかし1回1回の試験のあり方は各問題の正答率を見て、テスト理論を使用して心理学知識を確実に持っている人を選別するようにしているのだと思います。
そうすると次の第4回試験がどうなるのか確実にはわかりませんが、第2回試験と比較して難易度が上がった、それにもかかわらず合格率が上昇したということで、第 4 回試験は今回と同じ難易度か、ひょっとしたら今回より難化する可能性もあるかもしれないと思うのです。
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