◯ 公認心理師現任者Gルート受験者資格はなぜ曖昧なのか?
公認心理師現任者Gルートはあまりにも曖昧な受験資格なんじゃないの?
という批判は根強くあります。
公認心理師受験に必修の科目を大学院で修められなかった現任臨床心理士救済措置のために現任者ルートを確保していただけかというと、それだけではありません。
公認心理師カリキュラム検討委員会議事録を改めて読んでみると現任心理職数万人がいる中で、臨床心理士でなくとも、精神保健福祉士も心理相談業務を行う現任者として想定されています。
臨床心理士と精神保健福祉士の資格を重複して所持している人々が全体の4分の1〜5分の1程度で占められていることについて、精神保健福祉士の受験を認めないわけにはいかないだろうし、業務独占でない公認心理師制度は精神保健福祉士や精神科医が行う心理援助業務を否定することはできません。
公認心理師受験資格を臨床心理士に限らないということは議事録中には明記されています。
週1回、ボランティアでも反復継続的に心理業務を行っていたことが証明できればよいというのがカリキュラム検討委員会の考え方で、日本心理研修センターもボランティアを現任者として認めていて、Gルート受験資格はそれに沿ったものになっています。
検討委員会の中で割と年配の委員(北村座長)が、もうまもなく心理職の職業人生を終えようとしている人はもういいかなあという人も多く、そういった人たちは受験しない。
それはそれで人生の選択なのでいいのではないかと思いました。
僕の記事を読んでいる方も指摘していたことですが、第2回試験のD2、大学院新卒ルート合格率58.5パーセントで、確かにこれは臨床心理士と同じぐらいの合格率なので、試験当局としては十分な説明根拠となる合格率で、この試験内容の正当性を主張できる根拠となりました。
カリキュラム検討委員会では定められた26施設のうち、職種としては児童相談所などを含む心理専門以外について取り上げられていました。
ただし実際に心理相談業務に当たっている看護師、教員、作業療法士などは言及されていませんでした。
それでもGルートだけで第1回、第2回試験を含めて2万7千人以上の合格者が出ています。
僕も一人一人について受験資格を精査することはできないと思いますが、本人からでも所属長からでも誓約書を出させればこれでもかなり「真の現任者」を絞れたと思います。
僕は心理業務専属者以外にもこの資格を付与して裾野を広げてもいいと考えます。
公認心理師の知名度や数が広まらないと公認心理師として活動していく実働人員は確保できません。
ただし、明らかな詐称はダメです。
結局このままだとよく勉強した非心理専門職が公認心理師試験では心理専門職を駆逐してしまうかもしれませんが、「大学院レベルの知識とセンス」は試験成績でしか推し量れないというスタンスということは事実です。
あとは試験が真っ当な心理職の知識とセンスを持った合格者を検出して選び出せることができるかどうか。
受験者ももちろん試験で試されていますが、試験のありようや出題内容、傾向、そしてこの資格の持つ意味合いも国民全体から見られているわけです。
コメント
コメント一覧 (6)
クライエントからしたら、有資格者となれば、心理のプロだと思って能力に期待するでしょうから、検査もセラピーも提供出来ない心理師がいる事が公に知られてしまうと、何となくまずいんじゃないかと思いました。経済的自由もあるかもしれませんが、罰則も更新制度もないので研鑽を怠る者は必ず出て来るでしょうし、資格の名にあやかって、理論的根拠もないような自称セラピーだとか、心理的支援を展開し始め、おかしな商売をする有資格者も今後出てくるでしょう。それだけ大学や院での心理としての専門職教育や倫理的指導を受けてきたことは重要だと思いますが、いかがでしょうか。
コメントありがとうございます。
日本公認心理師協会では公認心理師以外の心理有資格者は準会員で発言権はかなり弱いはずです。心理業務とは何か?については以前公認心理師カリキュラム検討委員会でも論議されていましたが、例えば司法矯正で刑務官や少年院教官はいわば司法臨床と呼ぶべき特殊な活動をしていることが臨床心理業務として認められています。生活場面での児童への福祉的臨床業務もかなりレベルが高く困難な業務です。週1回ボランティアでも認めるというのは裾野を広げる現任者への門戸を広げていますが、結局当局としては心理専門性を試験点数によってしか測定できないと考えているようです。公認心理師倫理についてはまだまだこれから議論の余地はあります。心理統計は公認心理師の必須科目でこれを落とすと合格は困難です。研究にも対応できる大学院レベルの試験に合格した公認心理師の活躍は、他資格ホルダーでも大いに期待されますし、今後の臨床心理研究に寄与して欲しいと願っています。実際保健師、看護師ほかの方々で心理にかかわるレベルの高い研究をしている人も大勢いるわけです。
司法矯正領域にはすでに、法務技官(心理)という矯正心理専門職や家庭裁判所調査官という心理職がいますし、児童福祉領域に関しましても、既に児童相談所児童心理司、心理療法職員の配置義務があり、専門業務として心理臨床活動していますので、法務教官や刑務官、児童指導員などの処遇職員は現任者と呼べるような心理職ではなく、あくまで対人援助職、教育職、公安職員の範疇になるかと思います。
私は公認心理師を取った臨床心理士ですが、未だに他職種からの参入は快く思えません。心理臨床経験のない素人有資格者がクライエントに間違った方法で関わったり、養成課程も出ていない、すなわち臨床訓練を受けていない者が自分の感情のままに倫理観を見失い、クライエントを深く傷つける恐れがあるからです。実際このことを口にすると誹謗中傷がネットで飛び交うゆえに自重しているだけで、学会や研修会で心理士の方々と話すとそう思われている人はかなり多いですが、この点、心理師の業界は今後ますます実力差が浮き彫りになってくるでしょう。謙虚さもなく、ペーパー試験だけで資格を取った一部の他職種の方々が、変な万能感で既存の心理職を批判することも数多くあるようですが、心理職としていっそう洗練された倫理観や臨床能力が身につくよう、資格自体の効力が高まる研修システムが出来てくることを望みます。
コメントありがとうございます。
日本では教員臨床心理士がいて、法務教官が心理専門職として認められていて、多分諸外国よりも心理職の概念は広くとらえられているのだと思います。カリキュラム検討委員会で幅広い現任者を対象として認めることが決定した後、多くの元々他職種の方々も公認心理師資格を取得しています。(本来の意味と使い方が異なりますが)「生活臨床」としてカウンセリングをするのではなくクライエントさんと時間を共に過ごす臨床心理士もこれまで多くいます。確かにご指摘のとおり現任者をめぐっては錯綜した認識をお互い持ちやすいのですが、専門性の高い試験を通過したということだけが心理実務の検出力となっています。このような状態の中、他職種から参入して心理資格を取り、そのまま他職種業務を続ける方には心理の知見を持って心理オンリーで仕事をしていく心理職と協働連携をして欲しいと思っています。
こんにちは。つい最近びっくりしたのは、私がよく通っている柔道整復師の先生が、二度目の挑戦で公認心理師国試に合格されたことです。専門学校卒業で、心理学はほんの少し一般教養で勉強しただけの方ですが、現任者と認められて国試に合格。登録すれば晴れて柔道整復師と公認心理師とダブルライセンスになります。良いか悪いかは別として、この先生、傾聴にはとても長けています。
このような方がGルートを使って、あと3回流れ込んでくることになりますが、私は?という感じです。
コメントありがとうございます。
公認心理師カリキュラム検討委員会は現任者については全て所属長の職印があり、所属長が心理業務をしていたと証明していれば問題ないと決定、現在の運用もそのようになっています。これから5年間の現任者がどういった人たちが資格を取るかによって資格の価値も決まってくるでしょう。今僕にはその方が資格を取得したことの是非はすぐには言えませんが、やがてこの資格が広まった時に国民やクライエントさんからの評価がどうなるかが資格の価値の行先を決めるのではないかと思っています。