ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2019年06月

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◯ Fラン大卒の公認心理師は不利になる?

この命題について結果をまず言います。

アカデミックポストをゲットして大学教員になろうというのでなければ、どこの大学や大学院を出ていても就職に不利になることはないと思います。

国家公務員総合職、政治・国際、行政あたりの花形職種だと東大でないと旧大蔵省や通産省では官庁訪問で落とされるという話がありましたが、今はその辺りの学歴神話も崩れています。

一次試験で成績が一定以上ならばどの省庁でも気軽に面接に応じてくれます。

ただし、国家総合職は現在の科挙とも言われていてハイレベルな知能、教養、専門試験です。

ですから東大クラスの受験生がかなり有利になることは事実です。

ただし国家公務員総合職、裁判所総合職、地方上級は割と気ままにどこの大学や院を卒業していても合格している人たちは多いです。

技術系公務員と心理区分は大体同程度の扱いなので、花形部門の中央官庁中枢よりはレベルは緩いのでしょうか。

多彩な出身大、院卒の学生が合格していますし、いわゆる偏差値が低いFラン卒の人も合格、採用されますがただし試験は無茶苦茶難しいです。

公務員は新卒に対してもかなり広い門戸が開かれています。

そして社会人経験枠だとどこの大学や院をを卒業したかよりも、即戦力として働けるためにどこでどんな経験をしてきたかの方が大切です。

これは民間の仕事場でも同じことで、刑務所で働いていましたー、今度は病院心理職として働きたいです、といってもなかなか採用は難しいです。

公認心理師試験出題範囲にも入っていますが、精神腫瘍学専門病院ではズバリその分野での経験があるか?

病院心理業務では「100床以上の病院での勤務経験が3年以上あり、管理職として働いていた者」など細かなピンポイント採用をしたがる事業体が増えています。

そこで問題となるのは職歴で、学歴ではありません。

医師も国立だから手術が上手、私立だから手技が悪いということは全くありません。

精神科医師の腕、人柄は学歴で決まりません。

心理職の腕前も学歴とは関係ないことを僕もたくさん見ています。

特に公認心理師は今過渡期です。

もうすでに専門学校卒、高卒の公認心理師も誕生しているでしょう。

僕は他職種現任者を何が何でも否定しているわけではありません。

この中には立派な臨床家になる人々も多く出てくるものとも思っています。

今後心理臨床学会の研究活動との兼ね合いなどで、どのようにして様々な学歴やバックボーンを持つ人々を含めた資格全体の専門性を高め追求していくかは大切な課題です。

学歴に縛られない、様々な視点からの専門家が多く活躍して新制度が活性化していくことを僕は望みます。

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◯ ブラック職場で働く公認心理師・臨床心理士

心理職の受けた教育、知識、経験の制約だけではなく、円滑な心理業務を阻害する外的な要因もあります。

それは心理職が働く職場の性質です。

ブラックなワンマン院長、社長の下で働くのは心理士(師)にとっては辛いことです。

もちろんいい話もたくさん聞きます。

後進の教育に熱心、心理を職場の中で必須の存在として仲間扱いしてくれるボスも多く、そういった職場の心理職は恵まれています。

ただ、どんな民間企業のサラリーマンも同様でボスがあまりにもワンマン過ぎて離職率が高い職場があるのも事実です。

例えば院長はとても研究や治療に熱心、学会でも有名な治療家ですが、雇用主としていい人かどうかはまた別の話です。

院長は主治医、雇用主、研究者、教育者などいろんな顔を持っています。

その全てにおいて優れた人もいるでしょう。

ただ、そうでない上司がいることも事実です。

心理職はカウンセリング、心理テストが十分にできて身分待遇が保障されることを職場に対して期待します。

しかし小さなクリニックでは受付事務やらレセコン(レセプトコンピュータ)に向かって医療事務職をすることが主務となっている場合もあります。

これはクリニックが悪いだけではなく、絶対的に人手が足りない場合には起こりうる事です。

心理職が初回面接(インテーク)や簡単な心理テストの施行だけをやらされて個別継続的カウンセリングをさせてもらえないという話をよく聞きます。

社長(院長)がとても有名な治療家の病院で働いている心理の人に「◯◯先生はなんとか療法の権威ですごく活躍されているそうですね」と話しかけたら

「あー、院長そんなこともしてるみたいですねー」と無関心そうに言っていた人がいました。

彼はほどなくその職場を去り研究者になるために大学に戻ってしまいました。

医師はスター治療家、心理は付属品のような扱いを受ける場合も悲しいながらあります。

国公立大の大きな病院が心理職にとってホワイト職場とも限りません。

最近心理職は大学病院のあらゆる科で働いていますが、脳外科、整形外科的など外科系の医師はなかなか仕事に厳しいです。

患者さんの命がかかっているオペ室は鉄火場です。

主任執刀医が、もたついている副執刀医や研修医の足を蹴る、看護師にメスを投げつけるという話は多分本当です。

僕は整形外科医が映りが悪いレントゲン写真を放射線技師に投げつけたり、日付を打ち間違えたカルテをクラークさんに投げつける場面を実際に見ています。

ただ、その先生は本当に悪気がなくてそのあとにこにこしてスタッフと談笑して、従業員のために自腹から旅行会をして、と抜群の気前の良さです。

職場の何がブラックか、ホワイトかはボスの性格、方針、相性、大きな職場でも職務内容によって決まってきます。

医師がとてもいい人でも、心理職と他医療スタッフの間で人間関係のもつれが発生する場合も多いです。

心理の仕事の活動領域が広がるにしたがって、初めて心理職を活用する職場ではいろいろと齟齬や軋轢が出てくるかもしれません。

とりあえず健康診断があれば心理職を突っ込んで仕事をさせてみるという結構乱暴なやり方をさせることもありますが、機転が利く人はそれをチャンスとして自分を売り込むこともできます。

心理職自身も職場へのジョイニング(積極的適応)をすることが必要です。

そして雇用側も心理職をどうやって活用していけばいいのかというガイドラインが必要になってくると思います。

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◯ カウンセリングができない公認心理師

公認心理師には元々臨床心理士で経験が長い心理職の人もいます。

Gルート現任者受験、他職種でも志高く自分を高めようとして、日ごろから行っている相談業務にプラスアルファを付け加えたくて公認心理師にチャレンジした、そしてこれから受験しようとする人もいてその意欲は尊いものです。

ただし、2万8千人の合格者の中には「カウンセリングはやったことがない。だからやってくれと言われてもできない」という人がいるのも事実です。

公認心理師試験は基礎心理学、臨床以外の応用心理学を含むカウンセリングの知識を問うもので、臨床能力は測定できません。

学力が高く、東大教育学部博士課程出身のポスドク(昔はオーバードクターと言いましたが)で臨床心理士も公認心理師も取得しない人もいます。

科研費(日本学術振興会予算を得て教育心理学分野で研究をする)で研究したり、教育学博士号を取るのにこれらの心理資格は不要です。

それでも論文のレベルが高く、査読論文が何本かあれば常勤大学教員も十分狙えます。

例えば昔、臨床心理学、精神医学の研究を専門分野として昭和の精神分析学の大家として知られた故宮城音弥東京工業大学名誉教授は岩波新書から「精神分析入門」を著し、心理学書には珍しいベストセラーを出しました。

宮城音弥氏は京大哲学科卒、フランス留学歴があるエリートですが、精神療法の経験は全くありません。

宮城氏は精神療法の研究をライフワークの一つとしていましたが、自分が精神療法をすることは全く考えたこともなく「やらない」と明言していました。

ここまではっきりとしているとマスコミ露出ばかり激しくて専門がなんだかわけがわからなくなっているなんちゃってペーパードクターやペーパーサイコロジストよりもむしろ清々しいと言えます。

さて、公認心理師も先に述べたとおり、臨床能力がなければ取得できないわけではありません。

大学院卒ルートでも研究の道を進んだり、別の仕事を選んだり、資格を取っただけで精神療法をしないペーパー公認心理師も出てくるでしょう。

臨床心理士資格取得者でもそういった人を何人か知っています。

世は臨床バブル、臨床心理士養成大学院に臨床心理士教授人数が足りないということで「あの、僕ネズミの行動学しか知らないんですけれど」という先生たちが大学から無理やり臨床心理士資格を取らされていました。

また、臨床心理士資格を持っているとその後の常勤採用や出世に有利だということで臨床経験が乏しい、あるいはほとんどない実験社会心理学者、発達理論研究者、産業心理学者も臨床心理士を取得していました。

公認心理師制度は走り出してまだ1年が経過していないのですが現在の少子社会で大学教員の数を大学が増やせるとは思えません。

大学にいる教員だけで公認心理師養成課程を切り回していくのはかなりの重労働です。

そして国家資格で不正には罰則規定もありますから、臨床経験のない教員に公認心理師を取らせて数合わせをすることもできません。

そうやって大学側では苦労をたくさんして養成された公認心理師が2024年から働くことができればいいのですが、心理の狭い世界の仕事のパイはいつも奪い合いです。

ペーパー公認心理師も出てきてしまうでしょう。

そして「指定施設で働いている現任者だから」「大学院で科目の読替えができて受験資格があることがわかったから」と、とりあえず公認心理師を取得した心理療法の非専門家も多いでしょう。

公認心理師合格者の中で未登録者4千人がいるということにも驚きました。

ペーパー公認心理師は現在でも多く、その数の実態は把握されていないままです。

そして公認心理師採用側はカウンセリング能力にも疑念を抱きながら躊躇して採用を見送っているのが現状です。

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◯ 心理テストが取れない公認心理師

公認心理師が病院のような専門機関で採用されにくい理由の中には「心理テストをきちんと取ることができるのか」という懸念があります。

初回公認心理師試験出題の中にはP-Fスタディ、バウムテスト、MMPI、TATほか質問紙式の心理検査について問う出題がありました。

質問紙式の心理テストについては「こんな時にはどのテストを使えばいいの?」という出題でした。

いずれも心理学の教科書等で心理テストの種類がどのぐらいあって、代表的なテストはどれで、どういう用途があるか、テストの由来となっている理論は何か、ということがわかれば解ける問題で教科書を読み込んでおけば正当選択肢を選べます。

臨床心理士試験のように心理テストのスコアリング、採点結果がずらっと並べられていてそれについて解釈を加えるような本格的な心理テストの知識は公認心理師試験には不要です。

また、ケース問題への傾斜配分から考えて、心理テスト問題をかなり落としてしまっても合格ラインには達することができます。

臨床心理士大学院の養成課程では複雑で時間がかかる心理検査を少なくとも2つは習熟することを到達目標にしていました。

果たしてそれがカリキュラムが多い新公認心理師全員にこなしきれるかどうか。

僕の個人的な好みやちょっと昔の常識にしたがうと、エクスナー式包括式ロールシャッハテスト、ウェクスラー式知能検査、MMPIを施行しておけば人格と知能の全体像が把握できると思っています。

人格と知能の精査が必要なクライエントさんにはそのようにしています。

どの心理テストも習熟するにはきちんと勉強会に通ってスコアのやり方や解釈方法を覚えなければならないです。

僕は自分の受けてきた教育をバックボーンとしてこのテストバッテリーを施行しているわけですが、これが箱庭、風景構成法だろうがそのテストに相当に習熟した人にとってはそれが一番正確にクライエントさんの人格像を描けることになると思います。

今回公認心理師を取得した人たちの中にはさまざまな職種の人たちがいて、誰もが自分の元々のフィールドから心理職に転換するとは思っていません。

中学教員がいつも授業をエスケープばかりしている生徒を叱りつけたとします。(教員ならばそのアプローチは絶対に悪い指導とは思いません)

その次に「さ、それじゃお前の性格を知るために心理テストをやるぞ」と言っても、教員の立場は厳しい生徒指導担当者教員-心理職という多重関係に当たる上に生徒も萎縮して(あるいは反発して)正確な結果を示すテストを取れるとは思えません。

心理テストが取れない人が公認心理師を取得して「せっかく公認心理師取ったんだから心理テスト取ってよ」と依頼しても「できません」と返答が返ってきたという話も聞きました。

臨床心理士では大学院や自主的な研究会に熱心に参加し、実務経験を積みながら指導者に指導してもらわないと医療保険点数で複雑式の高い点数が取れる心理テストは正確に施行できません。

ロールシャッハも年間20例以上取ってないと正確な解釈ができるテスターとはみなされません。

一方で公認心理師の採用はどんどん増えてきています。

そこで新公認心理師がきちんとテスト依頼者のオーダーに応えられるかどうかでこの職種の価値が値踏みされるでしょう。

現場がどう動いていくのかしばらくは様子を観察していく必要があると思います。

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◯ 国家資格公認心理師はなぜ給与が安いままなの?

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※ 公認心理師の給与、収入キャリアUP、就転職法についての記事が見られます。

公認心理師登録者数は試験から1年近く経ち、その登録者数は2万4千人になります。

よく以前から質問で「なんで臨床心理士はお給料が安いの?」

という質問がネット上でも見られましたが代表的な答えの一つには「国家資格ではないから。だから身分が不安定なまま」が以前はオーソドックスな回答の一つでした。

さて、あちこちの求人サイトに心理職の募集が出ています。

応募条件が「臨床心理士または公認心理師」となっている求人が多くなりましたが国家資格公認心理師制度が導入されても相変わらず給与水準は安いままです。

マンガも出していて大々的にメンタルクリニックの宣伝をしている某医療機関は時給1200〜1500円、1日のうちに午前から夜まで15枠!のカウンセリングを行うことができます。

そのクリニックは枠が埋まっていくとインセンティブがあり、1枠当たり300円が時給に上乗せされますが仕事としてはかなりハードです。

非常勤パートの心理職はだいたい時給千円が相場です。

それじゃ、時給5千円のスクールカウンセラーは恵まれているの?

というと、スクールカウンセラーは自治体によっては毎年採用試験を行うので雇用はきわめて不安定です。

そして週に5日間スクールカウンセラーができるわけではありません。

僕も自治体をまたいでスクールカウンセラーを月曜日はあっちの自治体、火曜日はこっちの自治体、水曜日は保健福祉センターのバイトなどなどアルバイト生活をしていた時は次年度採用されることを考えていつもひやひやしていました。

中学の教諭が「これから僕は臨床心理士院に進んで週5回スクールカウンセラーをやれば月80万円稼げるから十分生活できるからそうしようかな」と言われた時はすかさず止めました。

スクールカウンセラーは月20万円の教育相談所やクリニックに勤めながら週イチでやるのが限度かと。

臨床心理教育のメッカ京都府ではスクールカウンセラーのワークシェアがもう始まっていて、毎週8時間の勤務ができるとは限りません。

京都府では1日4時間、隔週勤務の場合もあってスクールカウンセラーだけで生計を立てようとするのは無理なことです。

公務員は比較的給料がいいですがたいていは重労働で時間通りに帰れるとは限りません。

公務員も予算の関係で非常勤を雇うところが多いです。

医療機関も同じです。

福祉施設で宿直勤務がある心理職の給料は時給換算するととても安いです。

作業所を含めた民間福祉施設の給与体系はバラバラですが高額な給与とは聞きません。

さて、安い安いと心理職の給料の叩き売りか大安売りをさっきからしているようですが、どうしてこういうことになるかというと、心理職の専門性は公認心理師制度施行後もあまり高いものとは扱われていません。

公認心理師はチーム学校、主治の医師の指示の中で働くわけでヒエラルキーの下方にいます。

心理職と並ぶ専門家は精神保健福祉士や社会福祉士、作業療法士がだいたい同じくらいかと。

福祉関連職の専門性を貶めるつもりはなく、心理職が今のままの体系で教育を受けていけば身につけられる専門性はだいたい似たようなものになることが予測されます。

心理臨床学会に参加してやはり3階建て資格構想は根強いことがわかりましたがそれで心理職の待遇が良くなるわけではないでしょう。

「私は公認心理師の中のもっとエライ資格を持っています」と言っても採用側は「で、この分野で働いてきた経験は?」と経験重視で即戦力を要求します。

医療職に限れば医師が頂点ですが、薬の専門家の薬剤師、注射もできれば医療行為もできる看護師は大変重宝されます。

個人経営のメンタルクリニックは心理職がいてくれたらいいなあと思っていてもなかなか雇う予算がなくてつい安い時給になってしまいます。

公認心理師制度見直しは5年後にあります。

もしこの制度の専門性を高めて給与水準を高めようとしたらあと数回以上制度の見直しが必要でしょう。

それは多分数十年以上かかることです。

アジア各国、中国、韓国、台湾などの心理職は日本と同様か、さらに厳しい待遇にあると聞きます。

心理職が背負っている構造的な問題は根深いようです。

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