ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2019年10月

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◯ 「公認心理師のための説明実践の心理学」から考えるインフォームドコンセント

昨日アカメアマ様から、コメントとして患者さんや一般人、非心理職に対する説明をどうすればいいのか?

ひなた先生はどう思いますか?

という質問がありました。(要約)

ちなみに僕はこのブログを書いている時、ただの心理ブロガーで「先生」ではないですし、カウンセリングの現場でも神格化されないように心を砕いていますので「先生」と呼ばれると恐れ多い気持ちになってしまいます。

(スクールカウンセラーが働く学校という現場は給食センター員、用務員も「先生」なので受け入れていましたが)

神格化の後にやって来るのは、魔法のような精神療法や、そして環境の変化を実現させてくれないカウンセラーへの落胆やカウンセリングからの脱落、時によっては攻撃性の発露にもなります。

「必ず私が治します」というのでは宗教になってしまうでしょう。

さて、多分試験勉強のテキストにも使われるだろう標題書(ナカニシヤ出版)を参考にしながら、僕なりの回答をさせていただければと思います。

公認心理師試験出題委員の沢宮先生も執筆者に名を連ねているこの本で、僕がとても得心したのは第4章「多様な利用者への説明原則」拓殖雅義筑波大学教授の説明です。

拓殖教授は専門が特別支援教育だけあって、障害のある方への説明を説明原則として示しています。

ダイバーシティ(多様性)概念がこれだけ広がっている今、心理職が心理職だけにしか通じない言葉で話しがちなのは、ついうっかり常識化していると思う専門用語は実は様々な人々にとって「共通言語」ではないけれどもそれを忘れがちです。

拓殖教授は筆談やICなどあらゆる手段を説明のために使います。

もちろん良心的な心理職は誰に対してもわかりやすい言葉で説明しようとします。

子どもでも障害や疾患がある人に対してわかりやすく噛んで含めるように説明、その際相手はわかっていなくても必ず「はい」と答えることを念頭に置く必要があります。

例;「患者はいつも『はい』と答える」(「医療におけるヒューマンエラー」医学書院 から引用)

看護師D「金曜日にお伺いしたDです。Bさんよく眠れましたか?」

患者A「はい」

(引用終わり)

Aさんは「眠れましたか?」に反応して、自分の名前が呼び間違えられたことは聞き流してしまいます。

「間違いだなあ」と思っていてもです。

だから心理職がインフォームドコンセント、説明をして同意を得る際には相手はわかっていなくても「はい」と答える可能性があるということです。

アカメアマ様からの質問に正確に答え切れているのかどうか難しいところですが、同じ人でも状態によって説明は異なります。

医師がとても多忙で秒単位を争っていてそれでも説明を求められることがあります。

ケースワーカーも浮かない顔をしている時もあります。

相手が同じでも状態によって共通言語が変わります。

むしろ心理職の仕事というのはインフォームドコンセントにこそ、その本質があるのではないかと思います。

説明に説明を重ねてずっと説明をし続けていくこと、そしていつも立ち止まって振り返り、相手の了解や理解を果てしなく求め続けていくことがカウンセリングやカンファレンスではないでしょうか。

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◯ 支援計画が立てられない公認心理師への危惧

看護師、福祉専門職は看護計画を立てたり当事者に対する支援計画を立てるのが仕事の一部になっていて、だから患者さんや当事者に対する上手なかかわり方を未来への時間軸で見ていきます。

看護計画、支援計画はとても大切なもので、看護計画がきちんと立てられない実習生が厳しく病棟看護師から何度も作り直しをさせられて夜勤の間缶詰になるという話を聞きます。

さて、心理職についてはどうか、というと、ケースにかかわっているとクライエントさんは時事刻々変化します。

症状が変化、昨日までは調子が良かったけど今日はきつくなり、どんよりしてしまい、さて入院かなあということもあります。

以前も書きましたが、クライエントさんの気分変動は特に理由もなく突然気分が変化することが多いのです。

だから患者さんのカウンセリングのための支援計画を立ててもムダ、だから最初から作らない、もしくは作ることすら頭の中にない心理職は多いです。

精神科医はその点臨機応変に投薬を変える、入退院、家族との連携など使えるカードがたくさんありそうです。

臨床心理士はインテークの初回面接受命、心理テスト実習、治療契約を結んでさあとりあえず開始するというだけでは公認心理師時代のカウンセリングは済まなくなって来る可能性があります。

ケース運営やケースマネジメントに困っているという後輩に「今の見立ては?短期的に1週間後の見通しは?1年後クライエントさんはどうなってるの?心理は何をやればいいの?」と聞くと答えに詰まる場合が多かったです。

僕の矢継ぎ早の質問は意地悪だと感じる心理職の人もいるかもしれませんが、医療、福祉に比べて心理職が時系列で持っている支援計画はあまりに弱いと感じたことは多々あります。

もちろん僕も絶対の計画の正解を持っているわけではなく、クライエントさんはどんどん変化していきます。

そして僕の関与が「関与しながらの観察」としてクライエントさんを支援計画とは違った方向に変化させてしまうこともあるわけです。

さて、クライエントさんは公認心理師という新制度ができればきちんと調べてからやってきます。

生物-社会-心理モデルから見てクライエントさんは自分はどう心理職から見えるのか、多職種連携の中で公認心理師としての心理職の見立てを聞かれることもあるかもしれません。

教育、看護、福祉職を元々している公認心理師の方がうまく支援計画を立てられる場合も多々あると思います。

元々の心理プロパーが公認心理師となった時、世間や患者さん、その家族から試されようとしている時期かもしれないと思うのです。

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◯ 意見絶賛募集中・公認心理師養成授業案(シラバス)

日本心理学会は公認心理師養成大学院で教えるべき内容についての授業計画案を2019/10/7に発表、これに対するパブリックコメント(意見募集)を始めました。

これに先立って2018/8/22には大学教育課程シラバスも発表されています。

大学院シラバス案を見て思ったのは、臨床心理士試験の出題基準よりもかなり幅広いということです。

ちなみに臨床心理士の出題範囲は「広く心理学の基礎的設問に加えて、臨床心理士の基本業務である4種の内容(臨床心理査定・臨床心理面接・臨床心理的地域援助・それらの研究調査)に関する基礎的・基本的な専門知識が問われます。また、臨床心理士に関する倫理・法律等の基礎知識および基本的な姿勢や態度にかかわる設問も出題されます。」

とだけ日本臨床心理士資格認定協会の定義には書かれていて細かなブループリントなどは存在しません。

もちろん日本心理学会のシラバスにはプロの心理職としてやっていくためには必要な知識は多いです。

教育福祉分野では障害児のための放課後デイサービス、教育移行支援(特別支援を必要とする児童生徒がスムーズに次の段階に移る支援)がシラバスにはあります。

また、犯罪矯正心理学上の反応性原則、北海道追試で出たRNRモデルは、犯罪加害者へ適正な処遇を適切な量だけ行うというもので、このあたりの知識は心理職には知っておいて欲しいなあと思います。

リラプスプリベンションモデルという、薬物介入をいつのタイミングで行うかという設問はシラバスに書かれていませんが反応性原則に準じているのでそのうち試験に出るかもしれません。

ただ、このシラバスに記されている内科診断学、予診、身体医療になると心理職は学習に困難を覚えるでしょう。

内科知識全般、感染症予防対策、予防医学知識を得るのは心理職の仕事とは少し違うのではないかと思います。

また、力動的精神分析的精神療法もシラバスに入っていますが、精神療法の出題のバランスでは認知行動療法にかなり肩入れしていると思いました。

2018/8/22に日本心理学会から発表された学部シラバスでは消費者マーケティング、経営学、刑法、民法、遺伝子、細胞学、交通法規なども入っていたので公認心理師養成のために入学した学生さんたちは相当に多忙になりそうです。

こういったシラバスの学習内容は過去3回の公認心理師心理師試験でも何題も出ていて、ブループリントにもない内容でした。

元々公認心理師試験機関の日本心理研修センターには設立当時以来、日本心理学会がけん引している日本心理学諸学会連合(日心連)も深くかかわっていることから、日本心理学会の影響は相当に強いと思われます。

学会、大学という法人からのパブリックコメントも求められていますが、日本心理学会会員や「その他」の個人もパブリックコメントを出せるそうです。

パブリックコメントを出す出さないにかかわらず、受験生の方々や、興味のある方はシラバスに目を通してみてはいかがでしょうか。

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◯ 公認心理師>臨床心理士 公認心理師一人勝ちの構図

2018年9月9日第1回公認心理師合格発表から1年が経過しました。

この制度の発足前後、「臨床心理士と公認心理師、どっちの資格がおトクなの?」「他学部から心理大学院に来ちゃって公認心理師の受験資格がない、どうしよう?」などなどの声が聞かれていました。

僕もそういう声を聞き相談されると、人の一生がかかっているので悩んでいましたが多くの公認心理師が誕生した中で、当初からの計画どおり、むしろそれ以上に公認心理師の立場や採用は臨床心理士よりも優遇されて来ています。

すでにご存知の方も多いと思われる公認心理師進出領域や加算の要約です。

1.医療

⑴ 精神科リエゾンチーム加算300点(3千円)

⑵ 摂食障害入院管理加算100or200点

⑶ 児童・思春期入院医療管理科2,957点

ほか、通院・在宅精神療法児童・思春期精神科専門管理加算、認知症治療病棟入院加算、ハイリスク妊婦(精神疾患患者)加算、(司法+医療領域=PTSDについて検討中)が医療領域の公認心理師領域です。

2.福祉

⑴ 福祉専門職員配置

療養介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助、児童発達支援、医療型児童発達支 援、放課後等デイサービス、福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設

における公認心理師の配置・10単位(100円)/日or15単位

⑵ 児童心理司任用資格

3.教育

スクールカウンセラー任用資格

4.産業

ストレスチェック実施者

5.司法

社会復帰調整官任用資格

6.他、総務省(首相官邸)ギャンブル依存症対策に公認心理師を登用することも決まっています。

また公認心理師優遇制度として、東京都福祉保健財団は公認心理師資格取得援助制度を実施しています。

http://www.fukushizaidan.jp/118genninshougai/h31/rifuretto.pdf

地方公務員心理職上級も公認心理師を任用、優遇資格としている自治体が増えて来ていますし、民間の病院でも然りです。

各施設で公認心理師を優先的に採用養成し、そこでまた公認心理師実習先として学生を受け入れて優秀な学生を集めていくようになれば、いわゆるインターンシップ制度にも似た施設と大学との有機的な連携も構築されていくでしょう。

多分今後もこういった公認心理師シフトは進んでいくでしょう。

試験内容が、心理職の現場に出ても即戦力になって実務に当たるのに困らない素養を推し量るものになって欲しいものだと思います。

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◯ 公認心理師試験現任者Gルートの黒い噂-2

〜僕の職場に不定期で来る保健師のE先生と打合わせ〜

僕「ということでまた先生にこのクライエントさんのカウンセリングお願いしますね」

E先生「ひなた君は自分でカウンセリングするより私に仕事振るのが上手ねえ」

僕「いや、かくかくしかじかの理由で」

E先生「まあ仕方ないわねえ。ところでね、私◯◯カウンセラー協会(民間ながらそこそこ権威ある資格団体)にいるじゃない」

僕「はい」

E先生「そこの協会の指導者資格取ろうとしてるA君って人がいるのよ」

僕「ええ」

E先生「指導者資格取るには半年ぐらいカウンセリングの実習があるんだけどね」

僕「はい」

E先生「とにかく彼、センスなくてダメダメなのよ。教えてる私たちもなんとか資格取らせたいから頑張って教えてるんだけど、全然無理」

僕「ふうん、そうなんですね」

E先生「うーん、彼ね、ずっと司法試験の勉強して、司法試験は受からなかったのよ」

僕「はい」

E先生「でね、小さな会社の総務課でバイトしてたりね」

僕「はい」

E先生「あとハローワークで何かのバイトしてたり」

僕「はあ」

E先生「どこで在職証明のハンコもらったのかわからないけど、公認心理師受かって取っちゃったのよ」

僕「えっ」

E先生「40歳過ぎだけどほとんど社会経験ない人なのよねえ」

僕「ハローワークで相談員長くやってたとか?」

E先生「いや、すぐやめてる。」

僕「総務でセクハラパワハラ相談員みたいなのずっとやってたとか?」

E先生「ううん、蛍光灯取り替えたり文房具の発注してた」

僕「えー」

E先生「どこで証明書もらったか謎なのよねえ」

僕「うーん」

E先生「ペーパーテストとか頭はいい人なのよ、いい大学の法学部出てるし勉強はできるわね」

僕「まずいじゃないの」

E先生「そうよねえ」

※ Gルート現任者受験者はきちんと心理相談業務の経験を積んだ人がもちろんほとんどでしょう。

ただ、審査は甘いのでこういった人も時々出てくるわけです。

むしろ仕事をしていない、家庭もない、ペーパーテストの勉強を一生懸命できる時間がある人は有利かもしれません。

試験は難しく心理専修者以外には相当の勉強をしないと合格はできないでしょう。

そこでふるいにかけているわけですが、それだけでは経験値不足者を発見することはできないわけです。

第1回試験から第5回までの「Gルート現任者は怪しい」となり、公認心理師の有資格者の中でも評価の格差が出て、この資格の価値が世間から認められないようになってしまうことに危惧を感じます。

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