8CAA030C-2332-4185-A54E-73C22CE55CBF

◯ 産業場面の公認心理師がハラスメント事案に期待される役割

パワハラ、セクハラ、マタハラ、アカハラ、ドクハラ・・・とハラスメント行為は数限りなくあります。

厚生労働省はパワハラ対策導入マニュアル第4版を出していて、76ページもある資料なので読むのが困難かもしれませんが、どの通達やパンフレットから公認心理師試験が出るのかわからないので目を通しておいた方がいいかもしれません。

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/

ちなみに僕がツイッターでつぶやいていた冒頭の写真は「死ね」と言い続けた上司が書類送検された事案に関するものです。

パワハラはどの企業でも起こりえます。

本社機構には産業医が常駐していたとしても、小売業だと店長が長時間労働や過大なノルマを要求されていても社内のどこにも相談窓口がないです。

仕事を全く与えずリストラ候補者を「再就職支援室」のようなとパソコンも電話もない一角に閉じ込めた企業はうつ病を発症した社員に対して裁判で損害賠償を命じられました。

大手広告代理店の新入社員に対するパワハラ事件は、スポンサーから靴でビールを飲まされ、その会社の営業マンは接待を自腹でする事が多かったというブラック体質でした。

東大や早慶卒の次々と優秀な新入社員が辞めていく事でもその会社は知られていましたが今はどうなのでしょうか。

精神疾患を発症したり死亡したとしても誰も支援しない体制が社内で当たり前になっている事は大きな問題です。

有名企業でもパワハラ的ノルマを要求する会社はあり、前月比140パーセントを常に要求する会社もあります。

前月比120パーセントだと落第、160パーセントで合格です。

新進気鋭と言われてあらゆる業種に手を伸ばしているコングロマリットもワンマン社長の下だとかなりのプレッシャーを社員たちは感じざるを得ないでしょう。

パワハラの6類型のうち、身体的暴力に準じているのがクリップボードを床に叩きつける、誰も座っていなくても執務室内の部屋の椅子を思い切り蹴る、という威嚇的行為が行われることがあります。

部下や新入社員もいる前でベテラン社員を怒鳴りつけるのは精神的パワハラでしょう。

パワハラは上長から部下に対して行われるだけではありません。

転勤してきた課長に「課長だから何も言わなくても何でもできるでしょ?」と何も教えないのは部下から上司に対するパワハラです。

公認心理師は法律分野も出題されます。

こういったパワハラは民法709条では不法行為として規定されます。

そしてこの不法行為を行っても何ら企業から救済がなければ民法415条の債務不履行に当たります。

民法715条の使用者責任、労働契約法5条の安全配慮義務、さまざまな法律違反があってもそれを改善することができなければ労働基準監督署への相談、裁判官が決定する労働審判も活用可能です。

不当解雇には仮の地位保全処分訴訟を提起できます。

さて、パワハラでメンタルダウンしてきた社員が公認心理師のところに相談に訪れて来たとします。

その際「ここに相談するといいですよ」「こんな方法もあります」「弁護士さんのところに相談に行きませんか?」等具体的アドバイスは公認心理師試験では全て不正解として扱われるでしょう。

ただ、実際にはせめて産業医を通じて、また、心理職自身が上長と話すことで解決の糸口が見えて来る事例は多いと思います。

心理職は相談者に対してサイコロジカルなカウンセリングを行っていてもどうにもならない事が多いです。

ただ漫然と相談に乗り続けていると「これまでの自分が甘かったのでこれから全力で頑張ります」という間違った洞察に導いてしまう危険性があります。

心理職は何ができるのか、何がその人にとってメリットになるのか、何でもかんでも制度紹介をすればいいというものではないですが、心理職ができない事については、せめて総合労働相談コーナーがある事は伝えてもいいかと思います。