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◯ 多重関係(私的関係)に公認心理師が対応できてないという事実

多重関係はあらゆる心理職の職場で昔から発生しています。

そして公認心理師が誕生してからも多重関係に関する倫理基準はあやふやなままです。

僕の同級生が以前大学の学生相談所所長兼任准教授をしていたのですが、ゼミの打ち上げではクライエントと差しつ差されつ飲むという、とても危ない状況に置かれていると泣きを入れていました。

産業場面で同僚やその家族のカウンセリングを行ってはいけないのは鉄則です。

ところが新規・中途採用になった試用期間中の心理職が「あ、せっかく採用になったんだから同じ課のうつ病の◯◯君のカウンセリングやっておいてね」と、とっても偉い人から言われて言葉に詰まった経験がある人はいないでしょうか?

とっても偉い人が「独身のカウンセラーだったら患者さんと交際するのも結婚するのも何かの縁ですから」と言うのを聞いたこともあります。

それを聞いていた一般の方々がどう思ったのでしょうか?

一般の人は多重関係ルールを知りません。

心理職の配偶者が外的要因でメンタルダウンしてしまうこともありますが、「患者さんだから知り合って結婚したのね」と看護師さんを含めた医療職、あと一般の方々が言うことがあります。

整形外科で骨折した以外はぴんぴんとしている患者さんと看護師さんが結婚するとかたまに聞くことがありますが別に何の制約も禁止もありません。

新公認心理師、週イチでカウンセリングをしていた職場のパワハラセクハラ相談総務課長、上司だから部下の勤務評定しながら相談に乗っちゃっていいの?

という状況は小中高校の児童生徒教員間でも同じことが起こり得ます。

病院や自治体職員なら大丈夫、と思っていても、職員のカウンセリングをすることを条件にして採用されている心理職もいます。

僻地や離島ではどうしたらいいのでしょうか?

人口1500人ぐらいの町だと多重関係禁止っていっても、全員知り合いじゃない?ということは下手をすると親類縁者苗字が土地内に3つしかないようなところでカウンセリングすることを余儀なくされるわけです。

村立、町立病院でカウンセリングをしたら家の裏に白菜や大根が置いてあるようなことがありそうですが、「こんなことされては困りますから」と毅然とした態度で断ろったり突き返したりするとその土地では浮き上がってしまうでしょう。

サイコロジカルファーストエイドPFAでは多重関係が生じても緊急介入をしなければならない場合もあるだろうと規定している学会もあります。

ただ、そこからの通常の関係への復帰が難しいことは容易に想像ができます。

あちらこちらで起きているだろう公認心理師の多重関係、私的関係のもつれを相談する機関もなければガイドラインもなく、厳しい倫理を守ることだけを求められているのが現状です。