ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2019年09月

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◯ 公認心理師現任者Gルート受験者資格はなぜ曖昧なのか?

公認心理師現任者Gルートはあまりにも曖昧な受験資格なんじゃないの?

という批判は根強くあります。

公認心理師受験に必修の科目を大学院で修められなかった現任臨床心理士救済措置のために現任者ルートを確保していただけかというと、それだけではありません。

公認心理師カリキュラム検討委員会議事録を改めて読んでみると現任心理職数万人がいる中で、臨床心理士でなくとも、精神保健福祉士も心理相談業務を行う現任者として想定されています。

臨床心理士と精神保健福祉士の資格を重複して所持している人々が全体の4分の1〜5分の1程度で占められていることについて、精神保健福祉士の受験を認めないわけにはいかないだろうし、業務独占でない公認心理師制度は精神保健福祉士や精神科医が行う心理援助業務を否定することはできません。

公認心理師受験資格を臨床心理士に限らないということは議事録中には明記されています。

週1回、ボランティアでも反復継続的に心理業務を行っていたことが証明できればよいというのがカリキュラム検討委員会の考え方で、日本心理研修センターもボランティアを現任者として認めていて、Gルート受験資格はそれに沿ったものになっています。

検討委員会の中で割と年配の委員(北村座長)が、もうまもなく心理職の職業人生を終えようとしている人はもういいかなあという人も多く、そういった人たちは受験しない。

それはそれで人生の選択なのでいいのではないかと思いました。

僕の記事を読んでいる方も指摘していたことですが、第2回試験のD2、大学院新卒ルート合格率58.5パーセントで、確かにこれは臨床心理士と同じぐらいの合格率なので、試験当局としては十分な説明根拠となる合格率で、この試験内容の正当性を主張できる根拠となりました。

カリキュラム検討委員会では定められた26施設のうち、職種としては児童相談所などを含む心理専門以外について取り上げられていました。

ただし実際に心理相談業務に当たっている看護師、教員、作業療法士などは言及されていませんでした。

それでもGルートだけで第1回、第2回試験を含めて2万7千人以上の合格者が出ています。

僕も一人一人について受験資格を精査することはできないと思いますが、本人からでも所属長からでも誓約書を出させればこれでもかなり「真の現任者」を絞れたと思います。

僕は心理業務専属者以外にもこの資格を付与して裾野を広げてもいいと考えます。

公認心理師の知名度や数が広まらないと公認心理師として活動していく実働人員は確保できません。

ただし、明らかな詐称はダメです。

結局このままだとよく勉強した非心理専門職が公認心理師試験では心理専門職を駆逐してしまうかもしれませんが、「大学院レベルの知識とセンス」は試験成績でしか推し量れないというスタンスということは事実です。

あとは試験が真っ当な心理職の知識とセンスを持った合格者を検出して選び出せることができるかどうか。

受験者ももちろん試験で試されていますが、試験のありようや出題内容、傾向、そしてこの資格の持つ意味合いも国民全体から見られているわけです。

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◯ 公認心理師不合格だった保健師E先生

E先生からスマホに着信

E先生「ひなたさん?私(別棟の)カウンセリングルームに今日は出勤してるんだけど、4時からの面接キャンセルになっちゃったのよ、こっち来ない?」

(僕のこの勤務先は複数の相談員がいます)

僕「はあい、僕これから面接だから終わったらそっち行きますね」

ー1時間後ー

僕「というわけで女性カウンセラーを希望しているクライエントさんなので先生にカウンセリングお願いしますね」

E先生「うん、わかった。でね、ひなたさんね、私公認心理師落ちちゃったのよ」

僕「えっ、E先生、保健師だし精神保健福祉センターでもキャリア長いからてっきり大丈夫かと思ってたんだけど」

E先生「3点足りなかったのよお。医学とか統計なんかは保健師の分野だからすらすら解けたけど」

僕「ふんふん」

E先生「ひなたさん悪いわねえ、参考書まで貸してもらったのに」

僕「いや、ごめんなさいね、こんなに難しいレベルになると思わなかったから。参考書もいろんな受験生の人たちからあとから聞いたら基礎心理学ばっちりの有斐閣の心理学とかナツメ社のテキストが良かったみたい。心理学検定は一問一答式もおススメらしかった」

E先生「ひなたさんも今回の問題解いてみたの?」

僕「うん、電話が途中で入ってきたり用事があってあちこち移動しながら問題急いでやってたらミス続出で、正答選択を問われていたのに誤答を選んでみたり」

E先生「そうそう、私司法とかはね、苦手分野だし、事例とかも曖昧な選択肢多かったじゃない?」

僕「うん」

E先生「私パニックっちゃってねえ、だからケアレスミスだけで5問ぐらいあって、あれがなければ良かったのに」

僕「うん」

E先生「で、どう考えてもわからない問題に引っかかって先に進めなかったり」

僕「普通の受験と同じですよねえ」

E先生「この年になってこんなに本格的に受験勉強するとは思わなかったわよー、でもね、第3回で私絶対受かるから。もしダメでもギリギリ5回まで粘る」

僕「はい、ぜひ頑張ってください」

※ E先生は数年来僕と一緒に仕事をしていますが、特に若い女性のクライエントさんに頼りにされているカウンセラーの先生です。

臨床心理士資格は持っていませんが十分に現任者と言える心理相談業務を20年以上しています。

受験動機は「私のところに来ているクライエントさんに安心して欲しい、信頼して欲しい、公認心理師の勉強を通じて専門知識を深めたい」

難しかった第2回試験に不合格だったからといって諦めずにまたリチャレンジするという姿勢は素晴らしいなあと思い、ぜひ第3回に再挑戦して欲しいなあと思いました。

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◯ 公認心理師試験再受験組の憂鬱

以前再受験組の合格率は低くなるだろう、と書きました。

それだけだと希望がない記事になってしまうので、再受験組の合格率は低くなるだろうけど個別で見てみると例外は多々あるだろうという事実を摘示するのが適切かと思います。

国家試験で再受験合格率が低いのは医師、歯科医師、薬剤師の厚生労働省のデータで出ています。

医学部の毎年合格率9割程度、既卒者6割と聞くと公認心理師第2回よりも合格率が高いので「なんだ、楽勝じゃん」と思いがちですが、どの大学の医学部も合格率が低いと国からの補助金がばっさり削られます。

だから成績が悪い医学部学生は留年させたり、他学部に転部させたり、果ては放校(強制退学)と大学側はきわめて厳しい措置で対応しています。

歯学部はなんだかもう開き直ってしまっているのか、国家試験合格率2割台を公開している(させられている)大学あり、既卒者はほぼ合格していない0パーセントの歯学部もあります。

薬学部も同様で、専門薬学教育を6年受けて新卒なら84.87パーセント、既卒者は47パーセントです。

国立でも私立でも医歯薬学生を一人前に育てるには例えば医師、歯科医師なら6千万円以上のコストがかかります。

国立なら国費で学生を教育、私学なら親が学費を出します。

医師国家試験9割は高い合格率と思えても、残り1割で国試を落ち続ける人に対しては大変無情で、医歯薬学部を出て国試に受からなければまず他のつぶしが全く効きません。

一昨日の記事で偉い臨床心理士のB先生が「6割取れればいい試験なんだよ?」と言っていましたが、国は落とした4割の人の人生の行く先を考えることはありません。

思うに、B先生は学部、大学院と心理専門教育を6年みっちりと受けたレベルを求めているわけですが、一度試験に不合格になっている人はさまざまな点で合格しにくいという構造があります。

その理由としては

1.記念受験、意欲

コストをかけて準備したしチャンスがあれば限界まで毎年受験する

これは医学部既卒浪人にもいて、名門医学部卒、親が大会社の社長なので跡取りになったけれどもとりあえず医学部既卒なので無勉強で毎年受け続けていて出身大学は「やめてくれ」と言っても本人は聞かないという例を聞いたことがあります。

こういう人は元々あまり勉強も準備もしていなかったわけです。

2.多忙、健康上の理由

これはもう勉強に集中するどころではないです。

第1回試験でものすごく優秀な臨床心理士の人が家事育児にてんてこ舞いで140点合格というのを聞きましたが彼女とて全く無勉強だったわけではなく元々一流大学や院で鍛えられた素養があって睡眠時間を削ってなんとか合格できたということでした。

3.勉強法

いろんな人たちが3回の試験を受けて勉強法は何がいいのか模索して有効な方法を探し出しています。

公認心理師試験は独特のセンスで事例を解かせます。

しかし国語力や勘だけで満点は絶対に取れません。

知識問題1点で明暗が分かれることもあるので、基礎心理学重視の公認心理師試験の勉強には基本書は欠かせないのではないかと思いました。

勉強時間をかけることで誰にでも解ける可能性はあり、ただし正答率が高い問題は落とせないとも感じました。

※ さて、第1回試験は優しいと言われながらも勉強時間が取れずに不合格だった臨床心理士の知人が第2回試験に再チャレンジして合格していました。

打たれ強い心理学的なレジリエントさ、絶望せずに楽観的に勉強を進めていける能力がその人にとっての利点、アドバンテージになっていたようです。

B先生曰く、6年間専門教育科目をみっちりと学んだ人並みのレベルを求める試験ということです。

ただ、解法のコツもあり、知識は着実に積み上げれば1点ずつ伸ばせる試験だと多くの人が言っています。

一般論として再受験組合格率は確かに低いですが、それを乗り越えられる方法は多々あるのではないかとも思います。

再受験=不利という図式には常に例外があるだろうと思っています。

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◯ 公認心理師現任者Gルートの黒い噂

※ 研究会の打合せの電話

A君「ということで原稿修正してメール送っといてね」

僕「うん、わかった、いつも編集手間かけて悪いね、ありがとう」

A君「ところでさ」

僕「うん?」

A君「B病院の受付事務兼マイクロバスドライバーのCちゃん、第1回公認心理師試験で受かって登録したってさ」

僕「えっ、ウッソー!?Cちゃんカウンセラー室付事務だけどカウンセラーじゃないじゃん」

A君「みんなから『おめでとー』って拍手されてたの見たから間違いない。」

僕「うーん、まあ患者さんからの電話対応は丁寧だし送迎の間も患者さんに親切だから評判はいい人なのは間違いないんだけどね」

A君「Cちゃんを気に入ってる病院長がハンコ押したからね。でも心理士がいない時は代理で用件も結構聞いてたのが心理業務?に認められたのかな?Cちゃん心理の世界に興味があって精神科事務に配属されたわけだし」

僕「うーん」

A君「ま、Cちゃんは僕も割と気に入ってるからまあいいんだけどね、いつも受付で心理学の本読んでたもん。高卒でよくすごく勉強したと思うよ」
(僕:いいのか?)

A君「あそこの病院大きいしうちの病院とも交流あるんだけどね、本当に全然心理業務と関係ない事務員受験させたり、あと経験年数足りない現任者受験させてたんだよね。院長テキトーだから、っつーか受験者が『じゃあ俺も、私も』って院長につけこんだように思う」

僕「・・・僕はそういう話ひとつだけ聞いたことあるけど実際にはもっとあるんだねえ」

A君「でね」

僕「うん」

A君「◯本心理◯修センターに告発した」

僕「えっ」

A君「どうなるかわからないけどね」

僕「うーん」

※ Cちゃんは僕もB病院を訪ねた時に親切で本当に感じのいい人だとは思いましたが受験資格?は疑問です。

僕はたまーにB病院に行ってカンファレンスルームで打合せや研究会に出るだけです。

A君は自分の病院の関連の職場ということでよくやり取りをしていて内情もよく知っているようです。

本当はそうでない現任者が受けて受かってしまったという話は初めて聞きました。

ただ、受験するだけでも四角い職印押印が必要な実務経験証明書を作成したら受験者だけでなく所属長も虚偽公文書等作成、行使の罪に問われる可能性が高いです。

この罪は10年以下1年以上の懲役で罰金刑もなくほぼ間違いなく実刑判決が出ます。

公務員は執行猶予がついても実刑判決には変わらないので間違いなく失職します。

過渡期にあるとは言え、まずい事柄に加担したら資格の価値そのものが問われます。

継続的定期的に心理業務を行なっていたのならばボランティア週一回でも受験資格があるという現任者受験資格のゆるさは、がっちり6年間学部、大学院と学んだ人にとっては複雑な気持ちかもしれません。

だから結局は院卒生や真の現任者を合格させるがために試験のレベルを上げたのかなと邪推してしまうところもあるのです。

本来ならば当該受験者が心理業務をきちんと行っていたかどうか、所属長に一筆書かせるとか、「◯◯は心理相談業務を行っていたことに間違いないことを証明します」という文書を提出させるだけで、きちんと現任者を正しく選び出すことはできるはずです。

甘い審査の一方で、私設開業できちんとカウンセリングをしていた臨床心理士をGルート審査落ちさせるなど本末転倒な審査を行うのはどうかと思うのです。

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◯ 臨床心理士より公認心理師を目指そう!(by 臨床心理士の偉い人)

先日臨床心理士で運営のそこそこ中核的な先生と話をする機会がありました。

(仮)B先生

僕「これからですね、若い中高生の人たちが進学して心理職を目指すとしたらB先生なら臨床心理士、公認心理師どっちを目指そうって勧めます?」

B先生「公認心理師一択!だって国家資格でしょ?」

僕「えっ、ウソ、先生臨床心理士の重鎮なのにそうはっきり言っちゃっていいワケ?」

B先生「君のブログに僕の実名や所属とか出さなければ」

僕「それ、臨床心理士側の公式見解と?」

B先生「いや、公式っていうか僕個人の親切見解ね」

僕「えっと、でも公認心理師試験って2回目の試験すごく難しかったじゃないですか?」

B先生「だってたった6割取ればいいだけの試験でしょ?それは臨床心理士も公認心理師も同じ」
(鋭い眼力)

僕「はあ」
(何かコメントしがたい雰囲気)

B先生「あのね、君もわかってる通り今は過渡期なのね、だから大学や院でしっかりと勉強したら6割は取れるようになるよ。学部生が院に進むのもしっかり選抜されるから受験生のレベルが高くなる」

僕「・・・今回合格率は低かったですよね」

B先生「これから変わるかもしれないしそこは僕もなんとも言えないね。新卒者が試験を受けるまでは必要な人間だけを合格させる試験になるよ。今はごちゃっとしてるのは仕方ない」

僕「・・・」
(なんか質問し辛い)

B先生「これから大学も院も変わる。臨床心理士養成の院も残るし新しくできたりするだろうけど、公認心理師にどんどんシフトしてくでしょ。」

僕「はい」

B先生「で、公認心理師を選ぶのが正解ね。僕が言えるのはここまでかな」

僕「ありがとうございました。」

※ 以前読者の方から「どちらを目指すべきか?」という個別メッセージを受け、僕はなんと答えるか悩んでいるうちに時間が徒過してしまいました。

臨床心理士側の重鎮の先生から本音見解として「公認心理師」とはっきりと言われたのがひとつの回答なのだと思いました。

あとご存知の方は当然ご存知の心理職国家資格化までの紛糾に近い変遷についてもB先生は触れていて、実はこの人は臨床心理士ではあるけれど公認心理師イチオシの人のようです。

あと結構ハッとしたのはB先生は臨床心理士側の偉い人ならば、きっと公認心理師側の運営の人ともなんらかの形で繋がっているでしょうし、その先生が6割厳守と明言していたことです。

僕のコメント欄でも言及している方がいらっしゃいましたが、大学院新卒D2ルートの合格率が58.8パーセント、このあたりの合格率を狙った専門性の高さが第2回試験難易度のスタンダードだったという説は確かに説得力があります。

これから試験は第2回と同じ水準か、難化するとしても6割は動かしがたい合格基準なのかもしれないなと思いました。

付記:B先生は第2回公認心理師試験が終わったのである程度腹蔵なく話してくれたのだという印象を受けています。

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