ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2020年02月

2C7C99A8-D7C1-4DCC-92E8-82E55168CE39

◯ 公認心理師法 試験・登録・信用失墜・守秘義務・連携

第四条(資格)
公認心理師試験(以下、「試験」という。)に合格した者は公認心理師となる資格を有する。

※ 「有する」だけで、自動的に公認心理師となるわけではありません。

(試験)
第五条 試験は、公認心理師として必要な知識及び技能について行う。

(試験の実施)

第六条 試験は、毎年一回以上、文部科学大臣及び厚生労働大臣が行う。

第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者

 二 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの

 三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者

(試験の無効等)

第八条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、試験に関して不正の行為があった場合には、その不正行為に関係のある者に対しては、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、前項の規定による処分を受けた者に対し、期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

(受験手数料)

第九条 試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手数料を国に納付しなければならない。

2 前項の受験手数料は、これを納付した者が試験を受けない場合においても、返還しない。

第三章 登録

(登録)

第二十八条 公認心理師となる資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

※ 公認心理師試験合格者は届出を行って登録を受けないと公認心理師、心理師の名称を名乗ってその業務を行うことはできません。

(公認心理師登録簿)

第二十九条 公認心理師登録簿は、文部科学省及び厚生労働省に、それぞれ備える。

(公認心理師登録証)

第三十条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証(以下この章において「登録証」という。)を交付する。

(登録事項の変更の届出等)

第三十一条 公認心理師は、登録を受けた事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を文部科学大臣及び厚生労働大臣に届け出なければならない。

2 公認心理師は、前項の規定による届出をするときは、当該届出に登録証を添えて提出し、その訂正を受けなければならない。

(登録の取消し等)

第三十二条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。

一 第三条各号(第四号を除

く。)のいずれかに該当するに至った場合

二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。

※ 取消処分には「任意的取消処分」で、監督者が任意的に裁量で取り消したり取り消さなかったりするのですが、必要的取消処分と言って、必ず取消しを行わなければならないので、かなり厳しい処分と言えるでしょう。

※ なお、法律の条文を読むときの条、項、号の復習にこの第三十二条を使ってみます。「取り消さなければならない。」の後には「第1項」が隠されています。透明文字で「第1項」と書いてあるとでも理解しておきましょう。
第1項の後の漢数字「一」「二」が「号」です。「2」の登録取消し、名称使用禁止はアラビア数字なので第2項ということになります。

(登録の消除)

第三十三条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録がその効力を失ったときは、その登録を消除しなければならない。

第三十九条 この章に規定するもののほか、公認心理師の登録、指定登録機関その他この章の規定の施行に関し必要な事項は、文部科学省令・厚生労働省令で定める。

第四章 義務等

(信用失墜行為の禁止)

第四十条 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

※ 信用失墜行為は、公務員、国家資格所持者についてそれぞれ法で定められています。
信用失墜行為とは何か?

1 交通事故、飲酒運転などの道路
交通法違反
2 万引き、、暴行、喧嘩
3 わいせつ行為(業務内外を問わず)強姦、強制わいせつ、痴漢、盗撮等
4 インターネット上での個人の誹
謗中傷
6 不正経理、公金横領、リベート
収受、贈収賄
7 地位を利用した不法行為
8 ハラスメント行為

※ どこまでが信用失墜行為となるのかは線引きが難しいですが、児童ポルノ法違反があります。
単純所持でも法違反になりますし、サイバーパトロールはこういった犯罪には手厳しいです。怪しいサイトに入って、ついうっかりクリックした経歴であってもIPアドレスから警察が常に捜査しているということを忘れない方がいいでしょう。

(秘密保持義務)

第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

※ 「正当な理由」があれば、の正当性についてですが、タチアナ・タラソフさんがあやめられた際にクライエントが「銃でやる」と言っていたのにもかかわらず主治医が守秘義務のために何もしなかったというものです。

この後主治医はアメリカ最高裁で敗訴し、タラソフ論争も巻き起こるわけですが、明白な危機が迫っている場合にはカウンセラー側には「第三者保護義務」が発生します。

・犠牲者となり得る相手への警告義務

・犠牲者に危険を知らせてくれる可能性のある人に知らせる義務

・警察への通告

・他の合理的方法

ちなみにこの後アメリカではタラソフ型判決が多数出て、判例として確立しています。自死についてもこの保護義務は発生します。

心理職なら経験したことのある人は多いと思いますが、クライエントが強い希死念慮、具体的企画、意図を明言し、入院ともならなかった場合には医師や心理職から家族にその危険性を知らせ、クライエントが単独で帰宅することがないように家族に送らせるということがあるでしょう。

クライエントが家族に心配をかけたくないから希死念慮について話さないでくれと言っても守秘義務履行よりも患者の生命を優先するわけです。

また、虐待の通告義務も公認心理師の秘密保持義務に優先します。犯罪者がクライエントの場合、警察から捜査関係事項照会書が来た場合も守秘義務は外されます。(薬物事案については信頼関係のため、絶対に秘密にするという約束が治療上は好ましいです。)

医療現場では患者のケースカンファレンスが多く行われるでしょう。「医者には言わないでくれ」と言われていてもそのクライエントの秘密を守ることはかなり困難です。また、医療保険会社は患者のカルテ開示請求を行う権利がありますので、ここで守秘義務は外れます。

また、安全に配慮すると特に産業場面のカウンセラーは守秘義務より多くの人々の安全を守らなければならない場合もあるでしょう。

パイロットのクライエントが幻覚幻聴に悩まされている、死ねという声が操縦中に聴こえてきて衝動的に航空機を墜落させたくなる。秘密にしておいてくださいと言われてもそれは安全への配慮から無理でしょう。

教育・産業場面のカウンセラーは「もっと自分を取り巻く環境をこうして欲しい」と言うことも多く、それを周囲に伝えて欲しい、そういう要望があれば守秘義務は外されます。

その場合、誰に、どんな風に何を伝えるべきかはきちんとクライエントの了解を取らないといけません。それから、これは注意が必要なのですが、学会や学会誌で事例発表をしたいという時です。

その場合にはクライエントには十分に口頭及び書面による説明、書面による同意書が必要ですし、発表原稿をクライエントに見てもらうことも必要でしょう。

医療、心理の倫理は厳しいものです。
病院なら倫理審査委員を経ないと、同意書があったとしても手続き面に不備があればその発表は不可能になります。

何をクライエントの秘密として守るべきかは難しい問題です。例えば死者の情報は個人情報保護の対象とはならないのですが、その情報の中に生存している家族などの情報が入っていればそれは個人情報です。

個人情報はその他にも個人の生年月日、メールアドレスや電話番号、健康診断結果の数値、経済状況など多岐にわたります。

また、辰巳法律研究所のドリルによれば、団藤(法律学者)説では秘密とはあくまでその個人のものなので、クライエントがとある企業が経営不振で倒産しそうだ、というクライエントが知り得た秘密についてその漏示が禁止されるわけではないとなっています。

※ ここは大事な部分ですので、罰則規定条文も掲載します。

第四十六条 第四十一条の規定(秘密保持義務)に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

※ 下記の条文も必出と思います。

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

 (資質向上の責務)

第四十三条 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 (名称の使用制限)

第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。

2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

世の中のこの騒ぎの中、コロナのために本務でなくとも健康保健管理業務に追われている心理職の方々も多いと思います。

本ブログを試験対策で読んでくださっている方も、知的好奇心から読んでくださっている方々もいらっしゃると思います。

時節柄くれぐれもご自愛ください。

7CE0015B-8FF4-49D7-825F-BE06A9C1F4DD

◯ 公認心理師がアルコール依存性治療薬処方に関与決定。依存症最前線・オピオイド・グルタミン酸受容体アップレギュレーション・ハームリダクション

1.序

公認心理師試験受験者の方々にも知っておいて欲しい依存症治療の最前線です。ついこの間研修で、矯正→依存医療領域を専門にしている才媛K女史の講義が素晴らしかったので当人の了承を得てK女史講義内容を紹介します。僕の私見も一部入っています。

まず、アルコールを含む物質依存性についてそれが矯正とかかわる可能性がある法律についてです。

2005年7月 医療観察法
2007年6月 刑事収容施設法
2016年6月 刑法等の一部を改正する法律・薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律

さて、司法矯正分野の専門の方には耳タコですが、薬物依存性の方の処遇についてのチャートです。

刑の確定→処遇指標or処遇区分又は調査センター→処遇施設→矯正処遇実施、となります。

矯正処遇を受けることが義務付けられる根拠は「正当な理由なく矯正処遇を拒んではならないことが遵守事項に定められ、これに違反した者に対しては、懲罰を科すことが可能(間接強制)というものです。

http://www.moj.go.jp/content/001225807.pdf

2.アルコール関連問題対策の歴史

昭和38年 国立療養所久里浜病院「アルコール中毒特別病棟設置」
同年全日本断酒会連盟発足
昭和49年 成増厚生病院にてアルコール病棟開設
昭和50年 AA(アルコホリックアノニマス)日本で発足
昭和52年 厚生省アルコール研究班組織
平成25年 アルコール健康障害対策基本法
平成28年 アルコール健康障害対策基本計画

そして現在アルコールに関する主要3学会は、日本アルコール・アディクション医学会、日本アルコール関連問題学会、日本嗜癖行動学会です。

3.診断基準等

さて、アルコール依存は生命、心理、社会的な影響を引き起こします。

飲酒で死に至る(食道静脈榴破裂による大量吐血など)、依存による社会経済的なマクロの損失、自死、飲酒運転、家庭内暴力、犯罪、リスクが高い女性の飲酒(女性のアルコール分解酵素は男性よりも極めて少なく、ごく短期間で依存症になります。)、高齢者介護とアルコール問題です。

ICD-10物質依存症候群の診断基準では、
⑴物質を摂取するための制御困難、欲求、強迫感
⑵物質摂取行動(開始、終了、量の調節困難
⑶離脱症状、使用量増加による耐性
⑷社会障害(飲んで上司をぶんなぐるとか二日酔いで出勤できなくなるとかでしょうか)
⑸危険な使用(γ-GTP100以下ならなばなんととかセーフかもしれませんがやめるように言われます。4桁になる人は肝硬変→肝臓がんコースです。)

ICDでは上記3項目が1年以上同時に存在した場合に診断され、その欲求に抵抗できないことが特徴です。

DSM-5の「物質使用障害」もほぼほぼ同じです。制御障害として、使用量の増加、制止努力失敗、長時間、入手、摂取からの回復時間の消費があります。

社会障害としては仕事や学業、家庭への影響、社会的・対人関係の悪化(「俺は酒癖は悪いけど言ったらそこまでだから忘れろ」というのはパワハラ&アルハラと思います。)

飲んでいれば当然社会的活動や娯楽を放棄、縮小することになります。危険使用はICD-10と同じですがほとんど全ての精神薬がアルコール禁忌と知りながらでも飲む人が多いのは依存症です。耐性、離脱も定義されています。

ICD-10は精神依存が必須で比較的重症度が高いですがDSM-5は社会障害が重視されます。ということで比較的軽症例も含まれます。

4.基本的見解と現在の治療、ハームリダクション(低減、減酒)

アルコールについては従来絶対断酒でした。身体的、精神的、社会的問題に深刻ながある場合には断酒しかないのですが、断酒はハードルが高い、として飲酒量低減のためのハームリダクションがありうる、「まず節酒でもいいんじゃない?」というのが軽症例もターゲットに見据えた」最新の依存症治療の流れです。

依存症治療に携わった方々は十分承知のことと思いますが、家族が怒っても医師が叱ってもましてやセラピストたる心理職が厳しいことを言おうものなら患者さんは通院なら二度と来なくなるかもしれません。

治療ドロップアウトを防ぐ手段としてハームリダクションがあるのです。
軽度依存性で患者さんが飲酒量を減らしたい、特に飲酒によって支障がなければハームリダクションは一つのゴールになります。

精神・身体状態や服薬との交叉耐性もありますが、何もなければビール1〜2缶ぐらはいいじゃない?という考え方です。

従来の依存性治療者は患者さんを叱るのが役割という管理的役割しか取れなかったのが、ハームリダクションによって問題を低減できるので患者さんの治療アドヒアランスからのドロップアウトを防げるというメリットがあります。

ハームリダクションは患者さんの抱えているさまざまな問題の低減につながります。

国立久里浜医療センターはアルコールに限らないさまざまな依存性治療を行っているのですが、久里浜方式は患者さんを閉じ込めて飲酒させないことが治療目標ではありません。

メンタリティー重視なくして治療なしという考え方から、患者さんの自治会組織運営、そして各種治療プログラムへの全ての参加が原則です。自主性を重んじるので開放病棟、帰宅外泊も日課となり、その中でいかに自分を律するか、そしてそのミスも織り込み済みということになります。

退院後の通院コンプライアンス、抗酒薬、自助グループを重視します。

5.心理社会的治療

依存症集団精神療法は患者さんが持つ否認を洞察させることが目的です。そのための受け入れ先として断酒会、AA、マック、ダルク、そしてデイケア、作業所も社会資源になります。

依存症治療に対してはSMARPP、GTMACのような認知行動療法プログラムがあります。それらは基本的には動機づけ面接MIとの組み合わせですが、実は依存性治療にはなんでも効果があるのではないかというのが実感です。

参照url

https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/reference/index.html

随伴性マネジメント、作業療法、家族療法、運動療法、内観法、森田療法、SSTも推奨されていますが、家族支援としてはCRAFT Community Reinforcement And Family Training(コミュニティ強化法と家族トレーニング)があります。

6.薬物療法

商品名シアナマイドCyanamide(実は肥料として開発された)は、二日酔い成分のアセルアルデヒドが飲酒した瞬間に生成されるので飲酒した心地よさよりも苦しさが勝るわけです。ノックビンDisulfiramも同様で、嫌酒剤として処方されます。

依存症治療薬はなんでもそうですが、患者さんに告知せず、家族が黙ってコーヒーに混ぜて飲ませる等すると逆効果です。「何でオレをこんな目に遭わせた!」という嫌・嫌酒剤になってしまうので、デイケアの看護師さんや家族の前で「よし、オレは今日のまないぞ!」と気合いを入れる決心のために飲むわけです。

依存から脱する離脱期は不安との戦いですのでベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方もセオリーです。

さて、アルコール依存性治療薬として脚光を浴びているのは飲酒欲求低減薬、アカンプロサートがあります。Acamprosate、商品名レグテクト(日本では2013年発売)飲酒依存によってGABA受容体が抑制され、ダウンレギュレーションしてしまって耐性獲得をしている状態を正常化します。(GABA受容体が抑制されると不安が増し、鎮静作用が減ります。)

また、慢性飲酒はNMDA型グルタミン酸受容体を過剰に活性化させたアップレギュレーションの状態を引き起こすため、Acamprosateは断酒が振戦譫妄や興奮性神経細胞死を引き起こすのを抑止します。

アルコール依存で乱れた脳を正常化するため、飲酒欲求を抑制する薬です。

もう一つの飲酒抑制剤としてはナルメフェンNalmefene商品名セリンクロで、日本での発売は2019年です。オピオイド受容体に働きかけて減酒を可能にします。こちらもアルコール依存性に対する心理社会的な働きかけが重視されて処方されます。

こうした飲酒抑制剤は患者さんが希望したからといってはいどうぞとどこの病院でも出してくれるわけではありません。

関連学会に所属して研修を受けている医師、さらに看護師や精神保健福祉士、公認心理師と協力しながら行わなければならないと厚生労働省で定められています。画期的なことです。

https://www.hospital.or.jp/pdf/14_20190225_02.pdf

7.行動変容の評価

禁煙に例えることもできますが、依存性は何でも共通しています。患者さんが6カ月以内に行動を起こすつもりがない無関心期、6カ月以内に行動を起こす意思がある関心期、1カ月以内に行動変容させようとする準備期、実行期は明確な行動変容が観察されるがその持続がまだ6カ月未満の時期、維持期は明確な行動変容が観察され、その期間が6カ月以上続いている時期です。患者さんが今どのステージにいるかが見極めるポイントです。

8.SBIRT

WHOが定めるSBIRT(S)は厚生労働省HP内「アルコール依存性者のリカバリーを支援するソーシャルワーク実践ガイド」にも掲載されています(アルコールソーシャルワーク理論生成研究会)。SBIRTは「非健康的なアルコール使用を同定し対処する」一連の手法です。Screening患者さんをふるいにかけ、Brief Intervention簡易介入を行う手法です。Low Risk(低リスク)には予防教育、Risky(リスキー)多量飲酒・危険飲酒には減酒と進行予防を目標にした保険教育、Harmful(有害)乱用・有害使用には減酒・断酒を念頭に置いた簡易介入、Severe(深刻・重篤)には専門治療を念頭に置いた簡易介入が行われます。

そしてRiferral Treatment専門医療が必要な群には紹介を行う。
Selfhelp group:自助グループにつなぐ

9.入院

入院治療プログラムの一例です。それぞれの病院によってプログラムはアレンジされています。中毒性精神病治療、離脱治療への薬物療法、心理的にはカウンセリング、そしてミーティング、家族教育、薬物家族教室、家族ミーティング、家族面談、家庭訪問が行われています。

病棟ミーティング、勉強会、残棟者ミーティング、患者会、集団療法としてのレクリエーション、ウォーキング、作業療法、SGM、CST(再飲酒・再使用防止プログラム)自主グループ活動、AAメッセージ、NAメッセージ、ダルクメッセージ、マックメッセージ、断酒会、AA、NAそして入院している患者さんは必ず退院します。そのため治療的外出、外泊を行わせ、自由の中で断酒ができることを学びます。

10.治療方針

司法領域にいた人には違和感あるかもしれませんが依存性研究者にして実践家権威精神科医松本俊彦先生は違法薬物使用でも警察に通報しない、患者さんの「またやっちゃったよ」が許容される治療システム構築を目指しています。外来に来たことは大いに称賛されるべきです。心理教育、可能な限り外来での治療を行います。

ハームリダクションはBRENDA法踏襲による日記療法も行われます。⑴飲酒量目標設定、⑵飲酒量確認、⑶服薬状況などの確認、⑷全体的な改善の評価、⑸全体的改善の評価です。

※ 目標設定は適宜見直されます。

日本における治療が必要なアルコール依存症者はICD-10定義では未治療者を含め109万人いるとされています。依存症は医療、社会経済的損失が大きい問題です。新しい依存性治療は軽症者へのハームリダクションを念頭にシフトが始まりつつあり、公認心理師の活躍がその中に期待されています。

最後にAA12のステップを掲載します。

1.私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
2.自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
3.私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
4.恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行ない、それを表に作った。
5.神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
6.こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
7.私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めた。
8.私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
9.その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
10.自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
11.祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
12.これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。

E338E659-C092-4829-BDA1-E35C5577E472

◯ 公認心理師試験・医学分野参照url

がん、悪性腫瘍は細胞の遺伝プログラムの逸脱による異常増殖です。

1.自立性増殖

正常な新陳代謝の都合を無視して、自立的に増殖を続け、止まることがありません。

2. 湿潤と転移

周囲に滲み出るように拡がったり(=浸潤)、体のあちこちに飛び火(=転移)して次から次へと新しいがん細胞をつくってしまいます。

3.悪液質

ほかの正常細胞が摂取しようとする栄養を、どんどん奪ってしまうため、栄養が行きわたらず身体が衰弱してしまいます。

1.のみの特徴だと良性腫瘍と定義されています。

http://www.pet-net.jp/pet_html/treat/gan.html
がんについて PET検査ネット

食道がん、骨肉腫など部位由来に対し、造血機関、骨髄由来の白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫は全身症状を示します。

日本人のがん生涯有病率は役2人に1人です。

(男性63パーセント、女性47パーセント、死亡率男性25パーセント、女性16パーセント)

がんに最適な治療法を標準治療と言い、手術、化学療法(ホルモン療法(乳がん治療)、分子標的療法(ゲノムをターゲットにしてガン細胞のみを標的)分化誘導療法(白血病))放射線療法があり、手法を複合して使う事があります。

がんという重大な疾患の特性上、どの治療法も侵襲性は少なからずあります。

手術、放射線療法は患者さんに体力的な消耗を強いますし、化学療法も肝機能障害を見越しながら救命、延命のために実施する場合があります。

自己負担、比較的副作用が少ない免疫療法など、治療法の研究は日進月歩で進んでいます。

緩和ケアは

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面する患者と其の家族に対して、痛みや其の他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメント対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである。」

・ 痛みやその他の苦痛な症状から解放する
・ 生命を尊重し、死を自然なことと認める
・ 死を早めたり、引き延ばしたりしない
・ 患者のためにケアの心理的、霊的側面を統合する
・ 死を迎えるまで患者が人生を積極的に生きてゆけるように支える

と定義されています。
ホスピス財団
https://www.hospat.org/public_what.html

◯ 循環器系疾患

・糖尿病(DM)
I型 若い人に多く、インスリン補給が必須
II型 生活習慣が大きく影響をしている

糖尿病性白内障、末端壊死の危険性から両足切断に至るまで場合があり、薬物、食事、運動療法が推奨されています。

肥満、高血圧、脂質異常、喫煙の動脈硬化リスクが加わると心筋梗塞、動脈硬化が起こりやすくなります。

・ 慢性腎臓病(CKD)
国民の8人に1人はかかると言われている疾患で、全身のだるさを訴えた時には症状は進行しています。

肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常などの因子が悪化要因になります。

腎臓の機能低下、蛋白尿が末期腎不全、透析の原因になるだけでなく循環器病や死の原因となります。

・不整脈
頻脈(多い)徐脈(少ない)、不規則などがあります。

近年の心電図計は細かな不整脈もキャッチしますので、以前は異常とみなさなかったサドルバッグ(馬のあぶみ型)不整脈を感知することもあります。

不整脈のみでなく、近親者に心疾患での死者はいるかという遺伝要因や失神経験があるかも心疾患鑑別のポイントとなります。

・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)

心臓自身に栄養や酸素を送っている冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、心臓が酸素欠乏に陥る状態(狭心症)や、血管が詰まってしまって、心臓の一部が死んで動かなくなる状態(心筋梗塞)があります。

生活習慣病とかかわる重大な病気で、最初の発作で『突然死』することもあります。

・弁膜症

心臓の中には、血液の流れを一方通行にして逆流を防ぐ弁が4つあります。

これらの弁の障害による病気が弁膜症です。これには、弁が硬く開きにくくなる「狭窄症」と、弁が閉じきらずに血液が漏れてしまう『閉鎖不全症』があります。

多くは小児期にかかるリウマチ熱という病気の合併症で、20歳代で弁の異常が進行し、30~40代になるとそれがはっきり現れるようになります。

弁膜症には、先天性のものや、動脈硬化などの結果生じるものもあります。

・心不全

心不全というのは病名ではなく、状態をあらわす言葉です。

すなわち、ポンプとしての心臓の働きが弱り、そのため全身に必要な血液が供給されない状態、あるいは血液の流れが滞る状態のことをいいます。

どのような心臓病であってもポンプ機能が異常になると『心不全』になります。

心不全といわれたら、原因となる疾患がかくれていないか、はっきりさせることが重要です。

(以上、虚血性心疾患、弁膜症、心不全については以下のurlを参照しました。)

http://yotsuba-heart.jp/department/circulatory_diseases/heart_disease.html

※ 心理職は何か身体症状があっても心因と考えがちですが、胸の締め付けられる痛みは救急対応が必要な事態です。すぐ救急車を呼びましょう。

過呼吸もカウンセリング中に収まる場合があるかもしれませんが、しょっちゅう心理職が介入していると身体疾患のWPW症候群を見逃す危険性があります。、

・周産期心筋症
妊娠、出産による心疾患、産褥心筋症

・高血圧
血圧は測定時にBPと略して記載されます。
上140、下90以上が高血圧とされ、ストレス、タイプA型行動パターン、飲酒、喫煙でも血圧は上昇し、血管内部を痛めるので心疾患や脳梗塞の原因にもなります。

・動脈硬化は脂質が動脈に蓄積する、細胞新生が起こらず心筋梗塞、脳梗塞を起こします。

動脈硬化と高血圧には相関性があるリスクがあります。

「高血圧が体におよぼす影響として最も危惧したいのが「動脈硬化」です。動脈硬化が高血圧を招く一方で、高血圧が動脈硬化を招くこともあるのです。
 動脈硬化とは、体内の血管で起こる“老化現象”をいいます。高血圧の状態が長く続くと、老化現象は一層進行します。高血圧の状態では、血管の内壁に強い圧力がかかるため、血管がダメージを受けやすくなってしまうのです。」

メディカルネットブック
高血圧の基礎知識 高血圧(第1章)
https://m-netbook.jp/hypertension

・脳卒中は脳梗塞、脳出血によって起こる三大生活習慣病のひとつですが、死亡率が高いくも膜下出血、I時間程度で収まる一過性脳虚血性発作があります。

※ 医学分野について本格的に知りたいのならMSDマニュアルも参考にしまこょう。

D83C72B7-7295-46F0-91DE-40EC8B5CBF01

◯ オンラインカウンセリングってどう?無料or and有料カウンセリングはどっちがいいの?その可能性と利用法

コロナウイルス電話相談を厚生労働省や各保健所で行っていると書いたばかりですが、その人が今一番心配なことを聞くことがカウンセリングの本旨だと思います。心理カウンセリングだけでなく広く「相談」は多くの人に必要とされています。

さて、オンラインでカウンセリングをしますよ、とLINE、Skype、ZOOMなどさまざまなツールを利用してカウンセリングをしていますよ、というサイトが公認心理師、臨床心理士、なかなかの経歴がある旧帝大院卒者等も参入しているのを散見します。

という話を知人の精神科医に話したら「そんな時代になったんですねえ、ひなたさんはどうです、やりますか?」僕:「うーん」という会話を最近しました。

以前書いた元乃木坂の中元日芽香さんも予約制のSkypeカウンセリングを行っています。こういったオンラインカウンセリングで満足度が高ければそれはそれでクライエントさんは構わないのですが、オンラインカウンセリングは臨床心理士、公認心理師以外のいわゆる無資格カウンセラーも多い。

さて、これをどう解釈するべきでしょうか?対面カウンセリングでも同じですが、僕はカウンセリングのクオリティを

1.いいカウンセリング、2.毒にも薬にもならないカウンセリング、3.クライエントさんが不満を抱いてドロップアウトしていくカウンセリング4.有害でクライエントが除反応を起こしてもケアできないカウンセリング。5.自分を神格化して信奉させるカウンセリング

の序列なのではないかと思っています。「2.毒にも薬にもならないカウンセリング」はクライエントさんが「こんなものかあ」と思いながら通い続けていて、「3.」に移行してドロップアウトするかもしれません。それはそれでいいのです。クライエントさんには自己治癒能力があります。

さて、対面でも起こりうる「4.」「5.」の激しい抵抗や神社を作り上げるような、いわば有害事象をオンラインカウンセリングでは防ぐことはできるでしょうか?どんなクライエントさんでもトラウマを負ったPTSDの人はどんな精神療法でも除反応を起こすことがあります。僕はPTSD、あるいは適応障害の患者さんでも目の前で激しい除反応を起こすのを見たことが何度かあります。

元々そういうクライエントさんが多く来る機関で勤務していたからでしょう。泣きながら土下座したり床を叩いて転げ回ったりと壮絶なものですが、僕のカウンセリングを知っている他職種勤務員は慣れっこで「またか」と思っているのですが、除反応が起きると途中で慌ててセルシンを静注してもらうのは下策と僕は考えます。

除反応が起こったら徹底して除反応を出し切らないとトラウマ体験が不全感を持ったまま残ります(現代催眠原論)。除反応は出し切った方がいいのです。オンラインカウンセリングでEMDRをおこなう心理職はさすがにいないでしょう。催眠はどうやって解催眠をすればいいのでしょうか。

自我状態療法は?ブレインスポッティングは?ブレインジムは?ソマティックエクスペリエンスは?どの心理療法もトラウマ処理にはかなりの高い専門性があり、除反応が起こってもおかしくないです。

それならばトラウマ処理には認知行動療法を暴露療法として刺激の洪水、フラッディングを使おう、とか、トラウマが隠されている主訴の人にフォーカシングを行ってみようとすると実はとんでもない侵襲性があって、それをオンラインだと処理し切れないことが十分に考えられますし除反応も起こりえます。

オンラインカウンセリングで可能なのは「1.よいカウンセリング」は、クライエントさんが話ができてよかったなあという満足感を得られるもの。誰かに聞いて欲しかったから聞いてもらった。これはスッキリしたという意味ではいいカウンセリングです。

実際多くの有資格者や無資格者でもこういった電話カウンセリングは頼りにされていますが、クライエントさんからのクレームも多く「勝手に決めつけられた」「入院しろと言われた」など腹を立ててドロップアウトするのならばまだマシなカウンセリングと言えます。

怖いのは侵襲性があってもそのケアができないカウンセリングです。また、カウンセラーを信奉したクライエントさんが「私が全てあなたを助けてあげましょう」と困窮して藁にでもすがりたいところにそう言われると頭の奥が麻痺したようになり、カウンセラーを絶対視するようになります。

こういったことはトレーニングをきちんと受けた有資格者はやりません。しかしながらオンラインカウンセリングでも悪意を持ったカウンセラーがやろうと思えばできるでしょう。電話カウンセリングでもできるかもしれません。

とここまでオンラインや非対面カウンセリングについてネガティブな意見を書いてきてしまいました。しかし遠隔地、僻地居住でなんとかカウンセリングを受けたいと希望しているクライエントさんはいます。そういった方になんのチャンスも与えられないというのは酷だと思うのです。

無資格者を含んだオンラインカウンセリングには何のガイドラインもありません。有資格者についてもオンラインカウンセリングをしてはいけないというルールもないのです。せめて有資格者についてはプライバシーポリシーやガイドライン、コンプライアンスやインフォームドコンセントをしっかりと整備した上で掲載し、カウンセリングを行なって欲しいとも思います。

カウンセリングを受けられる環境にいない、または心身の不調で外に出ることができない方々の潜在的なカウンセリングのニーズは高いものと思います。

日本臨床心理士会では実は無料カウンセリングを行っています。

http://www.jsccp.jp/about/tel.php

また、各地方公認心理師協会でも無料で電話カウンセリングを行うことがあります。

官公庁や企業では従業員支援プログラム、EAPの一環として24時間体制で産業カウンセラーも含めた電話カウンセリングを行っている事業所も多いです。

今後SNSカウンセリングやオンラインカウンセリングはかなりの地歩を占めていく可能性があります。

メールカウンセリング、電話カウンセリングなど対面でないカウンセリングも多いので、望む人が専門的なサービスをできれば安価、もしくは生活困窮者の方には無料で受けられるようなシステムを作り上げて欲しいと思います。

ご存知でしょうか。東京都には年間7万2千円までカウンセリングを無理で受けられる制度があります。他自治体でも多く行っているようです。

警察庁では性的虐待へのカウンセリングを含めた性被害への全般的な支援を行っています。

https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/shien_soudan.pdf

ワンストップ支援センターも全国展開しています。

http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html

全国市区町村役場や社会福祉協議会(社協)、無料相談窓口の案内は都道府県精神保健福祉センターでも行っています。無料カウンセリングはSNSでの青少年相談は今も行われています。

無料カウンセリングを僕が力技で押しているわけではなく、例えばこうしたカウンセリングの公的支援サービス機関として私的カウンセリングオフィスはその任を行っていることも多いです。ボランティアでこういった方々への無料カウンセリングを医師や心理職が行っているカウンセリングオフィスもクリニックもあります。医療者や心理職の責務は社会貢献なので、利用したい方々はどんどん問い合わせて欲しいと思います。

医療機関における、本来保険診療外カウンセリングも地域貢献、社会貢献が母体となる団体が無料化して行っている場合があります。(済生会はほぼ満員状態だそうです。by知人。ですが問い合わせてみる価値はあるでしょう。)

支援を必要としている人がカウンセリング受けたいという要望が多ければ、それは僕らのような心理職にとってもそれだけの社会的ニーズがあるという追い風になります。

元々カウンセラーとクライエントさんは対等で、二人三脚でカウンセリングという構造を作り上げていくものだと思っています。

さまざまなカウンセリングの形態や価格を現代社会は選択肢を提供しています。臨床心理経済学的にクライエントさんがコスパの良いものを選ぼうとすることは心理職にとってもより洗練される機会を与えられることになるのです。

カウンセリングする側は経験を積み、技を磨き、クライエントさんはどんどん自分の思うままに快い選択をして欲しいと思うのです。

305405A3-67F9-4D26-8265-A31704A3833D

◯ PTSDと脳科学

PTSDによってダメージを受けるのは扁桃体です。

扁桃体や海馬が萎縮して重量が軽くなることが指摘されています。

脳由来栄養因子BDNFも減少します。

最新研究ではメマンチンという認知症薬がPTSDに効果的なことが知られつつあります。

PTSD機序や治療については以下の書跡も詳しいです。


◯ PTSDの治療

PTSDの治療は、何の療法でもよく効いて反応すると言われていますが、PTSDに特化した治療法としては認知行動療法の中で持続エクスポージャー法(prolonged exposure)PEが著効があるとされています。

統計的なエビデンスは十分にあるのですが、PEは治療の際のセッションのテープを毎日1時間ずつ聞かなければならないというハードなホームワークがあるので脱落例も多いです。

また、PTSD治療のために開発されたEMDR
Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法
はフランシーン・シャピロによって創始された技法ですが、トラウマティックな出来事への曝露はPEに比べて少なく、PTSDに対して比較的安全な技法です。

眼球運動を左右に行う、音を聴くなど両側性刺激を行いながらトラウマについて処理するというもので、精神分析から認知行動療法までの幅広い精神療法のエッセンスを使っています。

日本EMDR学会
https://www.emdr.jp/

BSPやその他ソマティックなワーク(EBMでない、ナラティブセラピーもPTSDには有効です。)

PTSDの薬物療法ではSSRI、パキシルの使用が第1選択肢として教科書では考えられていますが、実際には定型非定形精神病薬や、解離を伴わないPTSDにはベンゾジアゼピン系抗不安薬、ムードスタビライザーなどのあらゆる薬が使われています。

◯ 解離症群
解離とは、意識・注意・認知(行動)機能の一過性変容で意識・記憶・同一性・情動・知覚・身体表象、運動制御・行動の正常な制御が破綻、不連続となる病態(現任者講習テキスト)。

解離性同一性障害は2つ以上のパーソナリティが出現するという部分で、旧来多重人格障害(multiple personality disorder)、解離性健忘ですが、どうやってそこにたどり着いたかわからない、見覚えない服を着ていた、見ず知らずの人に会ったら別の名前で呼ばれた、などの健忘状態とその間にしたこと。

それから、事物と自分を薄いヴェールのようなものが隔てていて現実感がなく、離人感があるという出来事があげられます。

解離性健忘は一部の場合もあれば、生活全般にわたる全健忘の場合にはもあります。

多重人格の場合には第2人格が何年も主人格として入れ替わっている場合もあります。

統合失調症、てんかんや睡眠行動障害などとの鑑別が必要です。

特に精神病性混迷は解離性混迷と峻別が困難です。

このような解離が始まった作用機序について考えてみると、例えば性被害に遭った女性が被害体験の記憶を別人格に移しておかないと生々し過ぎて自殺してしまう可能性さえあります。

PTSDと解離はとても近い機序があります。

精神病と神経症の境目として研究が始まった境界性パーソナリティ障害も一過性の精神病様状態の間に解離を起こすことがあります。

また、拘禁症候群としてよく知られるGanser症候群は、知覚の過敏、脱しつつということでカタレプシー緊張状態から、固まってしまいます。

逮捕拘禁でよくGanser症候群は起こります。

解離性感覚障害、解離性運動障害では声が出て出なくなる失声やヒステリー性盲もあります。

現任者講習テキストに書かれていて?と思ったのは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が治療に使われるとありますが、ベンゾジアゼピン系の投薬は解離を促進させるので禁忌とされています。

実際はSSRIや非定形精神病薬ではないかと思いました。

解離とベンゾジアゼピン系使用について 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=28

◯ 身体症状群

ICDでは身体表現性障害と言われていますが、身体化障害、心身症、転換性障害(ヒステリー)、機能性身体症候群 Functional somatic syndromes, FSSでは、身体と精神とが一体となって症状が生じていて、線維筋痛症FM、Fibromyalgia慢性疲労症候群CFS、Chronic Fatigue Syndrome CFSとFMの合併症などが含まれます。

※ この辺りは身体症状群の中でもかなり重篤なFM繊維筋痛症の扱いが曖昧なので、単独疾患として繊維筋痛症をDSMやICDの中で独立したさせるか、身体疾患での治療の困難な難病としての扱いがいいとも思います。

繊維筋痛症は確かに多くの抗うつ剤や認知行動療法が効きますが、だから精神疾患に間違いないという原因論にたどり着くのは危険な気がします。

ただし、近年多くの心理職が整形外科で働くようになってきている実績のあるからは、痛みを緩和させるカウンセリングが定着することが望まれるでしょう。

「身体症状症は5パーセントの有病率で、症状改善を希求、未発見の疾病があるのではないかという心気症、慢性化覚醒が原因の身体感覚への閾値低下、そして身体内部感覚増強、不安による症状へのとらわれ、身体感覚内部の消失を目標とした過ちが病態を構成している。病態説明と「気のせいではない」という保証を行う必要がある。リラクセーション教示など身体的アプローチも実行できる必要性がある。」(現任者テキスト)

◯ 摂食障害

神経性やせ症AN anorexia nervosa
神経性過食症BN Bulimia nervosa
特定不能EDNOS Eating disorder not otherwise specified

日本ではAN125,00人
BN 6,500人
EDNOS 4,200人

男女比1:10

過食は自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤濫用で排出型があります。

やせ症、拒食の場合には生理が止まります。飢餓、低血糖、電解質異常(食べ吐きはカリウムが不足、胃酸で歯のエナメル質が融解します。)、肝機能、消化器、循環器障害を誘発します。

DSM-5によるAN重症度判定は

軽度:BMI≧17.6kg/㎡
中等度:BMI16〜16.99/㎡
重度:BMI15〜15.99kg/㎡
最重度:BMI<15kg/㎡

入院、死亡に至る場合も多く、拒食の死亡率10パーセント、食べ吐きは体内栄養バランスが大幅に狂うので18パーセントという統計があります。

自己の身体イメージに対する不快な意識を常に抱いていることから、自ら命を断つ、あるいは身体が生き延びることができなくなり死に至る例も多いです。

↑このページのトップヘ