ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2020年03月

FDC40373-96DB-4129-ADE7-B7353DDD17FF

◯ 2020.3.16.現在COVID-19新型コロナ情報・心理職には何ができるか?

2020.3.16正午までの集計厚生労働省発表によるとこれまでの累計感染者数814人、患者714人、無症状陽性者82人、164人退院、138人退院、無症状陽性者25人です。(クルーズ船除く)

この数字を見て「ああ日本はどんどん感染が広がっているからおしまいなんだなあ」と思う人もいるかもしれませんが、この数字だけでそういう判断をするのは無意味どころか有害に過ぎません。

日本地図を出してここの地域でこれだけ感染者が出たぞ、というマスコミの報道はぜひやめていただきたい。

COVID-19は発症源と推定されている中国でも新規感染者よりも回復者が多くなっています。2020.3.9実効再生産数(患者1人が患者を感染させる数が専門家会議では1前後ということは、これから感染者が出てこないという意味ではなく、感染者が出ても鎮静化するのは実効再生産数R0>1.0の場合で、これは日本においてはまだ今後はわからない数字です。

日本の初動体制がかなり批判されていますがクルーズ船3,711人乗員を停泊させて降さなかった、密閉空間で712人感染、うち334人、退院者は458人です。日本の医療スタッフが政府の封じ込め施策後にいかにクルーズ船内の患者救命に尽力したか、これは当該医療従事者としては十分誇っていい数字だと思います。

厚生労働省も今回の感染がこれで全て収束するとは考えておらず、再感染の可能性があると明言しています。

この感染症はパンデミックだとWHOが宣言したので「ああ、この世界は終わりだ」と思うのはやめましょう。この感染症は致死率1.0パーセントから3.5パーセントと言われ、80パーセントが軽症で80パーセントが他者に感染させない病です。

重症呼吸器肺炎、致死率9.6パーセントSARSからは多くの国がその封じ込めに成功しています。顕著な施策に成功したのは台湾で、SARSにもCOVID-19にも特効薬がなかったにもかかわらず、発症者を隔離、人工呼吸器や輸液の活用で数多くの生還者が出て、やがて鎮静化しました。

台湾における感染症対策はスマートフォンとQRコードを利用してビッグデータを解析して124項目にわたって分析を行なっています。台湾はいち早く日本を危険感染国として入国制限をしているのはこういうデータに基づいているからでしょう。(Medical Tribune)

致死率5割と言われるエボラ出血熱もこうした封じ込め作戦で鎮静化させたのですが、潜伏期間が長く、症状が顕在化しにくいCOVID-19はクラスターで分類しても長期化する可能性は確かにあります。

ただし、これもR0数値にかかわって来ています。発症してからの日本の感染者数は必ず増えます。 ただし、回復者がどのぐらいいるのかという数値にも注目しないと「あ、ほらまた出た、日本は危険だぞー」というマスコミに踊らされます。この国に限らず、人というものは破滅的な情報を信じたくなるものです。

2009年、夏に流行した新型インフルエンザはタミフルの有効性も確認されないままにいつの間にか収束しました。1918年のスペイン風邪は不安だけが世界中にウイルスとともに蔓延していました。

わからないわからないばかり言っていても仕方ないので、手洗いはきちんとしましょう。一介の心理職ですが、不安だ不安だと不安を広げるよりは、正確な情報で安心と安全を確保する方が大切だと思っています。

今この状態で心理職は医療業務有資格者でもなく、できることは限られています。この人手不足の中行動することを制限されているようで歯がゆいかもしれません。正確な知識を得ること、そして流言に踊らされないこと、手洗いの重要性を伝えること、それだけでもかなり大切な役割で、培ってきたコミュニケーション能力を発揮できる場だと思うのです。

E387B597-E861-4A40-A248-B3917DCB3577

◯ 揺らぐスクールカウンセラー体制

さて、色々な自治体がスクールカウンセラーの募集要領に、以前は任用資格の中に臨床心理士かトップでしたが、今年度募集要領から、公認心理師がトップになりました。そのため、スクールカウンセラー採用有資格者数が跳ね上がったことは想像に難くありません。

それでは公認心理師と臨床心理士の両資格を持っている人が採用に有利かというと、どうも全然そういうことはない事態になって来ているようです。

教員経験者、教育相談経験者で現場経験が長い人たちが優先的に採用されているのではないか?と思うのです。

大都市やその周辺の自治体だと毎年採用試験を行って、そこで採否を決めます。自治体によっては応募者の中から「A中学校のスクールカウンセラーやってくれません?」と直接電話でハンティングされるという、書類審査だけのところもあります。

今回、今までスクールカウンセラーを毎年受験して合格し続けていた人が落ちているのを散見します。試験ですから公正に行った、と言われればそれだけですが、果たしてそれだけでしょうか。

スクールカウンセラー採用のパイは少子化の影響で、増えることはないでしょう。ところが公認心理師が一気に増えました。ここから先は僕の想像、というか邪推になってしまうのですが、とある自治体ではスクールカウンセラーが週一行くほかに◯◯相談員として学校から相談業務に興味がある相談員を雇用していました。

時給千円行かなかったぐらいの待遇で、「スクールカウンセラーは時給か高くていいわねえ」と何十回言われたかわかりません。

中学校教員は朝早く夜遅く土日もなく、大変ハードです。そこで途中で学校を退職して◯◯相談員として残る人もいます。

子どもが好きというのは素晴らしいことです。そして学校教員時のは年々採用試験が難化していて、僕がスクールカウンセラーとして働いていた時の教員たちはもれなく頭がいい人たちでした。教員経験者、現役教員でも公認心理師取得した方々は多かったでしょう。

臨床心理士として他の日は老健施設で働いていますとか、女性の職業観とアイデンティティの研究をしていますとか、採用する側の学校にとってはで、それが一体なんなの?と思われてしまう可能性が高いです。

かつて某自治体では臨床心理士半分、ヤメ教員半分のスクールカウンセラーの募集を行っていました。ヤメ校長がスクールカウンセラーの大半を占めていて、自分が元いた勤務校に配置してされ、誰も相談にこなかったとか。

そりゃそうでしょう。一日中カウンセラー室にこもってお茶を飲んでいるのではなく、スクールカウンセラーはフットワーク軽くきちんと学校のニーズを聞き出し、家庭訪問に何度も行って、特別支援学級や不登校支援学級に行って、不登校支援学校や教育相談相談所にも行って、つなぐという、僕のイメージはそんなものです。
(異論は認めます。)

スクールカウンセラーはその「外部性」が大事だと文部科学省も何度も言い続けてきました。外部の専門家がチーム学校(という概念はキライですが仕方ない)の中で管理職が仕事をしやすく補助するというものです。

ところが公認心理師を今回取得した中にはヤメ教員やヤメ校長、無資格だった教育相談経験者も相当数いるのではないのかな?と思うのです。

採用試験を行う側では「◯◯さん、一生懸命やってるけど資格がなくてお給料安くて大変だなあ」とか「あ、元校長の△△先生だ、これは絶対に落とせないなあ」「この前まで一緒に仕事してた@先生だな」人間、人情があるのでどうしても知り合いに肩入れしがちなものです。

子どもたちから「どうやったらスクールカウンセラーになれるの?」と聞かれてそれはそれで嬉しかったのを覚えていますが「えっと、まず教員採用試験に受かって20年ぐらいやってから退職して」というような夢をぶち壊すようなことは言えません。

今の学部生でも院生でもスクールカウンセラーになりたい、という人たちが多いのは知っていますが「ちょっと待って、その選択は正しいの?」と思ってしまいます。

中高生でスクールカウンセラーを目指したい人の夢を壊すのも忍びないのですが、公認心理師制度導入によって、スクールカウンセラーの「外部性」はまた再び揺らいでいるように感じています。

校長、教頭、主幹などの管理職が心理の専門家としてのスクールカウンセラーから専門的意見を聴取してそれを学校運営に役立てるのであればそれはチーム学校に役立つのでしょうけれども、そこでねじれを起こしてヤメ校長あたりが現校長に批判的な態度を心理学的な見解を混ぜながら言うと外部性も内部性もごちゃごちゃになります。

このあたりは大変難しい問題です。公認心理師資格を持った教育現場経験者が外部性を絶対に持てないわけではありません。そしてこのスクールカウンセラーの外部性は教育現場からの批判にさらされ続けてきました。「心理の見方は現場を知らない」「スクールカウンセラーは全部子どもの相談を秘密にして甘やかしているだけ」

僕が勤務した某中学では子どもは昼休みだろうが放課後だろうがスクールカウンセラーに相談する時には担任の許可を得て、スクールカウンセラーはその相談結果をレポートにしてまとめなさいと言われて息が詰まる思いをしました。

まあそこは極端で、ほぼほぼ全ての学校ではとても楽しく仕事をさせてもらっていました。学校は集団守秘義務があるから子どもの話したことをきちんとチーム学校では連携して共有しなさいというのがスクールカウンセリングの建前です。

そのためにスクールカウンセラーにしか話したことがない事実がだだ漏れになり児童生徒が二度とカウンセリングに来なくなることも今でも事実として多々あります。これから外部性が揺らいでいくと学校のカウンセリング体制はどうなるのか、大元の文部科学省にも各自治体に対し、教育経験者を雇ってはいけないとは言いませんが、どうやったら外部性を担保できるのか、チーム学校のあり方を見直してみたら?と思うのです。(公認心理師試験ではそういう考え方をしてはいけません。)

1C1BC05F-9B2F-4D15-83D4-D553128677E4

◯ PTSDの理解・診断、心理検査、特徴、治療

何度もPTSDについて書いて来ていますが、まずはPTSDの定義です。PTSDとは何か?ということですが、最近は「この前部長に怒鳴られてトラウマになっちゃって」と日常用語で使われますが「トラウマ」というのはほぼ瀕死の体験を自分でする、目前で見る、虐待体験、救命活動や救助活動で人の死に接する、親しい家族などがトラウマについて延々と話すのを聞かされる、といったかなりハードな体験でないと精神医学的にはトラウマとは言えません。

なお、C-PTSD Complex post-traumatic stress disorder複雑性心的外傷後ストレス障害のような長期の虐待は別ですが、simple PTSDは悲惨な体験をしてもPTSDに移行しない人が6割と言われています。

また、4週間以内に症状が収まってしまえば「急性ストレス障害Acute Stress Disorder: ASD」の診断となります。

以下PTSDの特徴です。

1.フラッシュバック

これはさまざまな形態で起こることがあり得ます。悪夢を見てうなされて目が覚める、何もトラウマに関連がないことをしていても思考侵入が起こって白日夢のようにトラウマ体験が想起されます。さーっと目前にその体験の様子が見えて、実際に体験する(再体験)することがあります。

2.解離

トラウマ体験があまりにも耐えがたいものであることから、自分の気持ちを切り離し、フラッシュバックが起きている間、酷い目に遭ってきる自分を意図的に解離させてさらにそれを眺めている自分を作り出す人もいます。また、解離性健忘が起こり、フラッシュバックが起きていた事を忘れます。

またはトラウマ体験があったことそのものを忘れてしまいます。フラッシュバックが何の前触れもなく起こるように、解離も突然起こります。そうするとどんな現象が起こるかというと、知らないうちに元の住所から何百キロも離れた場所に佇んでいたり、いつの間にか財布からお金が消えているといった現象が起こります。(かつての診断基準では解離性遁走)

解離がひどくなると人格そのものが分裂します。DSM-5では解離性同一性障害Dissociative Identity Disorder DIDという疾患単位があります。かつては多重人格障害Multiple Personality Disorder MPDと呼ばれていました。トラウマ記憶がある人格を別人格として、それとは別の人格を作り、慰める、癒す人格や暴れる人格など20人格ぐらいが生じることがあります。主人格が出てこなくなり第二人格がとって代わるこたもあります。

(治療法のひとつですが、人格交代訓練や催眠とEMDRを併用して人格の再統合、ひとつの人格にするのではなく、ある程度の役割を何種類かの人格に集約します。無理にひとつに統合するとトラウマ体験が強烈に主人格を傷つけて自死に至る場合があります。こういった入院治療は日本では仁木啓介医師によるニキハーティーホスピタルが行っています。)

3.回避

トラウマ体験と似たような状況、場面を避けるようになります。トラウマを与えた人と同じような人を避ける。被害に遭った乗り物に乗れない、愛情を持てない、自分の未来を信じられないという症状も出ます。これは回避・麻痺の症状と言えます。麻痺が起こると本来ならプラスの感情を与える出来事にも無感覚になります。人との情緒的な交流を避け、引きこもる人もいます。家にいれば刺激はなく安全です。

4.過覚醒(覚醒亢進状態)

トラウマ体験が強烈だったことから、常に身体中をアドレナリンが駆け巡って交感神経がビンビン興奮した状態になり、心拍数が高まり、消化機能は低くなります。モノを食べている状態ではなく、常に臨戦態勢になります。常にfight or flight (戦うか逃げるか)の状態で、覚醒がひどいと不眠になります。

たいていこういった症状が起きるのですが、それに加えて、公認心理師試験にも事例問題として出ていたようにひどく怒りっぽくなったり感情のコントロールがしにくくなります。対人過敏状態となって、恋人、家族、職場で少しでも攻撃的(ととらえられてしまう)行為で激怒することがあります。コンビニで買い出しを頼むと被虐待体験で親によくコンビニに行かされたことを想起させて「何を買えばいいかわからないのに買い物をさせて私に払わせるの?」と沸点がわからない地雷を抱えているのです。

性被害や性的虐待を受けた人はその加虐体験の陳腐化を図るために次々と異性と付き合ったり、そういった性的産業に身を投じることがあります。また自我像を自ら歪め、性的対象として見られる恐怖から、極端に女性としての美しさを捨てて過剰に太る事もあります。これも過覚醒症状のひとつです。

子どものPTSDではトラウマティック・プレイといって3.11の後には子どもが津波ごっこをひたすら延々とやり続けるという症状が出ました。このトラウマティック・プレイが子どもの心を癒すことはありません。

◯ 心理診断面接・心理検査

PTSDの程度測定にはCAPS (Clinician-Administered PTSD Scale)PTSD臨床診断面接尺度) という1〜2時間ぐらいの面接法が使われることも多いです。臨床心理士でもトレーニングを受けないと行うのは危険性があります。トラウマ体験を聞き出すということが十分侵襲性があるからです。トレーニングを受けた査定者が質問して、それでもCAPSはPTSDの人にとっては辛いことがあります。

どの心理検査も侵襲性はあるのですが、心理検査は質問紙式だからといって舐めてかかって、PTSD以外でもどんなクライエントさんに対してもSCT 文章完成法sentence completion technique やMMPI Minnesota Multiphasic Personality Inventoryミネソタ多面人格目録家でやって来てね、と宿題にすることはいけません。

特にPTSDの人はフラッシュバックを起こしやすいです。心理検査をしている間にフラッシュバックを起こすことも十分ありうるので心理職がそばについていて、ケアできる体制が必要です。

構造化面接法としてはDSM-Ⅳ構造化臨床面接時尺度SCID/Structured Clinical Interview for DSM-Ⅳ

PTSD症状尺度PSSI/PTSD Sympton Scale Interview

M.I.N.I The Mini-International Neuropsychiatric Interview(精神疾患簡易構造化面接法)はPTSDだけでなく様々な精神疾患を検出できる優れものの構造化面接法です。

もあります。

⭐︎ 成人用診断検査

1. PDS:Posttraumatic Diagnostic Scale(外傷後ストレス診断)

2.PTSDチェックリストPCL/PTSD Checklist

3.ダビッドソン・トラウマ尺度DTS/Davidson Trauma scale

⭐︎ 以下子ども用です。

1. CPTSD-RI/Child Post-Traumatic Stress Disorder Reaction Index子ども用PTSD反応指標

2.改訂出来事インパクト尺度Impact of Event Scale - Revised (IES-R)はトラウマ体験がどの程度だったのか測定するための成人と子どもにも可能な鉄板とも言える質問紙式テストです。

以下知っておいて欲しいのは
・子ども用外傷後ストレス症状尺度PTSS-C/Posttraumatic Stress Symptom Scale for Children

・子ども用トラウマ症状チェックリストTSCC/Trauma Symptom Checklist for. Children

・年少児用トラウマ症状チェックリストTSCYC/Trauma Symptom Checklist for Young Children

・子ども用PTSD症状尺度CPSS/Child PTSD Symptom Scale

・就学時前学童用PTSD症状PTSDPAC
/PTSD Symptoms in Preschool-Age Children(養育者評定)

◯ 治療

1.薬物治療

第1選択肢としては選択的セロトニン取り込み阻害薬Selective Serotonin Reuptake Inhibitors, SSRIが選ばれることが多いです。脳内でストレス低減物質セロトニンserotoninが吸収されて欠乏するとうつ症状が出現します。

パロキセチン塩酸塩水和物Paroxetine Hydrochloride Hydrate商品名パキシルやセルトラリンSertraline商品名ジェイゾロフトという抗うつ剤が使用されます。

なお、PTSDはストレスへ暴露されることにより心的脆弱性が発現するためか、うつ、統合失調症、双極性障害、不安症、境界性パーソナリティ障害、物質依存、摂食障害、行動、関係依存などほかの精神疾患や嗜癖と同時に発現する場合が多いので、その場合にはその疾患の治療薬投与もします。発達障害との重奏もあります。PTSDはWHO調査では生涯有病率1.1パーセント〜1.6パーセントです。(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス)

あまりにも苛烈な体験が妄想と扱われることもあり、誤診が多いと研究者は述べていますが、ベースライン疾患への治療が効果的な場合もあるので、実際にはあらゆる種類の投薬治療が行われています。

ただし、PTSDの確定診断がついている場合にはベンゾジアゼピン系抗不安材や睡眠導入剤は解離を促進し、依存耐性を生じるので注意が必要と言われています。

2.精神療法

⑴ 持続エクスポージャー法法(Prolonged Exposure Therapy: PE)

認知行動療法の一種ですが、その名の通り、暴露に次ぐ暴露を行います。まるで「悪魔の契約」のような「治るためなら何でもしますね?」「はい」「それではやります」的なところもあるのですが、心理教育、呼吸法はメソッドとして理解できます。

想像的エクスポージャーとして、トラウマ体験があったのと似たような場所に晒された場所、学校や会社や、普段は安全な道路を通ったら、と想像してもらいます。一時的に心理的苦しさの指標SUDs、Subjective Units of Disturbanceは上がりますが、エクスポージャーに慣れると下がるはずです。

現実的エクスポージャーは、安全な場所の学校、会社や道路を歩いたりする経験を実践してもらうことです。

さて、PEのキモとも言えるのは週一回、カウンセリングのワンセッションの録音を1日一回聴くという大変な苦行です。通常のカウンセリングならなんとか最後に丸く収まって忘れておしまい、なのですがPEはそれを許してくれません。クライエントさんは毎日それを次のセッションまで延々と聞き続けるので苦しくなり脱落例も多く、認知行動療法にありがちですが、脱落例の人たちがどうなったかは研究不能です。

2. 認知処理療法(Cognitive Processing Therapy; CPT)

これは認知行動療法の中でも侵襲性を低めた心理療法で、全12回のセッションの中で世界の安全性や、その人が回復から自らを妨げているスタックポイントを見つめ直して正しい認知を獲得するというものです。テーマは「安全、信頼、力とコントロール、価値、親密さ」で、全てを失っているというクライエントさんを正しい認知に導く試みです。

個人療法のみでなく集団療法も行います。認知行動療法の基本であるソクラテス的問答法(動機づけ面接と違って治療者は答えを用意していないのですが、質問をし続けてクライエントさんに答えを発見してもらう)

認知再構成法によって、こちらから答えを用意しないでトラウマ回避行動で何が起こっているか、回避しなかったことで何が得られたか、不安の高まりと低減のシステムを患者さんに発見してもらうのも大切です。

3.EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)

精神分析的な視点も認知行動療法的な視点も取り入れられていると思います(認知行動療法にも精神分析的知見は取り入れられていると思うのですが;「インナーチャイルド概念」)。

EMDRの創始者Francine Shapiroは偶然鳥が右から左に左から右に飛んでいるのを見て自らのがんの不安が低減したことから、英米文学者の地位を捨てて心理学者としてEMDR技法を広めました。

トラウマ体験を想起しながら指を左右に動かし、治療者が認知の編み込みを行いながら50分から90分程度のセッションを行います。

この治療法の仮説原理はトラウマ処理における両側性刺激で右大脳半球と左大脳半球の偏ったトラウマ記憶を処理することです。

3回のセッションでPTSDの70パーセントが軽快する侵襲性が低い心理療法と言われていますが、EMDRが苦痛と訴える患者さんもいます。

PTSD患者さんには侵襲性が生じる可能性があるのかもしれません。

日本EMDR学会のホームページも参照して欲しいのですが、
https://www.emdr.jp/
EMDRをトレーニングを受けないで実施することは不可能です。
トレーニングの受講資格は2年以上の精神科・心理学的医療経験のある医師、臨床心理士、そして新しく公認心理師も加わりました。トラウマ治療に興味がある新公認心理師の方はこの機会にトレーニングを受けてみてはいかがでしょうか。

4.その他

これまでPTSDで苦しんでいた人は生活のクオリティが上がることで劇的に症状が改善することがあります。性被害を受けた人が自助グループに参加して主導的になる、未発見性加害者告発チームにかかわることで自らの存在意義を見出す人もいます。

PTSD治療にはどんな精神療法も効果的と言われています。カウンセリングは受容から始まります。精神分析でも対人関係療法Interpersonal psychotherapy、IPT)でも効果はあります。試験には出ないでしょうけれどもEMDRから派生した自我状態療法、ブレインスポッティング、イメージワーク、ソマティックエクスペリエンス、ブレインジム、ダンスセラピー、ヨガ、太極拳も有効です。PTSDは身体性の病でもあるからです。

C1E7F69D-3D60-4A4C-B574-F01946402A4C

◯ 箱庭療法・司法面接・精神分析・メンタライゼーションMBT

心理アセスメントは「汎用性」が公認心理師を理解する鍵概念になります。

公認心理師が医療、教育、司法・犯罪、産業・労働あらゆる分野で働いているからです。

心理アセスメントとして、治療法として箱庭療法が使われます。

・箱庭療法
Lowenfelt,Mは言語表現がまだ未発達な子どもにも自我と事物や社会的なかかわりを見ることができる箱庭療法を開発しました。この視覚と触覚の要素を取り入れた箱庭療法を「世界技法」と呼びました。Kalf,DがJung,C.G理論を箱庭療法に取り入れ、大人にも適用可能な箱庭を考案しました。

Kalfと河合隼雄が出会い、意気投合したことから1965年に日本にも輸入、四角い箱の中の砂に触れ、青い海の色を掘り出して玩具を配置していくという箱庭技法はクライエントにも好まれ、心理検査でありながら治療的要素が多くあります。

◯ 司法面接(forensic interview)

司法面接は、子どもや知的障害者の司法手続き、子どもをめぐる虐待事件、第三者による性犯罪事件、子どもが証言を必要とする事件の取り調べ、家裁の調査などに必要な手続きをいかに心理職がサポートしていくかということです。

子どもは何度も同じことを聞かれているとそれが認知の刷り込みになってしまい、実際には起きていなかった事実を事実と思い込んで話すとことがあります。司法面接で必要なのは、事件にまつわるトラウマティックな凄惨な出来事を聞くのは一回だけにとどめておくということです。

子どもには何があったのか話して欲しいということを伝えるにとどめ、誘導尋問を行わないようにすることが大事です。子どもには自由報告を行わせることが原則です。

オープンクエスチョン、「何があったの?」「それから?」と子ども主体に話させます。自由報告、質問、構造化された面接が必要ですが、その際には子どもとラポールを取ることが必要です。

児童虐待事件で子どもが被害に遭った場合、まず警察で事情聴取され、検察で質問をされると、捜査機関で何度も聞いて事実確認をしなければならないのは本旨ではあるのですが、それが10回にもなるとどうしても事実を作り出してニセの記憶を作り出します。そして性的虐待記憶を繰り返し語ることで二次的トラウマを与えてしまいます。

司法面接にかかわることが考えられる心理職は司法、家裁、児相、医療、教育、福祉関係者が考えられます。

◯ 心理アセスメントと支援

・精神力動論による心理療法

精神分析はSigment Freudが創始したわけですが、

自我関係学派

Abraham,K
精神分析当初、ブロイラーの助手からかかわり口唇期研究。
(ブロイラーはフロイトにユングを紹介した精神科医、ブロイアーはヒステリー研究でアンナ.Oを研究、間違えやすい名前です。)

Reichi,W
自我心理学の祖、性格分析を提唱、性的欲動と外界に対して「性格の鎧」があると考えました。

Erikson,E.H
関与しながらの観察の提唱者、ライフサイクル理論

Rank,O
出産外傷説、出産したことそのものがすでに人間には外傷。母子分離不安の原因か。

Freud,A
Freudの娘、児童の精神療法を手がける。Erikson,E.Hを育てた。
自我の様々な防衛機制を定義、整理した。

Kernberg,O.F
自我心理学的対象関係論、境界例の研究で有名。

Borderline Personality
Organization(BPO)を提唱、自我
境界が曖昧なクライエントについて
の研究。分裂、同一化、否認。

精神病人格構造 Psychotic
Personality Organization(PPO)
自我が解体したパーソナリティ。

神経症的人格構造
Neurotic Personality
Organization(NPO)
抑圧を中心とする神経症的防衛機制
で現実検討は保たれるが、自我はあ
る。

Masterson,J.F.
境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害の研究、Mahler,M.S.の分離個体理論を参照し、境界性パーソナリティ障害の力動として「見捨てられ抑うつ」が大切だと言いました。

対象関係論学派

M,Klein
オーストリアの女性精神分析学者。部分対象と自己のそれぞれの関係の成長が発達段階で必要だと考えました。子ども対する本格的精神分析。

分裂・妄想ポジション
M. Kleinが考えた発達過程(3,4ヶ月)
で、ミルクが出るおっぱいを「良い
おっぱい」出ないおっぱいを「悪い
おっぱい」に部分対象として同一の
ものとして認識しません。

抑うつポジション
2歳まで。「良いおっぱい」と悪い
おっぱい」が同一の対象ということ
がわかると、自らの攻撃性で愛着対
象を傷つけたと思い、抑うつ的にな
ります。

R.D. Fairbairn

イギリスの精神分析学者。
快楽追求型の精神分析概念ではなく、対象との関係を研究、対象関係論という言葉を初めて使用しました。

D.W. Winnicott

イギリスの精神分析家。移行対象論(ライナスの毛布)を提唱、ほどよい母親の存在が子どもを育てるとしました。

自己心理学派

Kohut,H
自己心理学の提唱者、自己愛は人間にとって必要。乳児にとっては共感的感情の存在が必要。

対人関係学派(新フロイト派)
Fromm,E
著作「自由からの逃走」社会と精神、個人との関係。
Horney,K
パーソナリティ形成には社会と環境が重要。

・時間制限心理療法(time limited
psychotherapy
Rank,OとMann,Jによって提言さ
れた心理療法、12回で終わること
を明言してからカウンセリングを
始める。非指示的でなく、指示的
なアプローチをして時間短縮化を
図ります。
問題対処の焦点化を行います。

・加速化体験力動療法(AEDP)
Accelerated Experiential Dynamic
Psychotherapy

AEDPは感情理論と愛着理論がベー
スになっています、病理への着目
ではなく健康的な変容力の活性化
を目指す心理療法です。愛着理論
の研究は、人は感情的に安心出来
る関係では感情調整が適切に出
来、自己や他者に柔軟に好奇心を
持って関わることが出来ると示し
ています。

◯ 心理力動的心理療法の基本的原則

力動的心理療法が、十分に意識的には体験されていない無意識の自己の側面の探求だとすれば、治療関係の中でその探究に取り組むことになります。
(Shelder,2010)現認者テキストから

Gabbard,2010は心理力動的心理療法の基本原則を提唱しています。

精神生活の大部分は無意識である。幼少期の経験は、遺伝的要因と相まって成人期を決定する。患者の治療者に対する転移が理解の源にある。治療者の逆転移は、患者が他者に引き起こすものについて適切な理解を与える。治療過程に対する患者の抵抗が、治療の主な焦点になる。症候や行動は種々の機能を果たしており、それを決定するのは複合的で多くの場合無意識的な力である心理力動的治療者は、患者が自分は真っ当でかけがえのない存在だという感覚に到達できるように援助する。

Gabbardは精神分析を網羅している大家なので、精神分析各理論に通暁し、精神分析の新しい技法、メンタライゼーションにも詳しいです。

◯ メンタライゼーション療法
Mentalization- Based Therapy
=MBT

この精神療法はFonagy,Pによって開発されたもので、主として境界性パーソナリティ障害に適用されています。

メンタライジング機能は、他者の思考を推察、自己と他者の精神状態を考えることを言いますが、BPD境界性パーソナリティ障害や複雑性トラウマを負った人はその機能を損なわれています。いわば発達障害の心の理論を欠いた状態にも例えられています。

メンタライジング機能が低下していると自分の心の中だけで起こった事が、相対している人もそう思っているのではないか、敵意を抱いているのではないかと思うと攻撃性や怒りにつながります。覚醒亢進状態だと前頭葉がうまく働きません。

恐怖に支配されてコントロールされてしまうと、全く関係がない第三者すら敵意を持った人に見えてしまうのです。その逆に相手が必ず自分に好意を持っているに違いないと思い込むのもトラブルの原因となります。

そこで、メンタライゼーションでは、クライエントが思っていることが本当に現実に起こっている事象とどんなつながりがあるのか問い掛ける、そして別の見方はないか聞く、

どうして多面的な見方ができないのかと聞く、カウンセラーから、相手を否定しないでカウンセラーなりの見方を提示してみる、というプロセスで成り立っています。

自己と他者とその関係性に関するメンタライジングをすることが目標になります。このメンタライゼーションの技法は、治療を構造化して治療同盟を確立すること、対人領域や社会領域にフォーカスし、治療者とクライエントの関係性も規定することが目的なのは、転移分析を行う伝統的な精神分析療法と変わりません。

◯ 心理力動的心理療法の原理、特徴

幼少期の養育者との関係性が後の心理・行動的問題の発生における重要な要因となりえます。

愛着対象との間の関係性構築が感情調節、メンタライゼーション能力と関連してその能力の発達や対人関係の形成や回避に役立ちます。幼少期のこういったパターン形成は後々に影響を及ぼしていきます。

心理力動的心理療法では面接室で心理療法家とクライエントの間に起きる関係を分析する「転移分析」が重要です。(二者心理学)

なぜなら今ここで起こったいるセラピー内の状況が、実は養育者とクライエントとの関係の中で起こったことだという投影(歪曲された知覚)をしているからです。

例えばセラピストはクライエントとの間に起きている心理力動を「今◯◯さんが私にネガティブな感情を向けているのは◯◯さんとお父さんとの間に起こっていたことと同じですね」などと解釈をして、クライエントがはっきりとそれを理解、体得する洞察に向かわせることが目的です。

ただし早急過ぎる解釈はクライエントの抵抗に遭います。さきほど指摘した今ここの治療関係、過去の養育者との関係、現在の生活における人間関係は「人の三角形」と言います。

クライエントが「防衛」している時にその「防衛された思考や感情や願望」は何なのか、「不安、恥、苦痛感情」の「葛藤の三角形」Malan,D.H.(1979)
があります。

また、Alexander,F.による修正情動体験」(Corrective Emotional Experience)においては、過去の感情をセラピストに向けるという転移に対して、セラピストが温かな共感的理解をすることで暖かく接して陽性転移が起きます。陽性転移が自己洞察や自我の強化によって現実認識を変えていきます。

◯ 心理力動的療法のエビデンス
最近ではNBM(ナラティブベースドメソッド)=科学的根拠に基づかない手法と思われていた技法がどんどん科学的、統計的手法で根拠づけられるようになっています。(箱庭をfMRIで効果検証)

ランダム化比較試験RCT:かっRandomized Controlled Trial)では心理力動的心理療法はうつ病性障害、不安障害、身体化障害、摂食障害、物質関連障害、境界性パーソナリティ障害やC群パーソナリティ障害にも有効とされています。
(Sheldler,2010)

ただし、強迫性障害は心理力動的心理療法のみでは対応して困難、アルコール、薬物依存もある程度クライエントが衝動をコントロールできるようにならないと可能性は低いけれども、心理力動的心理療法が無益ではないと示唆されています。 (Leichsenring,2009など)

認知行動療法では着目されていない精神分析療法のプロセスと技法の特徴があります。(Blaglays &Hilsenroth,2000)

・感情と情動表出に焦点づける
・繰り返し生じる行動、思考、感
情、体験、関係のパターンを同定
する
・ 対人的な体験に焦点づける
・ 治療関係を強調する
・ 願望・夢・空想を探索する

985F4680-4720-47F5-8CAA-706D1A2C51CC

◯ コロナのせいで臨床心理士更新できない?

次々と研修が中止になっているので、次回臨床心理士資格更新予定の人たちがどうなるのか気になり、電凸ブロガーの名に恥じないよう?まず日本臨床心理士資格認定協会に電話してみました。

日本臨床心理士資格認定協会が主催する「心の健康会議」が2回中止になりました。日本臨床心理士会の研修もばたばたと中止になりました。このまま更新ができなくなったら公臨両方師の更新時期を迎えている人は公認ピン理師、臨床ピン理士の人は無資格になってしまうのでしょうか?

(日本臨床心理士資格認定協会に電話・ブログ掲載了承済み)

まず、更新時期を迎えた人はどうしたらいいのか聞いてみました。
僕:かくかくしかじかで更新できないんですか?
資:各人そういう人がいたらとりあえず申請してください。そしたら個別に通知します。
僕:申請しなかったら?
資:うーん、それはそれで終わりですね。  
僕:資格喪失ということですか?
資:はいそうです。
僕:次の研修予定は?
資:未定です。

次、日本臨床心理士会に電話しました。(こちらも了承済)
僕:臨床心理士会の研修もどんどん中止になっていますね。
臨:ホームページに載せてあるとおりそそ5月までは研修会開催できないですね。厚生労働省の指導もありまして6月以降です。
僕:ポイントが足りなくて更新が危うくなったら?そのあたりは日本臨床心理士資格認定協会さんと話し合っていませんか?
臨:いえ、日本臨床心理士会は日本臨床心理士資格認定協会とは全くの別団体ですから。資格認定協会さんに問い合わせてください。特に連携しているということはありません。あとオンライン研修も検討しています。
(僕:相変わらずだなあ)
※ ただ、オンライン研修には興味を持ちました。なぜならばもしつまらない研修をポイント目当てで受けたい場合、お金さえ払っておけばカウチポテトでマンガを読んでいたりお茶でも飲みながら研修が受けられます。今後はオンライン研修を積極的に導入するのもいいかと思いました。

僕:あ、忘れてた。(資格認定協会に再電話)
僕:例年3月に臨床心理士の受験者と合格者数の発表が行われていますね。今年は何日ぐらいに発表ですか?
資:台風の影響もありましたからねえ、4月にずれ込むと思います。
(台風と合格者数発表と関係あるのか?)

以上、最新情報でした。

(おまけ)
准看L君:Y先生机めちゃくちゃですけど、このまま転勤しちゃうんですか?
Y先生:適当に段ボールに詰めてちゃちゃっと送っといて。じゃ、今からジョギング行ってくるね。往復20キロぐらいだからすぐ帰ってくるよ。
僕:あ、また逃げた。
L君:段ボール10箱ぐらい用意しとかなきゃ。どうせ着払いだから石とかたくさん詰めて送ろうかな。
僕:イシだけにね。
(おしまい)

↑このページのトップヘ