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◯ 公認心理師・臨床心理士は「先生」なのか?

心理の仕事をしていると「先生」と呼ばれることがあります。患者さんにとっては、自分の話を専門家が聞いてくれる相手は「先生」なのでしょう。医療関係者で「先生」と呼ばれるのは、医師、心理士(師)、理学療法士、作業療法士、あんま針灸マッサージ師です。小さなクリニックだと院長の性格にもよるのですが、心理職を先生扱いする(からといって給料が高いとは限らない)医師もいれば、医師のみが先生なんだという態度で接してくる医師もいます。

医療現場だと心理職は精神保健福祉士や社会福祉司と同じぐらいの待遇のことが多いですが、精神保険福祉士は「先生」と呼ばれると「いいえ、違います」と言います。デイケア心理職は患者さんと同じ目線でないと難しいので心理職もさん付けでしょう。

ちなみに薬剤師は医療ヒエラルキーの上では第3位、医師>>歯科医師>>>>薬剤師ぐらい?の感じです。薬剤師は高い専門性と長時間労働に耐えて勉強を欠かさず、笑顔で接客?しています。新卒の若い人でもすごいなあと思います。

薬剤師は調剤薬局だと年収700万〜800万、理系で医学部と同科目で受験しているので医学部崩れの屈折した人も中にはいますが、憧れの薬剤師を最初から目指していた人は誇りを持って仕事をしています。薬剤師は勉強が欠かせませんし、患者さんにとってもそうでないと困る非常に専門性が高い仕事です。研究会、勉強会では薬剤師はお互いを「先生」と呼んでいます。

教育現場だと子どもにとっては大人は誰でも先生なので、給食のおばちゃんも用務員さんも「先生」で、実際そういった現業職の方が子どもの心をつかんでいることもあります。僕はスクールカウンセラーとして働き始めた時に「先生」と呼ばれてびっくりしました。

司法関係だと家裁調査官は庁内ではお互いにさん付け、少年保護者、家事当事者からもさん付けです。少年院経験者の少年や保護者は「先生」と呼ぶことが多いです。鑑別技官、法務教官を先生と呼んでいるからでしょうか。家裁調査官はお互いを「先生」と呼び合うことは決してありません。主任調査官まではさん付け、次席からは役職で呼びます。

裁判所は調停委員のみが堂々と「先生」の地位を獲得していて、
調停に調査官が立会すると調停委員から先生と呼ばれることはあります。

裁判所は法曹がスター、どんなに小さな裁判所支部の簡易裁判所裁判官(カンパン)でも赤じゅうたん、調査官は総合職といっても異質の人文科学職なので先生扱いをお互いにしたり、あるいはそういう現場を見られたら書記官、事務官から猛反発されます。裁判官は割と大らかな裁判官も多く「調査官の先生の試験観察を受けてね」と少年審判で言う場合も多いです。

また、保護観察官は保護司の「先生」たちを束ねているので、そういった意味では「スーパー先生」です。

福祉現場だと児童福祉司は相談にいろいろと乗ることが多いので児童保護者から先生と呼ばれます。社会養護施設でも先生、小さな施設だとさん付け、老人施設だとさん付け、就労支援施設も利用者さんとスタッフを大きく差別化したらお互いに気まずいでしょう。だから「さん」付けです。

これから公認心理師を目指す大学生、高校生のみなさんにはぜひ知っておいていただきたいところですが、精神科医の成田善弘先生が書いておられたように「先生がいるおかげで僕は生きていられます」と言われて鼻高々な思いをしたらとても危ないことです。

なぜならば「先生がいなくなったら死んでやる」という裏のメッセージを含んでいるからです。心理職の仕事では「今日は話を聞いてもらって全てすっかり良くなりました。助けていただいてありがとうございます」と言われることはまずありません。

そんな風に言えるような心にゆとりがある患者さんはいませんし、もしいたとしたらその人は初めからカウンセリングを必要としない、とても健康度が高い人かもしれません。

心理職は泊まり勤務がある看護師よりも給与は安いです。医療職ヒエラルキーの中で診療放射線技師と臨床検査技師と心理職のどちらの方が高い地位なのか聞かれても僕にはわかりません。

先生と呼ばれたいから心理職になる、これは違うような気がします。院卒なので努力してきたことはよくわかりますし、医学博士や教育学博士を持っていて大学で非常勤で教えている人もいますがそれはクライエントさんには関係ないことです。

心理職はきちんと人の話が聞けて、その人が得意としている流派で検査やカウンセリングができればそれで十分だと僕は思ってしまいます。

クライエントさんは自分のことで必死です。心理職のプライドにかかずらわっている心の余裕はありません。それが当然です。

僕なんぞはただの匿名ブロガーで、時たま読者の方から先生と言われると、とても違う気がします。実はアルバイトをクビになり毎日スーツで出勤している振りをして公園で泣きながらWikipediaと◯ちゃんねるで心理学の知識を調べながら毎日どうでもいいことを書き連ねている人です。だから花の写真が多く撮れるのです。と言ったら毎日読んでいただいている総読者12人の9割方の人、10.8人が「ああそうか、だからこいつはどうでもいい文章ばかりかいているんだな。もうやめよう。」「か可哀想だからまあ読んでやるか」と納得してくれるかもしれません。

毎日毎日クライエントさんの苦しい話を聞いて身を削りながら仕事をして、コメントやメッセージをいただくこともある心理職の方々に対して頭が下がる思いでいます。患者様にも高校生大学生さんも僕の拙い文章を読んでいただいていつも感謝しています。この場を借りてお礼をさせていただきます。