そもそも誰のための公認心理師試験なのか?
昨年第1回、今年第2回を終えて受験生たちが合格発表待ちの公認心理師試験はいったい誰のためのものなのか?
という目的について考えてみることがこの資格を必要としている人にどのように役立っていくのか、ということが公認心理師試験の難易度や公認心理師必要数を論じる上でのスタートにもなります。
そして今後この資格がどう生かされていくのかを考える材料にもなるのだと思います。
1.受験者のため
すでに合格している公認心理師の人が「試験に合格してよかった、これで仕事先でクビがつながったよ」
ということは誰からも一言もはっきりと聞いていません。
その逆に資格を取らなかったから失職したということも聞いていません。
厳しい職場はたくさんありますので例外もあって僕が聞いていないだけ、今後どんどん締め付けは厳しくなるかもしれません。
元々臨床心理士のようにどっぷりと心理の世界に入っていた以外の人は、元々行っていた相談業務にプラスαが加えられたことは大きな収穫になったと思います。
(近縁他資格所有者、非院卒の私設
相談員など)
2.クライエントさん、患者さんのため
本当はこれが一番大切なはずですが、忘れ去られがちになっています。
この資格は間接的にしか役立たないと現時点では思います。
確かに公認心理師シフトは始まり、心理師でないと保険点数が取れない仕事も多くなってきました。
クライエントさんからしてみると、心理の先生が一対一のカウンセリングの回数を増やしてくれた、集団療法の出番も増えた、やってくれることが増えた、とクライエントさん方から有難がってもらえるなら本当にそれは価値のあることです。
資格を取ったからといって心理職がクライエントさんに自慢する内容のものではありませんし、そういう人がいたのを聞いたこともありません。
3.医療を中心としたヒエラルキー制度構築・維持のため
合格者の中で未登録者はこの理由も大きいと聞いています。
これまで臨床心理士としてやってきていてそれなりに厳しい倫理観を持ってやってきた。
しかし公認心理師の「主治の医師の指示」に疑問を持つ人たちが多いと聞きます。
医師や校長を頂点としたヒエラルキー社会の中では公認心理師マインドを身につけた従順な心理職は扱いやすく、また命じやすい対象となることも確かです。
公認心理師には資格取得者として専門家としての太鼓判が押されるとともに義務も伴うことになります。
以前から指摘していたことですが、教員公認心理師が生徒指導、教科指導、部活指導をしながら心理相談活動を行うことはかなり無理があると思います。
多重関係とみなされるでしょうし、「資格取ったし職場に届け出もしたし、生徒や保護者にもアナウンスしたりそれはそれでまあ今は置いておいて生徒に厳しくする」
というような理屈は頭が良く勉強熱心な保護者には通用しません。
ヒエラルキーから外れたところで公認心理師資格を活用しようとすると自らのクビを締めかねません。
「勉強ばっかりさせられてお金取られてしかも自由奪われるの?」一般人から聞かれたことがあります。
4.結語
公認心理師となって登録し、心理職として第一線で活躍する人は大多数ですが、資格を取っただけという人たちの母数もかなり多いと思います。
行政側は第1回目に80パーセントの合格率を得点傾斜配分をしてまで行いました。
数が欲しかったからです。
それにもかかわらず当局としては未登録者がこれほど多かったのは意外だったと思います。
今回の試験問題がおしなべて悪問だったと僕は思いません。
ただ、これだけ専門性が高い試験を行ったのだし、有資格者絶対数も不足しているでしょうから、実働できる有資格者がどんどん現場の最前線で活躍させることの方が試験で切り捨てることよりは大切だと思います。
魅力ある資格とするためには各所で活躍する実力ある公認心理師が増えて欲しいと思います。
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