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(注記:本稿は新型コロナウイルスに関する記事ですので抵抗がある方はそのまま読まずに閉じてしまうことをお勧めします。) 以前から日本を代表するトラウマ研究者として僕は精神科医西美也子先生Nishi-Shirakawa-Miyako先生(日本トラウマティック・ストス学会理事)に注目しています。先生の著作「赤ずきんちゃんとオオカミのトラウマ・ケア」(アスク・ヒューマン・ケア 2016)は絵本の体裁を取っていますが、トラウマケアについて大変含蓄がある奥深い示唆のある本です 。

先生が院長をされている「こころとからだ・光の花クリニック」のTwitterアカウントがあります。そこに掲載されていたDr. Ana Gomezの動画がかなり子どものトラウマケアに役立つと思いましたので紹介させていただきます。
 

この動画ではストップ・コロナウイルスで、コロナウイルスが可愛らしいキャラクターで描かれています。全編に歌が流れていて、気持ちの中に訴えかけてくるメロディ、そして幼児の姿があります。

「脳は知っているよ」というフレーズ、リラックスを促し、落ち着くことの大切さ、そして「また大丈夫、気持ちが回復する」というというメッセージが述べられていました。

脅威、怖さ、そしてその怖さは普通であること、こういった際には孤独感、自分が死ぬかもしれない、大切な人をなくすかもさしれない恐怖もあるのだと述べられています。

こういう時に役立つのはハグ、信頼、そして子どものEMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法です。)によく使われるバタフライハグが紹介されています。(ただし、EMDR専門家がついていないバタフライタッピングは好ましくないという見解も強くあることは注記しておきます。)

この動画の最後を締めくくるメッセージです。落ち着いて考えること、世界は安全な場所、全てうまく行く。Sleep and have dreamsです。これは子ども向けの動画のようで、大人にも信じていて欲しい事柄がたくさん含まれています。

「脳は知っているよ」というのは、脳が確かにこの危機場面、についてなにが起きているのか、そして何が起こるのか知っているということでしょう。それは世界の終焉という意味ではないはずです。

この動画を作成したDr. Ana Gomez著「こわかったあの日に」2012年 東京書籍も絵本ですがトラウマ治療を扱っている名著です。

さて、トラウマ治療を受けなければならない人々は命がけです。治療を受けられない=死を意味する場合も本当にあります。そういう意味では治療も大切です。

光の花クリニックでは遠隔治療を行なっていますし、トラウマ関係のワークショップもまたオンラインで行なっています。世界中の子どものトラウマケアを行う団体はこの新型コロナウイルスCOVID-19対策を熱心に行っています。

例えばEMDREUROPEでは、
(英文)

ニュースソースの信頼性を確認すること、ニュースに暴露されすぎないこと、医療システムが示す衛生概念に従うこと、いつもと同じでいること、運動、休息、食事の大切さについて書いてあります。(意訳)

3.11の時も津波の映像を見て気持ち悪くなる人たちが続出したように、COVID-19のショッキングなニュースに触れ続けることは大人にも子どもにも危険なことです。

情報が正確になければ不安になるのは本当のことですし、そのために厚生労働省の正確なニュース源を参照するのは悪いことではありません。しかしその暴露時間は長ければ不安を、特に子どもには悪影響を与えます。

大人がCOVID-19について子どもにどんな情報、そしてどんな心理的な支援を行うかは大切なことです。大人が「不安だ、この世は終わりだ」というような破局的なメッセージを伝え続け、いろんなものを買い占めて家の中に積んでおいたら子どもはいったい何を感じるでしょうか?

患者さんはさまざまな事を感じながらこの世界の中を生きています。衝撃的な事を人生の中で体験し過ぎている人はもう何も感じないかもしれません。それは回避-麻痺のトラウマティックな状態なので好ましくありません。

または(精神に限らないのですが)ベースライン疾患を持っている人はこの状態で自分の病気と世界の状態の2つに怯えているかもしれません。

この記事を読んでいて、自ら恐怖をどうにもできないぐらいコントロール不能だと感じた人は<b>助けを誰かに求めてください。</b>それはトラウマケアの専門家であれば望ましいのですが、メンタルヘルス専門家、そうでなくともあなたが信頼できる先生、家族、同僚、上司、誰でもいいのです。

Vive hodie.(Latlne)
今日を生きよ

僕らの生きている世界は決して崩壊しない。だから明日を信じていたいです。byひなた
※ 写真はフォロワーのsoraさんのものを使わせていただきました。