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◯ 新型コロナウイルスはパンデミックと言えるのか?

臨床心理学から少し離れたようで実は密接に関係があることを書いてみました。

日本における新型コロナウイルス感染者は
「1.国内の状況について2月25日12:00現在、139例の患者、16例の無症状病原体保有者、陽性確定例1例が確認されている。」厚生労働省発表となってています。

なおWHOによるパンデミック(爆発的感染)の定義はヒト-ヒト感染をしてそれが持続的に続いていることです。この新型コロナウイルスはパンデミックと言えるのでしょうか?

国外発生状況について言えば中国が一番多く75,465人、死者2,236人となっているほか、韓国が次いで感染者が多く104人うち死者1人となっています。世界中で中国以外では1桁〜2桁台の感染者、台湾、香港など中国から近い地域も併せて死者は8人です。(2020年2月21日厚生労働省発表)

WHO定義によれば「より大きな(一つあるいは複数の)集団(クラスター)が見られるが、ヒトーヒト感染は依然限定的で、ウイルスはヒトへの適合を高めているが、まだ完全に感染伝播力を獲得していない(著しいパンデミックリスクを有していない)と考えられる。」

上記がパンデミック寸前のWHOフェーズ5となります。

日本は集団感染コロニーが見受けられるのかというとそこには疑問がありますが、多くの人々はWHOフェーズ6「パンデミック期:一般のヒト社会の中で感染が増加し、持続している。」と日本国内の中でもとらえているかもしれません。フェーズ5はまだ予防段階、フェーズ6になって初めてパンデミックと定義されます。

さて、人々はこの状態についてすでにパンデミックやその直前のフェーズ5ととらえているかもしれませんが、2月20日現在での 日本渡航医学会 産業保健委員会 日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会では今の状態をフェーズ3と結論づけています。

https://plaza.umin.ac.jp/jstah/pdf/coronavirus03.pdf

すなわち、国内発症早期、重症患者治療、予防対策段階ということです。これから広がるだろうという予測は予測に過ぎず、新型コロナウイルスよりもはるかに致死率が高く(9パーセント)にもかかわらずSARSは日本国内に上陸しなかったことから海の向こうの話でした。

エボラ出血熱は「恐ろしいアフリカの病気だな」と他人事だったのがおそらく一般的な日本人の反応だったでしょう。死亡率は20〜90パーセント、平均50パーセント。そして治療法が確立しておらず、輸液や呼吸管理でしか対症療法ができなかったにもかかわらず回復者はいるのです。

さらに、日本では鳥インフルエンザ早期対策で保菌ニワトリの大量処分をしたことがあります。「そこまでやるの?」と思ったかもしれないのですが鳥インフルエンザの致死率は63パーセントとかなりの高率です。水際作戦で日本への大流行は差し止められたのです。

さて、ニュースを見ていると日本での感染者数が多くなったことについて政権への批判が確かにあります。厚生労働省は無為無策ではいられませんので頻繁に記者会見を開いています。

次々と国内の多くのイベントが中止され、東京オリンピックは5月をめどに中止するかどうかを判断するとも言われているのです。厚生労働省は多く人が集まるイベントは注意を要する、しかし禁じるものではないという内容の声明を発表しています。

以下テレ朝ニュースから引用します。

アメリカのCDC(疾病対策センター)は、感染が広がる新型コロナウイルスについて「世界的なパンデミックに近付いている」という懸念を示しました。

CDCによりますと、新型コロナウイルスについて、死者が出ていることとヒトからヒトへの感染が続いていることがパンデミックと判断する2つの基準を満たしているということです。

(引用終わり)

さまざまな錯綜する情報の中で、社会心理学的に言えば「伝染性疾患」という事実はあるのですが、「流言、デマ」の広い伝播に似ています。命にかかわるもの、そしてこの新型コロナウイルスについてはどこまで感染力が強いのかわかりにくい(強いという学者もいます)。

そして何よりも情報不足、情報が足りないと人々は感じ、不安が高まっていることに加えて治療法やワクチンが開発されていないことがさらに不安が煽られていきます。ショッキングで最悪の事実を想定した情報の方が広がりやすいのです。そうするとSNSではセンセーショナルな意見が広がります。そして政府や行政はマスコミを通じて「騒がないように。安全だから。」

と言いたくても安全の保証が何もできないことが相当数の人々をさらに不安に陥れているわけです。死亡率は2パーセントと言われていますが中国では3パーセント強です。

確かに死亡率は現在のインフルエンザより高いです。ところが1918年のインフルエンザ、スペイン風邪の世界的大流行では当時の日本人数5400万人のうち半数が感染しました。1〜2パーセントの死亡率でした。当時の衛生観念や栄養状態は当然影響していたでしょう。

今回の感染症で重症化が懸念されるのは高齢者や抵抗力が弱っている基礎疾患がベースラインにある人々で、そういう人たちが入所している施設は気が気ではないということはわかります。

また、上に述べた理由から人々は破局的な認知を追い求めます。「日本はパンデミックになるに違いない。いやもうなっている」「この騒ぎはあと5年後も続くだろうしもっとひどくなる」というのは絶対に否定はできないもののその認知の確実性については疑問が大きいです。

もちろん大病院から中小でも病床がある病院はすでに受け入れ態勢が始まっています。(とある有名美容整形外科医がうちに波及したらかなわんという趣旨のツイートをしていて非常に腹ただしかったです。)

今WHOフェーズで3ということは、政府厚生労働省を含む世間の大騒動(と見えます)にかかわらず、これからフェーズが進む可能性もあれば収束に向かっていく可能性もあり、誰もその行く先について何も言えない段階だということです。実際対症療法だけで良くなり隔離が必要なくなった人は新型コロナウイルスでもSARSでもエボラ出血熱でもいるのです。

ですので必ず破滅するだろう、という認知は現段階では歪んでいます。医療関係者すら家族のためにマスクを横流ししていることもあるようです。

マスクがなかなか手に入らないクリニックが患者さんを安心させるためにマスクの使い回しをしていると知人の精神科クラークさんが話していました。さまざまな医療機関が張り紙をして武漢、湖北省へ渡航した患者さんは申し出るようにという注意喚起をしているのは、不安症の患者さんを安心させるためかもしれません。精神疾患もベースライン疾患です。患者さんは刺激に弱いのです。

さて、とは言えこういった恐怖に対処している施設職員を責めるつもりはありません。職員たちはもっと怖がっている入所者、通所者の恐怖を受け止める仕事をしているからです。

医療機関に限りませんが総合病院は受け入れを決めると他の患者さんを断わることが医療安全上ありえます。感染を防ぐためです。全ての児童老人入所通所施設の利用者さん、そして学校はメンタル面でのパンデミックに陥っています。

僕のところにもマスクをしたクライエントさんがやって来ます。僕はマスクが潤沢なうちは普通にマスクをしていたのですが、こういった危機的な状況になってから、2、3日前からマスクをしていません。

マスクは医師、看護師、臨床検査技師にしていて欲しいと思うからです。心理職先になんでもありき、カウンセリング至上主義ではならないと考えてしまったら心理職の奢りです。まずはマスクをしていないことを謝ってから大丈夫ですか?と尋ねるのが心理職としてこの社会心理学的パンデミックに対応する手段だと思っています。

アウトブレイク、エンデミック、エピデミックも関連用語です。ご参考まで。