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photo&lyric by SORA (@Skylit_Blue)
晴天の陽をうける幾何学模様が好き。


○ サイコロジカルプラクティショナー制度 

1.序 

ナースプラクティショナー制度は、アメリカでは実現されています。患者さんにプライマリーケアを提供、医師がいないへき地では医師のかわりに常駐、診断、治療などを独自で行うことができます。

そのためには通常の看護師よりも高等教育を受けなければならないという制度です。州によってさまざまな取扱いで、簡単な診断、投薬などを行うことができます。

さて、アメリカの臨床心理士は博士号取得必須、基礎心理学中心の出題になっていますが、合格率 50 パーセント、州によっては投薬治療もできる場合があります。

本格的なナースプラクティショナー制度は日本では医師会の猛反対に遭って実現していません。

2. サイコロジカルプラクショナー

さて、標題に書いたサイコロジカルプラクショナーについては、実は第1回公認心理師カリキュラム等検討会(2016年9月20日)でも話題に出ていました。盟友うさネズミさんが、公認心理師に関する情熱が感じられてとても迫力があっ
たということなので、僕も再読してみたわけですが、多職種連携、医学知識、文系理系の問題、子安構成員、石隈構成員(双方とも心理・子安委員は日本心理士会。石隈委員はスクールカウンセラー団体代表)によるプラクティショナー制度に言及しています。

また、その後に開催された 2016年11月4日第1回公認心理師カリキュラム等検討会ワーキングチームでは日本臨床心理士資格認定協会評議員吉川構成員は、公認心理師制度について、きちんと制度が施行されたところで、待遇面はどうなのかということについて資格の重みづけについて述べていました。

各々立場は違うものの、医師の構成員からは出ていなかったサイコロジカウプラクティショナー制度について心理の立場から言及があったことについてはこの 2016年という初期の検討会で話があったことが大切だと思います。北沢座長(内科医師)は公認心理師が多職種連携をする上で、医学一生物学的な知識なしで文系の心理師が医療の世界で多職種連携はできない、現状で心理職に対して医学的知識を持って欲しいと述べていることから、公認心理師試験は医師団体のその意を受けて医学的な知識が相当に重要視される試験となったのでしょう。

脳神経系解剖学、神経心理学、一般医学、医療知識、医療関係法しかり、どれも公認心理師という横断的な「5領域」を標榜するのに必要な知識として扱われています。司法で言えば家庭裁判所調査官の上司は当該家庭裁判所所長である裁判官、矯正で言えば同じ心理職や行政職の施設所長が上司となり、精神医学的な知識が必要となることはあっても、詳細な身体系医学の知識は不要なわけです。

しかしながら横断的資格としては「公認心理師」という資格所持者は一定の医学的知識があり、医療にも対応できるし基礎心理学にも通暁しているという高レベルの知識が要求されているわけです。

医療における公認心理師の立場は医学的知識を持っていても心理職としての立場が臨床心理士よりも劇的に高くなるということはないわけです。

そしてアメリカのようにナースプラクティショナー、大学院レベルの医療知識を持っていたとしても、看護師はたとえ感冒であっても診断、投薬はできません。

公認心理師が専門的医療知識を要するというだけでも従来の心理職とは毛色が変わった資格になっており、そこはきちんとした評価の対象になるべきですし、ここに至るまでは多くの医師団体の意見を取り入れ、試験委員にも多くの医師が入っています。 

医師団体がかなり出題に医療的な色彩を入れたことによって、公認心理師そのものの現状での制度がプラクティショナー的な色彩を持っていると僕は考えます。確かに医行為はできなくとも、集団精神療法や医療機関におけるペアレントトレーニングは医師の関与がなくても実施可能なわけですし、医師が行った場合のカウンセリングと、公認心理師が行った場合のカウンセリングの保険点数にも差異がなくてもいいわけです。

公認心理師上位資格には僕は首尾一貫して反対しています。学会認定資格であろうが、権限はない、ただ専門性が高いぞ、お前ら取っておかないと就職に不利になるぞというような赤貧を洗うがごとくの心理師から資格商法で金を巻き上げようとするよりも「権限を与えます。そしてそれに対する対価も払います。そのためにはきちんと勉強してください。そのための試験(学歴)はこうです。」

と言われれば、それはただの二階建て資格ではなく、新たな資格として認められると思います。特に災害時のサイコロジカルファーストエイドについては、大規模災害の際にはD-PATチームを指揮できる公認心理師の有資格者を養成してもいいと思うのです。

精神科医における精神保健指定医と同じような制度です。さて、果たして医師団体がそれに対して賛同してくれるか、ですが、医学部定員増員に対しても医師会は既得権益擁護のために反対 し、明らかに国民の利益になるはずのナースプラクティショナー制度にも反対しているので、サイコロジカルプラクティショナー制度を打ち上げようとしたら猛反対されることは間違いないでしょう。