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◯ 公認心理師としての職責の自覚

公認心理師法を再掲しながら考察を加えます。

このブログでは何回も公認心理師法を取り上げていますが切り口を変えて解釈をしてみます。

(目的)

第一条 この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。

※ 「要心理支援者」やその家族だけでなく、対象は国民です。
国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とします。

また、体の健康は公認心理師の職責の中に含まれていないことにも要注意です。

法第二条も再掲します。

(定義)

第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

※ 第二条で注意すべきポイントがいくつかあります。

第一号 現任者者テキストにも強調された記載があり、この試験のキモともなる概念で、「ウェルビーイング」があります。

第一号で心理状態のアセスメントをする際には、要心理支援者のウェルビーイングを見据えてそれを目標にしていかなければならないと解釈されるでしょう。

※ ウェルビーイング(well-being)とは、個人の人権の尊重を前提に自己実現の促進を目的とした積極的でより権利性の強い意味合いを含んだものとして理解されている。1946〔昭和21〕年世界保健機構(WHO)憲章前文にも 登場しており、「安寧」「良好な状態」「福祉」などと訳し用いてきました。

満足して充実していて生産的な状態の人生、その状態にあることと言い換えてもいいでしょう。

以上厚生労働省資料
ソーシャルワークに対する期待について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000150799.pdf

第二号 要心理支援者の相談に応じる、助言を行うだけでなく「指示」を行うことも業務です。
現任者テキストで指摘されているのは、ここで要心理支援者のエンパワーメントを行うということです。

第三号 公認心理師は関係者に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと、とあるので要心理支援者の家族も範囲となります。

第四号 地域で活動する公認心理師の心理教育的啓蒙活動、地域で「多職種連携」(この言葉も重要性があると思われます。)が要心理支援者への支援につながるでしょう。

四章 義務等

(信用失墜行為の禁止)

第四十条 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

信用失墜行為に関する刑事罰はないのですが、登録取消、名称使用停止を必要的取消事項として文部科学大臣及び厚生労働大臣が取り消さなければならないことを理解しておかなければなりません。

また、公認心理師としての信用失墜行為とは別に、一般刑法典や特別刑法上で禁錮以上の刑に処せられる、他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ」
(第三条二号 第三条第三号)
るような信用失墜行為を行った場合には

やはり必要的取消の対象になります。

この必要的取消しは、第三十二条第1項に規定された第三条(欠格事由)についてのみでなく、第三十二条第1項第二号に該当した場合も取消しの対象となります。

自動車運転に酒気帯びの法定罰則があるのはご存知のことですが、自転車飲酒運転でも5年以下の懲役、100万円以下の罰金があります。

第三条 再掲

(欠格事由)

第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。

× (廃止)一 成年被後見人又は被保佐人

 二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者

 三 この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者

 四 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

(登録の取消し等)

第三十二条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。

 一 第三条各号(第四号を除
く。)のいずれかに該当するに至った場合

 二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。

※ 虚偽又は不正の事実というのは、経歴、教育、勤務先詐称を行った場合はやはり必要的取消し事項に該当するということです。

復習ですが

第四十条は (信用失墜行為の禁止)

第四十一条は (秘密保持義務)
※ 公認心理師でなくなった後も一生守秘義務はあります。

(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない(第1項)

連携とは、多職種連携、地域連携、チーム医療、チーム学校が含まれます。

第四十二条第2項は(連携)
主治の医師の指示を受けない、受ける義務を懈怠する、反するといった行為が予想されます。

なお、精神保健福祉士は「指導」を受けるのですが、公認心理師は指示を受けます。

さて、主治の医師の指示の内容ですが、常に受けなければならないとするならば主治の医師の手間がおそろしく煩雑になるでしょう。

事前に「こんな方針で」と言われていたのならともかく、多くの心理職は複数の技法でカウンセリングをしています。

要心理支援者に来談者中心療法で接していたら、なかなか話が進まないので認知行動療法に途中で切り替えた、ということにまで主治の医師の指示は不要と僕は考えます。

保健師助産師看護師法「略称(保助看法)は

第五条 看護師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する『療養上の世話』又は『診療の補助』を行うことを業とする者

とされていますが、公認心理師にはその規定はありません。

公認心理師は診療補助職という明文の規定はありません。(ただし、医療機関であればコメディカル、チーム医療の一員となるでしょう)

同じく診療補助職としては歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士があります。
(これについては多くの論議がありましたが、現在の立法やガイドラインではこのようになっています。)

公認心理師の職域がかなり厳しい目でとらえられていることはわかるでしょう。

平成 30 年 5 月 19 日

公認心理師法第 42 条第 2 項に係る主治の医師の指示に関する運用基準についての見解

公益社団法人 日本精神神経学会 理事長 神庭 重信

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/shinri_kenkai20180519.pdf

※なお、「罰則」と「行政処分」は異なります。
上に述べた条文の中で罰則規定があるのは秘密保持義務だけです。

行政処分は取消し処分や名称使用禁止処分がこれに当たります。

個人情報保護法5法はブループリントにも記載されているので、ここで法律について列記しておきます。

個人情報保護法

行政機関個人情報保護法

独立法人等個人情報保護法

情報公開・個人情報保護審査会設置法

整備法


※ 個人情報には生存する個人の生年月日、住所、電話番号、犯歴
、病歴、メールアドレスが含まれるのはわかると思います。(要保護個人情報)

個人情報保護法に違反した場合には改善命令があったにもかかわらず改善がなされない場合には罰則があり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

過去の個人情報流出の判例は民事賠償もかなり厳しいものです。

注意して欲しいのは、個人情報は実に幅広い概念だということです。

例えば名刺を1枚もらったとしてそれをポケットにでも入れておけば、名刺1枚なのですが、名刺がたくさん机の中に散らばっている、名刺を分けてホルダーに仕舞う、データベース化する等は、個人が特定される情報の集積なので個人情報に当たります。

ただし、この個人情報も公認心理師の秘密保持と同様、生死に関わる場合や虐待、DVの通告、捜査機関への協力や裁判所からの依頼等は保護の範囲から外されます。