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◯ 臨床心理士が娘への準強制性交事件で父親の発言を覆す・心理職、公認心理師が司法で求められる役割とは?

以前から話題になっていた名古屋地方裁判所岡崎支部、中2の娘への5年間にわたって実父が強制性交を求めた事件に一審が無罪判決を出した事に憤りを感じた方々も多かったでしょう。

この控訴審において臨床心理士が、精神鑑定を行った上で「娘が抵抗するのは不可能」ということを指摘していました。

知人の児童福祉司はこういった事件は嫌というほど見ていてもどうにもできない場合が多いことを嘆いていました。

こういった事案は実は非親告罪で被害者の申告がなくとも捜査を開始することができます。

ところが密室で起きた事件は誰にもわからない、証言の信憑性もわからないという高いハードルが第一にあります。

ただ、このような事案について一審は性行為があった事実認定をしていて、娘さんが望んでいなかったことを認めたのですから有罪判決が出てもおかしくない、と思っても「抵抗できないほどの精神状態に陥っていたとは判断できない」として実父に無罪判決を出しました。

司法によって二次的精神的外傷を美羽さん(仮名)が与えられたことになります。

「その気になれば抵抗できたでしょ?してないから合意じゃないの?」というのが裁判官側の言い分で、到底承服できるものではありませんでした。

心理職がこういった被害を受ける女性にかかわっていられれば、苦境から助け出せた場面は多々あったかもしれません。

しかし声なき声にどの機関の心理職も彼女を救い出す事はできませんでした。

虐待による心理的コントロールは激しく被害者を傷つけます。

そして人を支配するのに最も効果的な手段は「恐怖」で、恐怖は全ての人間の感情を超えて人心をコントロールすることができるのです。

美羽さんは自分の母親からも見捨てられ、もし実父を告発して犯罪者にしてしまったら弟が犯罪者の息子になってしまう、また自分が通学していた学校の学費を差し止められてしまうというおそれから通報をためらいました。

この事件で特徴的なのは実母が美羽さんの事案を知っていたにもかかわらず、なんらの措置もしなかったという事です。

これを聞くと「けしからん、母親も同罪だ」と思う方もいらっしゃるでしょう。

確かにその通りかもしれません。

ところが虐待の現場で仕事をしていた心理職はこういった話を聞く事が多いです。

母親は手に職があるわけでもなく、父親から見捨てられたら自分の行き場もなくなってしまう、そう考えると娘を差し出すしかないと思ってしまいます。

この事案の場合には生活保護を受給していたので「なんだ、それじゃ母親は子どもたちを連れて逃げればよかったじゃないか」とも考えがちです。

実際のところ、母親も父親に恐怖でコントロールされている事が多く、DVの果てしない連鎖の中では固まって動けなかったのかもしれません。

心理職は人を助けること、ヒューマニズムを徹底して教育の中で叩き込まれます。

しかし訴えがないと拾い上げることまではできないのが心理職の宿命で、美羽さんの精神鑑定をした臨床心理士は立派だと思う反面、何か起きてからでないと動けない現在の児童福祉体制に疑問も感じています。

今回の事件の生物-心理-社会モデルの中で一番変わらなければならないのが「社会」でした。

決して美羽さんのような被害者を見捨てない、見放さない、被害者を必ず救うという社会システムの原理がなければ誰もが申告はしないでしょう。

美羽さんのような被害者は続出していくだろうと思います。

心理職は犯罪の抑止、防止についてあまりにも無力で、事件発生までは何もできません。

悔しい思いをしながらも心理職が何とか、かかわれるのは

1.児童相談所
緊急電話189

2.市区町村役場
 子ども福祉課等の児童福祉

3.警察署
心理警察官のような被害者支援専門


4.スクールカウンセラー

5.非心理ですがNPO、相談機関として

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(内閣府)

※ 身体・精神・法律の立場からの総合的支援を行います。

6. 警察庁
性犯罪・性暴力被害者のためのワン
ストップ支援センター

※ 医療、心理カウンセリング、身体、
 法的支援

(無料でカウンセリングも可能です。)

◯ 性犯罪被害者が無料でカウンセリングを受けられる事はあまり広く知られていないです。

7.今後

PTSD患者さんが幅広く保険診療の対象となる可能性

中央社会保険医療協議会での審議をこれからきちんと行う必要がある。

との事です。

この事件で控訴審で堂々と鑑定結果の意見を述べた臨床心理士に敬服を抱くとともに、食い止めることが不可能なこういった事案に遭遇した際には、心理職が全力で被害者支援に当たって欲しいと思います。