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◯ 公認心理師試験ってナニ?

1.概要
この試験が受験生に何を求めているのかを考察してみます。

毎日コツコツと勉強していると参考書や問題集のページを追うのに必死になってしまうと「公認心理師試験が何を求めているのだろうか?」という大極を見逃してしまったら勉強の指針が立ちにくいだろうと思い、本記事を書いているわけです。初の心理職国家資格、しかし求められているものは臨床心理学だけに終始するものではないもっと幅広いものでした。

このあたりの驚きは(驚かなかった人はいつも学際領域も勉強していた人)ブループリントを見て感じた人が多かったのではないかと思います。

まず、無勉では絶対に点を取れない公認心理師法です。公認心理師というものは何か?心理職の責務は何か?

ということを理解していない人を公認心理師にするわけにはいかないということです。法律というのは、法律家だったとしても条文だけ読んでいて理解できるわけではありません。公認心理師制度を敵視しているかのような(表向き共存共栄と言っていますが)臨床心理士試験作成団体では絶対出ない問題群です。

公認心理師制度は必ず参考書などで補強しておきます。辰已がいいというのは紹介済みです。法律的な思考法とは何かという点でも幅広く役立ちます。また、公認心理師法第3条は改正されて成年被後見人被保佐人ではなく「第1号 心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定める者」となっていることは注意しておいてください。

次に心理学史や基礎心理学、統計です。何のためにこの分野が入っているかというと踏み絵です。医学者は生物学が基礎となっていますが、全く有名でない民間団体の心理カウンセラー資格では、臨床心理学に絞った試験問題をそれなりに質の高いものを作成していて、ちょっと感心したのを思い出しました。

じゃあ公認心理師試験もそうすれば実用的でいいじゃない?と思われそうですが、そうはいきません。心理学を学部、大学院レベルで学んできた人を選抜する試験です。基礎心理学ができなければ臨床ができないわけではありません。基礎心理学で高いレベルの点数を取れる人が臨床が上手なわけでもありません。

つまり基礎心理学は心理学徒としてどれだけの時間を学んで来たかという、いわば踏み絵なのです。ただし、基礎心理学と臨床心理学が全く関係ないというわけではありません。人の知覚や記憶はどうなっているのかということは、それらに困難さを来している人たちを理解するのに役立ちます。

他職種Gルート受験生からかなり面倒と思われるのは統計法や心理学実験法です。これも心理学を学部レベルできちんと学んでいて、修士論文を書いて研究発表や論文を書いていればそれほど困難な問題ではありません。

公認心理師の業務の中には研究活動は法的には入っていないのですが、公認心理師は「科学者-実践家モデル」を重視しています。研究ができない公認心理師は困る、ということでしょう。統計、実験法を含めると公認心理師試験内では5点ぐらいを占めるのではないかと思います。「統計はわからないから捨てる」という声も聞きますが、合格点138点中の5点は3.6パーセントです。「その分事例で巻き返すからいい」といっても事例問題の方が知識問題よりも正答率が低いという、ある予備校の調査結果もあります。133点で不合格になってしまうのか、138点をきちんと取り切るかはこの統計・実験法領域を取れるかどうかに関係しています。公認心理師試験は受験者に計算をさせる問題はこれまで出ていません。尺度とは何か?RCT(ランダム化比較試験のやり方は?)全て暗記問題です。

さて、次に受験生が困難さを感じるのは医学領域です。医師が出題委員の中には多く、医学問題は頻出で、どこから出るのかわかりません。

特に今回は出題範囲を示すブループリントには解剖学まで入っています。解剖学というと手の骨はどうなっているのか?これもわからないから捨てる、となってしまうと医学領域の大事な部分を捨てることになってしまいます。

解剖学には脳・神経系という大切な領域、循環器系、内分泌系、消化器系、呼吸器系といった人体のありとあらゆる働きが含まれています。

「解剖学なんて実際には使わない、脳神経系は心理学には関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、第1回試験ではALS 筋萎縮性側索硬化症の問題が出ていました。全身が弱っていき、運動機能がほぼなくなってしまいますが意識障害はないという大変苦しい疾患で、メンタルケアが重視されています。がんなどの難病対応と解剖学はつながっています。

がんに対する知識は緩和ケアともつながっていて、緩和ケアチーム、訪問看護チームに公認心理師が入ることを想定していて「体の病気はわからないから」では通じないと考えているのてわしょう。脳についてしることはリハビリテーション領域で認知症や高次脳機能障害について知ることにも深く関係しています。

なお、試験が延期になった今、イラスト入りでとてもわかりやすい解剖学書
「解剖生理学 超速!ゴロ勉」永岡書店税込み1620円はイラスト入り、語呂合わせで覚えられるのでかなりのおすすめです。目を通しておいてもいいと思います。医学は臨床心理学とも大きなかかわりがあります。第2回試験では更年期障害が出ました。産婦人科領域は精神医学とかなり近縁領域です。

なぜ医学問題がこれだけ多く出るかというと、医師は主治の医師の指示を公認心理師が優先して考えるべきだという考え方があります。そうすると医学用語を共通言語として持ちうることが求められていくわけです。毎回頻出の抗精神薬の副作用は毎回出ます。カウンセリング中に患者さんが「実は…」と言い出したら医師に報告しなければならないというのは実利的とは思います。

心理検査も山ほど出ます。「他職種Gルートで合格したって心理検査なんかやらないじゃない」確かにそれはその通りです。どの心理検査をどういった人に取って、そのカットオフ値はどの程度か、これは臨床心理学的には大切な視点です。勉強していないと得点は取れません。やはり即戦力となる公認心理師像が試験の中にはありそうです。

医療領域で働く心理職及び周辺の人たちが医療範囲の学習をするのはわかるのですが、なぜ5領域を学ばなければならないのか。特に法律にかかわる部分が学習範囲に入っているのは臨床心理士試験とは違います。老人福祉施設でケアに当たっている公認心理師に少年院の類型は必要なさそうですし、鑑別技官に循環器系の知識は必要なさそうです。

これは前述の踏み絵効果もありますが、職場を変わる心理職にとって、なんの知識が必要なのかはその場面に依存してきます。だから脳神経系の知識がスクールカウンセラーに役立たないとは絶対には言い切れません。

さて、福祉は働いている人たちが心理職の中では比較的多く、責任が重大で長時間労働を強いられる割には賃金が安い職場です。

ただし、臨床心理士や資格がない心理職もこれまで多くいたのが、3福祉士と共同して仕事をしていくのには福祉制度や法律を理解していないと解けない問題が多いです。福祉現場はケースワークがどうしても必要になります。心理職が国家資格となったことで福祉加算が取れる、福祉知識がない心理職は困るということでしょう。

福祉は3障害(身体・知的・精神)、自動、老人にも深くかかわっています。生活保護法もブループリント内に組み込まれていますのでしっかりと確認しておくべきでしょう。

教育については家永先生のチーム学校の理論がもっとも大きな比重を占めていると思いますが、教職試験に出る程度の教育心理学は必要です。

学習心理学等の領域、そして文部科学省で出しているいじめに関するリーフレット、パンフレット、各種通達、法律です。スクールカウンセラーとして働くためには各種障害や合理的配慮、そして教育に関する法律全般の理解が必要になります。教育、児童虐待は福祉とのつながりも大きいので関係法規は必須学習領域になります。

司法では成年後見人制度が脳神経の働きと大きくかかわって来ます。少年でも成人でも依存症の問題や精神疾患はつながりがあります。結果としてどんな処遇になるのかは刑法少年法、医療観察法を理解していないとならないですし、これらの法律は精神疾患の有無とも関係してきます。

産業は公認心理師がストレスチェック分野で働くだけでなく、パワハラ、労働三法、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」「心理的負荷による精神障害の認定基準」を十分に理解しておくことが必要になるでしょう。

どの分野の学習もなんらかの関連性がある領域ということ想定し問題が作られている、特に事例問題にはその傾向があると想定する必要性があると思っています。

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