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◯ エリク・H・エリクソンの8つの発達段階理論

公認心理師試験頻出です。エリク・H・エリクソンErik Homburger Erikson,(1902-1994)はアメリカの精神分析学者、発達心理学者です。

エリクソンは生涯にわたって人間は成長するものとしました。そしてその8つの発達段階において固有の心理社会的な危機psychosocial crisisが訪れ、それを克服することが課題になっています。このような年齢にしたがってそれぞれの発達課題があることはエリクソンの漸成的発達理論 The Epigenetic Chart in Erikson's Theoryとも呼ばれています。

心理的発達段階 psycological development taskを年齢に分けてそれぞれの時期、成功と失敗があり、危機crisisもあります。それを乗り越えられた時に力を得るとされています。エリクソンのモデルによる発達段階理論を見てみます。各段階ごとに力virtureが得られます。

1.乳児期infancy
⑴ 年齢 0〜2歳
⑵ 得られる力
希望(hope)、期待
⑶ 課題
  基本的信頼vs不信感
  trust vs.mistrust
⑷ 対象
  母親
⑸ 疑問
  世界は信じるに足りるものなのか?
・対母親とだけの二者関係、世界に対して、助けてくれるだろう、あるいは誰も助けてくれないだろうという不信感の対立です。疑問としては「誰を信じられるか?」で、この時期に授乳、愛着を得られないと否定的信念を獲得してしまいます。(境界性人格障害はこのあたりから基底欠損が生じているのかもしれません。)

2.幼児前期early childhood
⑴ 年齢2〜4歳
⑵ 得られる力
  意思、意欲will
⑶ 課題
  自律性、自主性vs恥、羞恥心
  autonomy vs shame
⑷ 対象
  両親
 ※ ここで初めて父親が出てきて、3者関係が生じます。
⑸ 疑問
  自分は自分で良いのか?
・幼児前期の課題は、トイレットトレーニング、排泄のコントロールを一人でできるか、更衣を自分でできるかという、自律性にかかわってきます。もちろんこれには失敗することもあるわけで、失敗への不安があるわけすが、ここで成功したら褒められる、失敗しても許されるという感覚があると許されている感覚を身につけて、この時期の課題をクリアできるわけです。

3.幼児後期(遊戯期)play age
⑴ 年齢3歳〜5歳
⑵ 得られる力
  目的意識purpose
⑶ 課題
  自発性(積極性)罪悪感initiative vs .guilt
⑷ 対象
  家族
※ ここで初めて父母以外の家族も対象
 に含まれます。
⑸ 疑問
  自分はさまざまな事柄を行なって動
 いていいのか?
・探索、道具を使用したり芸術的センスを示すようになります。善悪の区別がつかないとルールを破って叱られることを恐れます。エネルギッシュでもあり、子どもらしい自立心もあれば、罰せられるのではないかというおそれも持っています。

4.児童期(学童期)scool age
⑴ 年齢
  5歳〜12歳
⑵ 得られる力
  能力、有能さcompetency
⑶ 課題
  勤勉さ対劣等感
  indstry vs.inferioty
⑷ 対象
  地域及び学校
⑸ 疑問
  さまざまな人々や事物が動いている
 この世界の中で自分はどこまで許さ
 れて成就できるか。
・ 小学生時期で課題や宿題が出ます。勉強の楽しさとともに課題も次々と出ます。この時期に大人が叱り付けてしまうと気力をそがれてしまって劣等感を持ってしまいますので褒めるアドバイスが大切です。

5.青年期adlesence
⑴ 年齢
  13〜22歳
⑵ 得られる力
  忠誠fidelity
⑶ 課題
  同一性対同一性拡散identity vs.identity confusion
⑷ 対象
仲間
⑸ 疑問
自分は何者なのか、何者でいられるのか?
・社会的経験を積んで、学生としての時間を過ごします。また、その中で義務を果たし、力を得ようとします。自分の同一性を確認することができます。

6.初期青年期young adult
⑴ 年齢
  22歳〜39歳
⑵ 得られる力
  愛love
⑶ 課題
  親密性対孤立infancy vs.isolation
⑷ 対象
  友人、パートナー
⑸ 疑問
  自分は愛することができるか?
・この時期は、仕事、恋愛関係、育児など人生にとっては中核的な課題を抱える時期と言ってもいいでしょう。

7.成年期後期(壮年期)adulthood
⑴ 年齢
  40〜64歳
⑵ 得られる力
世話care
⑶ 課題
  ジェネラビリティー(生殖)対停滞
  generativity vs. stagnation
 ※ generativityはエリクソン独自の用
 語です。次世代を育てる能力とも言
 えます。自分の事だけを考えている
 とそれは停滞です。
⑷ 対象
  家族、同僚
⑸ 疑問
  自分の人生を当てにできるか?
・管理職として部下を指導しなければならない立場、あるいは子どもの自立を見守る立場です。

8.老年期(成熟期)mature age
⑴ 年齢
  65歳〜
⑵ 得られる力
  賢さwisdom
⑶ 課題
  自己統合対絶望ego integrity vs.desapiar
⑷ 対象
  人類
⑸ 疑問
  私はこの世にいてよかったのだろう
 か?私は私らしい、いい人生だった
 のだろうか?
・人生の終焉を迎えようとする時にその終了を見据える時期です。エリクソンのころにはサクセスフル・エイジングやエイジング・パラドックスの概念はまだありませんでした。

エリクソンの発達段階概念はその後J.E.マーシャJ.E. Marciaが自我同一性面接という半構造化面接でアイデンティティ・ステータスidentity statusを見出しました。

1.アイデンティティ達成
危機を経験して乗り越えた真剣さを持っています。
2.モラトリアム
 選択肢について迷い努力もして自己決定をしようとしています。
3.早期完了
 目標にぶれがないので完成しているように見えるが硬さがあり過疎性がない。
4.アイデンティティ拡散
 危機の有無にかかわらず主体的な選択ができないでいる。

photo and words by sora
「目をうたがう様な光景こそ心をうたがえ」