ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2019年08月

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◯ 第2回公認心理師試験合格水準厳格論への反論

公認心理師試験の質の一定化を図るため、第1回と第2回の試験水準を揃えるべく第2回試験の合格点下方修正を僕は主張しています。

その一方で大学教員の方や第1回合格者、第2回受験生、または一般の方からも合格点は第1回試験と同じ138点を堅持すべきだという意見が出ています。

合格点を一定にすべきだという主張は以下の根拠があって行われているようです。

1.第1回試験も北海道追試試験は合格点138点を厳守したのだから第2回もそれに追従すべき。

2.第2回試験水準は第1回試験とそれほど水準が変わらない良問、合格基準を変える必要はない。

3.試験問題ではなく受験生の資質の問題

4.そもそも試験とはそういった水モノ。

難易度に相違があっても基準点取得者だけを通過させるべき

5.第1回試験で公認心理師必要定数は充足したから第2回は絞ってもいい

ひとつひとつについて僕は自分なりの論拠をもって反駁してきたつもりですが、僕の意見を再度記述すると以下のようになります。

1.第1回試験と第2回試験合格点を揃えるべき

→何が根拠なのか?試験問題の質が違えば合格点を揃える意味はないのでは?

これについては別の見方もあります。

「試験センターもお盆をはさんで忙しいのだからそこまで考えている余裕もないし、それほど大きな必要性もない」

それはそうかもしれませんが、資格水準の統制を取るという意味では受験生の平均点によって合格点変更を考慮するのは当局の仕事だと思います。

もともと9月13日に発表日を設定したのは当局なのでそこは時間をきちんと取って検討してもらいたい課題です。

2.試験水準が変わらなかった、良問だったから、というのは、ためにする主張のように思えます。

受験生の想定していた試験範囲に大きなズレがあったというのが率直な感想です。

レベルが高い専門家でも聞いたことがない学説、理論、人名。

そしてどんな心理専門家でも各分野全てについて深く広く学習することを求められていたと感じました。

だから難問だったという意見が多く出ているわけです。

3.受験生の資質については、第1回試験不合格者もいます。

自信がないからという理由で第1回受験を見送った受験生も確かにいました。

レベルや意欲の面で第1回試験と異なっていたと見られてもおかしくはありません。

ところが第1回試験、第2回試験を全くサラの状態で受けてみてもその難易度は明らかに違うということは多くの人たちから聞いています。

第1回試験リチャレンジャーは相当な覚悟で勉強してきたはずです。

4.試験というものを厳格に考えたら基準を守るべきという主張はあるでしょう。

日本の学歴の最高峰と言われる東京大学入試すら年度によって合格点を変えています。

医師国家試験も受験者の相対的な正答率を考慮しての「相対基準」を採用しています。

公認心理師試験だけがそこまで厳格にならなければいけない理由があるのでしょうか?

5.合格者数については、第1回試験、第2回試験の水準の相違、第2回試験の受験生の方々がそれどころではない不安があってあまり触れられたくない部分かもしれません。

あえて言うなら、厚生労働省が第1回試験で2万8千人の合格者を出しておきながら4千人の未登録者がいるということは「この資格を今すぐ必要としていない人がそれだけいる」ということです。

公認心理師制度は26各施設に養成指導者を配置していく、公認心理師固有の業務を増やしていかなければならないという課題が現時点であります。

「試験は試験」とバッサリ切る厳格論は合格者の質、試験制度の信頼性という意味で大きな不信感を
国民に対して抱かせることになりかねないと危惧します。

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◯ 第2回公認心理師試験平均点は?

まず合格率8割の第1回試験について受験者の平均点を振り返ってみます。

第1回試験平均点は日本心理研修センターから公表されていません。

わかるのは合格点138点ということだけです。

ここで正確に平均点を予測するには、果たして受験者の点数が正規分布曲線に従っているか、標準偏差、分散(点数のばらつき具合)や歪度がわからない、ということでどんな仮説を立てても統計的検定ができません。

もちろん日本心理研修センターは平均点を把握しているでしょうけれども公表されていません。

そこで以前本当にざっくりと勘で平均点を求めようとしたのですが、160点前後だろうという曖昧な数値しか推測できませんでした。

第1回試験、回答入力式のサイトでの平均点が170点少し欠ける程度、今回は平均点が15点程度低いと入力者から聞きました。

回答入力式サイトはそれなりに意識が高かったり、自信がある受験生が入力しているので点数は高目に出るでしょう。

多分実際の得点平均は入力サイトからマイナス15点ぐらいと思います。

漠然としていますが第1回試験を解いた受験生も第2回では15点から20点程度のマイナス得点だったと聞いています。

そのあたりが平均得点なのではないかという、根拠の薄い僕の周囲のサンプルにしたがって行った予想です。

そうすると平均点は高く見積もっても140点から145点前後、これは受験者の方々が相当に焦るのは理解できます。

120点〜130点前半の方々も多かったと聞いています。

今後も多分公表されないだろう第2回試験平均点ですが、第1回試験と全く合格基準点を同じとして138点を堅持してしまうと多分合格率は50パーセントかそれ以下になってしまうでしょう。

どこの諮問委員会でも公認心理師の望ましい合格率については出ていません。

正答率は6割程度としてあっても、合格率については何のガイドラインもないのです。

だから合格率何パーセントにしようが試験実施側の自由です。

試験難易度の設定も実施する側の自由です。

第1回試験は合格率80パーセント、第2回試験は50パーセントでも何の法律にも規則にも反していません。

だから合格率はどなように定めてもいいのですが、不公平感が募れば試験の価値は大幅に下がると思うのです。

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◯ 第2回公認心理師試験は本当に難化したのか?

「第2回試験がそれほど難化したとは思えない」「ひなたさんが想定している平均点の算出基準は何なのか?」「レベルを下げて合格させるのはどうかと思う」など僕の見解への疑問、異論を含むコメントやメッセージもあります。

対面でも「あれ、書いてあることはそういうことでいいの?」と直接聞かれることがあります。

第2回試験は本当に難化したのか?

という点について検証してみたいと思います。

全ての問題について検証はできませんが、曖昧な選択肢が多かったことは確かだと思います。

実際の問題を振り返ってみます。

問2はケア会議です。

平易な問題かもしれませんがどんな対応をするべきかという設問で、適切な対応を選択させるのは知識問題というよりは配点3点の事例問題がふさわしいと思います。

問3、心理学史です。

頭の中に心理学史が入っていれば解けます。

ただし、設問のような形でいつの時代が主な心理学かというずばりの解答に基づくテキストの文言はありません。

そしてこの心理学史問題には価値観が入っています。

自分が拠って立つ学派にとらわれてしまうと正答は出せません。

問10、これは感情に関するモデル・説を問うています。

どの公認心理師受験テキストでも見たことがない用語でした。

問35、公認心理師の責務、法文上罰則と行政処分の違いを理解しておかないとならないですが、司法心理関係者よりも純粋に法律論を理解しておく必要があります。

問37、メタ記憶的活動、記憶モニタリングについてきちんと理解している受験生がどれだけいただろうと思いました。

問39、思春期クライエントとのかかわりについても、困難な問題ではないですが本来事例問題かと思います。

問45、SOAP、診療録の扱いはきちんと学んでおけばいいという事はわかりますが心理の問題かなと思いました。

問56、女性更年期の特徴について試験前に勉強して知識を得られた受験生はいたのかなと思います。

以上、これはほんの一例です。

統計法、脳科学、発達心理学、各省庁から出ているガイドラインを全て読むだけでなく論文まで遡らなければ解けなかった問題もあると思います。

精神医療以外の医療知識全般を問う問題もあります。

基本的な心理学的知識や法律は全分野にわたって理解しておく必要があり、落とせません。

心理テストは100種類以上を網羅して使用法、目的を理解しておかなければなりません。

それに加え、紛らわしい選択肢のうち、レミニセスバンプ、COGNISTAT、ジストニア、トラウマティック・ボンディング、怒りの進化心理学、運動視のMcGurk効果、マッハバンド、McCollough、ソマストタチンなどの(僕が感じた難語)をどれだけの人が理解していたのかと思います。

学説、用語、人名についてもR.L.Selman、Flynn効果、E.H.Schein、J.Belskey、I.D.Yalom、PECSを事前にどれだけの受験生が理解していたかは疑問です。

難用語、各分野での正確な知識、迷いのある選択肢が多かったので、第1回試験のようにすらすらと7割8割解けた受験生は少なかったでしょう。

ブループリントの学習範囲に明記されていないし参考テキストが役に立たなかった問題群を見て呆然とした人たちもいたでしょう。

勘や国語力で解けた問題もありましたが難易度は高くなった印象を受けています。

僕が不勉強で、実はこのぐらいは常識だという受験生の人もいるかもしれません。

「この知識を抑えておくべき」というガイドラインがブループリントと実際の出題の間で乖離していたように思えるのです。 

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◯ 公認心理師資格を取らない方がいい人・取る必要がない人々

これまで公認心理師試験のことばかり書いてきました。

公認心理師数が必要だと書いて来たので、公認心理師資格をどんどんいろいろな人が取得すべきだ、と僕の主張が受け取られているかもしれません。

実は受験者の中にも「取らない方がいい人」や「取らなくてもいい人」はいます。

医師はほぼ必ず医師の仕事に就きます。

公認心理師取得者のスタンスは異なります。

公認心理師は名称独占資格に過ぎないのですからタンス資格にしてしまう人もいるでしょう。

1.取るべきでない人

⑴ 多重関係が生ずる専門家

養護教諭のしている援助業務はほぼ心理と同じ仕事なので、意義は十分にありそうです。

管理職、一般の教員は公認心理師資格登録とともに教員業務に支障をきたすことが考えられます。

多重関係が生ずるので立場上資格を取らない方がいい人はさまざまな領域にいるでしょう。

⑵ 資格を取るだけで満足する人

他資格ホルダー、もしくはすでに心理以外の職に自己のアイデンティティを持っている人がいます。

教員もそうですが、公認心理師を取得すれば確かにハクはつきます。

今までしていた仕事を捨てて心理職に転職するなら心理専門家として生きることができますが、心理職はそれほどまでに魅力的でしょうか?

名刺、名札に「公認心理師」と書いてあっても「心理面接をしてください」「心理テストをしてください」というクライエントさんや現場医師からのオーダーに応えられない、やる気がない人で「あ、それできませんから」と答えるようでは「取っただけ資格」になってしまいます。

それでも他領域の人でも心理知識を得て元々の仕事の幅を広げることは意義があります。

資格取得したから心理専門家と対等以上になり、心理職と競い、プライドだけを満たすという資格の取り方は違うと思います。

僕は他職種の人も幅を広げることにも意義があると思いますが、試験実施側では違う意図がありそうです。

資格を取っても心理業務の実働人員にはならない、養成施設で指導に当たれない人は資格を取得しても戦力外とみなされているかもしれません。

⑶ 心理業務をしていないし今後もしない人

こういった人は受験を自ら辞退すべきと日本心理研修センターは考えています。

企業でも官公庁でも「◯◯相談員」という名目だけで相談業務をしていない、実質上は総務や人事の仕事をしていて、今後も心理相談をしないであろう人たちでこの資格を取りたがるもいます。

2.取る必要がない人々

医師は取らなくても業務に支障はありません。

公認心理師を取得して養成指導に当たる立場の医師は資格が必要と思います。

他資格ホルダーで自らの立ち位置がはっきりしている人、自分の職務領域だけで仕事をする人も取得する必要はありません。

私設開業をしていてキャリアコンサルタント、コーチング等で一定以上の地歩をすでに築いている人たちも無理をして取得する必要はないでしょう。

私設相談員が仕事の幅を広げるために取るならば十分に意義があることですが、資格と関係なく、ただ事務所の集客を考えるのならばそれも違うような気がします。

3.結語

資格がどうしても必要な人々に加えて、公認心理師を資格マニアのイチ経歴だけとしてしまう人々がいることを行政は把握しています。

また、他領域活躍者中、公認心理師資格を生かして将来的に心理業務を側面から支えていく人も求められていそうです。

「不合格だから職業人生が終わってしまう、取得しないと相当な不利益をこうむる」人たちはこの資格が必要です。

確かにこの試験は難しく、下方得点修正があると決まっているわけでもないので、得点率6割厳守だと軒並み元々の心理プロパー以外は合格できなくなってしまいそうです。

「不合格だからダメ、自分の人生が終わる」わけではない人々も多いでしょう。

もちろん試験は人格、人柄やや知能を問うていません。

不合格だったからといってその人の人生そのものを否定するわけではないのです。

今回心理の世界に触れた、そして元の仕事で自分を磨くというプラスのチャンスが与えられているという考え方もできると思うのです。

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そもそも誰のための公認心理師試験なのか?

昨年第1回、今年第2回を終えて受験生たちが合格発表待ちの公認心理師試験はいったい誰のためのものなのか?

という目的について考えてみることがこの資格を必要としている人にどのように役立っていくのか、ということが公認心理師試験の難易度や公認心理師必要数を論じる上でのスタートにもなります。

そして今後この資格がどう生かされていくのかを考える材料にもなるのだと思います。

1.受験者のため

すでに合格している公認心理師の人が「試験に合格してよかった、これで仕事先でクビがつながったよ」

ということは誰からも一言もはっきりと聞いていません。

その逆に資格を取らなかったから失職したということも聞いていません。

厳しい職場はたくさんありますので例外もあって僕が聞いていないだけ、今後どんどん締め付けは厳しくなるかもしれません。

元々臨床心理士のようにどっぷりと心理の世界に入っていた以外の人は、元々行っていた相談業務にプラスαが加えられたことは大きな収穫になったと思います。

(近縁他資格所有者、非院卒の私設
相談員など)

2.クライエントさん、患者さんのため

本当はこれが一番大切なはずですが、忘れ去られがちになっています。

この資格は間接的にしか役立たないと現時点では思います。

確かに公認心理師シフトは始まり、心理師でないと保険点数が取れない仕事も多くなってきました。

クライエントさんからしてみると、心理の先生が一対一のカウンセリングの回数を増やしてくれた、集団療法の出番も増えた、やってくれることが増えた、とクライエントさん方から有難がってもらえるなら本当にそれは価値のあることです。

資格を取ったからといって心理職がクライエントさんに自慢する内容のものではありませんし、そういう人がいたのを聞いたこともありません。

3.医療を中心としたヒエラルキー制度構築・維持のため

合格者の中で未登録者はこの理由も大きいと聞いています。

これまで臨床心理士としてやってきていてそれなりに厳しい倫理観を持ってやってきた。

しかし公認心理師の「主治の医師の指示」に疑問を持つ人たちが多いと聞きます。

医師や校長を頂点としたヒエラルキー社会の中では公認心理師マインドを身につけた従順な心理職は扱いやすく、また命じやすい対象となることも確かです。

公認心理師には資格取得者として専門家としての太鼓判が押されるとともに義務も伴うことになります。

以前から指摘していたことですが、教員公認心理師が生徒指導、教科指導、部活指導をしながら心理相談活動を行うことはかなり無理があると思います。

多重関係とみなされるでしょうし、「資格取ったし職場に届け出もしたし、生徒や保護者にもアナウンスしたりそれはそれでまあ今は置いておいて生徒に厳しくする」

というような理屈は頭が良く勉強熱心な保護者には通用しません。

ヒエラルキーから外れたところで公認心理師資格を活用しようとすると自らのクビを締めかねません。

「勉強ばっかりさせられてお金取られてしかも自由奪われるの?」一般人から聞かれたことがあります。

4.結語

公認心理師となって登録し、心理職として第一線で活躍する人は大多数ですが、資格を取っただけという人たちの母数もかなり多いと思います。

行政側は第1回目に80パーセントの合格率を得点傾斜配分をしてまで行いました。

数が欲しかったからです。

それにもかかわらず当局としては未登録者がこれほど多かったのは意外だったと思います。

今回の試験問題がおしなべて悪問だったと僕は思いません。

ただ、これだけ専門性が高い試験を行ったのだし、有資格者絶対数も不足しているでしょうから、実働できる有資格者がどんどん現場の最前線で活躍させることの方が試験で切り捨てることよりは大切だと思います。

魅力ある資格とするためには各所で活躍する実力ある公認心理師が増えて欲しいと思います。

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