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※ 図は厚生労働省ホームページ掲載のものです。

◯ 医療観察法・社会復帰調整官

1.承前

医療観察法(正式名称:心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)は、2003年に制定、2005年に施行されました。

2.条文

(目的等)
第一条 この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。
2 この法律による処遇に携わる者は、前項に規定する目的を踏まえ、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならない。

この法律ができた立法経緯としては、刑法39条には

(心神喪失及び心神耗弱)

第39条
心神喪失者の行為は、罰しない。
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

という規定があり、殺人、重大な傷害、強盗、強姦、放火、強制わいせつの他害行為を行った者は精神保健法によって指定医2名以上の診察の結果が

「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」ことで一致すること(29条2項)

で措置入院、あるいは72時間以内の緊急措置入院となったのですが、措置入院でも入院先で症状消退した場合にはすみやかに退院させなければいけません。これは患者の人権を守るべき規定です。

これに対する従来からの批判点は、重罪を犯した患者でもすぐに社会に解き放たれてしまうではないかというものです。

3.立法経緯

2001年、宅間守元死刑囚(執行済)が大阪教育大学附属池田小学校で死者8人、負傷者15人を出した痛ましい事件で世論、立法府が転換点を迎えてこの法律が成立したものです。宅間守が過去に措置入院歴があったこともこの法制定に関係があったでしょう。

4.制度

さて、この医療観察制度ですが、申立権者は検察官です。

こういった重大犯罪を行った者が不起訴や無罪判決を受けた場合には検察官は医療及び観察処分を受けさせるかどうかを鑑定を行う医療機関に入院させ、裁判官と精神保健審判員(精神科医師)で処遇の要否とその内容を決定します。

医療観察法による入院は、どこの病院でも良いというわけではなく医療観察法指定入院医療機関がその受け皿になります。そしてここで法務省保護局に所属する「社会復帰調整官」が入院中から、退院後の円滑な社会復帰のための調整を行います。

また、医療観察処分によって入院ではなく通院となった対象者についても3年間の経過観察が行われます。これも指定通院医療機関によって治療が行われます。犯罪者に対する保護観察とは異なり「精神保健観察」が行われます。

ちなみに厚生労働省統計によると平成31.4月現在入院者723人です。

5.社会復帰調整官

さて、社会復帰調整官ですが、保護観察処を勤務先とします。採用されると同時に専門家としての幹部職員の俸給が支給されます。

社会復帰調整官は法務省では「精神保健福祉士等」となっていますが、精神保健福祉士の資格を有することは最初のアドバンテージ(利点)になります(関東地方更生保護委員会)。

また、精神障害者の保健及び福祉に関する高い専門的知識を有し,かつ,社会福祉士、保健師、看護師、作業療法士、公認心理師若しくは臨床心理士の資格を有すること。

精神保健福祉に関する業務において8年以上の実務経験を有すること。

大学卒業以上の学歴を有すること、又は大学を卒業した者と同等と認められる資格を有すること。この場合において、「大学を卒業した者と同等と認められる資格を有する」者は、平成23年人事院公示第18号の3に該当する者とする。

ただし、どういった人に受験資格があるのかはきちんと受験先に問い合わせた方がいいでしょう。

「公認心理師若しくは臨床心理士」ということで、純粋に心理職としての業務を行ってきた人だけでなく、公認心理師及び他資格所有者、精神保健福祉現場で長く働いてきた公認心理師にも門戸は開かれています。こういった人文科学系公務員採用職場はどこでもそういう傾向がありますが、何の資格を持っていたか、や学閥はなくどんなキャリアを積んできて、これから何ができるかが大切です。

実際地方公務員社会人経験者もそういった人材を募集しています。別に院卒でなくてもキャリアを積んできたという事実があればいいわけです。

さて、法務省の社会復帰調整官の採用パンフレットです。

http://www.moj.go.jp/content/001261334.pdf

まあ宣伝のためのパンフレットだから、と言えばそのとおりなのですが、法務省の心理職採用は矯正局だけでなく、こういった道もあるということです。キャリア採用なので保護観察官とジグザグで転属したり、全国異動があり、行く末は管理職の道も用意されています。

精神疾患患者の犯罪率は一般人と有意に低いという統計が出ています。しかしながら精神疾患を持っている人がひとたび犯罪を起こして入院が長期化してしまうと受け皿がとても難しいでしょう。

精神障害者で犯罪を起こした人の円滑な社会復帰を行うケースワーカーとしての社会復帰調整官はやりがいのある心理職の職場だと思います。