◯ 第2回公認心理師試験合格水準厳格論への反論
公認心理師試験の質の一定化を図るため、第1回と第2回の試験水準を揃えるべく第2回試験の合格点下方修正を僕は主張しています。
その一方で大学教員の方や第1回合格者、第2回受験生、または一般の方からも合格点は第1回試験と同じ138点を堅持すべきだという意見が出ています。
合格点を一定にすべきだという主張は以下の根拠があって行われているようです。
1.第1回試験も北海道追試試験は合格点138点を厳守したのだから第2回もそれに追従すべき。
2.第2回試験水準は第1回試験とそれほど水準が変わらない良問、合格基準を変える必要はない。
3.試験問題ではなく受験生の資質の問題
4.そもそも試験とはそういった水モノ。
難易度に相違があっても基準点取得者だけを通過させるべき
5.第1回試験で公認心理師必要定数は充足したから第2回は絞ってもいい
ひとつひとつについて僕は自分なりの論拠をもって反駁してきたつもりですが、僕の意見を再度記述すると以下のようになります。
1.第1回試験と第2回試験合格点を揃えるべき
→何が根拠なのか?試験問題の質が違えば合格点を揃える意味はないのでは?
これについては別の見方もあります。
「試験センターもお盆をはさんで忙しいのだからそこまで考えている余裕もないし、それほど大きな必要性もない」
それはそうかもしれませんが、資格水準の統制を取るという意味では受験生の平均点によって合格点変更を考慮するのは当局の仕事だと思います。
もともと9月13日に発表日を設定したのは当局なのでそこは時間をきちんと取って検討してもらいたい課題です。
2.試験水準が変わらなかった、良問だったから、というのは、ためにする主張のように思えます。
受験生の想定していた試験範囲に大きなズレがあったというのが率直な感想です。
レベルが高い専門家でも聞いたことがない学説、理論、人名。
そしてどんな心理専門家でも各分野全てについて深く広く学習することを求められていたと感じました。
だから難問だったという意見が多く出ているわけです。
3.受験生の資質については、第1回試験不合格者もいます。
自信がないからという理由で第1回受験を見送った受験生も確かにいました。
レベルや意欲の面で第1回試験と異なっていたと見られてもおかしくはありません。
ところが第1回試験、第2回試験を全くサラの状態で受けてみてもその難易度は明らかに違うということは多くの人たちから聞いています。
第1回試験リチャレンジャーは相当な覚悟で勉強してきたはずです。
4.試験というものを厳格に考えたら基準を守るべきという主張はあるでしょう。
日本の学歴の最高峰と言われる東京大学入試すら年度によって合格点を変えています。
医師国家試験も受験者の相対的な正答率を考慮しての「相対基準」を採用しています。
公認心理師試験だけがそこまで厳格にならなければいけない理由があるのでしょうか?
5.合格者数については、第1回試験、第2回試験の水準の相違、第2回試験の受験生の方々がそれどころではない不安があってあまり触れられたくない部分かもしれません。
あえて言うなら、厚生労働省が第1回試験で2万8千人の合格者を出しておきながら4千人の未登録者がいるということは「この資格を今すぐ必要としていない人がそれだけいる」ということです。
公認心理師制度は26各施設に養成指導者を配置していく、公認心理師固有の業務を増やしていかなければならないという課題が現時点であります。
「試験は試験」とバッサリ切る厳格論は合格者の質、試験制度の信頼性という意味で大きな不信感を
国民に対して抱かせることになりかねないと危惧します。