ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

2019年06月

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◯ リタイア後の公認心理師、臨床心理士の運命

心理職の人たちのいつもの研究会とはまた別の集まりに出たのですが、Kさんは定年後に公務員再任用、国家公務員は一律214,000円で再任用されてそこから税金もろもろ引かれて手取り15万、ボーナスは夏冬1カ月ずつとのこと。

「大変ですねえ」と言ったらご夫婦で若いころから個人年金をかけていた、持ち家があるから良かった、子どもも独立しているから。

とのことでした。

就職する際に雇用が安定して定年まで勤めて満額退職金をもらい、いい場所に再雇用される心理職はほんのごく一部だけです。

僕もそうですが、心理職はあっちふらふら、こっちふらふらでいい職場を求めて転職を繰り返してその職業生活には連続性がありません。

公務員に中途採用された、やっと身分が安定したと喜んでいてもバブルの名残りでどんどん昇給を繰り返していた公務員の方が給与は高いです。

公務員は新卒でじっと黙って勤務し続けて25年を過ぎると退職金が右肩上がりに増加します。

国公立病院でも公務員心理職が安定したキャリアを築いて長期間働いて来られた人がどれだけいるでしょうか?

もし組織から出て「定年後は自分で事務所持ってカウンセリングやってみようかな?」というのは安定して年金暮らしをしているリタイヤ大学教授クラスの人や一部の才能のある人は可能です。

開業心理職の先生方は並々ならぬ知見と多くの著作があり、講演や多くの媒体に露出している努力家の方々です。

それほどでもない人が「自分はカウンセリングをやっていて、まあみなさんから評価してもらえているから事務所でも出そうかな」

という甘い考え方は転落への開始のように思えます。

「引退後は心理を退いて趣味のフレンチ料理のお店をやろうかな」という心理職の人もいます。

あまり親しい人ではなかったので躊躇して話さなかったのですが地獄を見ることになるからやめといたらーと思いました。

脱サラして蕎麦屋を始めると必ず潰れる、というようなコラム記事をよく見ます。

立地駅前で最高条件だとコストが半端ないからちょっと裏通り、「あ、駐車場ないけどまあいいや」と店舗を借りて、そこそこ高い家賃を払います。

挽き立て打ち立て茹で立ての3立て蕎麦屋、最初はお友だちが来るかもしれませんが初期設備投資、材料や経費にこだわったあげくほんの一握りの量のおそばで1500円の値段になります。

お友だちも何度も来てくれるわけではありません。

「こんな感動的な蕎麦があったのかー」と高いそばを食べに来るよりもサラリーマンは牛丼屋に行くでしょう。

店主が白髪混じりのポニーテール、作務衣を着て「うちの蕎麦は挽きぐるみ、味は確かなものだからまずはつゆにつけずに水に浸けてから味わってください」と上からじっと見下ろされたら「勘弁してください、もう許してください」と気弱な僕なら二度ともうそのお店に行きません。

飲食店は新規新規のお客さんをどんどん来させてリピーターになってくれる人が1割いるかいないか、(上記のようなお店にはきっとリピーターはつきません)しかもリピーターになったとしても月1で来てくれれば、かなりのお得意さんというのがシビアな現実です。

カウンセリング自営をするとしても相当な経営知識のバックボーンを得ておかないとならないと思います。

さて、インターネットコンテンツビジネスはどうでしょうか。

もちろん僕もこのやくたいもないブログは道楽でやっているので何の儲けにもなりません。

もしネットビジネスの世界で心理学コンテンツでやっていこうと考えているような人がいたならば、あまりのコスパの悪さに愕然とするでしょう。

最近読んだ記事で言い得て妙だなあと思ったのは、ネットでお金を得ようとする人たちに対して同じ時間をかけるならパソコンに向かっているよりコンビニのバイトに行く方がはるかにマシ。

という内容のもので、大変納得しました。

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◯ 多重関係(私的関係)に公認心理師が対応できてないという事実

多重関係はあらゆる心理職の職場で昔から発生しています。

そして公認心理師が誕生してからも多重関係に関する倫理基準はあやふやなままです。

僕の同級生が以前大学の学生相談所所長兼任准教授をしていたのですが、ゼミの打ち上げではクライエントと差しつ差されつ飲むという、とても危ない状況に置かれていると泣きを入れていました。

産業場面で同僚やその家族のカウンセリングを行ってはいけないのは鉄則です。

ところが新規・中途採用になった試用期間中の心理職が「あ、せっかく採用になったんだから同じ課のうつ病の◯◯君のカウンセリングやっておいてね」と、とっても偉い人から言われて言葉に詰まった経験がある人はいないでしょうか?

とっても偉い人が「独身のカウンセラーだったら患者さんと交際するのも結婚するのも何かの縁ですから」と言うのを聞いたこともあります。

それを聞いていた一般の方々がどう思ったのでしょうか?

一般の人は多重関係ルールを知りません。

心理職の配偶者が外的要因でメンタルダウンしてしまうこともありますが、「患者さんだから知り合って結婚したのね」と看護師さんを含めた医療職、あと一般の方々が言うことがあります。

整形外科で骨折した以外はぴんぴんとしている患者さんと看護師さんが結婚するとかたまに聞くことがありますが別に何の制約も禁止もありません。

新公認心理師、週イチでカウンセリングをしていた職場のパワハラセクハラ相談総務課長、上司だから部下の勤務評定しながら相談に乗っちゃっていいの?

という状況は小中高校の児童生徒教員間でも同じことが起こり得ます。

病院や自治体職員なら大丈夫、と思っていても、職員のカウンセリングをすることを条件にして採用されている心理職もいます。

僻地や離島ではどうしたらいいのでしょうか?

人口1500人ぐらいの町だと多重関係禁止っていっても、全員知り合いじゃない?ということは下手をすると親類縁者苗字が土地内に3つしかないようなところでカウンセリングすることを余儀なくされるわけです。

村立、町立病院でカウンセリングをしたら家の裏に白菜や大根が置いてあるようなことがありそうですが、「こんなことされては困りますから」と毅然とした態度で断ろったり突き返したりするとその土地では浮き上がってしまうでしょう。

サイコロジカルファーストエイドPFAでは多重関係が生じても緊急介入をしなければならない場合もあるだろうと規定している学会もあります。

ただ、そこからの通常の関係への復帰が難しいことは容易に想像ができます。

あちらこちらで起きているだろう公認心理師の多重関係、私的関係のもつれを相談する機関もなければガイドラインもなく、厳しい倫理を守ることだけを求められているのが現状です。

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◯ 2024年公認心理師は5万人と予想、臨床心理士制度は衰退

第1回の公認心理師試験は32,000人、合格率79.1パーセント、28,000人合格者のうち未登録者4,000人とのことです。厚生労働省発表pdf

厚生労働省は公認心理師受験配点を事例問題傾斜配点にしたにもかかわらず、今後の公認心理師必要数を考えていくときっと「割りに合わない。まだ足りない」と思っているのではないでしょうか。

ちなみに令和元年5月末

社会福祉士 238,267人
介護福祉士 1,689,850人
精神保健福祉士 8,6574人です。

(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)発表pdf

厚生労働省も把握できないところでしょうけれども、心理職公認心理師として現場で活躍している人たちはたいてい登録しているのではないかと。

他資格ホルダーで「ついでに公認心理師も取っちゃった」けど箪笥の肥やしにした人は実働心理職として働いてくれるわけではありません。

「第2回公認心理師試験受験者総数・合格率予想 改訂版)」記事

では第2回試験の合格率を6割程度と見て、18,000人前後の受験者のうち合格者10,.000人、その中でも実働人員は多く見て8,000人というところではないでしょうか。

第3回の受験者数はきっとさらに減ります。

第2回試験は第1回試験で合格した現任者が「国家資格に合格したよー」と言っていたことに対し「じゃ俺も俺も」「私も取るー」という同調者の現任者が多いだろうと予測しています。

5年間の経過移行措置中、公認心理師受験ブームは続くでしょうけれど、どんどん受験者が減ることは間違いないでしょう。

で、そうなると根拠はとしか言えないのですが、合格者数

1回目28,000人
2回目10,000人
3回目 6,000人
4回目 3,000人
5回目 2,000人

計 49,000人

登録者42,000人(2024年まで合計)

これから活動する実働心理職
31,000人

程度、かなり憶測だけの数字です。

次です。

日本臨床心理士会は資格更新した有効臨床心理士数は32,354人と発表しています。

さて登録更新臨床心理士の中で実働人員として働いていて公認心理師試験を受験、合格できた人がどれだけいたのか。

僕は実は日本臨床心理士会が発表した登録更新臨床心理士のうち実働人員はかなり少ないと思っています。

臨床心理士は心理職として現場で働いている人が多いので、公認心理師資格を取れるのかどうかということは死活問題です。

なので実働している臨床心理士はほぼほぼ受験したのではないかと思います。

最後に感じていることですが、これも僕の憶測も入っています。

ストレスチェック制度、福祉加算、ギャンブル依存症対策(これは首相官邸)医療保険点数におけるハイリスク妊婦加算、通院集団精神療法、リエゾンチーム加算、摂食障害、児童思春期入院、通院と厚生労働省は次々にばたばたと公認心理師でなければできなくなるであろう制度を成立させています。

厚生労働省にとっては、臨床心理士制度の今後の成り行きや存亡はもはやどうでもいいように見えます。

これは当たり前のことで、公認心理師制度推進室自体が厚生労働省の機関です。

民間資格として生き残っていく臨床心理士制度はかなり縮小していくでしょう。

冒頭の写真は僕のスマホで履歴を全消しした後のGoogle先生の検索結果です。

「臨床心理士 養成廃止」「臨床心理士 なくなる」という用語がトップに出てくる検索結果です。

先日仕入れた情報のとおり、かなり危機感を日本臨床心理士会でも感じているようですし、臨床心理士制度そのものがジリ貧になることは間違いないと思います。

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東京矯正管区・公認心理師実習受付中情報(New!)なぜ司法は必須分野なのか

以前にも法務省矯正局が公認心理師養成のため、実習受入れをするという記事を書いたのですが、ふと東京矯正管区のホームページを見たら新着情報として公認心理師実習を行うと正式に掲載されていました。

矯正局管轄下にある少年鑑別所、少年院、刑事施設で実習受け入れをする際には見学および担当官からの説明があることを記してあります。

以前聞いた際には少年や受刑者に直接接することは難しい(それはプライバシーの観点から確かにそうだと思います)、ただ模擬心理テストなどは可能かもしれないという回答でした。

この辺りは実習大学・大学院から要望していくことが可能な領域だと思います。

東京矯正管区内の鑑別所、少年院、刑務所など幅広く受け入れをしていて、できれば1日と言わず長期間実習ができたら学生さんには勉強になるだろうなあと感心して見ていたところです。

元々公認心理師試験そのものの中には心理職活動主要5領域の中に司法を重要な柱として含んでいます。

「私、リハビリ施設で心理検査やるのが仕事なの」

とか

「市役所で乳幼児発達検査や行動観察するのが仕事なのになあ」

という心理職の人々にとっては司法分野は「試験に出るから勉強しなくちゃいけないけど、そのあとは役に立たない」領域として扱うのはもったいないなあ、と僕は思うわけです。

アメリカの研究と日本の嗜癖治療専門クリニックのワーカーの話では、一生の間に小児に被害を及ぼす性犯罪加害者は1000人以上の被害者を生み出すという結果が掲載されています。

犯罪心理学の権威、エビデンス・ベイスド・プラクティスの研究者の原田隆之氏は性犯罪者の更生率は高く、それは原田氏の治療によって3パーセントにまで減少させることができたと自ら書いていました。

性犯罪については薬物的去勢と認知行動療法が効果的とされていて、どんな試みでも加害者臨床のためには行われるべきだと思うのですが、加害者が申告する被害者数と「効果があった」とされる治療家側の申告の乖離に疑問を持つのです。

捕まらないで上達していく能力は多分高まります。

そして検挙率が少なくなる、この相違を研究することはほぼ不可能と思います。

ところで幼少期に性被害に遭った患者さんのPTSDは凄まじいまでに激しい症状を示します。

心理療法家は被害者臨床に目が向きがちですが、もし効果的な加害者臨床を行うことによって被害者を減らすことができれば医療におけるPTSD患者さんも激減すると思うのです。

第1回公認心理師試験北海道追試では犯罪者更正のためのRNRモデル(再犯riskに処遇密度を合わせ、犯罪を誘発する要因のneedに呼応させ、社会復帰支援のための応答responsebility)が出題されていました。

RNR理論の論文にも明記してあったのですが、どんなに効果的な処遇計画を立てても犯罪をゼロにすることは不可能です。

ただし司法矯正心理職は決して諦めてはいけない分野だと思いますし、だからこそ公認心理師試験分野ともなっているのでしょう。

PTSDは実に多彩な症状群の源になっています。

解離、フラッシュバックだけでなく、あらゆる依存症や身体化障害の原因ともなり得ます。

ほかの基礎疾患や精神疾患と重奏すると治療は困難を極めます。

福祉領域にかかわる人は対象者が被害者になり得ることも加害者になり得ることも知っています。

教育分野における非行は警察、家裁に加害者を引き渡したから終わり、という単純なものではありません。

あらゆる領域にかかわってくる司法矯正分野、人間の意思能力、精神状態と密接にかかわってくる家事手続法(旧家事審判法)は、どの心理職が働く分野でも必要となることが想定されます。

家庭裁判所調査官や法務教官、保護観察官は心理卒でなくてもなれるわけです。

幅広い分野の領域の知識が司法、行刑、保護観察に必要だからでしょう。

その上で、司法が心理職の必修分野としての大切さも理解できます。

今後公認心理師実習の中で司法、矯正分野での研修が多くなればなあとも思うわけです。

最高裁家庭局は今のところ学生向け公認心理師研修は考えていないようですが、成人や民事裁判、児童福祉に関する成人事件の裁判の傍聴などは心理職としての幅を広げることにもなるだろうとも思います。

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◯ 公認心理師取得まで1千万円かかる

公認心理師資格取得、今学部で学んでいる学部生の人たちが公認心理師取得までにどのぐらい学費を払わなければならないのかということで試算してみました。

モデルとしたのはとある私立大学の学部、大学院入学金で、まずは学費だけを電卓で叩いて計算しました。

その地域では名門と言われる大学、偏差値60ぐらいです。

改めて見ると大学で心理学を学ぶというのは設備費やら実験費、実習費などいろいろかかるということがわかります。

そこの大学では大学院卒、無事公認心理師試験にストレートで合格したとして入学金と学費だけで1千万円という試算でした。

自宅生ではなくて下宿ならばさらにお金はかかるでしょう。

このぐらいの偏差値の大学に受かるためには小中高から塾通い、お坊ちゃんお嬢様なら家庭教師をつけたり個別指導塾に通っていたとしてもおかしくありません。

そして地元ではトップ高校、あるいはその大学の付属校、育ちがいい人は幼稚園からその私学に通っているかもしれません。

公認心理師は実習の困難さからか、1年時からGPA学力選抜を行う大学も多いようです。

「公認心理師になる!」と決めて名門大学に入学して無事GPAを通って院試を受け、そこの大学院公認心理師養成課程に進むのはなかなかハードルが高いことです。

結構な名門大学学部を卒業してから自大学の院に進まず(進めず)それほど名の通っていない院に進んで臨床心理士になっている逆ロンダリングをしている人もいます。

そうするとまた受験、転居も伴いますし、国公立→私立になる場合も余分に資金がかかります。

それで公認心理師試験に無事1回で合格できればいいのですが、臨床心理士試験を振り返っても試験に2度、3度落ちてから資格を取得したという話もままあります。

臨床心理士試験合格率6割というのは、易しいようでなかなか厳しい試験です。

院卒者で毎年必ず4割が不合格となっているという計算になります。

公認心理師も合格率6割くらいに落ち着くのではないかと言われています。

その間受験勉強をしながらどこかで働ければいいのですが、心理職は資格職の色彩が強いことから、浪人している間、心理の仕事をせず、研究生をやりながら受験勉強に明け暮れる人も多いでしょう。

なんとなく入学時の偏差値に臨床心理士合格率は比例しているような気がしています。

それでも例外は多々あって、臨床心理士指定大学院の場合は徹底して受験対策をするところは合格率が高い、逆に心理学の課程授業だけをやって受験勉強は個々人に任せるよ、という大学院は合格率が低いような気がします。

公認心理師各実習先を見ると1日当たり実習生受入れ5千円程度の病院が多いようです。

公認心理師養成を謳っていないとこの先学部も院もジリ貧になりそうな現在、実習にコストがかかるからといって、学費を一気に跳ね上げるわけにいかないです。

それでも実習費用はなんらかの形で学生さんにも反映はしていくでしょう。

じゃあ国公立ならお金がかからなくて大丈夫なの?というと、どこの国公立でも心理課程は比較的人気が高く入学時偏差値も高い、そこに入学するための教育投資もそれなりのものだったと思います。

心理職=坊ちゃん、お嬢様が多いという正の相関関係はあると思います。

「先生は私と育ちが違うから、私が育ってきた苦しい境遇なんかわからないでしょ?」

という、患者さんから見た負の相補性は残念ながら多分本当のことですが、当の心理職は高学歴低収入なことに変わりはありません。

医療をめぐる教育体制は大きく時代とともに変化しています。

医学部に入るには国公立だと地頭の良さに加えて相当の教育投資も必要です。

私立医学部も早慶をたやすく凌駕する偏差値が必要、学費は高いのは本当ですが、少子社会で名門私大は学費の大幅値下げで学生集めをしています。

歯学部はかなりのハイコストローリターン、リスクリターンになってしまいました。

心理職はかけたお金の分即座に戦力になれるわけでもなく、新卒心理職はさまざまな研究会や学会に出て自己研鑽をしなければならないでしょう。

そう考えるとなかなかコストがかかる仕事だなあと感じるわけです。

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