◯ 第2回公認心理師試験は本当に難化したのか?
「第2回試験がそれほど難化したとは思えない」「ひなたさんが想定している平均点の算出基準は何なのか?」「レベルを下げて合格させるのはどうかと思う」など僕の見解への疑問、異論を含むコメントやメッセージもあります。
対面でも「あれ、書いてあることはそういうことでいいの?」と直接聞かれることがあります。
第2回試験は本当に難化したのか?
という点について検証してみたいと思います。
全ての問題について検証はできませんが、曖昧な選択肢が多かったことは確かだと思います。
実際の問題を振り返ってみます。
問2はケア会議です。
平易な問題かもしれませんがどんな対応をするべきかという設問で、適切な対応を選択させるのは知識問題というよりは配点3点の事例問題がふさわしいと思います。
問3、心理学史です。
頭の中に心理学史が入っていれば解けます。
ただし、設問のような形でいつの時代が主な心理学かというずばりの解答に基づくテキストの文言はありません。
そしてこの心理学史問題には価値観が入っています。
自分が拠って立つ学派にとらわれてしまうと正答は出せません。
問10、これは感情に関するモデル・説を問うています。
どの公認心理師受験テキストでも見たことがない用語でした。
問35、公認心理師の責務、法文上罰則と行政処分の違いを理解しておかないとならないですが、司法心理関係者よりも純粋に法律論を理解しておく必要があります。
問37、メタ記憶的活動、記憶モニタリングについてきちんと理解している受験生がどれだけいただろうと思いました。
問39、思春期クライエントとのかかわりについても、困難な問題ではないですが本来事例問題かと思います。
問45、SOAP、診療録の扱いはきちんと学んでおけばいいという事はわかりますが心理の問題かなと思いました。
問56、女性更年期の特徴について試験前に勉強して知識を得られた受験生はいたのかなと思います。
以上、これはほんの一例です。
統計法、脳科学、発達心理学、各省庁から出ているガイドラインを全て読むだけでなく論文まで遡らなければ解けなかった問題もあると思います。
精神医療以外の医療知識全般を問う問題もあります。
基本的な心理学的知識や法律は全分野にわたって理解しておく必要があり、落とせません。
心理テストは100種類以上を網羅して使用法、目的を理解しておかなければなりません。
それに加え、紛らわしい選択肢のうち、レミニセスバンプ、COGNISTAT、ジストニア、トラウマティック・ボンディング、怒りの進化心理学、運動視のMcGurk効果、マッハバンド、McCollough、ソマストタチンなどの(僕が感じた難語)をどれだけの人が理解していたのかと思います。
学説、用語、人名についてもR.L.Selman、Flynn効果、E.H.Schein、J.Belskey、I.D.Yalom、PECSを事前にどれだけの受験生が理解していたかは疑問です。
難用語、各分野での正確な知識、迷いのある選択肢が多かったので、第1回試験のようにすらすらと7割8割解けた受験生は少なかったでしょう。
ブループリントの学習範囲に明記されていないし参考テキストが役に立たなかった問題群を見て呆然とした人たちもいたでしょう。
勘や国語力で解けた問題もありましたが難易度は高くなった印象を受けています。
僕が不勉強で、実はこのぐらいは常識だという受験生の人もいるかもしれません。
「この知識を抑えておくべき」というガイドラインがブループリントと実際の出題の間で乖離していたように思えるのです。
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コメント
コメント一覧 (13)
今回の問題はブループリントを正面通りに受け取っていただけでは正答できなかったという意味では難問だったと思います。
試験委員の錚々たるメンバーからは、委員の持っている知識や経験をそのまま問題にぶつけて反映させたのかなあという感じです。
したがって受験者にとっては「聞いてない、ズルい」という印象を与えただろうと思います。
僕は今回の問題難易度からは点数調整をせざるを得ないと感じています。
私自身、自己採点で138点+1点ぐらいので合格発表まで冷や冷やしています。
問題難易度に関しては、点数調整されると思っています。個人的には138点から-7~8点ぐらいなのかな、と予測しています。私の場合は全くの根拠がありませんです。ですが、以前受験した。社会福祉士の試験に同じような経験をしているので、「これは点数調整はあるだろ」と勝手に考えています。
(社会福祉士は90点/150点が合格基準でしたが、私の年は80点まで合格基準が下げられて、合格率が28%ぐらいでした)
もし合格できた際には、今務めている「地域包括支援センター」でどのように公認心理師の資格を活かしていくかを模索していきたいと思っております。
これからもブログの記事を楽しみにしております。
僕はクライエントさんと会う中で、心理だけの力ではどうにもならないことも多々あり、地域包括支援センターの方々には日ごろからお世話になっています。
また、地域包括支援センターに公認心理師の方がいらっしゃるようであれば大変心強く協働して仕事ができると思います。
さて、なかなか前年度の合格基準に楽々と達したという受験生は少なく、なんらかの措置があるものと期待しています。
たか様のような方が公認心理師としてご活躍いただければ今後の心理的要支援者のためにもなることと思い、応援申し上げております。
第2回受験者の私達は翻弄された感が満載です。試験直後から受験仲間達から「一浪です」「撃沈中です」のメールが飛び交っていました。自分達なりに試験には備えてきた(勉強)つもりです。が、結果6割も取れていないと判り、来年に備えていったい、何をどう勉強すれば良いのか分からなくなりました。臨床心理士も精神保健福祉士も学校心理士も、仲間達はほとんど撃沈中です。
コメントありがとうございます。
僕の周囲も同様の方々ばかりです。
私見ですが、ブループリントの出題範囲内とはいえ知識を問う問題では法文やガイドライン、教科書だけでなく、ピンポイントで論文にまで当たらなければならない設問もあったと思います。
したがって事前の学習領域をきちんと示すべきだったのではないかと思っています。
それが「難化」の要因です。
今後同様の問題が続くようならば試験制度そのものの見直しも必要かと思います。
帰りの電車の中で、
問題を作った先生たちは公認心理師の教科書?参考書を見て作ったのかな。知らない言葉がたくさんあった。
と知り合いの方に言っていた人がいて、思わず、私は見知らない方でしたが、
ビックリした問題でしたね。皆さん、そう思っていると思いますよ。
と言ってしまいました。
私は、学校に30年以上勤務していましたが、
学校関係の問題をかなり間違いました。(笑)
自殺についての授業も知りませんでした。
私の出来は、ぎりぎりでどうなるか?という感じです。
コメントどうもありがとうございます。
この試験は実務経験がある領域だから得点できるというものではなく、最新の関係省庁ガイドライン、法律、規則、施行令と周辺領域を学習しておかなければならないということで、第2回受験者の方々にはかなり厳しい試験だと思いました。
試験のための勉強をすることで実践的に役立つ知識を得られる問題が望ましく、そのための学習範囲を明らかにして欲しいものだと今回思いました。
私は、第1回国試は受験していません。第1回国試を過去問として、全問解いたわけではなく、難易を比較できないので、ここで発言してよいのかわかりません。場違いだったらお許しください。
受験対策に、K社とF社の模試を受けましたが、私には、両社の模試の方が遥かに難しく時間もありませんでした。
今回の国試は、ネットにアップされた受験対策の動画にあったように、「3割はできなくて当たり前。すぐにあきらめて先に進め」を実行したので、午前も午後も30分ぐらい早く終わらせることができ、見直す時間も取れました。
わたしは、心理の専門家ではないので、あきらめて先に進めたのですが、むしろ専門性の高いかたの方が、迷われたのではないでしょうか。
ただ、受験後に出口で配られていた某出版社のweb 速報で採点したら145点で、K社の解答再現サイトでは160点と大きな開きがありました。
受験対策の専門家の方も、解答が異なっていたようですので、その問題を間違えたとしても、6割は取れない問題だったのでしょうか。
悪問と指摘された以外の、各社の予想解答が同じであった問題を落とさなければ、6割は取れたように思いますが、如何でしょうか。
コメントどうもありがとうございます。
今回の試験は僕としては心理職として必要な範囲内だけを超えた医学的、法律上の知識を要した問題で、心理学設問でも選択肢に迷い、見知らぬ単語、人名、学説満載だったと思いますので、相当優秀な方で隅々まで勉強をしていた方だとお見受けします。
そういった優秀な方にはぜひ今後心理の現場でご活躍していただきたいと思います。
今後心理的要支援者に対して支援するようにこの時期にナーバスになっている受験生の方々に対してご配慮してくださるようにお願いできれば幸いです。
私も最近心配していますが、Gルート受験者のその後です。
私は心理職ではなく福祉職で今年受験しました。心理学とは少し縁がありカウンセリングの感覚は少しわかると思います。
今年受けるにあたり去年の過去問を最初に行った所、勉強しなくても5割の配点をとれました。事例のおかげです。
そんな去年の試験を合格された方々ですが、心理とは無関係の仕事をされている方がすでに公認心理師としてカウンセリングを行われている現状があります。
心理検査(費用も高いのでしないのかもしれませんが)はどうするのでしょうか?用いられる療法の具体的手順は?エビデンスは?無いなら一般常識の範囲を出ないのではないでしょうか。
私もこの資格、単独では意味がないと考えています。今回受かっても現状では名刺にも載せないつもりです。
しかし私も資格を活かした仕事をしたいし、大多数の方々もそうでしょう。
早急な公認心理師協会、支部の設立と、Gルート合格者だけでも登録者への実習、実践に向けた研修を必須にすべきだと思っています。
私も合格したら実践力をつけるために勉強していくつもりです。
コメントありがとうございます。
福祉職で心理の世界に興味を持ち、資格取得を目指すというのは素晴らしいことだと思います。
福祉職に心理的見地から当事者の方への支援の視点をより深く持っていただけることはかなり力強い支援になると思います。
さて、心理検査の件についてですが、心理検査は公認心理師試験に正解できる知識だけでなく、実践的に実施する教育を受け、経験を積まないと難しいところがあると思います。
他職種から公認心理師を取得された方にとってはその辺りは確かに大きな課題となるでしょう。
せっかく心理的な知識を得られたのですからぜひ職務に当たられるに当たってその知識を生かしていただければ幸いと思っています。
コメントありがとうございます。
わたしは、教育畑の出身です。
教育行政で教育相談員をした後、現在はSCをしております。
私が雇用されている自治体は、心理の専門家は臨床心理士。その他の資格は、その下のランクと、はっきり分類されております。
心理の専門家とは臨床心理士のことです。
私は、臨床心理士ではないので、心理学を専門に学んでいるわけではなく、専門家ではありませんが、心理の仕事をさせていただいており、現任者枠で受験をしました。
言葉が足りず、すみませんでしたが、要支援者の方とのかかわりは、少なからずあります。
さて、今回の国試は、心理学にかかわる問題が難問で、他の分野の知識が必要な設問がそこそこ出ていたのであれば、心理の専門家以外の者には、自分の専門とする分野において、少なからず利があったのかもしれません。
面接や実技試験や内申書のようなものがなく、知識偏重にならざるを得ない国試の、ジレンマのように思いますが、如何でしょうか。