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◯ 家庭裁判所調査官から公認心理師を目指す。

裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所は、公認心理師法第7条第2号に定められる、少年鑑別所及び刑事施設と並ぶ、司法機関としては大卒後実務経験ルートが認められているたった2つの認定機関のうちのひとつです。

昔から学部心理学専攻者は大学院進学や民間就職を睨みながら、公務員である裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)も受験するという、人気の進路でした。

この試験も少子化の影響を受けて昔は数十倍の倍率だったのに現在では院卒者区分6.9倍、大卒者区分8.2倍となっています。(2019年度)ちなみに最終合格者は63人でした。合格者=名簿搭載者なので採用されるとは限らず、実際の採用者は45人でした。

大卒者区分の中で心理学専修者がどれだけいたかはわかりませんが、家裁調査官は総合職として講義、実践等2年間にわたって大学院レベルの教育を受けて家庭裁判所調査官補から家裁調査官に任官します。

その教育のために招聘している講師は全国から呼び寄せた、精神科医を含む錚々たる著名な大学教授です。このための調査官養成教育にかかる費用は1000万円以上とも言われています。

さて、家庭裁判所は公認心理師法施行令第二項第2号の規定による実務経験施設26の中に含まれる施設なので第1回試験の際にはGルート実務経験者のうち、公認心理師になりたいという志望者がものすごい勢いで受験し、ほぼ全員合格者したと聞いています(読者様からの情報)。

家裁調査官補試験は心理だけでなく、社会学、教育学、社会福祉学、法学専攻者でもチャレンジできる問題内容となっています。

家裁調査官の仕事は少年部では非行少年及び保護者の調査を行い、鑑別技官とのカンファレンスを行う、在宅事件でも心理テストを行うなど正に心理職としての仕事です。

家事部は家事手続法による調停、審判の調査を家事審判官(裁判官)の命によって行います。家事事件は扱っている職務領域が実に幅広いです。離婚調停は全部調査官の調査があるのかな?と思うとかなりカウンセリング的要素が絡む事件以外には調査官の調査はありません。ただし、紛争性や子の福祉がかかわる場合には調停に調査官が立ち会うこともあります。

調査官は人文科学職としての調査能力を期待されていて、家事事件は相続、紛争性が高い成年後見、保佐の被後見、被保佐人や後見人候補者、関係者親族の調査を専門的見地から行うことがあります。HDS-Rのカットオフ値が何点かで認知症と医学的にはされるのか、後見相当、保佐相当の点数の目安は受験生のみなさまには知っておいて欲しいところです。認知症、高次脳機能障害の方の権利を擁護するという大変意義深い職務にかかわることになります。

http://www.courts.go.jp/asahikawa/vcms_lf/22kannteikyouryokuirai.pdf

当事者の意向をよく聞いてもつれた糸を解きほぐすように調査しながら調整していくのは調査官の大事な仕事です。一見人間科学とは無縁に思えるような「名の変更」も申立人が名前を変更したいという、虐待経験によるPTSD、性別違和が原因の場合もありますので調査を受命することがあります。

調査官が家裁でその能力の発揮を期待されているのは子の福祉に関する領域で、特別養子縁組は実親との関係を断ち切って本当の子どもとして養親と養子縁組させる制度です。

子の一生を決める手続きを8歳までの子どもについて決めなければならないので非常に慎重な調査が必要になります。子の福祉を考える上で親権者変更、指定、面接交渉権の調査も大事な仕事です。

さて、働く人のための実際の情報をイヤな所を含めて書いておきます。

まず採用時に希望任地がかなうことはほとんどありません。47都道府県どこの本庁に配属されるかはわかりません。転勤も激しいです。転勤は全国、転勤はイヤだと居座るのは年々厳しく難しくなっています。例えば調査官同士で結婚すると「じゃ、アツイ2人は寒いところで」と釧◯に異動させられたりします。

産休育休は取りやすいですが、復帰したら一人前の働きが期待されます。

裁判所職員は男性ならば当直の泊まり勤務、女性でも土日祝の日直勤務があります。逮捕状や捜索差押え令状は休日だろうが24時間いつ出てくるかわかりません。

小さな支部だと回りが早く月2回程度ぐらいでさが、若い採用されたての事務官の男性職員が宿直手当て目的に交代してくれることがよくあります。

少年院や刑務所と違って家裁は本庁支部は中心部にあるので車なしでもほぼやっていけます。運転しないで済む調査官は多いです。

総合職なので出世、昇給昇任は早く、裁判所内キャリア組なので最高裁家庭局や高裁、家裁事務局長勤務も少数ですがあります。

いいところとしては学閥がないというころです。東大だろうがFランだろうがなんの差別もありません。

裁判所は法律職の裁判官がスターです。そして裁判官の判決書の下書き(ほとんど全部を書かされることもあり)や法廷に出る書記官が幅を利かせています。

裁判官は医師と同等の特権階級なのでその命に従うのは当たり前ですが、人格者も多いので?一緒に仕事をするのにやりやすい裁判官もいます。調査官は事務官を含む他職種からつまらない嫌がらせを受けることもありますが。

そこはそこと割り切って自分の仕事をきちんと熱心にやっていて研究や著作は割と自由に行えますので、業績次第で大学教員に引っ張られてなる人もいます。

偉くなるとどんどん転勤スパンも早くなりますが相当に偉いことは確かです。在職時年収1000万、退職金2000万円台後半ぐらいでしょうか。

内地留学、アメリカやフランス留学制度や研究休職も1年できます。臨床心理士も相当にいて、国家総合少数人間科学区分と同様心理職のエリートテクノクラートです。

これから心理学部、学科を目指す高校生の方は公認心理師養成課程がある大学から家裁調査官を目指して公認心理師になる方法もあります。在学中の方々も同様です。現任者受験の方々でも受験する人々もいるでしょう。

司法機関中核を担う心理職です。これから公認心理師を目指す方々は家裁調査官になることも選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか?

家裁調査官もインターンシップ制度があります。全国で開催されていますので気になる方は参加してみるといいでしょう。