
◯ 公認心理師が精神疾患で登録剥奪となる時
昨日の記事「10.30公認心理師法施行規則改正への危惧-精神疾患は資格取消しになるのか?」の続きです。
読者のねずみ様からコメントをいただき、成年後見人制度の変更にともなって公認心理師以外の資格職も精神疾患患者の権利が制限されるだろうとのことでしたが、今明らかになっている公認心理師制度についてのみ言及します。
他資格については今後注視していきたいと思います。
昨日のインターネット官報
https://kanpou.npb.go.jp/20191030/20191030h00121/20191030h001210001f.html
のp2ですが、第十八条では公認心理師が「精神の機能の障害により、公認心理師の業務を適正に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切にできない者とする」について、届出義務者(戸籍法によれば本人または同居していてもいなくても親族、またはその他の同居人)となります。
そして第十八条は「(必ず)届け出なければならない」と規定しています。
医師法第4条では心身の障害により医業を行うことが不可能な場合には医師免許を与えないことがあると定められています。
医師法第7条には心身の故障による免許取消しの審査規定がありますが、医道審議会の審査を経てのことです。
(歯科医師、理学療法士・作業療法士なども同様)
以下は元々僕が指摘してきていることですが
医道審議会で処分される医師・歯科医師は違法薬物使用、危険運転致死傷、窃盗や診療報酬不正請求でも免許停止処分となっていることが多く、医師にも秘密保持義務がありますが、それを理由とした免許取消処分は見たことがなく、ところが公認心理師がこの処罰を受けると一発で登録剥奪されます。(だから守秘義務を軽く見ていいという趣旨ではありません。)
さて、実際のところ医療や福祉、教育等あらゆる医療職、教育職、福祉職が働く現場では心身障害や故障を抱えるスタッフが必ずいます。
統合失調症、双極性障害の医師も福祉職も心理職もいます。
臨床心理士倫理綱領では心理士は心身の健康を保つ努力義務を謳っていますが罰則規定はありません。
医療、福祉、心理職なら知っていることですが、精神疾患には原因がなく、あたかも時限爆弾が爆発するかのように突然発症することがあります。
精神疾患は必要的届出事項だろうと迫られた公認心理師はどのようにしたらいいのだろうかと思います。
リワーク、復職プログラムを担当している心理職は、メンタルダウンして、その時は働けなくともいずれ復職して元気になった患者さんを多く見ています。
何ら審査なしに心身の故障で働けない=資格剥奪というのは、心理職だからこその違和感を感じるでしょう。
公認心理師制度が発足後5年で見直しがなされる際、良い方向に改善されたらいいと思っていたのですが、今回の法令変更で暗澹たる気持ちになったのはきっと僕だけではないと思うのです。
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今回の改正のきっかけとなった『成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律』の趣旨は
「成年被後見人及び被保佐人(成年被後見人等)の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、成年被後見人等に係る欠格条項その他の権利の制限に係る措置の適正化等を図るため」に「成年被後見人等を資格・職種・業務等から一律に排除する規定等(欠格条項)を設けている各制度について、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、各制度ごとに必要な能力の有無を判断する規定(個別審査規定)へと適正化するとともに、所要の手続規定を整備する」こと
ですので、権利の制限というよりも、権利の保護のための改正だと考えます。
個別審査制度の導入ですが、ご指摘の通り公認心理師については審査する機関が明示されておらず、混乱があるのも理解できますが
制度上の改編ですので、早急にどの機関が個別審査するかも決まることでしょう。
上記の背景を考えれば、暗澹たる気持ちになることはないのではないでしょうか。
医道審議会では、
30人以内の委員により構成される。また、必要に応じ、臨時委員、専門委員を置くことができる。
委員及び臨時委員は、日本医師会会長、日本歯科医師会会長、学識経験者の中から、専門委員は、該当する専門事項の学識経験者の中から、それぞれ厚生労働大臣が任命する。
審議会には各専門分野別に分科会を置く。
医道分科会、医師分科会、歯科医師分科会、保健師助産師看護師分科会、理学療法士作業療法士分科会、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師分科会、薬剤師分科会、死体解剖資格審査分科会(平成20年3月31日改正医道審議会令)
医師、歯科医師、理学療法士・作業療法士などの免許取消・停止などの行政処分とその手続を行う。
そのほか、看護師等の人材確保に関する指針作成、死体解剖保存法に基づく死体解剖資格の認定、各種国家試験の内容・合格基準作成、等に関する諮問に対して、答申することなどが定められている。
医道審議会は医師等に対するチェック機関として設置されているが、実際にはその役割をあまり果たしてはおらず、問題行為を繰り返す医師等に甘く、本来なら行うべき免許剥奪の措置を行うことが非常にまれであり、それによって医師等による悪徳行為を事実上助長し、結果として被害者を増やしている、と批判されることがある[2]。
社会福祉士や精神保健福祉士は、どの部会に入っているのか分かりませんが、、
(4)欠格事由
a .絶対的欠格事由(3 条) 絶対的欠格事由とは,医師、歯科医師免許が与えられない絶対的な法的要件のこと である.未成年者,成年被後見人または被保佐人がこれに当たる
7. 登記されていないことの証明書(医師、歯科医師のみ)
(ア)発行日の翌日から起算して6か月以内のものであること。
(イ)登記されていないことの証明書は、東京法務局民事行政部後見登録課(電話03-5213-1360)、その他全国の法務局、地方法務局の本局の戸籍課で取得できます。
※いずれの法務局も支局・出張所では取得できませんのでご注意ください。
公認心理師
↓
第3 欠格事由
次のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができないものとすること。 (第3条関係)
(1) 成年被後見人又は被保佐人
今後、合格後に書類の提出が必要になるんでしょうか?コメディカル看護師、理学療法士等にはなく医師、歯科医師にはある手続きを、公認心理師にも求めるとしたら、何か裏が有りそうですね。
この手続きの意味合いは、何でしょうか?
いつもコメントありがとうございます。
公認心理師の欠格条項として法に載るので出る可能性があると思います。
医師・歯科医師は診断書や処方箋の発行など制度上の業務も多く、医療についての責任者なので厳しいのかなと思いました。
看護師、理学療法士等コメディカルは「医師の指示」の下に「診療の補助」を行うので、最終責任者は医師(又は歯科医師)ということで、成年後見人、被保佐人では無い事を証明する書類の提出までは求められなかったのかな、と勝手に解釈しています。
今回の被後見人に関する法律の施行により、被後見人等であることを欠格事由としてはいけなくなったので、医師・歯科医師の手続きが変わるのでしょう(合格者全員に個別面接するのはコスト的に難しい気もしますが、どうするんでしょうかね)。
厚労省内では公認心理師を管轄するのは医政局でなく社会・援護局(社会福祉士や精神保健福祉士もこちら)なので
厚労省内では公認心理師は医療職ではなく、福祉職に準じた扱いとするのではないでしょうか。
福祉職の免許取消・停止などの行政処分とその手続を行う分科会がどこなのか、私も知りませんが…
成年後見制度への評価等-精神障害の立場から-
https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n225/n225_01-02.html