ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2020年03月

027A783A-F150-4269-B09D-540AA17BE7F7

◯ 若手臨床心理士・公認心理師の躍進・台頭

心理の新卒者がどんなところに就職するかというと、新卒心理公務員になる、裁判所総合職家庭裁判所調査官補や国家公務員人間関係科学区分ならば採用後みっちりとレベルが高い研修を受けて現場に出て行きます。

こういった司法関係の公務員は若手のうちは少年関係で働くことが多く、場合によっては「話をわかってくれるお兄さん、お姉さん」的な役割が取れることもあります。

つまり共感性が高いと見られるのでその若さが役立ち、子どもにとってはモデルになり得る、これは教育相談所やスクールカウンセラーでは大きなアドバンテージ、メリットになるでしょう。

以前も書きましたが
勉強をしないで地位にあぐらをかいている中堅以上の心理職>>>>>若手で勉強熱心な心理職

ということを各種研修に参加したり、連絡調整をして若手と話していると感じます。「負けた」(勝ち負けではないのですが)といろんな分野で感じることも多いのですが、新卒から数年経って現場経験を積みながら勉強している臨床家は最新の心理学の知識も豊富ならカウンセリングに対する見立ても鋭い人たちが多くなってきたと感じます。

さて、カウンセリングを利用するクライエントさんや患者さん、家族にとってはどうでしょう。これが他の科で研修医を終えて最新の知識を持つバリバリの若手医師ならば若くてもインフォームドコンセントをしっかりしていれば高い信頼が得られる事は往々にしてあり得ます。

ところが精神科医師、心理カウンセラーの若手はとても頭脳明晰でもクライエントさんからは敬遠される事があります。若手で知識が乏しければそれは当てにならないと思われても仕方ありません。患者さんは精神疾患については自分が服用している薬から心理的治療法に至るまで無茶苦茶詳しく調べている人も多くそういう人、それから年齢=キャリアと思う患者さんは若手を敬遠する傾向があるようです。

例えば50代、子育ても終わり子どもたちも巣立っていき就職、いわゆる「空の巣症候学」になり更年期も迎え精神的に不安定になりつつある女性に「A病院には20代と30歳のカウンセラーさんがいるらしいすけどどうします?」「いや、いいです」ということがあります。

実は歳を取って馬齢を重ねただけのようでも、威張り散らすわけでもなく、黙って話を聞いているだけのカウンセラーの方がなぜかクライエントさんに安心感を与えるということはあるようです。

精神科医も同じで、精神科医師は患者さんの病状を心身ともに把握、投薬治療をするのが仕事です。医師でも古い教育を受けていて知識の上書きバージョンアップをしていない医師だと、どんどん多剤大量処方をして患者さんを悪化させることもありますが、それでも患者さんは貫禄のありそうな年配の医師を選ぶ傾向があります(ほとんどのベテラン医師は多剤投与のリスクについて熟知していますので多剤投与はごくほんの一部だけで行われています)。

患者さんは「病状の正確な把握」という点で不安を抱くのでしょうか。だから年配者はベテラン医師やカウンセラーに望むのではないかと思います。

カウンセリングも「受容・傾聴」の時代から、認知行動療法のようなエビデンスがありシステマティックな流派もあり、EMDRやソマティック心理学など技術を要するものがあるので年齢なんかいいじゃないかと思う向きの心理職の人もいるかもしれません。若手で立派な研究業績があり治療研究者として優れている治療家は多いです。しかしクライエントさんにとってはそれを評価の対象にするわけではないのです。

はっきりとした年齢差による治療効果の統計研究結果を読んだわけではありませんが、まず患者さんが治療機関選択をする際に口コミやホームページで情報を集めているわけです。

心理職なんぞはある程度の年齢がいってから社会人で学部編入から始めて新卒で就職したのが40代、心理職経験が長い30代前半選手よりも患者さんがチョイスする可能性も高いわけです。人生経験というものもありますので、それが一概に悪いとは言えません。

若くて自信を持って最新の理論の知識があり、貪欲に学び続けようとする姿勢は素晴らしいと思うので、年齢よりも腕前重視で来るクライエントさんには若手心理職が最高のカウンセリングを提供できる可能性が高いです。

点数=実力ではありませんが、若くても公認心理師試験でかなりの好成績を上げて合格する人がいる一方で、中堅者以上で知識をバージョンアップしていないので残念な結果になってしまった人もいます。

中堅以上というとベテランで知識が豊富と想像するかもしれませんが、経験を積んでいると単に老獪に過ぎず、経験値でストーリーを読み解き、知らなかった事でもさも知っている風に理解して語る事に慣れているので、それで誤魔化してしまうこともできます。「ああこの人はとても信頼できるいい人だ」と思わせるのは実はそういった老獪さかもしれません。それを実力と呼ぶのは僕は抵抗があるのです。幾つになっても学び続ける熱心さが心理職の本旨と思っています。

today's wonderful picture by
photographer sora

※ soraさんの撮る明るい空のような未来が心理職と患者様のみなさんに訪れますように。

D9F127C3-34FB-49AD-8D0F-6B70711B9597

心理臨床学会のホームページを本日見てみたところ、
https://www.ajcp.info/
「8月27日(木)~30日(日)第39回大会(神奈川県横浜市)…開催予定(6月初旬までに方針決定)」
という記載がありました。
電話確認してみたところ、現状ではこの記載ですが、何か変更等あればまたホームページで告知するとのこと、僕の方でも新情報がわかれば記事にします。

photo bysora

※ 自然のエネルギーの偉大さを感じさせる素敵な写真ですね。

B2B9DB81-6101-4E82-8960-0DEDB142699D


Message body

【コロナウイルスやその他の新興感染症の発生時における患者の心の健康ケア:臨床医向けガイド】

※ 以下新型コロナウイルスCOVID-19に関する多くの情報が多く含まれている記事になります。こういった内容の記載によって精神的にショックを受けそうだと感じた方は読まずにこのページを閉じることをお勧めします。辛い思いや不安を抑え込むことは勇気ではなく、自らを傷つけることにつながります。

先日記事にさせていただいた白川美也子先生が院長を務める「こころとからだ・光の花クリニック」アカウントは国際トラウマティック・ストレス学会に掲載されている【コロナウイルスやその他の新興感染症の発生時における患者の心の健康ケア:臨床医向けガイド】をTwitterで紹介しています。

読ませていただいたところ、心理職にもかなり役立つ内容なので紹介がてら記事にしたいと思います。
以下要約しながら私論を交えて記述します。きちんと読みたい方は上記ツイートリンク先を参照してください。臨床医が行わなければならないのは、米国であれば米国疾病管理予防センター Centers for Disease Control and Prevention (CDC)の情報を確かなものとして信頼すること、正確な情報を入手、患者教育として医療教育、心理教育を行い、誤情報を正すことです。

また、メディアの見聞きについて制限をすることです。

(僕が感じるメディアのあり方は常に煽情的という事です。例えば日本地図を映し出して今まで感染者がいなかった県を1人感染者が出たらその県を赤色で塗り潰す、今まで1人でも感染者が出ていた地域も赤く強調し、人にショックを与える演出をしています。売り切れの空の棚、ひと気がなくなった街を放映することにも悪意すら感じてしまいます。)

ストレス反応から何が起こるか予測、こういった普通時ではないアウトブレイクが起きた時にこういった心配を人と話すのが気分を向上させるという事の大切さも記載されています。医行為として医師が正確な医療情報を伝えた方がいいこともあれば、心理職が行えることもあるのではないかと感じました。

このガイドの監修を行っているのは災害精神医学の専門家で災害救援者メンタルマニュアル発刊に際しても監修を行った重松淳防衛医科大学校教授、翻訳は筑波大学で災害地域精神医学を教えている高橋晶准教授です。

ちなみに原文はCenter for the Study
of Traumatic Stress(CSTS)のものです。PFA、サイコロジカルファーストエイドにかかわった心理職の方なら肌身に感じて知っていると思いますが、あまりにも長時間ストレスを抱えながら患者さんたちの凄まじい体験や不安の物語に暴露されていると<b>自らも精神的に二次受傷することが多々あります。

心理職は医療領域だけでなく、教育、福祉などあらゆる場面で不安をクライエントさんと共有することになります。福祉施設で大量に感染者が発生したニュースがありましたが、対人援助職のみなさんはどのように援助をしながら自らも危険の中に置かれながらどのようにしたらいいのでしょうか?

【コロナウイルスやその他の感染症アウトブレイク中における医療従事者の健康維持】
国際トラウマティックストレス学会のホームページ、日本語版もあるのでご参照ください。

きっとこのCTCSの文献が役立つでしょう。心理職は直接の被災者だけでなく、支援者のPTSDや急性ストレス障害ASD Acute Stress disorderに接することもあります。近年はこうした保安関係者に対するメンタルケアが徐々に整備されてきているとはいえ、十分過ぎるということはありません。

僕ら心理職は治療の最前線現場に出ることはおそらくないわけですが、タイベックスという宇宙服のような防護服を着て治療に当たらなければならない、トイレにも行けない、タイベックスの着用法に少しでもミスがあればウイルスが侵入してくる、そして救援活動を行った後は医療者も隔離される可能性があります。

現在治療に当たっている医療者もそうですが、使命感がある一方で過労に倒れそうになりながらどれほどの恐怖や不安と戦いながら孤立感を味わっているのだろうかと思います。

医療者も人間です。医療者もリラックスして休みを取り、同僚と支え合ってコミュニケーションを取り、可能な限り家族と連絡を取ることが望まれます。これが医療崩壊につながれば医療者もどんどん追い詰められます。だから外出制限が厳しく行われつつあるのです。手洗い励行で医療を守り人命を守るということを一般の方々の義務的な責任となっているということを理解して欲しいと思います。

【コロナウイルスやその他の新たな公衆衛生上の脅威直面時のリーダー用リスクコミュニケーションガイド】は情報の正しい選択の仕方についての知識をコミュニティにおけるリーダーが行うことにとって役立つでしょう。リスクコミュニケーションは通常とは異なる、さまざまなチャンネルを人々に提供していくものだからです。

そして僕がかなりインパクトを受け、心理職の方々に知っておいて欲しいと思ったのは【コロナウイルスやその他の新興感染症発生に対する準備と対応のためのメンタルヘルス・行動マニュアル】です。

1918年のスペイン風邪から始まってSARS、エボラ、ジカウイルスによる教訓を大切にすること。そしてこのパンデミックそのものがPTSD、不安やうつを引き起こす原因となることが示唆されています。

以下私論です。マニュアルの指摘していることは今の日本の現状を示しています。このパンデミックはマニュアルに記載しているとおり、スケープゴートを求めます。日本では厚生労働省や保健所といった行政、そして医療に不満がぶつけられています。最も働いている人々は最も忙しく、そして時間がなくヒューマンリソースは限界に達しています。そして残念ながら本当なのはあまりに人手が足りなくて対応がおざなりになりがちで、COVID-19以外の重症罹患患者たちが危機に晒されているということです。

そして不正確な情報は人々を混乱に陥れます。味覚、嗅覚を感じ辛くなるとコロナの疑いがあるという報道は救急医療機関をパンクさせました。人工呼吸器を量産しろという要求は24時間体制で人工呼吸器や体外肺、エクモ管理をする医療者を膨大な数必要とすることを要求している人々は知りません。

さて、マニュアルに戻ると震災などの被災ではコミュニティの中の被災者同士のコミュニケーション、支援者と被支援者との連携は密になります。しかし感染症はどんどんそれらの関係を疎遠にします。タイベックスを着た異星人の姿をした医療者を見て患者は絶望感を感じるかもしれません。

何もかも隔離するということはメンタルヘルスに悪影響があるとマニュアルは指摘しています。通学や最小限の買い物、礼拝を禁ずると人々は無力感を抱きます。そして指摘のとおり少数者に対する差別、スティグマ、社会的烙印は始まっています。中国人差別は日本に長らく居住している2世、3世には関係がないことです。

悲嘆のプロセスの阻害要因についても指摘がありますが、患者の死に立ち会えない、葬儀には儀式よりも感染症対策が優先されるということは遺族の悲嘆を強めます。

以上です。ここまで調べる機会を与えていただいた、白川美也子先生に感謝いたします。国際トラウマ・ストレス学会ISTSS: International Society for Traumatic Stress StudiesのホームページはCOVID-19のためのあらゆるリソースを提供しています。

アメリカ心理学会American Psychological Association:APA

アメリカ精神医学会 American Psychiatric Association :APA

European Society of Traumatic Stress Studies :ESTSSもCOVID-19がトップの記事になっています。

世界的なメンタルヘルス救援の必要性、こころとからだ・光の花クリニックで行っているような遠隔治療法のようなオンライン支援の必要性は各所で指摘されています。  

マスコミと医療との共同戦線は最も難しいという指摘もあります。そしてマスコミは政府や行政を動かし、現場はとてもその要求に応えることは不可能で、PCR検査を大量に行えば医療はストップします。せめて国民の方が正確な情報を選択できればと思います。

photo by excellent artist,sora

soraさんの写真のようにみなさんの心に平穏が訪れるよう、祈っています。

1B8FF87E-653D-4E8F-B315-770655C7C2D1

◯ 公認心理師・臨床心理士は数学ができないと給料が安い?

AERAの3.23号が手元にあるのですが「入試でも仕事でも数学は捨てるな」というタイトルの特集記事があります。

早稲田政経入試が数学を必須科目にしたこと、メガバンクや大手生保が理数系出身者が増えてきている事が取り上げられています。確かに生保会社は東大ほか有名大学数学科から保険数理人(アクチュアリー)を採用しています。

アクチュアリーの仕事は高等数学を駆使するもので、加入者の掛け金、各疾病の発生率、企業としての経営が成り立つ数値を緻密に計算して他社よりも魅力的かつ保障が充実していると顧客が満足できる保険商品を設計しなければなりません。

数学科学部卒のアクチュアリーはかなり以前から採用されています。東大、京大、早稲田理工等有名大学出身者しか採用されていないのですが、各企業は建前として、学歴でアクチュアリー採用試験をしているわけではなく、数学の入社試験を課してたまたま優秀な成績を取った学生が有名大出身と言っています。

AERAでは将来的に、MARCH以上の大学でも数学必須となる可能性についてを指摘しています。考えてみれば、経営、経済、商学部は数理を使う近代経済学や統計、簿記等を扱うわけで、私立文系だからといって数学と無縁でいられるわけではありません。

さて、公認心理師、臨床心理士試験は統計科目が必須です。現在出題パーセンテージはそれほど高くありません。公認心理師法は研究を業務として規定していないにもかかわらず、試験問題を見ると自力で研究活動ができる基礎的知識取得を要求しています。

心理系大学院の修士論文では、国文科や英米文学科ではないので、読みました、こうでした、という文献研究のみの研究論文はまず認められません。院試で研究計画を出させる大学院も多いのですが、筆記試験がいくらできてもきちんとした研究計画が出さないと合格できない大学院は多いです。

さて、前述AERAでは数学受験で経験した人はそうでない人と比べて90万円年収が高いという結果を掲載しています(数学が必要な大学は難関だから就職がいいかもしれないというだけの話かなと思いながら読んだのですが)。

心理職がカウンセリングをする、心理検査をする上では心理検査の計算はしますが、それは数学ではありません。心理職は「科学者ー実践家モデル」だと現任者講習でも叩き込まれます。統計数理的な研究でないと研究として受け入れられませんし、論文を提出しようとしても偉い先生方の査読で撥ねられます。

文献研究でも全くダメということはないのですが、例えば文献データベースを利用してあらゆる心理学の論文の中に例えば「倫理」がどの程度重視されていて倫理のどんな側面が強調されているかを統計処理します。

量的研究と対比される質的研究TEM手法もありますが、かなりしっかりとした研究設計をしてコーティングを行うというレベルの高さが要求されます。

さて、心理学の研究を極めて次は博士号を取ろうとした際に、臨床心理学、医学博士、教育学博士を取る人もいますがどれもレベルが高い統計処理研究が必要と思われます。

大学教員になれれば確かに収入はアップしますが、そのためには独自の着眼点と研究業績の積み重ねが必要です。

医療の現場で働いているから関係ないや、と考えていると大病院では医師、看護師と共同研究することもあり「なんで心理の先生は統計ができないの?」と思われてしまいます。下手をすると採用されないかもしれません。

また、保健師はデータの集積をアウトプットしていくので統計には強いです。大企業で産業医と働く保健師は健康に関するデータを使って健康教育をしますが、心理職はできません、だと対内外的にあまりよろしくない可能性があります。

EAP従業員支援プログラムを各企業にプレゼンする際、弊社のメンタルヘルスプログラムを導入した結果、これだけの数の企業でこれだけのメンタルダウンする社員が減り、企業にとってはコストパフォーマンスが高いです、というパワーポイントを使った説明にも数的処理は必要です。

開業心理職は数字との戦いでもあり、事務所の家賃、人を雇うこと、損益分岐点を計算するのは勘だけではなく簿記の知識があった方が便利なわけで、確定申告の度に会計士や税理士にお願いしていたらそれだけ支払いが大変になります。成功率数パーセントのベンチャー起業は課題が山のようにあります。こういった課題の解決ができたら開業領域には相当役立つでしょう。

AERAの特集にも書いてありましたが、これからはビッグデータ分析、AI化はどんど?企業内で進んでいきますし、そうした手法を身につけていかないと企業人は生き残れなさそうです。医学は膨大な症例をビッグデータ化しようとしています。情報集積は精神医学でも臨床心理学でもデータベースの構築が可能になります。コクラン共同計画(現在COVID-19により世界中の論文購読絶賛無料大解放中)のようなエビデンスデータベース集積の日本版も可能になります。

カウンセリングはひたすら対面で相手の話を聞いて満足をしてもらうもの、それは確かにそうです。ただ、認知行動療法はほぼ全て統計的エビデンス、証拠に基づいて研究を進めているのでアメリカでも日本でも保険点数化は早かったです。

河合隼雄先生ご存命だったころはエビデンスだけでない、心の世界が今よりは重視されていたような気がします。これまで統計化されにくかったナラティブ、物語的な(社会構成主義)心理療法は統計的検証が行われていくと次第にその効果の有益性が認められていくかもしれません。

心理職の世界は「あの人は良くなってよかったね」で終わることが多いのですが、なぜうまく行ったのか、どんなアプローチが有効だったのか説明することができればなお良いと思います。あまりそれを好まない謙虚な人も多いでしょうけれども、ある心理検査の科学性、例えばEMDRのようにエビデンスが確立しているものだけでなく、心理職の存在意義を説得力のある科学性で説明することができる人は能力があると見られるでしょう。

発展しつつある膨大な量の数理的データ処理、仮説検定、AI戦略は臨床心理学に対しても新たな側面を提供する可能性があり、そこに馴染んでいくことがこれからの心理職の能力として試される可能性があります。心理職という人種は有益だという認知が広がれば待遇もより良いものになる可能性があるということです。

photo by sora

my follower,have rare sence

C6EA6F4D-590D-4A01-992C-3E2B6F58C03E 

(注記:本稿は新型コロナウイルスに関する記事ですので抵抗がある方はそのまま読まずに閉じてしまうことをお勧めします。) 以前から日本を代表するトラウマ研究者として僕は精神科医西美也子先生Nishi-Shirakawa-Miyako先生(日本トラウマティック・ストス学会理事)に注目しています。先生の著作「赤ずきんちゃんとオオカミのトラウマ・ケア」(アスク・ヒューマン・ケア 2016)は絵本の体裁を取っていますが、トラウマケアについて大変含蓄がある奥深い示唆のある本です 。

先生が院長をされている「こころとからだ・光の花クリニック」のTwitterアカウントがあります。そこに掲載されていたDr. Ana Gomezの動画がかなり子どものトラウマケアに役立つと思いましたので紹介させていただきます。
 

この動画ではストップ・コロナウイルスで、コロナウイルスが可愛らしいキャラクターで描かれています。全編に歌が流れていて、気持ちの中に訴えかけてくるメロディ、そして幼児の姿があります。

「脳は知っているよ」というフレーズ、リラックスを促し、落ち着くことの大切さ、そして「また大丈夫、気持ちが回復する」というというメッセージが述べられていました。

脅威、怖さ、そしてその怖さは普通であること、こういった際には孤独感、自分が死ぬかもしれない、大切な人をなくすかもさしれない恐怖もあるのだと述べられています。

こういう時に役立つのはハグ、信頼、そして子どものEMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、エビデンスのある心理療法です。)によく使われるバタフライハグが紹介されています。(ただし、EMDR専門家がついていないバタフライタッピングは好ましくないという見解も強くあることは注記しておきます。)

この動画の最後を締めくくるメッセージです。落ち着いて考えること、世界は安全な場所、全てうまく行く。Sleep and have dreamsです。これは子ども向けの動画のようで、大人にも信じていて欲しい事柄がたくさん含まれています。

「脳は知っているよ」というのは、脳が確かにこの危機場面、についてなにが起きているのか、そして何が起こるのか知っているということでしょう。それは世界の終焉という意味ではないはずです。

この動画を作成したDr. Ana Gomez著「こわかったあの日に」2012年 東京書籍も絵本ですがトラウマ治療を扱っている名著です。

さて、トラウマ治療を受けなければならない人々は命がけです。治療を受けられない=死を意味する場合も本当にあります。そういう意味では治療も大切です。

光の花クリニックでは遠隔治療を行なっていますし、トラウマ関係のワークショップもまたオンラインで行なっています。世界中の子どものトラウマケアを行う団体はこの新型コロナウイルスCOVID-19対策を熱心に行っています。

例えばEMDREUROPEでは、
(英文)

ニュースソースの信頼性を確認すること、ニュースに暴露されすぎないこと、医療システムが示す衛生概念に従うこと、いつもと同じでいること、運動、休息、食事の大切さについて書いてあります。(意訳)

3.11の時も津波の映像を見て気持ち悪くなる人たちが続出したように、COVID-19のショッキングなニュースに触れ続けることは大人にも子どもにも危険なことです。

情報が正確になければ不安になるのは本当のことですし、そのために厚生労働省の正確なニュース源を参照するのは悪いことではありません。しかしその暴露時間は長ければ不安を、特に子どもには悪影響を与えます。

大人がCOVID-19について子どもにどんな情報、そしてどんな心理的な支援を行うかは大切なことです。大人が「不安だ、この世は終わりだ」というような破局的なメッセージを伝え続け、いろんなものを買い占めて家の中に積んでおいたら子どもはいったい何を感じるでしょうか?

患者さんはさまざまな事を感じながらこの世界の中を生きています。衝撃的な事を人生の中で体験し過ぎている人はもう何も感じないかもしれません。それは回避-麻痺のトラウマティックな状態なので好ましくありません。

または(精神に限らないのですが)ベースライン疾患を持っている人はこの状態で自分の病気と世界の状態の2つに怯えているかもしれません。

この記事を読んでいて、自ら恐怖をどうにもできないぐらいコントロール不能だと感じた人は<b>助けを誰かに求めてください。</b>それはトラウマケアの専門家であれば望ましいのですが、メンタルヘルス専門家、そうでなくともあなたが信頼できる先生、家族、同僚、上司、誰でもいいのです。

Vive hodie.(Latlne)
今日を生きよ

僕らの生きている世界は決して崩壊しない。だから明日を信じていたいです。byひなた
※ 写真はフォロワーのsoraさんのものを使わせていただきました。

↑このページのトップヘ