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photo&lyric by sora (@Skylit_Blue)
静かの海に
こころを浮かべて


◯ 公認心理師も臨床心理士も雇いたくない

1.例:カウンセリングサービス提供会社

大手カウンセリングサービス会社に、おそらく心理有資格者を雇っていない、もしくは資格の有無とは関係なくカウンセラーを雇用している会社があります。

電話でのサービスが主体となっていて(面談もやるようです)クライエントさんは何人ものカウンセラーにまずは無料で申込みをして体験カウンセリングを何人かにやってもらった後、気に入ったカウンセラーとの予約を一回一回取っていくというものです。

さまざまな企業の営業形態を知っていますが、これは実に理にかなった方法です。

つまり、顧客にトライアルをしてもらって、売上げを上げられるスタッフはどんどん企業はそのカウンセラーを中核スタッフとして売り出していけば営業成績は上がるからです。

営業会社というものは、商材といって、売るものは実はなんでもいいわけです。生命保険、インターネット回線契約など一回契約を結んでしまえば長期的な利益が見込めるものが望ましいです。月数千円の買い物をしたつもりになっていても、場合によっては抱き合わせ販売をしたり紹介で新たな顧客を見込めれば数百万円の利益が見込めます。

営業、販売会社は売れる人に売れるテリトリーや売れる商材を与えていけば会社の利益は上がります。そこには理念は必要ありません。営業は数字だけが唯一かつ全ての正義です。

とはいえ「うちのカウンセリングは利益第一主義です」と書いたら誰も申込みはしてこないでしょう。複数のカウンセラーがいるこの会社に雇われているカウンセラーの経歴を見ていると、自分はとても人生どん底の経験をしてきてそこから這い上がるのはとても苦労した、というような経験が書かれていて、それを売りにしているようです。

また、このカウンセリングサービスをクライエントとして利用して、困難を乗り越えた、そうしたらこの会社が数十万円でやっているカウンセリングスクールに通ってカウンセラーとしての資格を取得するという、実に上手な経営者をしているものだと感心しました。

遠隔カウンセリングサービスは場所が不要なのでコストを抑えられます。こういった形態だと業務委託契約でしょうから、労働法に縛られることもありません。

カウンセリングを受けたい人の中にはきちんと教育を受けた専門資格を持っている人がいいと思う人もいるでしょうけれども「耳ざわりかよくて自分のことを賞賛、承認してくれる人が欲しい」という動機でカウンセリングを受ける人も多いです。

そうした場合に、クライエントさんにとっては資格の有無は関係ないのです。治療効果がどうか、エビデンスはどうなっているとクライエントさんに英語論文結果や統計的検定結果を示しても無意味どころか嫌がらせになってしまいます。

2.例:無資格者を雇うクリニック等

臨床心理士や公認心理師を雇えばお金がかかります。最近のクリニックは新設だとどこも内装や雰囲気を重視して心地よい空間を演出しています。開業する時にテナント代の保証金を支払い、レセコンシステムを導入し、精神科、心療内科は歯科等と違って初期投資額は少ないですが、都会になればなるほど過当競争で潰れるクリニックもあると聞いています。

時給千円台としても出費を惜しみたくなるのです。冷静に考えてみると心理専門家がきちんと心理検査をしてカウンセリングを行い「あそこのクリニックはしっかりとしている」という評判が立てば利益も上がりそうなものですが、目先の利益を追っているとそうは行きません。

医師は開業に存亡をかけているので、当初は赤字を覚悟して経営を始め、休院日にはバイトに他の病院に行く院長も多いです。

開業まもなくだと資金繰りが苦しいのです。そしてやすい物件は狭く、カウンセリングルームは確保できません。

他にも色々な例を知っています。フォークロアでナチュラルな雰囲気のクリニックで医師もフランクな服装、医師の娘が臨床心理士になりたかったものの、勉強嫌いなので途中でやめてどこかの民間カウンセリング資格やアロマセラピストとなってふわっとした雰囲気のクリニックの一角で患者さんと雑談しながらアロマオイルの物販をしている、などです。

医師が信念を持ち、臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングよりも食生活アドバイザー、カラーセラピスト、タッチケア、やはりアロマセラピストやホリスティック医学を重視して経営しているクリニックもあります。

まあ、なんと言いましょうか、これらの無資格者は物販と組み合わせれば利益は上がりますし、患者さんもクリニック全体の雰囲気でなんとなく癒しモードが気に入っているのてそれで本人が満足していれば誰も文句はないわけです。

雰囲気カウンセラーがなんとなく治療的なことをしていて治せないというなら問題ですが、医師がきちんと投薬等治療行為をしていれは問題はないわけです。やっていることは保険点数外ですから混合診療にも選定医療になりません。

3.結語

無資格カウンセラーは自らカウンセリング事務所を開業することもあります。有資格者カウンセラーはアセスメントをした後、治療契約を結んで、効果を期待してどんな精神療法をやっていくかインフォームドコンセントを取って、と段階を踏みます。無資格者が「全くあなたの言う通りです。周りに理解してくれる人がいなくて辛かったでしょう」と耳障りのいい言葉を繰り返していればビジネスとして成立してしまいます。

上記の例は多少改変していますが、本質的な部分では大切な視点です。有資格者か自分の地歩を固めるためにはこうした人たちとも同じ土台に上がっていかなければならないこともあります。日々の臨床活動の中でクライエントさんにきちんと望むものも提供できているかは、日々見直さなければならない課題だと思っています。