◯ 上位資格成立「 産業・労働専門心理師」
2019.2.19に「産業・労働専門心理師」制度がすでに成立したというアナウンスが認定団体のホームページ上でされていました。
認定団体は「合同会社実践サイコロジー研究所」です。
合同会社は株式会社のように大規模な資本金を必要としない、社員が全て資本金を支出するという特徴があり、株式会社に比較すると少額の資金で簡易に設立ができる企業体です。
合同会社は社員と経営者相互の権利擁護の観点からか、全日空ホテルズやパラマウント・ジャパン等の有名企業も多いのですが、そのほとんどがベンチャー企業で、この認定団体もベンチャー企業の部類に入ると思われ、社員数や代表者名は不明です。
さて、この産業労働専門心理師は取得要件のハードルがかなり高く、
1.公認心理師を取得していること
2.キャリアコンサルタント(もしくはキャリアコンサルティング技能士)を取得していること
3.博士の学位を有すること ※博士課程満期退学者は認めません
4.コーチングに関して一定の教育、トレーニングの経験を有すること
5.経営学や人的資源管理等に関して一定の教育、トレーニングの経験を有すること
6.関連領域において5年の実務経験を有すること
となっています(合同会社実践サイコロジー研究所ホームページから引用)。
この資格は十分に高度なレベルを要求しています。
さらにはアメリカ経営学修士、MBAがあることが望ましいともされています。
この資格が求めている経営、経済、労働に関する高い専門性は心理師よりも経営学者寄りなのかなとも思います。
ただ、ベンチャー的経営母体で不分明な組織が「勝手に公認心理師の上位資格を作り出して自ら認定団体になってもいいの?」
という基本的な疑問が湧き起こります。
二階建て資格という点では日本精神科病院協会認定の公認心理師資格も商標登録は申請してあるものの、どういう中身にするのかは不分明なままです。
労働専門の心理師を必要とするなら、産業医も取得することが難しいと言われているほどレベルが高い国家資格、衛生管理者にしたらいいんじゃない?とも思います。
衛生管理者は
1.関係法令
(労働基準法、労働安全衛生法)
2.労働衛生
3.労働生理
科目についての試験が行われ、合格率は5割を切ります。
衛生管理者は従業員50人以上の事業所では必置資格です。
で、思うのは公認心理師+別の資格or,and経験=上級資格、とするのではなく、例えば労働分野に関しては「衛生管理者も持っている公認心理師」としておけば済むので、無理やりドッキングさせる必要性はないと思います。
例えば衛生管理者、公認心理師双方の資格を持った人は事業所からすれば頼られる存在になると思います。
いつも思っているのですが、公認心理師関連の団体間の利害関係も思惑もバラバラです。
代表、理事の知名度があればさまざまな団体がむやみに上位資格を作り出していいとも思っていません。
上位資格を乱立させるとその団体の資質が問われるのではないかと思います。
ちなみにこの労働・産業専門公認心理師の資格は商標登録商標として特許庁で2019/8/30に認定され、現在2カ月間の意義申立のための公告の真っ最中です。
10月30日までに意義申立てがなければ産業・労働専門心理師は正式に商標登録されることになります。
コメント
コメント一覧 (10)
https://ppi.tokyo/organization/
この方が代表のようですね。
コメントありがとうございます。「会社概要」から見ることができました。どうもありがとうございました。
しかも、認定するだけで養成については何も言及していないような…
むしろ、こうした要件を満たさない現任の産業・労働領域の心理職に対しての評価(待遇や報酬)を低める根拠として、企業側に利用されそうな気もします。
今の日本にいきなり欧米基準を持ってきても、社会に受け皿が形成されていないと機能しないと思うのです。
日本においてMBAを適切に評価している企業がどのくらいあるでしょうか。
いつもコメントありがとうございます。
この資格だと要件をぺたぺた貼り合わせて、さて各要件の有機的連携による能力は何か?
ということに疑問を持ちました。
資格を生かして何をしているのかという実績が大切なのだと思いました。
産業保健スタッフでライセンスが必要なのは、産業医と衛生管理者との話がありました。
従業者数が1001人以上の事業所は、衛生管理者の中で1人以上は専任を置かなければならないので、ひなたさんがおっしゃるように、公認心理師(ストレスチェック実施者有資格)で、衛生管理者のダブルホルダーであれば、外部委託で入り込める可能性もありますね。ダブルの国家資格保有で、産業界にも相談業務を越えて運営にも関与する道が開けるかもしれませんね。
ある産業分野の臨床心理士の方が、ストレスチェックに関しては、臨床心理士の資格だけでは、心理専門職であるにもかかわらず、実施者の下位である実施事務専事者にしかなれず、集計や分析などの事務仕事しかできなかったが、公認心理師になり、養成研修を受けたので、やっと実施者になれ、評価票の選定や測定基準の決定について等、事業者に対して専門的な知見から意見を述べることができるようになったとコメントしていました。
確かに臨床心理士の資格だけではストレスチェック実施者にはなれないので、仮に実施者が非心理専門職の公認心理師シングルホルダーであっても、その指示を受けて実施事務をしなければならないのは、ストレスに感じる人もいるかもしれませんね。
ストレスチェックがストレスになるのでは、シャレになりませんね。
ことストレスチェック実施に関しては、
公認心理師>臨床心理士
ですね。
ストレスチェック実施者の資格は、1日の養成研修で取得できますので、関心のある方は受講されてはいかがですか。
ご指摘のとおり心理職はその領域に出て活動すると、主体的にシステムを動かすこともありますし、ストレスチェック制度等、システムの運用を考えなければならないこともあります。
こと産業場面においては経営側と協働して従業員のメンタルヘルス状態の向上に役立たなければならないので心理職もまた運営され、運用されていくので経営、人事感覚と臨床心理感覚を整合させることが大切になります。
だから上位資格を創設するよりもまず公認心理師がかかわって制度を円滑に実施したという実績が必要な時期だと思います。
ストレスチェック制度に関する研究はまだ行われていないので、その研究を踏まえて今後の公認心理師の介入のあり方を考えた方が良いのではないかと思います。
コメントありがとうございます。
1次予防のストレスチェックは、事業所にとっては、高ストレス者を相談等につなげるなどして休職リスクを軽減したり、休職による企業イメージの低下を防いだりするメリットはあると思います。当然、高ストレス者本人の利益にも寄与します。心理職の専門性を発揮する場ですね。公認心理師の資格は必須ではありません。
しかし、これは、あくまでも個人に対するアプローチであり、企業にとっての真価は、集団分析にあると思います。この事を進言するには、衛生委員会にはストレスチェックの実施者は参加できるので、心理職であれば公認心理師の資格と実施者養成研修の修了は必須です。
法令に位置付けられた立場と、心理職として参考意見を述べる立場では、自ずと重みが違いますから。
「衛生管理者も持っている公認心理師」と
「産業カウンセラーも持っている臨床心理士」
とでは、何がちがうのですか?
どっちがメリットが大きいのですか?
コメントありがとうございます。
そもそも臨床心理士と公認心理師は違いますが、それについて考えるのがこのブログの大きなテーマです。
臨床心理士+産業カウンセラーor公認心理師+衛生管理者、という組み合わせには特に大きな意味合いはなく、産業カウンセラー+衛生管理者、でもいいと思います。
産業カウンセラーはハローワーク職員や一部の従業員支援プログラム(EAP)事業では重宝されている資格で、保健師さんが産業カウンセラーを持っていることもあります。
衛生管理者は労働関係ではかなり重みを持つ資格です。
衛生委員会、衛生管理者の役割は産業・組織心理学を理解する上でかなり重要なものです。
この返信を使っては到底書ききれないのでさまざまな信頼のおける文献(ネット上でも)で調べると公認心理師ブループリント用語を理解する上でも役立つでしょう。
ありがとうございました。
私は、民間資格か国家資格かの差かと思ったんですが、実は、もっと深いんですね。