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◯ 医学・整形外科領域における公認心理師への期待〜「痛み」の心理学

整形外科は心理療法とはかなり遠そうな分野の領域に思えますが、実際には整形外科領域で働く心理職は多くいます。

「痛み」というのは心理状態に大きく起因していて、身体表現性障害(身体症状及び関連障害)、心身症、転換性障害、アレキシサイミア(失感情症)など多くの痛みを伴う実感が心理状態と関連しています。

そこで抗うつ剤サインバルタが2016年には慢性腰痛の第一選択薬として認められるようになったわけですが、整形外科領域に勤める心理職も定期的カウンセリングによって痛みという身体的でもあり心理的な現象に向かっているわけです。

慢性疲労症候群と近縁と言われている全身の痛みを伴う線維筋痛症は難病で、身体医でも治療は困難と言われていますが、これらの疾患への心理職のかかわりは大きく期待されています。

大抵はエビデンス、治療実積が認められているという事で認知行動療法が使われている場合が多いです。

痛む部位は脳からの情報でゲートの開閉ができるというゲートコントロール理論を心理教育として行うというのは理にかなっています。

リラクセーション、漸近的筋肉弛緩法なども役立ちそうです。

ただ、整形外科に勤務する心理職が全て認知行動療法をしているわけではありません。

別に箱庭療法でも精神分析でもフォーカシングでもイメージセラピーでもいいのです。

患者さんがその痛みを「わかってもらった、理解してくれた」という思いは痛みの緩和に役立つでしょう。

教科書では「怒り」の感覚は痛みに深く関連していると言われています。

痛みはとめどなくその人を苦しめます。

患者さんの怒りを理解して受け止めることは時として、あらゆるカウンセリングと同様に心理職に対する怒りに繋がるかもしれません。

「だって、先生、私のような痛みを経験したことはないでしょ?わかったようにうんうん言ってるだけじゃないの?」

これは半分当たっている真実です。

痛みを伴う疾患は本人が望んでなるわけでは決してありません。

そして治療には必ず侵襲性があり痛みを伴うものもあります。

患者さんは痛みが強くなり再発してもっとひどい痛みが襲ってくるのではないかと恐れて怯えています。

手術の前になれば手術の不安が患者さんを襲って来ます。

「手術は痛いのだろうか。手術をしてもうまくいかないとか手術をしても良くならない可能性もあるし痛みが取れないかもしれない、そしてもっとひどくなったらどうしようか?」

こういった痛みに対する不安は全てカウンセリングの領域になると考えています。

整体院ぐらいで扱えるような、肩、首のコリのような痛みを抱えて半泣きでやって来たクライエントさんが話をしている間に軽快化して帰って行くことがあります。

僕は何もしないでただ話をじっと聞いているだけです。勝手に治ってクライエントさんは帰ります。

「ひなたさんのところに来るって思った途端に痛みが取れちゃってね」

僕が何かをしたわけではありません。

もうカウンセリングに来る前から「メンタル面を手当てしなくちゃ」と思って自覚したことで、痛みはすでに良くなっていたわけです。

怒り、憤り、悲しみといったネガティブな感情を誰かに言いたいけれども誰にも言えない、言い出せなかった、確かにそういう気持ちは痛みを引き起こしそうです。

そして遺伝子病はまったく患者さんが避けることができなかったものです。

トラウマ処理技法のプレイスポッティングはスポーツ心理学と深いかかわりがあります。

スポーツ選手は元々メンタルトレーニングやメンタルリハーサルが必要とされていて、オリンピック選手には心理コーチがついている場合もあるのですが「失敗してまた骨折したり痛い思いをしたらどうしよう?」というおそれにもカウンセリングは有効でしょう。

痛みを伴う疾患は整形外科以外にも様々にありますが、カウンセリングでなんでもかんでも痛みを取ればいいというものではありません。

催眠技法は昔から痛みを抑えることができて無痛で抜歯をする等一流の催眠家は相当の技術を持っていたのですが、整形外科領域で腰痛や捻挫の痛みを取ってしまうと

「あ、こんなに良くなったからまた趣味のスポーツをやろうっと」と危険な場合もあります。

だそして確かに身体は辛くても「無理して働き過ぎちゃいけないよ」というような体の内部から来る訴えかけ方をしている痛みを持っている、そして心理職からもそう声をかけたくなるクライエントさんがいます。

そういったクライエントさんに対してはまずきちんと話を聞き続けることに僕はしています。

サインバルタが慢性的腰痛に適用となって3年が経ち、すっかり定着した感があります。

そのうち整形外科医から「カウンセリングでなんとかならないの?」と聞かれる時代がやってくるかもしれません。

「主治の医師」は精神科医とは限らないわけで、麻酔科、リハビリテーション科、脳外科からも期待されて現在心理職は働いています。

「誰が主治の医師なのか?」ということについて考えなければならないという義務も課せられているわけで、患者さんへのインフォームドコンセントもじっくりと行う必要があるでしょう。

カウンセリングは無作為割付実験RCTを経てのみ効果が測定できるものではないと個人的には思います。

科学が発達するにしたがって芸術療法が脳内血流の働きを良くするなど、研究はどんどん進んでいます。

僕はあと10年以内にカウンセリングと科学の結びつきの転換点がやってくると思っているのですが、思っているよりもそれは早く訪れるかもしれません。