
◯ パーソナリティ障害に公認心理師が向かう時
「公認心理師試験のカウンセリング能力検出精度は?」
で中西美穂様のコメントに触発されて今回の記事を書こうと思いました。
中西美穂様が触れているクライエントさんの「個別性」を重視しながらきちんとエビデンスも考えていかなければなりません。
カウンセラーの「カウンセリング能力」には限界があります。
そして境界性人格障害(bordeline personality disorder=BPD) へのかかわりは最も医療者にとっては難しい対応を迫られる局面が存在しています。
中西美穂様に提示していただいた認知症患者さんへのリーダー研修教材「24時間シート」
http://www.tojinkai.or.jp/chofukaen/especially/images/24sheet_sample.pdf
は患者さんの個別性にきめ細やかに対応する内容となっていて、かなり感心させられました。
ところでパーソナリティ障害への個別対応は心理職に限らず医療者全体にとって大きな問題です。
厚生労働省の自死未遂患者への対応マニュアルでは、救命を生業としている未遂者に対し、医療者は嫌悪する気持ちが生じることがあり、その感情と対峙しなければならない旨の記述があります。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/manual1.html
また、境界性パーソナリティ障害〈日本版治療ガイドライン〉(金剛出版)牛島定信編 では患者さんと治療者との境界侵犯が起こりやすく、しばしば治療者-患者間での性的逸脱が起こりやすい、そしてそれが起こり得ることを前提としたガイドラインが策定されています。
公認心理師の多重関係、信用失墜行為は資格剥奪につながりますが、こういった難事例にはどう接したらいいのでしょうか。
手首が傷だらけの心理学者、マーシャ・リネハンによって創始された弁証法的行動療法(DBT)はパーソナリティ障害やその他の疾患治療に際し、多くの知見をもたらしました。
元々バリント.Mから境界例は幼少期の親との信頼関係の欠如、基底欠損の存在を指摘され、カーンバーグ.O等の精神分析家によってもたらされた研究業績も今なおパーソナリティ障害治療に大いに役立っています。
実際、横浜で精神分析オフィスKを私設開業されていらっしゃる北川清一郎先生のパーソナリティ障害への理解と接し方の理解は極めて優れています。
さて、「パーソナリティ障害への対応は難しい」多軸診断システムを取っていたDSM-Ⅳに代わってスペクトラム、グラデーション的概念で診断体系を構築しました。
それでもパーソナリティ障害とPTSDや統合失調症、双極性障害、うつ病が多軸的に併存することはあります。
とても接触困難と言われているパーソナリティ障害の人たちは「わざと治療スタッフを苦しめている」「操作しようとしている」と受け取られがちです。
しかしご本人は苦しくて仕方なくそういった対処しかできなかったということを理解しておく必要があります。
信頼関係がきちんと醸成された時、心理専門スタッフでなくとも、心理的理解をしようとしている公認心理師と患者さんとの関係性は格段に改善されていくと思うのです。
コメント
コメント一覧 (5)
心理療法における治療契約の意味↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/6/2/6_2_2_14/_pdf/-char/ja
深澤は次のように述べている。TA における契約主 義の根底にある人間観と信条は;
1私は OK,あなたは OK
2誰でも考える能力があり,自分の人生の最終的,究極的な責任者である
3自分の人生に,または人生から何を望むかというこ とを決められるのは本人だけ
4治療者のできることはクライエントが最終的に望んでいるものを実現することを邪魔しているものがあるとすれば,それを指摘してそれについて取り組むような環境をつくること
5二人で「クライエントが望む変容」のために分かち合う責任と,これを全うするために,互いにどのよの うな貢献ができるかをはっきりさせねばならない事である
と言っています。その通りですが、若く魅力的な女性が甘い香りの激しい台風をある時カウンセリングルームに持ってきて、全身全霊で悪意と善意を剥き出しにしたら時に1人のカウンセラーが適切な距離を持って心を乱さずに、もしくは乱された心を自己洞察しながら、枠組みに沿ってカウセリングを継続できるなら、かなりトレーニングを積んだカウンセラーだと思われます。
いつも鋭いコメントありがとうございます。
境界性人格障害の人は純粋です。
そしてその純粋さが医療者に向かう時、全幅の神格化された尊敬ともなり、次の瞬間には徹底したこきおろしによる否定にもなります。
崇め奉られて「いい気」になってしまうとその次に待っているのは陥穽です。
「先生がいなかったら死んでいました」と多くのカウンセラーが恐怖を感じるかもしれない、追い詰められたクライエントさんの発言をきちんと受け止めて返していくことが大切かと思います。
公認心理師の性的多重関係は、信用失墜行為で、登録取り消しの場合があるのに、医師はそうとは限らないのは、職能団体が圧力団体か否かの違いですか?
いつも興味深いコメントをありがとうございます。
僕は見ていない人をアセスメントして、ましてや診断することはできないので彼女がパーソナリティ障害なのかどうかはわかりませんが、潔癖さと自己への自由を許容することは相反している人間の心性ではなく、当たり前に誰しもが持ち得る特質だとは思います。
あまり詳しくニュースは知らないのですが、性的多重関係は精神科医や心理カウンセラーと担当患者さん、クライエントさんについて起こるものです。
何をもって公認心理師の信用失墜行為とみなすのかは現在明確なガイドラインはありません。
公認心理師には通常よりも高い道徳観が求められるものだとは感じています。