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第2回公認心理師試験は臨床能力を測定できたのか?

受験生の方々から話を聞いていると、本当に日常的に臨床業務を頑張っている人たちが多いです。

臨床心理士資格があって総合病院精神科でバリバリと働いている人がいます。

「明日開頭手術する患者さんなんだけどさ、脳腫瘍じゃなくて統合失調症の可能性ないかなあ。心理テスト朝イチで所見を出といてくれる?」(医師)「えっ」(心理)というのはあり得る話ですし、そんな仕事の仕方をしている心理職はあらゆる分野にいます。

心理職も福祉職も多忙な現場で残業漬けになって働く人は多いです。

個人的事情はどんな試験でも一切考慮されません。

子育て、家事、介護でクタクタになっている人もいます。

「さてどうやって勉強時間を捻出しよう。あ、できない。ぶっつけ本番でテスト受けちゃえ」

と受験して合格点スレスレで合格した人、不合格だった人がいます。

以上第1回試験の話です。

臨床心理士試験の合格率は6割、第1回公認心理師試験合格率は8割、一見合格率は高いように見えるので「なんだ、こんな試験簡単じゃない」と一般的に思われるかも知れません。

ところが例えば臨床心理士試験については、毎年専門の大学院を卒業しても4割の人が落ちるわけです。

1回、2回と落ちて「もう1回落ちたらもう受験やめようかなあ」という人が3回目に合格した、どこかへ行って消息不明いう話も何回か聞いたことがあります。

公認心理師試験は第1回目から受験者の臨床能力を測定する試験ではありませんてました。

新公認心理師になったからといって、さきほどの例えのように迅速に心理検査ができる能力が身につくわけではありません。

認知行動療法はバリバリの本流の精神療法のように扱われていますが、精神分析、芸術療法、催眠、EMDRなど学派は星の数ほどあります。

心理テストも描画を極めているとクライエントさんの顔を見ただけでどんな絵を描くかを見抜く能力がある達人もいます。

そういった実情の中で公認心理師試験問題は臨床能力を測定できたでしょうか?

研究に役立つだろう心理統計、実験法の設問を一生懸命勉強、臨床能力の向上に役立って、クライエントさんが「なんだか心理の先生は国家資格を取ってから全然一味違うしキレがあって素晴らしい」と思うことはありません。

5領域にわたる詳しい知識の学習は日ごろの臨床活動に深みを与えますし、何かの際にはどこにつなげることができるかということについて法的、制度的な知識は伝えてくれます。

公認心理師受験勉強が全く実務に役立たない試験とは思いません。

アメリカの臨床心理士は博士課程卒後基礎心理学中心の50パーセント合格率の試験に合格しないとライセンス取得は不可能です。

そして基礎心理学、統計、自分が寄って立つ立場とは別の知識を学ぶことに意味がないとは思いません。

しかし難易度のハードルを上げ過ぎて正答困難な試験にしてしまうことが正義という説も難があります。

公認心理師試験が行われると聞いた時、僕は勝手な憶測で応用分野については医療、教育、福祉、司法、産業領域から2領域を選んで答えればいいと甘い見通しをしていたのですがそうはいきませんでした。

全科目をきちんと学ばせるということにはそれなりの意味があることは認めます。

社会福祉士は0点科目が18科目中1科目でもあると合格できません。

ただし、社会福祉士のその科目は社会福祉に関するものがほとんどでばらつきはあまりありません。

それでも社会福祉士は合格率が低い難関資格です。

医師国家試験は合格率9割程度ですが既卒者の合格率は5割程度、絶対に選んではならない禁忌肢問題もあり、医師になれなければどんなに優秀な成績で医学部に入ったとしても、ただの人より格下に見られる人間となってしまうと思い国家試験受験者は必死でしょう。

医師国家試験は基本的な生物学から全科臨床能力知識が必要で、かなり困難な試験です。

何が言いたいかというと、公認心理師資格は他の資格とは違う独特の癖を持った資格として位置付けられているし、今後もそのようになっていくだろうということです。

基礎心理学も知っておいた方がそうでないよりもいいですし、統計も同様です。

基礎心理学や社会心理学も知っている、自分が所属して仕事をしている主務領域だけでなく、他領域も知っている心理職はクライエントさんに信頼されやすいでしょう。

将来的に公認心理師が国民の中で広く認知された時、幅広い知識がある心理職は感心されるだろうと思います。

しかし試験の難易度が高すぎて当の公認心理師にどこに行っても会えないということでは国民に知ってもらうことすらできません。

臨床心理士も地方になればなるほど、患者さんがカウンセリングを受けたいというニーズにはこたえられないでいます。

多くのカウンセラーから誰か相性がいい人を選ぶよりもカウンセリングを諦める人たちは多いでしょう。

公認心理師試験は臨床心理だけでなく基礎分野、臨床近接分野が多く出題されてもいいと思います。

ただしそれも限度があり、誰も正答できない、正答率30パーセントぐらいの設問は難問というよりも悪問なのかもしれません。