◯ 公認心理師資格を取らない方がいい人・取る必要がない人々
これまで公認心理師試験のことばかり書いてきました。
公認心理師数が必要だと書いて来たので、公認心理師資格をどんどんいろいろな人が取得すべきだ、と僕の主張が受け取られているかもしれません。
実は受験者の中にも「取らない方がいい人」や「取らなくてもいい人」はいます。
医師はほぼ必ず医師の仕事に就きます。
公認心理師取得者のスタンスは異なります。
公認心理師は名称独占資格に過ぎないのですからタンス資格にしてしまう人もいるでしょう。
1.取るべきでない人
⑴ 多重関係が生ずる専門家
養護教諭のしている援助業務はほぼ心理と同じ仕事なので、意義は十分にありそうです。
管理職、一般の教員は公認心理師資格登録とともに教員業務に支障をきたすことが考えられます。
多重関係が生ずるので立場上資格を取らない方がいい人はさまざまな領域にいるでしょう。
⑵ 資格を取るだけで満足する人
他資格ホルダー、もしくはすでに心理以外の職に自己のアイデンティティを持っている人がいます。
教員もそうですが、公認心理師を取得すれば確かにハクはつきます。
今までしていた仕事を捨てて心理職に転職するなら心理専門家として生きることができますが、心理職はそれほどまでに魅力的でしょうか?
名刺、名札に「公認心理師」と書いてあっても「心理面接をしてください」「心理テストをしてください」というクライエントさんや現場医師からのオーダーに応えられない、やる気がない人で「あ、それできませんから」と答えるようでは「取っただけ資格」になってしまいます。
それでも他領域の人でも心理知識を得て元々の仕事の幅を広げることは意義があります。
資格取得したから心理専門家と対等以上になり、心理職と競い、プライドだけを満たすという資格の取り方は違うと思います。
僕は他職種の人も幅を広げることにも意義があると思いますが、試験実施側では違う意図がありそうです。
資格を取っても心理業務の実働人員にはならない、養成施設で指導に当たれない人は資格を取得しても戦力外とみなされているかもしれません。
⑶ 心理業務をしていないし今後もしない人
こういった人は受験を自ら辞退すべきと日本心理研修センターは考えています。
企業でも官公庁でも「◯◯相談員」という名目だけで相談業務をしていない、実質上は総務や人事の仕事をしていて、今後も心理相談をしないであろう人たちでこの資格を取りたがるもいます。
2.取る必要がない人々
医師は取らなくても業務に支障はありません。
公認心理師を取得して養成指導に当たる立場の医師は資格が必要と思います。
他資格ホルダーで自らの立ち位置がはっきりしている人、自分の職務領域だけで仕事をする人も取得する必要はありません。
私設開業をしていてキャリアコンサルタント、コーチング等で一定以上の地歩をすでに築いている人たちも無理をして取得する必要はないでしょう。
私設相談員が仕事の幅を広げるために取るならば十分に意義があることですが、資格と関係なく、ただ事務所の集客を考えるのならばそれも違うような気がします。
3.結語
資格がどうしても必要な人々に加えて、公認心理師を資格マニアのイチ経歴だけとしてしまう人々がいることを行政は把握しています。
また、他領域活躍者中、公認心理師資格を生かして将来的に心理業務を側面から支えていく人も求められていそうです。
「不合格だから職業人生が終わってしまう、取得しないと相当な不利益をこうむる」人たちはこの資格が必要です。
確かにこの試験は難しく、下方得点修正があると決まっているわけでもないので、得点率6割厳守だと軒並み元々の心理プロパー以外は合格できなくなってしまいそうです。
「不合格だからダメ、自分の人生が終わる」わけではない人々も多いでしょう。
もちろん試験は人格、人柄やや知能を問うていません。
不合格だったからといってその人の人生そのものを否定するわけではないのです。
今回心理の世界に触れた、そして元の仕事で自分を磨くというプラスのチャンスが与えられているという考え方もできると思うのです。
コメント
コメント一覧 (6)
資格は、知識にしか過ぎません。資格が有っても、直にその内部の状態を知れませんから。追い込んでしまうタイプや、追い討ちを掛けて歩め無くしてしまう結果さえも生みます。資格で、自意識過剰になっても中身が無いのでは、クライアントとの向き合いさえ、いい加減になってしまいませんかね?
そのとおり、資格は専門性の入口に過ぎません。
僕も日々学ぶことが事を怠らないように心がけています。
また、知人の心理職にも真面目に学んでいる方が多く、今後ともクライエントさんのために努力したいと思います。
誰かが自分の価値観で「良い」「悪い」「取らないほうがいい」「取る必要がない」なんて決めつけられるものなんですか?
鋭い見識からのコメントありがとうございます。
資格取得には責任が伴うことがあります。
例えば医師が公共の交通機関に乗車していた際に救命措置をとらずに患者が死亡、重体となった際には法的に責任が問われます。
資格取得には取得した際にもその後の責任も伴うものと考えています。
公認心理師には罰則規定があり資格剥奪の行政処分もあります。
例えば私的関係と職業的関係を混在させた多重関係を避けることができなかった、公認心理師倫理が厳しいものであることを知らなかったという態度では済まされないと思います。
資格取得には責任が必ず伴います。
そうした心理師の行為は、誰にでも公開されている公認心理師法を知ることができるので、クライエントさんの目にネガティブに映ることを危惧している次第です。
以上私見ですが回答とさせていただきます。
> 養護教諭のしている援助業務はほぼ心理と同じ仕事
と仰る時点で首を傾げます。この言い方は、養護教諭にも心理職にも非常に無礼ですね。双方の専門性をもっと突き詰めてお考えになることを…老婆心ながら…お勧め致します。
コメントどうもありがとうございます。
おっしゃるとおり養護教諭と心理職の専門性と職務領域は異なります。
僕がスクールカウンセラーをしていたころは英語ではhealth teacherと言われる養護教諭が生徒たちの心身の状態に気を配り、医学的知識、心理学的知識を駆使し、さらに非行傾向がある子どもについてのアセスメントを行い、関係機関と連携、被虐待児に関しても児相と連携を取るという八面六臂の活躍をしていたことに感心して今回の発言となりました。
ただし、ご指摘のとおり専門性も期待されている役割も違う職務です。
読者の方々に誤解を与えるような表現をしたことについてお詫び申し上げます。
貴重なご指摘どうもありがとうございました。