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◯ PTSDと脳科学

PTSDによってダメージを受けるのは扁桃体です。

扁桃体や海馬が萎縮して重量が軽くなることが指摘されています。

脳由来栄養因子BDNFも減少します。

最新研究ではメマンチンという認知症薬がPTSDに効果的なことが知られつつあります。

PTSD機序や治療については以下の書跡も詳しいです。


◯ PTSDの治療

PTSDの治療は、何の療法でもよく効いて反応すると言われていますが、PTSDに特化した治療法としては認知行動療法の中で持続エクスポージャー法(prolonged exposure)PEが著効があるとされています。

統計的なエビデンスは十分にあるのですが、PEは治療の際のセッションのテープを毎日1時間ずつ聞かなければならないというハードなホームワークがあるので脱落例も多いです。

また、PTSD治療のために開発されたEMDR
Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法
はフランシーン・シャピロによって創始された技法ですが、トラウマティックな出来事への曝露はPEに比べて少なく、PTSDに対して比較的安全な技法です。

眼球運動を左右に行う、音を聴くなど両側性刺激を行いながらトラウマについて処理するというもので、精神分析から認知行動療法までの幅広い精神療法のエッセンスを使っています。

日本EMDR学会
https://www.emdr.jp/

BSPやその他ソマティックなワーク(EBMでない、ナラティブセラピーもPTSDには有効です。)

PTSDの薬物療法ではSSRI、パキシルの使用が第1選択肢として教科書では考えられていますが、実際には定型非定形精神病薬や、解離を伴わないPTSDにはベンゾジアゼピン系抗不安薬、ムードスタビライザーなどのあらゆる薬が使われています。

◯ 解離症群
解離とは、意識・注意・認知(行動)機能の一過性変容で意識・記憶・同一性・情動・知覚・身体表象、運動制御・行動の正常な制御が破綻、不連続となる病態(現任者講習テキスト)。

解離性同一性障害は2つ以上のパーソナリティが出現するという部分で、旧来多重人格障害(multiple personality disorder)、解離性健忘ですが、どうやってそこにたどり着いたかわからない、見覚えない服を着ていた、見ず知らずの人に会ったら別の名前で呼ばれた、などの健忘状態とその間にしたこと。

それから、事物と自分を薄いヴェールのようなものが隔てていて現実感がなく、離人感があるという出来事があげられます。

解離性健忘は一部の場合もあれば、生活全般にわたる全健忘の場合にはもあります。

多重人格の場合には第2人格が何年も主人格として入れ替わっている場合もあります。

統合失調症、てんかんや睡眠行動障害などとの鑑別が必要です。

特に精神病性混迷は解離性混迷と峻別が困難です。

このような解離が始まった作用機序について考えてみると、例えば性被害に遭った女性が被害体験の記憶を別人格に移しておかないと生々し過ぎて自殺してしまう可能性さえあります。

PTSDと解離はとても近い機序があります。

精神病と神経症の境目として研究が始まった境界性パーソナリティ障害も一過性の精神病様状態の間に解離を起こすことがあります。

また、拘禁症候群としてよく知られるGanser症候群は、知覚の過敏、脱しつつということでカタレプシー緊張状態から、固まってしまいます。

逮捕拘禁でよくGanser症候群は起こります。

解離性感覚障害、解離性運動障害では声が出て出なくなる失声やヒステリー性盲もあります。

現任者講習テキストに書かれていて?と思ったのは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が治療に使われるとありますが、ベンゾジアゼピン系の投薬は解離を促進させるので禁忌とされています。

実際はSSRIや非定形精神病薬ではないかと思いました。

解離とベンゾジアゼピン系使用について 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=28

◯ 身体症状群

ICDでは身体表現性障害と言われていますが、身体化障害、心身症、転換性障害(ヒステリー)、機能性身体症候群 Functional somatic syndromes, FSSでは、身体と精神とが一体となって症状が生じていて、線維筋痛症FM、Fibromyalgia慢性疲労症候群CFS、Chronic Fatigue Syndrome CFSとFMの合併症などが含まれます。

※ この辺りは身体症状群の中でもかなり重篤なFM繊維筋痛症の扱いが曖昧なので、単独疾患として繊維筋痛症をDSMやICDの中で独立したさせるか、身体疾患での治療の困難な難病としての扱いがいいとも思います。

繊維筋痛症は確かに多くの抗うつ剤や認知行動療法が効きますが、だから精神疾患に間違いないという原因論にたどり着くのは危険な気がします。

ただし、近年多くの心理職が整形外科で働くようになってきている実績のあるからは、痛みを緩和させるカウンセリングが定着することが望まれるでしょう。

「身体症状症は5パーセントの有病率で、症状改善を希求、未発見の疾病があるのではないかという心気症、慢性化覚醒が原因の身体感覚への閾値低下、そして身体内部感覚増強、不安による症状へのとらわれ、身体感覚内部の消失を目標とした過ちが病態を構成している。病態説明と「気のせいではない」という保証を行う必要がある。リラクセーション教示など身体的アプローチも実行できる必要性がある。」(現任者テキスト)

◯ 摂食障害

神経性やせ症AN anorexia nervosa
神経性過食症BN Bulimia nervosa
特定不能EDNOS Eating disorder not otherwise specified

日本ではAN125,00人
BN 6,500人
EDNOS 4,200人

男女比1:10

過食は自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤濫用で排出型があります。

やせ症、拒食の場合には生理が止まります。飢餓、低血糖、電解質異常(食べ吐きはカリウムが不足、胃酸で歯のエナメル質が融解します。)、肝機能、消化器、循環器障害を誘発します。

DSM-5によるAN重症度判定は

軽度:BMI≧17.6kg/㎡
中等度:BMI16〜16.99/㎡
重度:BMI15〜15.99kg/㎡
最重度:BMI<15kg/㎡

入院、死亡に至る場合も多く、拒食の死亡率10パーセント、食べ吐きは体内栄養バランスが大幅に狂うので18パーセントという統計があります。

自己の身体イメージに対する不快な意識を常に抱いていることから、自ら命を断つ、あるいは身体が生き延びることができなくなり死に至る例も多いです。