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◯ 楡の会(大卒ルート公認心理師実習2号施設インタビュー)

※ 写真は2020年4月にオープンした楡の会地域生活支援センター「えすと」です。

※ 事前にアポイントメントを取り、電話で行ったインタビューです。

1. 承前
札幌にある社会福祉法人楡の会課長、こころの相談室室長(臨床心理士、公認心理師)でこの本プログラム責任者で岡部先生に「お話できますか?と聞いたところ、大変お忙しい様子でしたが、快く時間を取っていただきました。「ひなたです」と名乗ると「読んだことありますよー」と言われ、結構嬉しかったです。

2.目的

現在公認心理師法第七条第二号に定める実習施設はきわめて少ないことから、札幌にある二号施設社会福祉法人楡の会(楡の会ホームページ) にインタビューをしてその理念や実施プログラム等の実情について聞いてみたものです。同福祉法人は医療・福祉施設です。

事業内容としてはクリニック、児童発達支援、放課後等デイサービス、生活介護、短期入所、共同生活援助、障害児相談支援、計画相談支援、居宅介護、重度訪問介護、行動援護、訪問看護等を行い、障がい児・者の在宅生活を支えています。職員は200人を超えています。

今年の募集は終わっていますが、
楡の会 公認心理師の実務経験プログラム が掲載されています。

こういった2号施設の理念と教育プログラムについて聞きたいと思いインタビューを行いました。

3. インタビュー

僕:今日はありがとうございます。さっそくですが、この公認心理師実習事業に乗り出した経緯は?

岡部先生:元々近くに札幌学院大学があって、大学の同期が教員をやっていたんですね。それでこのプログラムをやってみたいなあという話をしていてそれで法人として取り組むことの了解を得たわけです。理事長には「いいね」と好意的な評価を受けました。

僕:募集人員は?

岡部先生:2人ですね。全国から問い合わせもありました。働きながら資格が得られるということは魅力的に映ったようです。問い合わせを多く頂きました。

僕:楡の会の実務経験プログラムの特色を教えて下さい。

岡部先生:楡の会は医療と福祉の両面から障がい児者の在宅生活を支える施設です。様々な職種(医師・看護師・保育士・理学療法士・作業用療法士・言語聴覚士・社会福祉士・介護福祉士等)と協力し合いながら本人と周囲の大人たちを支える、まさに多職種連携の現場です。発達障害に対する理解はここ数十年で大きく広まってきましたが、楡の会のプログラムは発達支援と家族支援を特色としています。

僕:公認心理師課程は3年間プログラムですか?

岡部先生:そうです。

僕:養成プログラム作成が大変だったんじゃないかと思います。

岡部先生:いろいろと苦労しました。札幌学院大学と協力体制を取って行うプログラムを組み立てました。大学院の講義を受講しながら楡の会での実務を行うことで、理論と実践の両面で学べるようにしたつもりです。また楡の会は医療と福祉の事業があるため、法律の規定にある2つの領域で実務経験が得られます。

僕:楡の会さんで学べることは?

岡部先生:主に子どもを対象としているので、愛着形成について、また子どもの育ち全般について乳幼児期から思春期までを学べますね。主な実務のイメージは心理士が入っているプレイセラピーを想像してもらえばいいかと思います。お子さんの様子について、行動を発達的な視点で見立てて、その意味づけをして親御さんと共有します。親御さんの不安にも答えながら、親子両方を支えていきます。

楡の会に通う方はクリニックやPT・OT・STなどのセラピー、福祉サービスを複数利用している方が多いのが特徴です。そのため、診察や心理検査などで得られたアセスメント情報、他の職種から得られた情報、福祉サービスの情報などを総合して、多職種チームアプローチでの支援を学べます。精度的な支援、教育場面での支援について包括的に考えることもできます。

僕:実習生の待遇も気になるところですが。

岡部先生:うちは3年の臨時職員としての給与のほかに奨学金も得られるようにしています。もし実習生が卒業して楡の会に一定期間勤務してくれたならば返済は免除することになっています。

僕:どんな方に来てもらいたいですか?

岡部先生:楡の会の理念に賛同してくれる人、楡の会で行っている福祉・保育現場に賛同してくれて、うまくコミュニケーションが取れる人ですね。ぜひうちに来てこの仕事で障がいを持った子どもたちの発達を学んで力をつけて、楡の会のスピリットを身に付けて欲しいと思います。

僕:卒業生は楡の会さんに就職することになるんですか?

岡部先生:そうなってくれたら嬉しいですね。受験資格を得た段階で別のところへ行ってしまうかも知れませんが、採用した方が転職することはどの枠の採用でもありえることです。理事長や総合施設長とは、そうやって全国に散った公認心理師が楡の会の精神を広めて欲しいと言う話もしています。とはいえ居てくれることを願っています。

4.感想など

突然の申し出にもかかわらず時間を取って、とても丁寧に対応してくださった岡部先生には恐縮するとともに大変ありがたく思っています。実習生が児童領域で福祉・医療の両面を学べることはとても魅力的な2号施設だと思いました。近くの札幌学院大学院との連携もあり、「学ぶ一実習」を経て働くことができます。さまざまな理由で大学院進学が困難な方にとっては、こういった 2 号施設の存在は大変ありがたいものです。

岡部先生が発案したということで、心理職が新しい後進育成のために尽力したということには大変意味のあることだと思っています。

岡部先生の口調の端々から実習生を育てていきたいという熱意が感じられました。また、ご自身の職場の楡の会への思い入れも強く、ぜひこういった施設で実習生が学び、新公認心理師となって欲しいものだと思います。