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◯ コロナウイルス流行に期待される公認心理師・臨床心理士の役割

結論:心理職ができることは数多くある。ただし派遣要員は公認心理師に限られる可能性が高い。

1.危機への対応

総合病院でも小さな診療所でも病床があればコロナウイルス患者の受け入れが始まっています。ちなみにはみなさんの不安を煽る意図的でこの記事を書いているのではありません。

こういった危機場面というのはまさにサイコロジカルファーストエイド、Psychological First Aid ; PFAで心理職の活躍が期待されるのではないかと思われるからです。

過去感染症についてはHIV研究でも多くの臨床心理研究者が成果を上げています。例えば新潟大学医歯学部病院は関東甲信越のHIV対策最先端拠点病院です。こういった拠点病院は全国にあります。

感染症と臨床心理学については先達の方々が多くの研究結果を著していて、その成果に学ぶことも多いでしょう。こういった場合に精神保健介入を迅速に行うのがDPAT
災害派遣精神医療チーム

(Disaster Psychiatric Assistance Team ; DPAT)

で、そのホームページにはすでにコロナウイルスへの対応がアップされています。新型コロナウイルスへの医療的介入における臨時の診療報酬が請求できることほか、自治体担当者向けの情報提供を行っていて、対応は迅速です。

さて、DPAT先遣派遣隊のチームは精神科医、看護師、事務スタッフの3者で構成されています。臨床心理技術者として過去臨床心理士がチームに参加したこともありますが、ごく少数のケースでした。

臨床心理士よりは精神保健福祉士の方がこういった場合には役立ちます。先遣派遣隊の一員としてケースワーク的な調整業務ができるからです。臨床心理技術者が派遣される場合には国家資格保持の公認心理師が優先されるのは信頼性担保になるでしょう。

さてそれではこうした感染症が起きた場合、心理職としてはどのように対応したらいいでしょうか?

2.事務スタッフとしての役割

インフルエンザ、ノロウイルスなど大量発生した場合には施設で働く心理職は帰宅できない場合があります。緊急の患者さんを除いてはカウンセリングを停止、保健所だけでなく発生源となった学校や企業体、そして企業内部や福祉で働く心理職は多忙です。

医療、他組織内で起こった食中毒の場合には警察から過失の可能性はないか、院内でも他組織でも対応します。

また、保健所への連絡調整、保健所担当者は検体を集め、分析、原因します。その結果をさらに分析します。

時事刻々と患者数は増え、スタッフは泊まり込み関係機関連絡、報道対応もしなければならないこともあります。

クロノロジーという経過記録をきちんと残して書いておく役割、感染症患者数の集計、一人一人の所在確認。ベースラインの糖尿等の基礎疾患があればその患者さんをピックアップしておきます。

後から訂正できるので、まず第一報を流します。本来ならその心理職が所属している上長の役目です。情報がないことが最も不安を煽ります。今回のコロナウイルスも情報不足が混乱の元になっています。

公認心理師試験なら、情報を公開するよう、アドバイスする、が正解ですが自らその役割を取ることもあります。

3.知っている情報を伝え、つなげる。

多くの人々が今回、日本人患者も大量発生したことで怯えています。人々が多く集まる場所でさまざまなイベントが中止されました。この疾患の恐怖がクローズアップされています。

コロナは死亡率2パーセントです。鳥インフルエンザ63パーセント、エボラ出血熱50パーセント、SARS(重症急性呼吸器症候群)9パーセントに比べると低い数値です。SARSは治療法確立の前に収束しました。

朝日新聞デジタルによると感染者は国内で2月18日現在615人です。37.5℃以上の熱が4日間続く、息苦しい、だるい症状が続くなどの場合には受診が勧められています。そのための相談ダイヤルは厚生労働省や地域の各保健所にも設けられています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

心理職は患者さんが不安がっていたら感染予防に関する情報は伝えてもいいでしょう。不正確な知識を伝達するわけにはいきません。

4.感染対策を自らも取り、患者さんを安心させる。

心理師も患者さんの被服や皮膚に触れる場合は考えられるわけです。傷がなくてもお互いに不安を覚えるので、アルコールでの手指消毒は徹底しましょう。またそれも伝えます。

医療機関における予防としてマスクは必須です。従前、マスクをしての心理面接は表情がわからない。

また患者さんに対して拒否的に取られかねないと消極的な心理職もいました。マスクをせずに面接時、くしゃみや咳をしたら患者さんはどう感じるか医療関係者としては考えるべきです。

医療機関における清潔さの概念は通常より慎重な注意が必要です。医師、看護師は時計、指輪を外しています。長い髪の女性は束ねることも大切です。

そして心理職も十分に休息と栄養を摂り、明るく振る舞い患者さんの安心感につなげたいものです。

5.スティグマ(社会的烙印、偏見)への対応

今回の事態で箱根の旅館が「中国人お断り」の看板を出して大顰蹙を買ったという事案がありました。心理職はダイバーシティの概念から、常にマイノリティの味方であるべきです。

マイノリティの人たちのアボドカシー(権利擁護のための運動)に影響することも十分に考えられます。心理的な支援だけでなく、あらゆる意味でクライエントさんを支援することが大切だと思います。