◯ 適性処遇交互作用・ストレスチェック・チーム学校・安全配慮義務・リーダーシップ
英語教授の際、言語的知能が高い学習者に文法訳読式の教授法が有効、言語的知能が低い学習者には会話主体のコミュ二カティブな方法が効果的となります。
学習者には様々な適性があります。環境から異なる処遇を与えられた時、適性だけからも処遇だけからもその効果は予測できません。
双方の組合せによる相互作用が効果を示すというのがクロンバックの言う適性処遇交互作用です。
現代教育場面ではどんな適性の対象者についてどんな教授法が適切かという概念となっています。適性というのは知能、性格、認知スタイルなどです。
チーム学校は現任者講習でも多く出てきた用語ですが、文科省の指針として示されているものです。
従来学校は教育専門家の教員がカウンセラーもソーシャルワークもしていたのに対し、きめ細やかな生徒への対応のためにチーム学校で対処するということです。
校長など管理職、教育主幹、教育相談担当者、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療機関などが協働し、チーム学校として機能していかなければならないという、コミュニティ・スクールに関する理念です。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが養護教諭と連携しなければならないと明示されているのも特徴です。また、チーム学校は教員をより教育に専念させるという意味合いもあります。
産業部門です。
ストレスチェック制度は厚生労働省が鳴り物入りで導入し、50人以上の従業員がいる事業所へのストレスチェックを義務付けました。
労働者にとっては受検は義務ではありません。ストレスチェック高得点者は検査実施者(医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師)から直接通知を受けます。
その際、受検者本人から申し出があれば事業所は医師による面談指導を受けさせなければなりません。
ハイリスク者であっても本人の申し出がなければ医師の面談は行われません。面談の結果、本人の業務内容の適正化について事業所は配慮しなければなりません。配置、時短などです。
事業所の衛生委員会がこのストレスチェックテストを依頼、実施者が実施するのですが、テストを実施した後にその結果としての集団分析を事業所に提出します。
ストレスチェックテストを実施したことについては事業所は労働基準監督署にその報告義務があり、これを怠ると罰則規定があります。
僕がストレスチェックテストを実施する企業から聞いたのですが、ハイリスク者でも自分から申し出る人はなかなかいないようです。
実効性に関する懸念もありながら、実際には個人のプライバシーは十分に守られているという担保もあるようです。
産業組織についてメンタル面で問題になるのは労働契約法による安全配慮義務です。公務員は労働三法、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の適用除外を多く受けます。
特に保安関係、警察、消防、海保は災害時に時間を守って働きなさいということでは機能しないので適用除外されます。
しかし、安全配慮義務だけは例外で、労災事故の際には公務員でもその責を問われます。(債務不履行、不法行為による損害賠償請求権、国家賠償法)
官民問わず精神科医からの休業、時短などが記された診断書を守らずに労働者を働かせることは違法です。
ダイバーシティdiversityは、日経連でも平成12年から提唱されている、労働者の多様化についての概念です。
日本人男性をモデルとして労働者を構築すると一元化されすぎてしまいます。男は仕事、女は家庭という固定観念から脱却化させていかなければなりません。
外国人、LGBT、障害があっても特性に応じた働き方をして欲しいということがこのダイバーシティ概念です。
リーダーシップについては、Lewin,K.らの実験により、民主型リーダーシップ、独裁型、放任型の3類型を実施したところ、独裁型は結果は多く生み出したものの不満も多かったということです。
民主型は人間関係がよく、満足度、意欲が高かったということです。
放任型では士気が低く、成果も出なかったとのことです。リーダーシップは三隅二不二のPM理論が有名です。目標達成のためのP機能(performance function)成員凝集のためのM(maintenance function)機能があり、強い機能を大文字で示します。
生産性はPM>P>M>pm
成員のモラール、士気の高さと凝集性はPM>M>P>pmの順になります。
photo by my favorite artist sora
コメント
コメント一覧 (9)
保安官庁とは何を指すか、ネットで検索して調べてもわかりませんでした。
もしかして海上保安庁のことでしょうか?
いずれにしても、労働契約法二十二条「この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない」とあるので説明が不正確ではないかと思います。
コメントありがとうございます。
「保安官庁」でなく「公安職」でした。ご指摘ありがとうございます。本文を書き換えます。公安職は国家公務員としての公安職には、法務教官、刑務官、海上保安官、皇宮護衛官、入国警備官、公安調査官、検察事務官などが、地方公務員には、警察官や消防吏員、となっています。陸上自衛官は国家公務員特別職ですが、労働契約法5条に基づく安全配慮義務に違反したとして国が敗訴しました。
陸上自衛隊事件(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決)
【概要】 陸上自衛隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきたトラックにひかれて
死亡した事例で、国の公務員に対する安全配慮義務を認定した。
というもので、公務員でも労働契約法5条による安全配慮義務違反に問われることがあるということです。
これは法解釈をめぐってかなり論争になったものですが、現行で公務員でも安全配慮義務に違反するような労働をさせてはならないという根拠となっています。
厚生労働省「労働契約法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf
45ページ
労働契約法第22条の規定にかかわらずです。
>陸上自衛官は国家公務員特別職ですが、労働契約法5条に基づく安全配慮義務に違反したとして国が敗訴しました。
これが陸上自衛隊事件(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決)を指すのであれば、そうではなく、そもそもこの自衛隊事件での最高裁判決が安全配慮義務というものを認めた初のケースであり、この判決以降、判例法理としての安全配慮義務が確立したのだと思います。
その後、特に電通事件をきっかけとして、勤労者の精神障害や自殺に関しても使用者の安全配慮義務違反が問われるケースが増加しましたが、安全配慮義務は依然として判例法理のままでした。
しかし、それでは分かりにくいため、改めて明文化したものが労働契約法第5条であると思います。
労働契約法の制定は2008年なので陸上自衛隊事件判決当時には存在せず、したがって、この事件は「労働契約法5条に基づく安全配慮義務に違反したとして国が敗訴」したとはいえないと思います。
この事件では自衛隊員の死亡事故に関して国の債務不履行責任が問われ、その根拠として取り上げられた「安全配慮義務」概念が、その後、判例法理として定着し、それがやがて労働契約法の中で明文化されるに至ったというのが正しい経緯ではないでしょうか?
コメントどうもありがとうございます。
読み直してみたら確かに年代順序が逆でした。ご指摘ありがとうございます。
あと付け加えて言うならば海上自衛隊いじめ自殺によるたちかぜ事案2004年は国家損害賠償法も根拠として適用されていたのではないかと思います。
第1条(公権力の行使)
国(日本国)又は公共団体の公権力の行使に関する損害賠償の責任を定める。
先ほどの陸上自衛隊事件も最高裁判決文には安全配慮義務は明文化されています。
したがってこれに関しても、「公務員でも」というよりも安全配慮義務が認められたのはそもそも公務員(自衛官)に関するケースであり、それを民間の労使関係に関して明文化したのが労働契約法第5条ではないでしょうか?
つまり、公務員の場合は「労働契約法による」ではなく、今も「民法における信義則上の」安全配慮義務と捉えるのが正確ではないかと思います。
>厚生労働省「労働契約法のあらまし」
>https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf
>45ページ
>労働契約法第22条の規定にかかわらずです。
当該ページの【第5条に関する裁判例】は、安全配慮義務とはどのような概念であるのかを示すため、それが判例法理として確立するきっかけとなった陸上自衛隊事件などを紹介したものであり、労働契約法第5条は第22条の規定にかかわらず公務員にも適用されるという意味には読めないと思います。
また、このリーフレットでは、それ以外のページにも、労働契約法第5条は第22条の規定にかかわらず公務員にも適用されるという記載は見当たりませんでした。
以上、細かいことを申し上げて恐縮ですが、産業領域では民間と公務職場で適用される法律が異なることに注意が必要であり、そのため正確なことを知りたいと思っています。
(たとえば他にも、ハラスメントに関する定義も違いがあるのでなかなか面倒くさいと感じます)
こ 確かにこの陸上自衛隊の判例は労働契約法第5条制定上の根拠となった判例と言えます。
ただし、労働契約法も憲民刑の下位法であることに変わりはなく、安全配慮を行わないことによる債務不履行、または債務を履行しなかったことによる不法行為による損害賠償請求権の発生を認めるという意味では民法上の責任は追求されるでしょう。この判例では触れられていませんが使用者としての善管注意義務も発生していると考えられます。
示した厚生労働省リーフレット確かに労働契約法2008年施行前の例が多く掲載されています。
「国の義務は右(国家公務員法62条、防衛庁職員給与法4条以下等)の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたつて、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解すべきである。(中略)国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対しその生命、健康等を保護すべき義務を負つているほかは、いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。けだし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入つた当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠であり、また、国家公務員法93条ないし95条及びこれに基づく国家公務員災害補償法並びに防衛庁職員給与法27条等の災害補償制度も国が公務員に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務が尽くされたとしてもなお発生すべき公務災害に対処するために設けられたものと解されるからである。」これが最高裁判決文です。確かに国の安全配慮義務は労働契約法第5条によるものではないとしてもこの判例が安全配慮義務の根拠となったのだと思います。労働契約法を根拠とするのは確かに無理があったと思いますので本文を書き換えさせていただきます。ご指摘ありがとうございました。
改めて整理すると、次のような理解でよいのだろうと思いました。
労働契約法は民間の労使関係に適用され、その中に安全配慮義務が定められている。そして労働契約法自体は公務員には適用されない。
公務員に関しては、現在、安全配慮義務を明文化した法律は存在しないが、判例法理(最高裁判決は法律と同様の効力をもつ)としての安全配慮義務が、国・地方公共団体が果たすべき義務として認められている。
コメントどうもありがとうございます。公務員、民間職も民法上の債務履行責任や善管注意義務もあり、それが安全配慮義務につながっているというのが僕なりの解釈です。