
◯ 揺らぐスクールカウンセラー体制
さて、色々な自治体がスクールカウンセラーの募集要領に、以前は任用資格の中に臨床心理士かトップでしたが、今年度募集要領から、公認心理師がトップになりました。そのため、スクールカウンセラー採用有資格者数が跳ね上がったことは想像に難くありません。
それでは公認心理師と臨床心理士の両資格を持っている人が採用に有利かというと、どうも全然そういうことはない事態になって来ているようです。
教員経験者、教育相談経験者で現場経験が長い人たちが優先的に採用されているのではないか?と思うのです。
大都市やその周辺の自治体だと毎年採用試験を行って、そこで採否を決めます。自治体によっては応募者の中から「A中学校のスクールカウンセラーやってくれません?」と直接電話でハンティングされるという、書類審査だけのところもあります。
今回、今までスクールカウンセラーを毎年受験して合格し続けていた人が落ちているのを散見します。試験ですから公正に行った、と言われればそれだけですが、果たしてそれだけでしょうか。
スクールカウンセラー採用のパイは少子化の影響で、増えることはないでしょう。ところが公認心理師が一気に増えました。ここから先は僕の想像、というか邪推になってしまうのですが、とある自治体ではスクールカウンセラーが週一行くほかに◯◯相談員として学校から相談業務に興味がある相談員を雇用していました。
時給千円行かなかったぐらいの待遇で、「スクールカウンセラーは時給か高くていいわねえ」と何十回言われたかわかりません。
中学校教員は朝早く夜遅く土日もなく、大変ハードです。そこで途中で学校を退職して◯◯相談員として残る人もいます。
子どもが好きというのは素晴らしいことです。そして学校教員時のは年々採用試験が難化していて、僕がスクールカウンセラーとして働いていた時の教員たちはもれなく頭がいい人たちでした。教員経験者、現役教員でも公認心理師取得した方々は多かったでしょう。
臨床心理士として他の日は老健施設で働いていますとか、女性の職業観とアイデンティティの研究をしていますとか、採用する側の学校にとってはで、それが一体なんなの?と思われてしまう可能性が高いです。
かつて某自治体では臨床心理士半分、ヤメ教員半分のスクールカウンセラーの募集を行っていました。ヤメ校長がスクールカウンセラーの大半を占めていて、自分が元いた勤務校に配置してされ、誰も相談にこなかったとか。
そりゃそうでしょう。一日中カウンセラー室にこもってお茶を飲んでいるのではなく、スクールカウンセラーはフットワーク軽くきちんと学校のニーズを聞き出し、家庭訪問に何度も行って、特別支援学級や不登校支援学級に行って、不登校支援学校や教育相談相談所にも行って、つなぐという、僕のイメージはそんなものです。
(異論は認めます。)
スクールカウンセラーはその「外部性」が大事だと文部科学省も何度も言い続けてきました。外部の専門家がチーム学校(という概念はキライですが仕方ない)の中で管理職が仕事をしやすく補助するというものです。
ところが公認心理師を今回取得した中にはヤメ教員やヤメ校長、無資格だった教育相談経験者も相当数いるのではないのかな?と思うのです。
採用試験を行う側では「◯◯さん、一生懸命やってるけど資格がなくてお給料安くて大変だなあ」とか「あ、元校長の△△先生だ、これは絶対に落とせないなあ」「この前まで一緒に仕事してた@先生だな」人間、人情があるのでどうしても知り合いに肩入れしがちなものです。
子どもたちから「どうやったらスクールカウンセラーになれるの?」と聞かれてそれはそれで嬉しかったのを覚えていますが「えっと、まず教員採用試験に受かって20年ぐらいやってから退職して」というような夢をぶち壊すようなことは言えません。
今の学部生でも院生でもスクールカウンセラーになりたい、という人たちが多いのは知っていますが「ちょっと待って、その選択は正しいの?」と思ってしまいます。
中高生でスクールカウンセラーを目指したい人の夢を壊すのも忍びないのですが、公認心理師制度導入によって、スクールカウンセラーの「外部性」はまた再び揺らいでいるように感じています。
校長、教頭、主幹などの管理職が心理の専門家としてのスクールカウンセラーから専門的意見を聴取してそれを学校運営に役立てるのであればそれはチーム学校に役立つのでしょうけれども、そこでねじれを起こしてヤメ校長あたりが現校長に批判的な態度を心理学的な見解を混ぜながら言うと外部性も内部性もごちゃごちゃになります。
このあたりは大変難しい問題です。公認心理師資格を持った教育現場経験者が外部性を絶対に持てないわけではありません。そしてこのスクールカウンセラーの外部性は教育現場からの批判にさらされ続けてきました。「心理の見方は現場を知らない」「スクールカウンセラーは全部子どもの相談を秘密にして甘やかしているだけ」
僕が勤務した某中学では子どもは昼休みだろうが放課後だろうがスクールカウンセラーに相談する時には担任の許可を得て、スクールカウンセラーはその相談結果をレポートにしてまとめなさいと言われて息が詰まる思いをしました。
まあそこは極端で、ほぼほぼ全ての学校ではとても楽しく仕事をさせてもらっていました。学校は集団守秘義務があるから子どもの話したことをきちんとチーム学校では連携して共有しなさいというのがスクールカウンセリングの建前です。
そのためにスクールカウンセラーにしか話したことがない事実がだだ漏れになり児童生徒が二度とカウンセリングに来なくなることも今でも事実として多々あります。これから外部性が揺らいでいくと学校のカウンセリング体制はどうなるのか、大元の文部科学省にも各自治体に対し、教育経験者を雇ってはいけないとは言いませんが、どうやったら外部性を担保できるのか、チーム学校のあり方を見直してみたら?と思うのです。(公認心理師試験ではそういう考え方をしてはいけません。)
コメント
コメント一覧 (4)
私にとって、ですが興味深いテーマの内容を関心を持って拝読しました。
今更ですが、スクールカウンセラーとはなんぞや?と思っています。やはり学校内にカウンセリングは必要がなく、相談士や、ワーカーといった形が望まれているように感じます。
公認心理師が導入されたことで、SCは完全に学校側のメンバーになるのだと感じています。
そもそもなんですが、評価体制自体にも課題があります。SC評価は学校側しかしません、
利用者である生徒や保護者の評価はありません。
こうなるとSCは当たり前ですが、学校側を向いて仕事している方に評価はあがると思います。そして給与は誰が支払っているのか=それは自治体の教育委員会でしょう。となるとやはり本来のクライアントは学校になるのでしょうか?
公認心理師が大きく影響されるのが学校SCだと思います。医療や司法、福祉ではやはり専門知識やスキルがないと、素人でも難しいことがわかると思います。
しかし、学校SCにおいては、心理検査は絶対必要ではありませんし、カウンセリングよりも話を親身に聞いてくれる方であればそれとなく、こなしてはいけそうです。
=一般的な見方としてです。
公認心理師資格自体に疑念を私は抱いているのか、SC自体のあり方の変化について戸惑いがあるのか、まだ答えがでていません。
SCの活用については管理職も研修を受けて来て、カウンセリングの重要性について教育を受けていることは間違いないのですが、
SCがカウンセリングをやった→現場に効果があった
というのが何よりのプラスのフィードバックであり、それに付随して生徒保護者の満足度が上がると感じています。チーム学校概念である限りそれは外せません。スクールカウンセラーとして上手に仕事を切り回していける能力は「SCカウンセリング能力」としか呼べないものになっているとも思います。貴重な問題提起ありがとうございます。
温かい、力強い返信ありがとうございます。
SCに必要な能力はSCで居続けること、ですか。深い。
自分の臨床姿勢を振り返りながら、何が利用者にとって必要かつ効果的なのかをまだまだ考えていきたいと思います。
いつも沢山の情報をありがとうございます。
こちらこそ真摯なコメントをいつもありがとうございます。SCは組織臨床のようで大変なところもありますが、子どもや保護者からも慕われ、頼りにされることもあるやりがいのある仕事です。組織の意向とクライエントさんのニーズに答えることを両立させるという奥深さがあります。