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photo&lyric by sora (@Skylit_Blue)
この世界は
一握りの醜さと
一雫の美しさで出来ている


◯ 斜陽の臨床心理士資格

手元に、少々古いのですが平成28年7月の「臨床心理士報」(日本臨床心理士資格認定協会発行)があります。古いからこそ公認心理師資格と臨床心理士資格検証の対象になると思って記事にしています。

雑誌記事タイトル
「臨床心理士養成大学院教育の今後のあり方−公認心理師法と附帯決議を踏まえて 公認心理師とは異なる資格として臨床心理士が存在する理由」

内容は割愛します。

僕が注目したのは「資格要件として『臨床心理士』が記載された多様な実践分野(例)の一覧です。

列挙してある公務職員で臨床心理士が資格要件となっているものとして、この記事内では

1.スクールカウンセラー(文部科学省)

2.医療観察法に伴う省令に臨床心理技術者(厚生労働省)

3.保護観察所の社会復帰調整官
(法務省)

4.精神障害者就労サポーターの資格要件(厚生労働省)

5.メンタルヘルスサポート窓口制度
(法務省)

6.心理療法士(臨床心理士)採用
(防衛省)

7.各都道府県の周産期母子医療センター(厚生労働省)

8.新卒支援(労働局)

9.都道府県警察部内に臨床心理士配置
(警察庁)

10.労災精神障害専門調査員(労働局)

11.旅客自動車運送事業運輸規定における適正診断の認定(国土交通省)

12.がん対策基本計画(厚生労働省)

13.精神衛生の対策に「臨床心理士」の求人(海上保安庁)

14.ハーグ条約専門員(児童心理分野)
(外務省)

15.心理調査官(警察庁)

16.役場メンタルヘルス、資格免許職職員(各自治体)

が挙げられています。

さて、それでは実際のところ臨床心理士の独占採用資格職種があるかというと、まず

1.スクールカウンセラーについては公認心理師と臨床心理士が併記されていてどちらの資格ホルダーでも構わないことになっています。

2.医療観察法による臨床心理技術者は、(医療観察法によって精神障害のため刑罰より医療が望ましいと判断された対象者が入院、通院する指定医療機関)臨床心理士に限るという文言はなく、あくまで臨床心理技術者です。

3.社会復帰調整官は、公認心理師も臨床心理士も採用対象です。

4.障害者雇用トータルサポーターという名前での職名になっています。この制度はカウンセリングや事業所に対する働きかけやメンタルヘルス関係の講義も行うのですが、やることが多くて専門性が高い割には日給三千円前後というパート労働です。
https://ogawa-katsumi.com/233g3q4dfg/wp-content/uploads/2020/04/9539d62d90ed1977634b1c7bf78d73f6.pdf
各福祉職や作業療法士、看護師等に並んで臨床心理士に公認心理師も採用条件に入りました。

5.裁判員制度で裁判員のメンタルケアを行うメンタルヘルスサポート窓口制度については、新規採用求人を探すことができず、臨床心理士または精神保健福祉士とパンフレットには書いてありました。待遇等詳細不明です。

6.防衛省の採用案内を見てみましたがこちらも臨床心理士または公認心理師の採用です。各基地などでのカウンセリングを行うようです。

7.周産期医療についてはハイリスク妊婦、精神疾患を持つ妊婦に対するカウンセリングは保険点数がやがて公認心理師のみになります。

8.労働局の新卒支援についても令和元年「第2回今後の若年者雇用に関する研究会」では「公認心理師」に心理カウンセリングを依頼したと書かれていてどうやら臨床心理士から取って代わられた様子です。

9.警察庁でも臨床心理士募集は取りやめて公認心理師になりました。

10.労災精神障害専門調査員
公認心理師法試験ブループリントの「精神障害の労災認定の基準」に関する調査員、現在求人はなく、臨床心理士がカウンセリングを行っています。

11.旅客自動車運送事業運輸規定に基づく適正診断の認定

これは国土交通省が重大事故を起こした営業用自動車(バス・タクシー等)等の運転者や新規採用された者、65歳以上の運転者について性格テスト、適正検査を行いアドバイスをするというもので交通心理学的なのですが臨床心理士または産業カウンセラーが資格要件になっています。求人が掲載されていないので待遇等不明です。

12.がん対策推進基本計画
平成24年に発簡された文書では臨床心理士が緩和ケアを重点的に行うとの記述されていますが、「 がん診療連携拠点病院等の指定要件の見直しに
関する報告書」(がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ)平成30年4月11日

には「緩和ケア・医療心理に携わる者として、公認心理師の資格制度の開始直後であることを踏まえ、原則公認心理師とした上で、一定期間は現行の臨床心理士でも可とすべきである」

との記載があり、無残にも「臨床心理士?まあ今はいいけどいつかは公認心理師独占ね」という扱いです。

13.海上保安庁
健康安全対策専門官職員任期制採用につき「公認心理師又は臨床心理士」となっています。

14.ハーグ条約専門員(児童心理分野)非常勤職員、本条約履行のための事務職で、2013年に募集を終了後、追加募集はないようです。

15.警察庁心理調査官は検索で探せなかったのですが、心理区分採用だと無資格でも可能なのかと思いました。

16.役場メンタルヘルス、資格免許職員は現在のところさまざまな自治体で公認心理師または臨床心理士で行われています。

と改めて検証してみると臨床心理士は惨憺な流れになってきています。

医療保険点数制度を定めている中央社会保険医療協議会(中医協)も公認心理師のみ保険点数算定で公認心理師シフトを進めています。児童思春期カウンセリング、ハイリスク妊婦、リエゾンチーム加算等、各省庁でも公認心理師のみ採用の求人があります。臨床心理士はありません。

福祉保険点数、ストレスチェックテストも公認心理師独占、公認心理師にできて臨床心理士ができないことはあっても臨床心理士だけに権能があって公認心理師にはできないことはない、という流れになってきています。現在は公認心理師シフト過渡期なので公認心理師資格を持つ臨床心理士は心理職として長年働いてきた経験を買われることはあるかもしれません。しかし先々その傾向が続くかどうかについては甚だ疑問に思えてならないのです。