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◯ てんかん・精神薬理学・副作用

以下、厚生労働省こころのメンタルヘルスから引用しています
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_epilepsy.html

が、要点だけを最初にまとめておきます。

◯ 要点

※ てんかんは脳の神経細胞(ニューロン)が異常な電気信号を発する障害です。

診断は脳波測定では、棘波spikeと徐波waveがあり、てんかんでは左右非対称、棘徐波複合、スパイクアンドウェイブという特徴が見受けられることからわかります。

てんかんには大きく分けて3種類のてんかんがあります。

1.症候性てんかん

脳腫瘍、交通事故などの頭部外傷などが原因のはっきりとしているものです。

2.特発性てんかん

原因不明なものです。

3.難治性てんかん

・てんかんの発作には

全般性発作、意識消失を伴う

大発作/失神

小発作/数十秒程度からのあくびをするような意識消失

複雑部分発作(側頭葉てんかん)は成人に最も多いと言われているもので、意識が部分的にあるので直前まで行っていた行動が無意識的に常道的に続くことがあります。

どのてんかん発作についても、たとえ小発作でも脳細胞に大きなダメージがあります。

したがって、てんかんとわかると子どもはそれを認めたくないので拒薬するなどの行動に出ることもありますが、病状を悪化させないため、てんかんの心理教育、服薬コンプライアンスが大切になります。

手術で病変部を除去して発作を抑えるのが有効な場合もあります。

◯ 以下厚労省資料引用

てんかん

てんかんは、突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」をくりかえし起こす病気ですが、その原因や症状は人により様々で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり、患者数も1000人に5人~8人(日本全体で60万~100万人)と、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつです(1)。

「てんかん発作」は、脳の一部の神経細胞が突然一時的に異常な電気活動(電気発射)を起こすことにより生じますが、脳のどの範囲で電気発射が起こるかにより様々な「発作症状」を示します。しかし症状は基本的に一過性で、てんかん発作終了後は元通りの状態に回復することが特徴です。原因は様々で、脳腫瘍や頭部外傷後遺症などの明らかな原因がある場合は

「症候性てんかん」、原因不明の場合は

「特発性てんかん」と呼ばれます。

治療は適切な抗てんかん薬を服用することで、大部分の患者さんでは発作は抑制され通常の社会生活を支障なくおくれます。一方、抗てんかん薬では発作を抑えることができず、

「難治性てんかん」として複数の抗てんかん薬の調整や外科治療などの専門的なてんかん治療を必要とする場合もあります。

【参考文献】
(1)大塚頌子、赤松直樹、加藤天美、他:日本におけるてんかんの実態 日本のてんかん患者数の推定、てんかん研究27巻3号:408-411、2010

「てんかん」とは

脳の神経細胞(ニューロン)は、その数は数百億ともいわれますが、基本的に電気的活動を行っているため、強い電気刺激により異常で過剰な電気活動(電気発射)を起こす性質があります。

「てんかん発作」は、このニューロンの電気発射が外部からの刺激なしに自発的に起こる現象を指し、また「てんかん」は、この「てんかん発作」をくりかえし起こすことを特徴とする病気です。

てんかんは、原因が不明な「特発性てんかん」と、頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病など原因が明らかな「症候性てんかん」に分けられ、前者が全体の約6割、後者が残りの約4割を占めるとされます。乳幼児から、小児、学童、思春期、成人、高齢者のいずれの年齢層でも発症しますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。

重症度は千差万別で、小児期に発病し数年に一度程度の発作で成人になれば完治してしまう良性の特発性てんかんがある一方、頻繁に発作をくりかえし様々な脳機能障害が進行する難治の症候性てんかんもあります。

しかし全体としては、2/3から3/4の患者さんは抗てんかん薬の服用で発作は止まり、大半の患者さんは支障なく通常の社会生活をおくることができます(2)。

また薬で発作が抑制されない場合でも、海馬硬化症や良性の脳腫瘍などのはっきりした病変がある場合は、手術で発作の完治を期待することもできます。

【参考文献】
(2)Brodie MJ, et al.: Patterns of treatment response in newly diagnosed epilepsy. Neurology 78(20):1548-

てんかんのサイン・症状

「てんかん発作」の症状は、脳のどの範囲で異常な電気発射が起こるかにより多彩です。たとえば脳の一部で起こる発作(部分発作)では、後頭葉の視覚野で起これば光がチカチカ見える、手の領域の運動野で起これば手がピクピク動く、側頭葉で起これば前胸部不快感や既視感など、患者さん自身が感じられる様々な症状を示します。

一方電気発射が脳全体に広がった場合、意識を消失し動作が止まって応答がなくなる、倒れて全身を痙攣させるなど、患者さん自身は発作の間意識がなくなり周囲の状況がわからない状態となります。

また、体の一部あるいは全体が一瞬ピクンと動くミオクロニー発作や、突然体の力が抜けバタンと倒れる脱力発作、あるいは手足や口をもそもそと動かす自動症といわれる発作などもあります。

てんかんの診断と治療

てんかんは、一旦診断されるとその後長期間服薬を必要とすることが多いため、初期診断で、本当にてんかんなのかどうか、ほかに治療が必要な原因はないのかを見極めたうえで、長期的な治療の見通しを立てることが大切です。小児の良性てんかんでは発作症状などの病歴の聴取だけで診断が可能なこともありますが、てんかん発作をくりかえし起こす場合には、基本的に脳波とMRI検査を行い、てんかんの診断と原因を確認する必要があります。
発作で意識が消失することは、患者さんにとって社会生活上最も大きな障害となる症状で、事故にあう危険はもちろん、就労や就学、あるいは自動車運転などに際し大きなハンディキャップとなります。

従っててんかんの治療は、発作をいかに消失させるか、あるいは意識消失を伴う発作の回数をいかに減らせるかが主要な目標となります。

具体的な治療方法としては、抗てんかん薬の調整が主ですが、自己判断で薬を中断しないことが、発作を防ぐうえで重要です。また、中には先に述べたとおり外科治療で完治を期待できる場合もあり、早期に適切な診断を行うことも大切なことです。

てんかんをもつ人へのケア

てんかんをもつ人にとって、発作が起こっている時間は通常数秒から数分間にすぎないため、発作が起こっていないその他のほとんどの時間は普通の社会生活をおくることが可能です。

従って、病気の特性を周囲の人がよく理解し、過剰に活動を制限せず能力を発揮する機会を摘み取ることのないよう配慮することも、てんかんをもつ人に対するケアを行う上で大切なポイントです。

またてんかんをもつ人は、小児では発達や就学、成人では就労や自動車運転、女性では妊娠と出産など、生活上のさまざまな問題に対する継続的なサポートを必要としています。また発作の止まらない患者さんでは、くりかえすてんかん発作による脳機能障害や心理・社会面の障害に対するケアも重要で、様々な福祉制度を活用することも求められます。

厚労省の研究班(てんかん診療ネットワーク:http://www.ecn-japan.com/)や学会及び患者会組織(日本てんかん学会:http://square.umin.ac.jp/jes/、日本てんかん協会:http://www.jea-net.jp)のウェブサイトからは、てんかんに関する情報を得ることができます。

◯ 向精神薬 抗精神病薬

written byひなた

いわゆる精神科の暗黒時代とも言われていたころは、治療法が確立されてなく、精神病患者をただ社会的隔離のために入院させていました。

現在の無痛ETCでない電気けいれん発作療法が懲罰的に行われていた歴史もありました。

精神病治療法に画期的な転換点が見受けられるようになったのは1951年、抗精神病薬クロルプロマジンの開発によってでしょう。

クロルプロマジン(商品名コントミン、以下カッコ内は商品名)は精神病患者の退院率、社会復帰率を劇的に上げました。

続いてハロペリドール(商品名セレネースなど)が1956年に開発されたことも治療に大きく寄与しました。

これら定型第一世代抗精神病薬は、スルピリド(ドグマチール)やレボメプロルマジン(レボトミン、ヒルナミン)もあります。

スルピリドは胃薬として使用されることもありますが、抗うつ効果も抗精神病効果もあります。

スルピリドは食欲増進作用があるので、それを薬効として利用する場合もあり、太り過ぎとなってしまうこともあります。

抗精神病薬の副作用としては錐体外路症状があります。(静座不能、足がむずむずして突っ張ったようになるアカシジア、ジスキネジア、オーラルジスキネジアでは呂律が回らなくなったようになり、口が不随意運動をするようになります。

ジストニアは全身筋肉の不随意運動で、このような錐体外路症状には抗パーキソン剤アキネトンで対処することがあります。

抗パーキソン剤が効き目があるという患者さん、ないという患者さんがいます。

医学の教科書でも副作用止めを出してまで薬を出していくのは多剤処方につながるのでやめた方がいいという記載があります。

非定型第二世代抗精神病薬は現在統合失調症、双極性障害、うつ病、感情の障害などにも使用されている薬剤です。

リスペリドン(リスパダール、経口投与の他に持続する注射としても使用されています)、ペロスピロン(ルーラン)、パリペリドン(インヴェガ)、オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セレネース)、アリピプラゾール(エビリファイ)、ブロナンセリン(ロセナン)、アセナピン(シクレスト)、クロザピン(クロザリル、薬剤抵抗性統合失調症に著効)です。

ただし、クロザピンは無顆粒血症が重大な副作用として認められ、白血球中の顆粒球がほとんどなくなってしまう危険性があるので頻回に血液検査をしなければならないというデメリットがあります。

統合失調症陽性症状には第一世代薬が使用されていて、陽性症状と陰性症状双方に対して第二世代薬リスペリドンなどは効果があります。

リスペリドンに続くSDAは、統合失調症に対してドーパミン受容体のみでなく、セロトニン受容体にも働き掛けることで効果を示しています。

いずれの抗精神病も代謝を阻害するので体重のコントロールが難しくなるというリスクがあります。

糖尿病の発症リスク、また、糖尿病患者さんには禁忌の向精神薬は多いです。

第一世代、第二世代とも抗精神病薬には力価があるので、CP換算値でわかりやすく自分が服薬しているメジャートランキライザーの力価がわかります。

あまりに力価が高いと治療効果よりも、副作用の過鎮静が起きて全く動けなくなります。

また、一度増やした抗精神病薬の減薬は時間をかけないと心身への高い危険性があり、横紋筋融解が起こったり、突然死の可能性もあります。

風邪薬でも「副作用のない薬は作用もない」と言われていますが、元々自然に体内で生成される物質外の向精神薬は必ず何かしらの副作用の可能性があります。

それにもかかわらず、治療効果がより大きく期待されていることから使用されているということを理解しておく必要があるでしょう。

なお、向精神薬はベンゾジアゼピン系薬剤は催奇形性が高いと言われています。

妊娠に比較的安全性が高いと言われているのは第二世代非定型精神病薬やSSRI、SNRIですが、臨床上使用していることが多いということと絶対的な安全性が確立されているということとは別です。

妊婦にとって向精神薬使用のリスクは、断薬、減薬して症状を抱えて精神的に不安定なまま妊娠を継続するか、少ないパーセンテージでの催奇形性があっても服薬して安定した状態で妊娠を継続するかのバランスを見て決められます。

◯ 向精神薬 抗うつ剤

三環系抗うつ剤TCA、イミプラミン(トフラニール)、アミトリプチン(トリプタノール)
TCAはモノアミントランスポーターは、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンに働きかけます。

肝機能負担があり治療有効域の狭さがデメリットです。

MAO阻害薬の抗うつ剤はモノアミン系のドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンの取り込みを阻害するという優れた作用がありますが、肝機能障害、高血圧の副作用のコントロールが困難で現在アメリカでは重症うつ病にしか使われなくなっています。

四環系抗うつ剤としてはマプロチリン(ルジオミール)、セチプチリン(テシプール)、ミアンセリン(テトラミド)があります。

SSRIやSNRIはよりセロトニン、ノルアドレナリンにターゲットを絞って再取り込みを阻害、脳内量を一定に保ちます。

脳のセロトニン再吸収体にフタをしてしまうという原理です。

当初は抗うつ剤として開発されたのですが、パニック障害や強迫性障害治療薬としても使用されています。

塩酸パロキセチン(パキシル)が開発された当時は画期的な薬剤で、次々と開発されていきました。SSRIはフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)

また、SNRI選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬としてはミルナシプラン(トレドミン)、デュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサー)があります。

SSRIやSNRIは脳内シナプス回路でストレス緩和機能が生成されるまでに時間がかかるため、効果が十分に発現させるためには数カ月を要することがあります。

比較的素早く効き目が出ると言われているNaSSA、ミタルザピン(レメロン錠、リフレックスは体重増加作用があります。

SSRI、SNRIの副作用としてはパキシルは当初、衝動性が増加して18歳未満の自殺率を上げる可能性があるということで禁忌になっていました。

以前からうつ病は回復期に突発的に自殺行動に出るとも言われていたので、この危険な自殺衝動が若年層への特有のものなのか、それとも病状のせいなのか、回復期特有の症状なのか大きな論争になりました。

現在ではSSRI、SNRI、NaSSAは若年者に対しては慎重投与です。

パキシルは離脱症状から減薬、断薬にも注意が必要です。

また、男女ともにSSRIやSNRIによる性的能力、性欲減退を訴えることもありますが、QOLを見た上で判断するべきでしょう。

◯ 気分安定薬(ムードスタビライザー)

抗てんかん薬が中心で、双極性障害や不安定な気分状態に使用されます。

世界最古のムードスタビライザーとしては炭酸リチウム(双極うつと抗躁剤、手の振戦や多飲多尿の副作用あり。腎機能障害に注意)

抗てんかん薬としてはバルプロ酸ナトリウム(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)が使用されます。

抗てんかん薬も治療有効閾値が狭いので、定期的な血中濃度測定TDMで肝機能検査をしなければなりません。

◯ ベンゾジアゼピン系製剤

抗不安薬としてエチゾラム(デパス)が有名ですが、高い依存性を生じることが知られています。

エチゾラム以外のベンゾジアゼピン系抗不安薬ロラゼパム(ワイパックス)、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス)、ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)も連用は好ましくないとされています。

弛緩効果があり、ふらつき、めまい、注意散漫、アルコールとの交差耐性があります。

ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤は

・超短時間型 トリアゾラム(ハルシオン、忘却効果が強いので欧米諸国では麻薬扱いする国が多く、日本人がスーツケースに入れて渡航すると逮捕されることもあり得ます)

ゾピクロン(アモバン)
ゾルピテム(マイスリー)

・短時間型 ブロチゾロム(レンドルミン、手術前日の緊張緩和にも使用します)

※ エチゾラムは短時間型ですが、耐性などの問題から睡眠導入剤として使用しない場合があります。

・中間型

フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)

・長時間型

クアゼパム(ドラール)

ベンゾジアゼピン系でない睡眠導入剤としてはラメルテオン(ロゼレム)で概日性リズムを調整、スボレキサント(ベルソラム)が開発されています。

(以上 向精神薬マニュアル 融道男
医学書院参照)

睡眠導入剤は、ベンゾジアゼピン系のみを使用するのではなく、向精神薬で元々は副作用とみなされていた効ヒスタミン作用の眠気が出る効果を狙って使うこともあります。

抗ヒスタミン作用というのは花粉症の薬で眠気が出るのと同じように向精神薬でも眠気が出る場合があります。

ミタルザピン、TCA、四環系抗うつ剤ミアンセリン等には効ヒスタミン作用があります。

向精神薬、抗うつ剤にはうつ状態と似たような副作用を示すものもあり、症状のせいなのか副作用なのかわからなくなる場合があります。

多くの向精神薬が持つ副作用の抗コリン作用は、耐えず口渇感がありますので、口を湿すだけの水を含むぐらいが推奨されています。

水ばかり飲んでいると水中毒になりナトリウムが低下して発作、けいれんから死に至ることもあります。

悪性症候群はパーキソニスム症状が出る、セロトニン症候群では意識障害を起こすこともあります。

多臓器不全、意識障害から死に至ることもあります。

便秘は多く副作用として認められます。抗うつ剤のアモキサピンは便秘が副作用として知られています。

抗コリン効果による麻痺性イレウスで消化管が動かなくなり、単に排便ができないというだけでなく、吐き気、便秘を認めます。

麻痺性イレウスや便失禁は重篤な副作用としてただちに投薬中止しなければなりません。

突然死も向精神薬が持つリスクです。

◯ 薬理遺伝学

薬物に対する反応性には個人差があり、双生児研究によって明らかにされました。

向精神薬以外の薬剤で薬剤代謝に関する研究が行われ、代謝に関係するチクロトローム P450Yに関する研究が発展しました。

向精神薬でも血中濃度に著しい個人差が存在し、CPYの薬理遺伝学研究が盛んに行われるようになりました。

このように薬物を摂取してから血中濃度が保たれていく状態の観察を薬物動態学と言います。(吸収、分布、代謝、排泄)

薬物動態が判明した場合の薬物濃度と作用の関係を薬力学と言います。