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◯ いい公認心理師≠全ての臨床心理士

この記事は「公認心理師試験Gルート現任合格者への反発」の続き記事として記しています。

現任合格者から既存の心理専門職や臨床心理士が心理至上主義であることについての反発の意見もあったのですが、それは当然のことと思います。

そしてこの標題については「何を今さら当たり前のことを」と思われるかもしれません。

振り返って厚生労働省公認心理師カリキュラム検討委員会議事録や日本臨床心理士会内部での話し合いの記録を読むと、民間資格臨床心理士をそのまま公認心理師に移行させようという動きがあったことが記されています。

民間資格がそのまま国家資格になった例としてはFP技能士、特許等のリスクマネジメントや財産管理にかかわる知的財産管理技能士があります。

ただ、公認心理師法案が国会に上程されるのを見て「あ、これはきちんと試験を実施し、合格者にだけ資格を与えるんだな」と思いました。

精神保健福祉士も言語聴覚士も第1回試験をきちんと実施し、そのまま移行措置はさせませんでした。

国家資格を付与するに当たっては民間団体が実施した試験の合格者をそのまま認めるのではなく、国家が試験を改めて実施するのはある意味当たり前のことです。

臨床心理士=心理職はこれまでの常識でした。

心理職の資格を創設したので新心理職=公認心理師であっても、臨床心理士=公認心理師ではありません。

僕の前回記事には教育関係者からもカウンセリングや相談行為は臨床心理士のものだけではないという指摘がありました。

教育場面のカウンセリングについて考えてみます。

スクールカウンセラーは臨床心理士の「外部性」を重視されて活用されています。

これにも紆余曲折があり、退職教員がスクールカウンセラーになったこともありましたが、全く相談が来なかった、やはり部外者が入らなければいけないという経緯がありました。

ただ、スクールカウンセラーが教育現場に入って教員を「超えて」上の立場には絶対にならないことが大事です。

スクールカウンセラーが行うのは教員に対する上から目線の「指示」ではなく、ケースの見立てを行い、アドバイスを求められたらそこに答える「コンサルテーション」です(文部科学省「スクールカウンセラーの業務」)。

また、特別支援学校では臨床心理士が採用後に教員職員検定を受験して「特別免許状」を得て「みなし教員」として活動することもできます(教職員免許法第5条)。

それでは例えば発達障害について大学院で学んだだけの新卒臨床心理士が「私は心理の専門家ですから」と言って入って行ったら猛反発を受けるでしょう。

特別支援学校には経験20年、30年のベテラン教員がいます。

そういう先生たちからすると経験値がない心理職は大変頼りなく見えます。

つまり資格だけではなく、対処できる経験値が求められているわけです。

どの世界でも同じです。

公認心理師法第7条2号には実習施設として裁判所が規定されています。

家裁は昔から司法心理研究家のメッカです。

家裁に公認心理師既取得者や公認心理師志望者が入った、または入職した後資格を取得したとしても何ら優遇されるわけではないと最高裁家庭局が明言しています。

家裁調査官補は心理専攻者だけでなく、法律、社会学、教育学、社会福祉学専攻者でも受験できる試験です。

そこで先輩の調査官が婚姻費用分担の計算をしていたり、養育費の履行勧告業務をしていたり、道交法や交通事故のインテーク基準を決めるのに四苦八苦していても「私、心理だけの専門家だから知りません」では済まない世界です。

心理職として入っても求められる経験値、能力、センスは試験合格能力と直結はしません。

僕も心理職の仲間うちで集まる事は多々ありますが、臨床心理士=人格者、個人的にもいい人、ということでは全くありません。

人による、というのはどの仕事をしている人でも同じです。

もちろん公認心理師資格取得者も同じです。

そして多くの人たちが指摘している通り、対人援助職のプロとしてやっていくためには、そのための勉強や、他の熟練者に教えてを乞いながら自ら研鑽するという謙虚な心構えが必要となるということです。